ある夜空に(詩らしきものvol.2・2024年)

 

16 2024年2月25日 大阪マラソンの日に

 

娘が山口からやって来た 大阪マラソンに参加するために 

準備は万端 トレーニングは毎日やってきた 

10キロ走 20キロ走もこなしてきた

 

とはいえフルマラソンは今回が初めて

でもなんとかなるわぁ と余裕の構え

大阪のエイドはええんよ 

なにが?と私 数は多いし スイーツは美味しいねん 

フィニッシャーズタオルはかっこええしね とのたまう

 

当日は朝から雨 終日降雨 最高気温8度の予想

参加人数約3万人 スタートは一般市民枠の午前945

前日調達した百均のビニール雨カッパに身を包んで走り出した

 

付き添いの 親の私は心を配る

果たしてエイドはゲットできるのかしら

冷雨のなか けなげな五十娘の完走も 


15 偶成 (2024219日)

 

如月 月明 明確 確信 信念 念書 書式 式場 場合 合計 計測 測地

地球 球体 体重 重機 機序 序詞 詞学 学問 問答 答案 案内 内側

側壁 壁土 土神 神主 主客 客星 星雲 雲雨 雨足 足跡 跡目 目途

途中 中断 断言 言論 論戦 戦法 法理 理想 想定 定点 点眼 眼力

 

力行 行事 事象 象徴 徴候 侯爵 爵位 位階 階段 段差 差配 配慮

慮外 外見 見解 解釈 釈放 放物 物質 質量 量子 子供 供奉 奉公

公共 共同 同時 時間 間道 道義 義父 父親 親族 族譜 譜代 代官

官舎 舎監 監督 督励 励起 起立 立派 派兵 兵隊 隊長 長期 期日

 

日記 記載 載天 天空 空気 気圧 圧迫 迫真 真実 実現 現在 在野

野手 手動 動作 作文 文身 身分 分散 散歩 歩調 調査 査定 定速

速攻 攻守 守備 備蓄 蓄積 積年 年輪 輪唱 唱和 和平 平穏 穏当

当選 選句 句読 読書 書架 架設 設営 営業 業会 会社 社費 費消

 

消化 化合 合弁 弁護 護持 持戒 戒律 律詩 詩歌 歌曲 曲芸 芸術

術後 後出 出来 来襲 襲撃 撃退 退転 転居 居住 住所 所感 感激

激流 流路 路頭 頭領 領海 海浜 浜辺 辺境 境国 国難 難敵 敵対

対話 話談 談議 議院 院政 政権 権利 利他 他人 人望 望郷 郷人

 

きさらぎの その半ば過ぎ あてどなく

天のものなる ことだまを 地上に落とし

この世のまどいの 文占い

 

放下 下界 界面 面妖 妖怪 怪談 談合 合資 資本 本懐 懐中 中華

華人 人脈 脈動 動機 機転 転貸 貸家 家賃 賃金 金鉱 鉱山 山水

水質 質実 実現 現在 在野 野原 原罪 罪悪 悪魔 魔法 法規 規範

範例 例外 外見 見物 物権 権利 利潤 潤滑 滑落 落語 語彙 彙集

 

集団 団体 体育 育休 休息 息災 災難 難儀 儀礼 礼文 文飾 飾師

師弟 弟子 子女 女性 性急 急変 変化 化合 合作 作曲 曲想 想念

念仏 仏心 心底 底地 地上 上等 等分 分散 散歩 歩測 測量 量目

目方 方言 言論 論調 調律 律詩 詩歌 歌手 手足 足技 技官 官吏

 

吏員 員数 数年 年報 報告 告白 白明 明答 答辞 辞意 意思 思惑

惑星 星雲 雲宇 宇宙 宙天 天空 空気 気迫 迫真 真剣 剣客 客座

座頭 頭領 領土 土民 民衆 衆議 議会 会場 場内 内心 心臓 臓器

器用 用事 事象 象徴 徴発 発端 端歩 歩行 行進 進軍 軍装 装備

 

備蓄 蓄積 積年 年増 増加 加算 算数 数寄 寄席 席亭 亭主 主格

格差 差別 別当 当局 局所 所定 定額 額縁 縁故 故事 事案 案内

内偵 偵察 察知 知行 行楽 楽市 市電 電鉄 鉄橋 橋梁 梁木 木材

材料 料地 地価 価値 値段 段丘 丘陵 陵墓 墓所 所感 感応 応答

 

放下して 言葉を拾い つなぎゆく

おぼつかな 

さて この無力感 なんとしよう

 

 

14 あざみに深き わが想い 2024216日)

 

アザミの花を見るたびに 

そのかみの 母の口癖 

母の素振りの あれこれを

 

生きている 夢のなか

店番 子育て 日常茶飯 

脈絡もなく つながらず 

その切れ切れを 断片を 疑いはせず 

 

目が覚めて 薄れる記憶 もの欲しく

不触の時を ひと時を 拾い集めて こぼれ行く

ははそはの母の宝の その形見

孫の子の その子の子供 傍らに

 

母愛惜の 歌詞の一節 

あざみの歌を 思い出す

さだめの径は 涯てなくも

 

 

13 「春一番」の日に (2024215日)

 

日差しはないないが 暖かい

出しっぱなしの洗濯物を やれやれとばかり とりたたむ

定年以来十余年 それがわたしの日課

 

さて二階のベランダから 世間の様を それではと見渡す

裏のデイサービスの建物は 取り払われて いまはむき出し 更地となった

長年親しんだ隣家の老婦人宅は 無人となって建屋解体 空き地となった

 

都会のなかのポツンと一軒屋 それがいま

だから陽当たり良好 東西南北 日時計暮らし

朝日に目覚め 夕闇せまれば まどにカーテン

 

狭い庭の一筋に 緑を求め 草木を植えた

だから水やり 草むしり

金魚もメダカも 古いタライや水槽に 放ち飼った

 

そうして今日も日を消す 粛々と

曇り のち夜に入って驟雨 突風 

 

 

12 絵葉書のお礼に  2024214日)

 

鍔広の帽子をかぶり 下駄を履き 虫取り網を手にする 

手渡された 水彩絵葉書

首から胸には白い麻マフラー  

 

時は夏 その一瞬を 絵姿に留めた

裏面には 「一班のファンより 愛をこめて」

 

私は呆然とみる 

降りかかった 世の不思議に 

ヒトの手わざと絵言葉に 驚かされ

 

私はいったい 何をしたのだろう

見も知らぬ 名も知らぬ そのヒトに

 

さてさらば 花を送ろう 

夏の日の 思いもつかぬ 思い出に

カスミソウ 白く優しく咲きにおう 

その花言葉 つつましく

 


11 生あるものは みな臭し
 (2024212日)

 

高名な作家にあこがれ 訪れ 実物に接し

俗物の生臭さに 「認識を新たにした」という

再び詩作を志そうとする 婦人の言葉です

 

私は黙って その言にうなずく

詩は しかし ヒトの真実を伝えるものではない

詩は ヒトの(かなわぬ)願望をうたうもの 祈るもの

だから ヒトに 詩の内実を求めてはならない

 

ヒトの心は漂流船 真っ赤な帆柱たかくあげ

やる瀬のなさを 追い風に 大海原あてどなく 

かなわぬ思いを瓶に込め はるかに投じた 

願わくば 浜木綿の葉むれの丘に

花言葉 祈りまさしくと

 

さはさりながら 形見の文の薄汚れ

生あるものは みな臭し

 


10 2月11日のカレンダーに 
2024211日)

 

グレオリゴ暦2024211日 凍てついた西天に

ひと刷の横雲が 細く長く たなびいて 

六甲の山頂はるかに ゆるく流れた

 

中華圏の太陰太陽暦は正月2日 三ノ宮の中華街はヒトの波

日本国はその昔の紀元節を改め いまは「建国記念」の祝日

「建国をしのび、国を愛する心を養う」日

 

それが今年はカレンダーの日曜日と重なった

だから月曜日は振替休日 ハッピー・マンデー

テレビ マスコミは 記念日は ことさらには言わず

ただ「3連休」と休暇の日の重なりをことほぐ

 

さて 国を愛することに急な 右翼諸氏は

この日をどう迎え どう過ごす

憂国悲痛の街宣を走らせ

万国におのが自慢の国威を発揚するのか

 


9 生ある時の 約束のゆえに
 (2024211日)

 

鉛の衣服を脱いで 素裸の自身にもどる

道程はるかな 旅路の果てに

ひとひらの文を おこす あてどなく

 

山巓の空気はうすい とは誰の言葉であったのか

突兀とした足場を崩し 風来をしのぐ ひと時

高みを目指す 遅々として 微々として

 

狼火は発せられたであろうか 

雄たけびは届くであろうか 

荒天驟雨のなかで それでもなお

 

ひたすらに ただひたすらに

生きる命をいきる それが自身の存在のゆえに

生ある時の 約束のゆえに

 


8 アルキメデスの断言です 
202429日)

 

神が世界を創造し 宇宙を支配した 人類共通の生誕神話です

ですから地上に降り立った神の子の 他者への支配が正統化され

生きる人びとの内心の柱とされ 日々の行動規範とされたのです

 

テコを与えよ されば地球も動かそう 

古代ギリシアの人 アルキメデスの断言です

自治市民国家に生まれた彼は 共同幻想に身をゆだねることなく

厳密な数理と明晰な論理と誰もが確認できる実証に生きました

 

近代文明は アルキメデスの数理と技術への確信によって 

大地を穿ち 天空を駆け 深海に挑む現在を作り上げました

計測も実証も不可能な 内心宇宙は不可知なものと排除して

 

さて そうであるとして わたしは呆然と立ち尽くす

不可知なヒトの心が 「憤怒の渦」となって世を覆い 世界を分断した

核を許せよ されば世界をも 道ずれにしよう 

覇権国家の脅迫です アルキメデスの断言の それが一面の現実です

 


7 政権党派閥の裏金問題に触発されて
 (202428日)

 

法律は厳密な証拠で動く 法網をかいくぐって居直る

その彼ら政治家が わたくしたちの子供の 未来を危うくする

 

世に生きる わたくしたちの最低限の約束ごとのすべてが 

のっぺりとした顔で 薄ら笑いにひきつった

かれら世襲政治家の詭弁にまみれた「丁寧な説明」に砕け散る

 

現代民主主義は代議制を根幹とする その代議士が説明責任を放棄する

投げ捨てられたのは 彼らの恥ではない 

わたくしたちの託すべき生活が わたくしたちの未来が 汚されたのだ

 

四海の外のことごとくが強権と独裁にひた走るなか

しかし なお わたくしたちは民意を押し立てる制度を握っている

ならば かれら世襲政治家の権力の壟断と無恥を許してはならない

なにができるのだろうか 

そう まず小さな約束をはたすこと

路傍のつまずきの石を取り除き 大道を 真っすぐに歩むこと。

 


6 魯迅の言葉に励まされた 
202425日)

 

何を作ろう この大地に

何を託そう この国に

何を語ろう 読みひとに・・・

 

日本財団が19年に行った世界の「18歳意識調査」がある

(nippon-foundation.or.jp)

 

それによれば「自分を大人」、「責任ある社会の一員」と考える日本の若者は他国の3分の1から半数近くにとどまり、「将来の夢を持っている」、「国に解決したい社会課題がある」との回答も他国に比べ30%近くも低い。

 

さらに「自分で国や社会を変えられると思う」人は5人に1人、国の将来像に関して「良くなる」という答えはトップの中国(96.2%)の10分の1

途上国、欧米先進国のいずれと比べても数字の低さが際立つ調査結果という」。

 

私はこの報告にうちのめされ、60年安保闘争のデモさ中、

22年の生を失った樺美智子さんを悼んだ永六輔が作った鎮魂のひそみに倣って、詩をhpにアップした(| STEEL STORY JAPAN)。

「涙がこぼれないように 泣きながら歩く 一人ぽっちの夜」・・・と。

 

しかし「絶望の虚妄なること希望の虚妄なることと同じい」とは魯迅の言葉だ

ならば 絶望も希望も 他者に任せて

 

私が拾える石を まずひとつ 大地に積み上げよう

低くとも また 小さくとも

自身の宇宙に なにごとかの存在を刻印するために

 


5 鉛の容器に封印した
202425日)

 

高名な詩人に託した 

極北の地を這う白夜の下で

無人の荒野の広がりの果てに

すべてが溶暗する 舞台装置の前で

鉛の容器に封印した きららかな魂

 

自身を「湿った存在」と定義した

意識が電位差の伝達とネットワークであるにせよ

電解物質の挙動を許す水宇宙なしには存在しえなかった

母なる胎内の侵入は粘液なしには実現しえなかった

 

石ならざる存在として 生まれたがゆえに

自身の湿りに 肉体の重みに 惑い迷う

ならば さて そのことごとしさを放擲し

一瞬を永遠に解き放つ 私の秘儀

私の生きてある意味 崩壊物質

 


4 自同律の不快とは 
202425日)

 

体内すべてに海を取り込み 

浮遊するクラゲにも似て  

ひたすらに 渺茫と浮遊する

遥かなる 浜辺をもとめて

 

つかむところなく

言葉を 切り 刻む 

措定する 絶対無音を 

惑い漂う

対峙する 宇宙を 

母なる胎内に 

凝視する 自身を

 

そう たしかに埴谷が言ったように

自身が自身に居直るのは

「存在」からすれば不快そのものでしょうね

 


3 I believe・・・そのゆえに
  (202421日)

 

作家術に関するエピソードが読んだ記憶がある

小説家を志した若者(たぶん太宰治)が師と仰ぐ

作家(たぶん井伏鱒二)に、上達への執筆作法を問うた

「書けなくても、机に向かい11枚、1行でも書くことだ」

 

芭蕉は不易流行を掲げた。

変わらないものと変わるもののスパーク。

一瞬の固定、凝縮、最大化、再定義。詞的永遠への探求・・・。

身震いする奥深さに 自身のいたらさに おびえた。

 

句も歌も、日常坐臥の友としたが、小説も詩句も作ることはなかった。

「良い読み手」として、自身の作文力をわきまえていた。そのため。

ただ時として、思いが屈し、散文詩らしきものを刻印する。

I believe・・・そのゆえに。

 


2 ある朝の便りに 
 (2024131日)

 

現代医学の言うところによれば 

動物の臓器は生存の容器である

使わない臓器は不要なものとして退化する

 

だから僕は「キョウヨウとキョウイク」のために

今日用事を作るために 今日行くところを探すために

自身の怠慢を戒めるために シニア自然大学校の門を叩いた 下駄を履いて

 

(齢はすでに喜寿を超えた ことさらに学ぶことなどないが・・・

世間の風にあたるのもまた一興かと)

 

詩は僕にとって自身への対話だった

しかし語るべき身を持たなかった 今まで

ある朝 学友から目覚めの前に 便りが届いた

そのつぶやきに 僕もまた自身の声を聞いた

 

そう僕もまた

「ふと 今なら 言葉を素直に紡げる気がした」

 


1 ある夜空にーー「星と星座」の受講の前に
 (2024111日)

 

夜空を見上げた・・・13歳の夏

大阪の西端 神崎川の高い堤防に寝転び 

頭上に広がる満天の星を追った

77-X13 X64 そう64年前 今年2024年-641960

 

高度経済成長前の大阪には それでも まだ夜空なるものがあった

中学生の私は 街区から漏れ出す光を両の手で遮断し

その狭い囲いから 天の一角を 数千万光年のかすかな到来物を

懸命に追い求めた

 

そうして・・・

堤防に寝転んだ私は いまや混沌に浮遊し 

頭上に広がる天の底に沈み

無限に遥かな天の一角から 地球生物の私を凝視する 不思議に落ちた。

 

138億年前の昔 超新星爆発を起源とする私 

しかし その存在証明を求める場は 失われてすでに久しい

 

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その昔の断片 (22年版 「詩らしきもの」の補遺)

 

 

私は元気――と言っていいと思います (2004年11月29日)

 

パソコンを打つ。さみだれのように。

時は秋。黄色く乾いたケヤキの葉が、

吹くともない風に、それとなく促され、束の間宙に舞う。

その枯葉のように・・・

 

ひとり静かにパソコンをうつ。

ヒトの心の醜さが垣間見え、

その醜さを告げることなく、親しんだ。

自らの弱さに―――したたかに打ちのめされたから。

吹き抜ける虚脱の感覚。

 

太陽が輝いている時。風が歌う時。葉裏がそよぐ時。

砂時計が小さな丘を作る時。私は元気。

邪なささやきに自らを傷つけることをしない(相手が無恥であっても)

傷ついた自身を、地に引きずる愚はとらない(それでは自身も同罪だ)

眉を上げ、昂然と歩く(象のようにスタンプ、スタンプ)

 


信じられるのは詩の宇宙 (2005年3月4日) 

 

詩は、実作はできなかったけれど、あこがれ愉しむことはできた。

小説は、人生のさまざまな局面を、もろもろの世界を語ってくれた。

愛がなんであるかを知る前に、それが説明できる自身を知ってしまった。

一握の砂に泣く男の、妻に花を買い求める男の、その索漠さを知ってしまった。

 

人生が何であるかを自身の足で踏み固める前に、井上靖の小説に独行者の涙を見てしまった。ヒトの営為とは奥歯を噛み締めるよりほかはないと覚悟した高橋和巳を己に重ねてしまった。それはまさしく山本周五郎の市井の世界だった。

遅れて知ることになった堀田善衛や加藤周一、中野好夫の明快な論理の切れ味は、世間を渡る道具として、大脳皮質の知覚領域を刺激し、思考と行動の座標軸となったが、しかし自身の湿った本能は、ほとんど靖や和巳の諦念とともにあった。

 

だから、わたしは他者の、ヒトの内面には、立ち入らなかった。
言葉を使いながら言葉を信じなかったし論理を操りながら、論理に重きを置か無かった。

だから私は超論理に飛躍する。信じられるのは自身の世界と詩のたたずまい。

倨傲な居直りと了解不能な独語と絶対無音の暗黒の宇宙に。

 


山口の娘の新居にて (2008年5月22日)

 

風に吹かれて、歩いています。

風圧と重力のバランスが身体の傾きと、歩く方向と速度を決めています。

でもいつも迷う。北風って、北からの風なの? 北に吹く風なの?

北風に押されたら、南に行くのかしら? それとも北?

風がきついと、枝がしなって木の葉が舞います。

 

五月の青嵐です。

風がやむと、歩がとまります。

天を仰いで、白い昼の月を探しています。

おや、そこにいたのかい・・・僕だけの白い月。

湖水で人が死んだのだ・・・

 

そういったのは達治でしょうか、中也だったでしょうか。

しかし、なぜ、詩人はそういったのでしょう。

湖水のふところの深さ、浸す冷たさ、身を沈める懐かしさ・・・・。

山口の古びた杜のはずれの、小さな池の土手にたたずんで、

なぜかその言葉を反芻していました。

 

風が吹いていました。

池を囲む木々は、猫バスの気ままな走りにさわさわと揺れていました。

鎮守の杜。だから開発の波も寸前で止まりました。

木々は神の守りとして育ち、朽ちて注連縄で聖別されていました。

千数百年が降り積もった小さな社です。

平安初期の様式を伝える・・・蛙股と案内板にありました。

 

風が瀟々と吹いていました。

その昔、大分から引越して間もない幼い子の小さな背中を押した風です。

僕は、おそらく、そのとき、はじめて風と道の遠さを知ったようです。

たぶん四歳か五歳ごろ・・・孫娘と同じ年ごろでした。

 

神社に通じる山道には、背丈ほどの薊が咲いていました。

庭からすぐ上の小さなため池の土手に沿っても咲いていました。

娘は、その鋭い棘が子供たちを傷付けるから、すべて抜けと言います。

僕は、孫たちが通るであろう道の範囲を限って、抜き、切り取りました。

でも危険な池の畦、土手の畦は、すべてそのままに残しておきました。

 

自然の優しい有刺鉄線。母が好きでした。

子供の僕は、母の好みを知っていました。

だから、薊にその子たちを守るように頼んでおきました。

薊も知っているはずです。山口の薊たちですから。

 


蔦紅葉。やがて枯れ散る  (201611月5日)

 

家の近くにある 戦前からの古い商家 

住む人はいない だから蔦が一面に這い上がり

春には蔦の葉が芽吹き 

夏には蔦葉が波のように広がり

秋には四面の壁が紅葉する

冬には枝だけが残った

 

かつては商店街の中心店 戦前の大八車用の荷受け台

その煉瓦積みのせり台が 今では一面、十薬の白い花

春 若葉。夏には緑の屋根。でもまだ間がある

夏 天までの葉波。 秋にはまだ間がある。

秋 蔦紅葉。やがて枯れ散る 冬はそこ

 


桜の木の下には・・・2019417日)

 

桜が散っています。桜の木の下には・・・死体が埋まっている。

だから見事に咲くのだ。梶井基次郎でした。

学生のころ、その一文にしたたかに打たれました。

 

だから 春が来て、桜が見事に咲くたびに 

その一文を暗唱していました。

その春も やがていきます。

夏・・・葉桜。人は桜に群がる毛虫を嫌います。

 

でも 毛虫は やがて蝶になる。

だから僕は 毛虫も嫌いではありません。

なべて 生きるものは皆 美しいと思っています。

 

生存するものの命。原生類 アメーバー その生存を守る本能こそがすべて。

であるならば、原生類と僕とは同列・・・それにも納得しています。

コペルニクスの天動説ではないが、人間存在に胡座をかくのは

自然に対し、宇宙に対し やはり傲慢なようです。

 

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