「日本鉄スクラップ 鉄鋼と業者140年史」を発刊します

 

ご挨拶

明治から令和に至る鉄鋼と鉄スクラップ業の140年間の歴史をまとめました。

標題は「日本鉄スクラップ 鉄鋼と業者140年史」の二部構成です。

鉄屑の絶対的窮乏期。その鉄鋼需給、業界人の歩みを「第一部 伊藤信司と稲山嘉寛の時代(1877~1985年)」とし、絶対的余剰期に入った1985年以降「第二部 渡来系業者とゼロカーボンの時代(1985~2021年)」として、記述しました。

 

第一部のおよそ百年は、鉄屑・鉄スクラップの「絶対的欠乏」の時代です。

当時「鉄は国家」でしたから、国はあらゆる法令を動員して鉄屑確保に走りました。それが日本鉄屑統制会社の設立であり、金属類回収令の制定であり、鉄屑指定商制度の創設でした。このすべてに係わったのが伊藤信司でした。

また戦後の国は経済復興の切り札として鉄鋼生産に賭けました。それが鉄屑カルテルの結成を促し、通産省独自の行政指導として(事実上の鉄鋼製品カルテルである)鉄鋼公開販売(鉄鋼公販)制度を作りました。このすべてに係わったのが稲山嘉寛でした。

鉄屑カルテルは7410月に終わりました。が、鉄屑・鉄スクラップの「絶対的欠乏」の恐怖が去ったわけではありません。これに終止符を打ったのは、またしても黒船の来航。

1985年プラザ・ショック。その円高(外圧)とその後の内需転換対策でした。

 

これが鉄スクラップの「絶対的余剰」と新たな「リサイクル」時代の扉を開きました。

したがって第二部は1985年を起点とし、現在進行中の状況変化を明らかにするためテーマを七つに絞りました。鉄スクラップ業は戦後、最も新規参入障壁の少ない業種でした(在日コリアン参入)。また環境意識の高まりと各種リサイクル法制定のなか、その役割が再評価され(リサイクル新時代と異業種参入)、同時に先進諸国の都市鉱山・輸出産品として動き出し(渡来系業者の参入)。さらに待ったなしの「ゼロカーボン・スチール」時代の切り札となりました。第二部ではそれをじっくり考えました。

 

本稿は「伊藤信司と稲山嘉寛たち」と「渡来系業者とゼロカーボン」の過去と現在を二つながらに一つにつないだ構成となっております。ですからどちらから読み始めてもいいのです。過去が現在となり、現在が過去に通じる・・・歴史と評論。その試みですから。

 

目次 

 

  • 伊藤信司と稲山嘉寛の時代(18771985年)

 

はじめに                            4

第一章 明治・大正という時代                  14

伊藤 寅松――まず屑カゴを背負って              14

岡田 菊治郎という男――日本の鉄屑業の草分け         22

鈴木 徳五郎――建場商から銅鉄商へ              28

伊藤 信司――その生い立ち                  38

大戦不況と震災不況、銑鉄カルテルと日本製鉄誕生のいきさつ   44

 

第二章 日米開戦までの昭和という時代              50

伊藤 信司 少壮右翼政治家として               50

2・26事件の事後関与者、砲兵大佐橋本欣五郎と大日本青年党   52

岡田 菊治郎―プレス機を開発 東京製鉄を設立する       54

鈴木 徳五郎 昭和2年に株式会社に改組する          58

德島 佐太郎――佐太郎は二人いる               60

 

第三章 それぞれの戦中――鉄屑統制と回収会社と男たち      64

伊藤 信司と鉄屑統制会社                   68

伊藤 三好 小林一三の知遇を受ける              74

岡田 菊治郎 鉄屑王、全国一の多額納税者           80

鈴木 徳五郎 関東金属回収会社の社長として          82

成島 英美―帝大出の東京市社会局職員             84

德島 佐太郎 異業種に活動の場を求める            88

その他の当時の主要な業者たち                 90

戦時中の統制会社と法令・活動                 98

 

第四章 それぞれの戦後                     108

1946年 鈴木徳五郎は店を成島にまかす           110

47年 小宮山 常吉は戦後第一回の参議院議員          110

48年 德島 佐太郎は最大・最強の直納業者として再登場     112

49年 岡田 菊治郎は「岡田商法」を再開            114

49年 池谷 太郞、東京製鉄を岡田から引継ぐ          114

51年 小宮山 英蔵は平和相互銀行を設立            118

53年 古波津 清昇 沖縄の製鉄業を支える(沖縄製鉄史)    124

 

第五章 鉄屑カルテルと日本鉄屑連盟の抗争              132

53年1月 鉄屑カルテル予兆のなかで――「鉄屑界」を発刊      134

日本鉄屑連盟の設立まで――伊藤と徳島の対立                 138

53年12月 鉄鋼20社鉄屑カルテル申請・業者は鉄屑連盟を結成    144

カルテル申請は迷走――鉄鋼・稲山と連盟・伊藤の交渉術(需研登場) 148

54年6月 鉄鋼、カルテル申請を取り下げる――伊藤、事実上の追放  156

55年3月 公取委、鉄屑カルテル認可のサインを公表         162

55年4月 鉄屑カルテルを認可――業者は指導権争いで分裂      166

直納ディーラー(巴会)の男たち――松島政太郎、岡憲市、松岡朗   170

55年10月 連盟と巴会に対立。再合同に動く――仲介者・伊藤の采配  184

56年9月 カルテル協定書から鉄屑連盟の名を消す――再合同も霧散  178

業者団体のその後――鉄屑連盟は衰退、日本鉄屑問屋協会が登場    180

 

第六章 稲山嘉寛と鉄屑カルテル                    184

永野 重雄 野育ちの鉄屑使いの男                  184

稲山 嘉寛 官営八幡一筋。業者対策の責任者として          188

55年10月 カルテル「崩壊」。通産省と稲山が「再建」に動く     198

56年7月 米ルリア社と稲山――大量一括・長期契約方式を提案    204

エピソードとして 一手購入機関構想と業者の思惑          210

 

第七章 太平洋ベルトコンベアと米国鉄屑使節団            214

57年2月 永野と稲山 米国鉄屑使節団として            214

57年6月 180万㌧の長期契約輸入屑引取りと「国際信義」問題   216

57年7月 鉄屑業者の抗議運動と11月「下限価格」割れの暴落    218

 

第八章 事実上の鋼材カルテル(鉄鋼公販)と稲山           226

独禁法適用除外法案と通産省、鉄鋼の思惑              226

幻の鉄鋼需給安定法案――通産省、3度目の敗退           228

58年6月・鉄鋼公開販売(不況公販)と「稲山試案」         234

61年2月 稲山の太平洋ベルトコンベア停止――その後        238

64年 東京五輪――鉄鋼戦国時代のなかで              240

65年11月 住金事件――日向、稲山、永野のそれぞれの思惑      244

エピソードとして――「鉄鋼公販」の10年。時評家・鎌田の指弾    250

 

第九章 ポスト・カルテルと新体制のなかで              254

75年7月 業者は日本鉄屑工業会に結集する             254

小澤 肇 日本鉄屑工業会初代会長(産業振興・社長)        256

德島と伊藤 その後                        258

伊藤信司 余談として                       262

 

第二部 渡来系業者とゼロカーボンの時代(19852021年)

 

第一章 戦後70年史概説 

1945年 敗戦から52年講和条約(日本独立)まで              270

50年代 鉄屑カルテルと鉄鋼・鉄屑業の抗争                 270

60年代 鉄屑カルテルと高度成長期のなかで                272

70年代 高度経済成長と鉄屑国内需給改善のなかで             274

80年代 電炉構造不況とヤード業者成熟のなかで                 276

90年代 バブル崩壊と「逆有償」と92年リオ会議のなかで          278

2000年代 リサイクル法制と輸出新時代のなかで             282

10年代 異業種・新規参入と鉄スクラップ業の変質のなかで          286

20年代 「ゼロカーボン」の時代に 鉄スクラップ「争奪」の予感       292

 

第二章 日本人業者―それぞれの戦後ビジネスのかたち

鈴木 孝雄 工業会第三代会長――リサイクル法対応の10年          296

中辻 恒文 工業会第四代会長――業界に国際感覚を持込む          302

影島 義忠(影島興産)――戦後の復員兵、丸和商店川崎支店長から起業する  304

多屋 貞男(伸生スクラップ)――シュレッダープラントと時代に悪戦苦闘   306 

島 一、一樹の親子(シマ商会――ローカルから日本、さらに世界を目指す)  310

 

第三章 在日コリアン系業者の過去と現在

50年代 古物営業法、金属くず営業条例と在日コリアン            314

「日本三文オペラ」とアパッチ族の時代                    316

60年代――鉄屑カルテル(55年)と「十年史(67年刊行)」の目線       318

70年代以降――高度経済成長とヤード業者としての自立            320

その歩み――断片的な記録、証言から

50年 姜 福心(梁川鋼材) 在日コリアンが鉄屑業に鞍替えする       322

72年 安東 国善(青南商事) 青森から東北6県に進出する         328

98年 高橋 克実(イボキン)―業の「大義」を掲げ、ジャスダックへ上場   332

2010年 安東 元吉(青南商事)―国際感覚を活かし世界へ発信する    336

2020年 劉 庭秀(東北大学教授) 「静脈産業と在日企業」を出版    342

 

第四章 リサイクル新時代と異業種参入(内発変化として)

各種リサイクル法の制定から始まった                    346

佐野 富和(エンビプロHD)――鉄スクラップ業では初の上場        346

福田 隆東港金属)――非鉄の百年会社。鉄に参入し総合リサイクル企業へ  350

福田 誠(ナンセイ)――産廃物運業から進出、沖縄の出身の意気を示す    356

 

第五章 渡来系業者進出のなかで(外発変化として)

雑品・貿易ビジネスが始まりだった                     358

斉 浩(錦麒産業)――中国出身。雑品扱いから総合リサイクルを目指す    360

曹 洋(福洋商事)――来日20年。会社創設10年で内外に販路を拡大する    362

夏 立明(常沅産業グループ)――中華系業者としての存在感を示す       364

自動車、中古部品貿易会社ほかーー予想される今後の展開            366

 

第六章 在来企業――新たなパラダイムを生き抜くために            368

鈴木 孝雄(リバーからTREホールディングスへ)―戦略的統合を目指す    370

平林 久一 実の親子(平林金属)――吉備の国から「総合サイクル」を拓く    374

黒川 友二(扶和メタル)――「お客様が店を選ぶ」商売に徹する百年企業     380

 

第七章 ゼロカーボン社会と鉄スクラップ業の将来

1 鉄スクラップが「ゼロ・カーボン」の切り札へ               388

2 グリーントランスフォーメーション(GX)と鉄鋼・鉄スクラップの未来   392

3 その歴史的、今日的背景                         394

4 ゼロカーボン社会と21世紀の鉄鋼業、そのなかの鉄スクラップ       396

 

後記                                    400

引用・参考資料                               402

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標題 「日本鉄スクラップ 鉄鋼と業者140年史」

A5サイズ(14.8×21.0㎝) 410

定価 3,000円+税

著者 冨高幸雄

発行所 スチールストーリーJAPAN

発行予定日  20219

*ご注文は本hpの「お問い合わせ」コナーでお待ちしております。