国内鉄スクラップ需給と今後予測

はじめに
*鉄源年報22年版統計資料をもとに、鉄スクラップ需給を分析した。

*統計資料の鉄スクラップ「国内供給」は、自家発生(製造工場の工程発生品)と国内市中(外部購入品)に分類され、輸出スクラップは計算されないから、国内の総供給は自家発生+国内市中+輸出の合計量として見る必要がある。

*ただ工場発生品が、社外に引き取られ再び原料として購入する場合もある。自家発生品と国内市中品が二重計上されるから、期初・期末在庫を通じて、過欠補正する必要がある。

*国内業者の鉄スクラップ扱い量は、国内市中と輸出の合計量と推定できる。

 

■日本の粗鋼生産は8000万㌧台へ

日本の粗鋼生産は2007年の12,020万㌧(電炉鋼3,0966万㌧)をピークに減産に転じ、18年(1400万㌧)を最後に1億㌧を割った。コロナショックの20年生産は8,319万㌧。21年は9,633万㌧。2219月現在は6,782万㌧。経産省発表の1012月期生産計画は2,213万㌧。これを加えた22年暦年推定生産は8,995万㌧で9,000万㌧を割り、前年比93.3%レベル。内外経済情勢の変化から23年以降の国内生産は8,000万㌧台定着も視野に入ってきた(注1)

 

■世界の電炉生産と電炉シフト

21暦年の粗鋼生産が2000万㌧超の国は11ヵ国。この11ヵ国の転・電炉生産のうち、電炉シェアのトップはイランの90.3%。以下イタリア84.0%、トルコ71.6%、米国69.2%、インド55.2%、台湾39.5%、韓国31.8%、ドイツ30.2%、日本は9位の25.3%。ブラジル24.8%、中国は11ヵ国中最下位の10.6%。世界平均は29.2%である。

 温暖化防止が世界的な問題となるなか、Co2削減効果の高い電炉鋼と鉄スクラップ活用が鉄鋼各社の最大の課題となった(注2)。鉄鋼大国「中国では25年に電炉比率を15%、30年には20%超、4050年は4050%を目指す」(中国情報提供会社Mysteel Japan Rep代表・朝田晋平氏)との情報もあり、日本でも電炉比率30%超に向け各社が一斉に動き出した(注3)。

 

■国内鉄スクラップ供給は15年で8割水準に後退

国内鉄スクラップ供給量は、粗鋼生産の後退と需要構造の変化(21年の全鉄鋼輸出は3,440万㌧。粗鋼生産分の36%は海外に出た)などから長期的に細ってきた。
国内総供給量(自家発生+国内市中+輸出-過欠補正)は200708年が5,930万㌧だが、21年現在は4,720万㌧。ピークから約1,200万㌧減少した。
また(自家発生を除き)国内市中と輸出合計で計算した業者扱い量は200708年が4,430万㌧台。21年現在が3,510万㌧。07年に比べ920万㌧減、約8割となった(なお21年粗鋼生産は9,636万㌧。0712,020万㌧に比べ、同約8割レベル)。

 

■電炉生産と鉄スクラップ原単位

鉄源年報22年版による21歴年、転・電炉鋼生産、転・電炉の鉄スクラップ消費、転・電炉のスクラップ原単位(粗鋼1㌧当たりスクラップ使用量)は以下の通りである。

 *21年 粗鋼生産9636.1万㌧。転炉7194.5万㌧(74.7%)。電炉2439.1万㌧(25.3%)

 *21年 鉄スクラップ消費 転炉999.9万㌧+電炉2474.8万㌧=3474.7万㌧ 

          鋳物他522.5万㌧ 総計3997.2万㌧

 *21年・1㌧当たり鉄スクラップ原単位=転炉139.0㎏、電炉1014.6㎏(22年版・101p)。

 

■電炉シェア35%時点での需給将来予測

この21年データを元に電炉シェア35%となった時点の鉄スクラップ消費量を試算した。

*某年 粗鋼生産8500万㌧  転炉5525万㌧(65%) 電炉2975万㌧(35%)

某年 1㌧当たりスクラップ原単位=転炉鋼139.0㎏、電炉鋼1014.6㎏。

鉄スクラップ消費 転炉5525万㌧×0.139768万㌧ 電炉2975万㌧×1.01463018万㌧ 鋳物他(21522.5万㌧の8割と仮定)418万㌧。総消費は3018万㌧+418万㌧=4204万㌧


*某年 粗鋼生産8000万㌧  転炉5200万㌧(65%) 電炉2800万㌧(35%)

鉄スクラップ消費 5200万㌧×0.139723万㌧ 2800万㌧×1.01462841万㌧ 鋳物他(21522.5万㌧の8割と仮定して)418万㌧。総消費は3564万㌧+418万㌧=3982万㌧


■粗鋼生産8000万㌧時点での国内供給量試算 

粗鋼生産が219640万㌧から8000万㌧(83%)に後退すると仮定して。

自家発生1062万㌧(21年実績×0.83)+国内市中2307万㌧(21年実績×0.83)=3369万㌧

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試算によれば粗鋼生産8000万㌧時の鉄スクラップ自家発生と国内市中の供給合計は3369万㌧。一方、粗鋼生産8000万㌧、電炉シェア35%時の鉄スクラップの国内総消費量は3982万㌧。613万㌧の供給不足が発生する。
日本には輸出余力などない。むしろ輸入が課題となる。

 

■鉄スクラップ輸出推移と業者輸出割合

鉄スクラップ輸出は、国内消費動向と逆関係する(国内消費が減るから輸出が増える)。過去最大の09年(939.8万㌧)はリーマンショック直後の年。20年(937.1万㌧)はコロナショックの年である。またアジア周辺国の鉄鋼需要の高まりにも関係する。

17年以降の鉄スクラップ輸出は700800万㌧台で推移。国内総供給量に占める輸出割合は1020%。自家発生を除いた輸出割合は1229%。ここ10年は20%超が定着した(注4)。

 

注1=日本製鉄は84日、233月期単独粗鋼生産量を前期比1割減の3500万㌧以上、263月期までに国内高炉を15基から10基とし生産能力を2割減らすと公表した。同日、JFEスチールは22年度単独粗鋼生産量を2600万㌧弱と前年度並み(2588万㌧)を見込んだ。

注2=高炉・コークス法は、鉄鉱石や石炭の採掘、その海陸の運搬、その製銑、製鋼の4段階でCo2を排出する。一方、地上・回収物を使う電炉・鉄スクラップ法は、製鋼の1段階だけで工程が完了する。その結果、高炉・コークス法では、製鋼1㌧当たり約2㌧のCO2を出すが、電炉・鉄スクラップ法は、0.5㌧と高炉の4分の1で済む。

注3=*JFE、高炉を電炉に転換(8月27日・日経)=JFEスチールが、倉敷「第2高炉」を更新せずに休止。28年前後に電炉に転換する方針。JFEは現在、東日本に2基、西日本に6基の全8基の高炉を抱えている。京浜(川崎市)の高炉は23年度に休止。倉敷第2高炉が電炉に転換されればJFEの国内高炉は6基体制となる。

*広畑の新設電炉の商業運転を開始=日本製鉄は2210月から広畑の新設電炉の商業運転を開始した。生産能力は年間約70万トンで電磁鋼板など高級鋼材を生産する。                           

注4=日本の2219月鉄スクラップ輸出量470.0万㌧・前年同期比19.1%減少。年率換算は627万㌧ペース。輸出量が700万㌧台を割るのは2011年(544万㌧)以来である。

以上