直近のカーボンニュートラルと鉄鋼、関連業界の動き(9月編集・追加)

 

はじめに

 

この資料はカーボンニュートラルの動きを、報道記事を参考に「まとめ」・編集した。

過去の「まとめ」は以下の通り

 

*23年4月時系列でみるカーボンニュートラルの動き | STEEL STORY JAPAN

*23年3高炉各社のカーボンニュートラルの取り組み(概説) | STEEL STORY JAPAN

*22年12「カーボンニュートラル」と鉄スクラップビジネスを考える | STEEL STORY JAPAN

*21年10月26日温暖化防止とゼロカーボン・スチールへの挑戦(「日本鉄スクラップ 鉄鋼と業者140年史」・第二部第七章の「ゼロカーボン社会と鉄スクラップ業の将来」より) | STEEL STORY JAPAN

*21年10月25日カーボンゼロ目標と企業努力達成のために | STEEL STORY JAPAN

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以下は直近3ヶ月の動きをまとめたものである。

10月

住商、JFE製グリーン鋼材で建築102日・日経)=住友商事は東京都内でCO2排出量を実質ゼロの「グリーン鋼材」を使ったオフィスビルを25年3月に竣工させる。日本のCO2排出量の約3割を不動産業界が占める。グリーン鋼材は製鉄会社の脱炭素の研究費用が上乗せされるため、通常の鋼材よりも最大で3倍程度高い。JFEは30年までにグリーン鋼材を現在の20倍以上の年500万トンまで増産する計画だ。

建築CO2量を素早く把握 大成建設がシステム開発102日・日経)大成建設は、建材の生産時や施工時に出るCO2排出量を効率的に算出するシステムを開発した。



9月

JFEの海外投資家比率、30%に拡大・増資・CB組み合わせ 脱炭素に活用(9月29日・日経)JFEHDが海外投資家向けに実施した公募増資と新株予約権付社債(転換社債=CB)による約2040億円の資金調達手続きが28日、完了した。外国人持ち株比率は23年3月末の約24%から9月末に30%程度に拡大する見通し。今回増資で得た資金の大半は電気自動車(EV)の普及で需要が旺盛な高性能鋼材「電磁鋼板」の生産増強の投資に使う。脱炭素投資で30年度までに1兆円規模を見込むなど継続的に巨額投資が続く。

第1回日韓グリーンスチール共同セミナー開催928日。テックスレポート)=鉄鋼連盟は27日、今月21日に韓国・ソウルで「第1回日韓グリーンスチール共同セミナー」を韓国鉄鋼協会と共同開催したと発表した。泉山雅明・鉄鋼連盟地球環境委員会委員長(日本製鉄)、ビョン・ヨンマン 韓国鉄鋼協会副会長、来賓として経産省金属課松野大輔課長、韓国産業通商資源部オ・チュンジョン産業政策室鉄鋼セラミック課長をはじめ、日韓両国の政府関係者、鉄鋼企業を中心に約100名が参加した。
 セミナーでは ◆世界の脱炭素政策動向 (EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)、米EU鉄鋼・アルミニウム グローバルアレンジメント等) ◆グリーンスチールに関する国際基準・動向 ◆両国における鉄鋼業カーボンニュートラルに向けた政策・技術開発 ◆トランジション期におけるトランジションファイナンス・グリーンスチールブランドへの取り組み―――など、鉄鋼業のカーボンニュートラルに関する幅広いテーマを対象に意見交換が行われた。

 

■インドの鉄鋼大手JSWが鉄スクラップ会社を完全子会社化925日。テックスレポート)=JSWスチールは、同社とNational SteelNSHL)の合弁会社であるNSL Green Steel RecyclingNSL)を完全子会社化した。JSWは自社工場隣接地にシュレッダー施設の建設を検討。インドでは脱炭素化と資源リサイクルへの取り組みを強化しており、大手製鉄会社既存回収事業会社の買収や出資に乗り出している。

 

■川崎汽船、CO2 削減量証明書を発行925日。テックスレポート)=川崎汽船は、同社運航のスープラマックス型バルクキャリア「ALBION BAY」で舶用バイオ燃料を用い、CO2 削減認証と証明書の発行を実施した。同社は昨年7月から8月にかけJFE スチールと住友商事の協力のもとJFE スチール西日本から熱延コイルを積載、パキスタンに向けて運航していた。

 

■英リバティ・スチール、ハンガリーに電炉導入922日。テックスレポート)=英リバティ・スチールと中国冶金科工集団(MCC)の傘下のエンジニアリング会社CISDI(中冶賽迪集団)は、ハンガリーのドゥナフェール製鉄所の脱炭素化パートナーシップを締結。同社とCISDIは石炭ベースの製鉄から150トンの新電炉を設置し直接CO2排出量を約80%削減する。

*リバティ・スチールは今年7月、経営破綻したハンガリーの鉄鋼メーカーISDドゥナフェール(Dunaferr)を買収。同社はオーストラリアやチェコの各製鉄所に電炉の導入を発表。今回ハンガリーでも導入、グリーン化に注力する姿勢を示している。

 

■水素製鉄の開発支援、倍増4500億円9月16日・日経朝刊)経産省は製鉄工程でCO2排出量を5割以上減らせる「水素還元製鉄」への開発支援額を4500億円に倍増すると発表。実用化時期も当初計画の2040年代半ばから5年程度前倒しする。国内産業で最も多くCO2を出す鉄鋼業界の脱炭素化を後押しする。脱炭素技術の開発促進のために設けた総額2.7兆円の「グリーンイノベーション(GI)基金」から支出する。

日本鋳造、低CO2鋳造製品の販売開始9月13日・産業新聞)=日本鋳造は、23年度下期をめどに低CO2鋳造製品の販売を開始する。日本海事協会から第三者認証を6月末に取得した。マスバランス方式で本社・鋳鋼工場が生産し販売する。

■住友商事グローバルメタルズ、ゼロボード連携提案代理店契約を締結9月12日・日経朝刊)=住友商事グローバルメタルズ)は11日、温室効果ガス排出量算定などを手掛けるゼロボード(本社=東京都港区)とソリューションパートナーシップ契約を締結したと発表した。ゼロボードのパートナー企業としてカーボンニュートラルの取り組みを支援する。

*住友商事グローバルメタルズ(2018年1月30日)=住友商事は30日、住友商事グローバルメタルズ、住商メタレックスへの金属事業部門の一部事業の移管を決めたと発表した。住友商事グローバルメタルズは鋼板、自動車金属製品、鋼管の3営業本部体制。4月1日、住商100%出資による金属事業部門の中核事業として、資本金100億円、売上高7000億円規模、住友商事の出向者が約半数の単体人員約550人の体制で本格始動する。

中国鋼鉄工業協会、35年に電炉鋼比率30%以上目指す9月10日・産業新聞)=中国でも電炉の導入を政府が促している。中国の電炉の粗鋼生産能力は22年末に年約1.9億トン。中国鋼鉄工業協会は35年に倍の4億トン、電炉鋼比率30%以上(22年9・7%)を目標に掲げ、国有鉄鋼大手も電炉導入を計画する。

 

■世界初の水素取引市場、ドイツに来年開設9月10日・日経朝刊)ドイツでは売買仲介市場を24年に開設する。鉄鋼大手のアルセロール、金融大手など欧州の50社以上で作る企業「Hintoco」が運営する。最安値の売り手から10年間の買い取り契約を結ぶ。次に最高値を示した買い手に1年などの短期契約で販売する。当面参加者を募るため、売買差額はドイツ政府が支払う。日本は生産コストの一部を政府が支援する仕組みを検討している。

 

■トヨタ、グリーン水素製造9月9日・日経朝刊)トヨタは米国に水素製造施設「Tri-Gen(トライジェン)」を建設。1日当たり約1.2㌧の「グリーン水素」を製造する。FCVの走行のほか燃料電池*トライジェンは燃料電池発電事業を手掛ける米フュエルセル・エナジーが運営する。トヨタは同社から水素や電力を20年間購入する契約を結んだ。

 

鉄鋼、脱炭素投資 国内勢全体で10兆円9月6日・日経朝刊)=国立環境研究所の調査によると、21年度の国内産業部門のCO2排出量のうち、鉄鋼が46%を占めた。脱炭素投資でJFEは30年度までに1兆円、日本製鉄は50年度までに4兆~5兆円が必要と試算。JFE(HD)は5日、総額約2100億円の資金調達を発表。日本製鉄は21年9月、3000億円規模の転換社債=CBを発行した。業界全体で10兆円が必要とされる。中国政府は500億元(約1兆円)の基金を設け、宝武鋼鉄集団主導で研究開発を始めた。日本では政府が脱炭素事業を支援する「グリーンイノベーション(GI)基金」から約1900億円が充てられた。ただ欧州や中国の動きと比べ、見劣りする政府支援に懸念の声が上がる。

 

■大阪製鉄、省CO2型電気炉を設置9月6日・テックスレポート)=大阪製鉄は堺工場に省エネ・省CO2型電気炉「エコアークライト」(スチールプランテック社製)の設置を決めた。設置は25年度を予定。環境共創イニシアチブの「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」補助金の交付が決定しており、補助金受給後の投資総額は約87億円。

 

■日本製鉄、海の森プロジェクト9月5日・産業新聞)=日本製鉄は4日、海の森プロジェクトの23年度最初として北海道茅部郡森町でビバリーユニットの施工を行った。施肥量は30トン程度。藻場再生による海洋環境改善と地球温暖化防止に挑戦する。

 

*鉄鋼スラグを活用した藻場再生「海の森プロジェクト」(同社hp)2022/11/17 (digitalpr.jp)

日本製鉄は、鉄鋼スラグ製品「ビバリー®ユニット」(鉄鋼スラグと廃木材チップを発酵させた腐植土を原料とした鉄分施肥材)を開発し、2004年から全国38カ所の沿岸へ提供を行ってきた。このたび6つの漁業協同組合と協業して「ビバリー®ユニット」の設置試験を開始します。近年、海草(アマモ)や海藻が大きく吸収しているブルーカーボンが注目されています。

 

神戸鋼、EV向け新鋼板91日・日経朝刊)=神戸製鋼は電動車の部品に使う新たな鋼板を開発した。開発したのは磁気が流れやすい「電磁純鉄鋼板」。一般的な鋼板から炭素などの成分を減らすことで磁束密度を高めた。モーターの動力を伝える車載部品など向けの供給を想定する。電動車向け部品での正式採用を目指す。国内の鋼材需要は少子高齢化に伴い、中長期的に減少する見通し。電動車向けの鋼材需要を収益源とする考えだ。


8月

日鉄、欧州でクリーン水素鋼材を生産8月21日・日経新聞)=日本製鉄グループは9月、欧州で環境負荷の低い方法で製造した水素を使う鋼材生産に乗り出す。日鉄傘下で特殊鋼大手のオバコ(スウェーデン)が自社工場で水素製造を始め、同社のCO2排出量を1割削減する。2030年をメドに他の製鉄所にも広げ、幅広い工程での脱炭素化を急ぐ。
*オバコは日鉄子会社の山陽特殊製鋼100%出資の電炉会社。オバコはスウェーデンとフィンランドに製鉄所を持つ。全体の供給量の4割ほどを占める主力のスウェーデンの製鉄所で環境負荷の低い電力で水を電気分解して水素を製造する。今回の水素製造設備の導入により、オバコ全体のCO2排出量のうち1割の削減につながる。
*製鉄の「上工程」がエネルギー消費の大部分を占めるが、圧延など「下工程」でも全体の2割相当のエネルギーを消費する。同様の設備を日本に導入するのは難しい。日本は火力発電の比率が高く水素製造コストが高い。また製造時のCO2排出量を削減しても見かけの性能は変わらず、脱炭素化に伴うコストを適切に鋼材価格に転嫁できなければ、鉄鋼メーカー側が投資に及び腰になる可能性もある。

東京製鉄、直納店に「不適正ヤードにかかる注意喚起」8月18日・産業新聞)=東京製鉄は16日、「直納店」に対し「不適正ヤードにかかる注意喚起」と題する文書を送付した。東鉄は法令順守の観点から、法令に反した不適正な保管・操業を行うスクラップヤード「不適正ヤード」が代納店として機能しないよう直納店に要請したもの。

「日経新聞・社説」―CO2貯留の基盤整備を急げ8月17日・日経新聞)政府は今年3月にCCS活用の道筋を定めたロードマップを策定した。2050年に1.2億~2.4億トンの貯留を目標とし、重点支援する先行7事業を選定した。CCSは製鉄や化学などCO2の排出量が多く、再生可能エネルギーへの転換が難しい産業に不可欠だ。経産省によればCCSを使ってCO2を処理するコストは、水素やアンモニア燃料の利用と比べて遜色なく、場合によっては安くなる。カーボンゼロ実現へ、CCSを活用する総力戦で臨みたい。


リオティントがEVダンプ 鉄鋼業を意識し排出減8月9日・日経新聞)=英豪資源大手リオティントが2030年までに約1兆円を投じてCO2排出を半減する計画で、鉄鉱石鉱山にEVトラックや再生可能エネルギーを導入する。豪鉄鉱石大手フォーテスキュー・メタルズ・グループは、6月にピルバラ地区でEVトラックの走行試験を始めた。豪資源大手BHPグループも24年半ばにEVトラックの走行試験を実施し、27年ごろまでに本格導入を目指す。30年代半ばまでには全てのトラックのEV化をにらむ。オーストラリア政府は30年までに05年比で43%の排出量削減と、50年までの実質ゼロ達成を目指している。政府方針に加え鉄鋼業界への対応もある。鉄鋼業は世界のCO2排出量の7%を占めている。

水素還元試験炉で、CO2 排出22%削減を確認84日・テックスレポート)=日本製鉄は4日、君津の水素還元試験炉(内容積12m3)で、加熱水素を使用してCO2を削減するSuper COURSE50試験で、高炉本体CO2 排出量22%削減を確認した。同社は、213月公表の「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」で、「高炉水素還元」、「大型電炉での高級鋼製造」、「水素による還元鉄製造」を加えた、3つのカーボンニュートラルの実現を目指している。 Super COURSE50技術の開発試験は、 221NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金に採択され、日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所、一般財団法人金属系材料研究開発センターの4社で、コンソーシアムを結成し、進めている。日本製鉄ではさらに30%以上の削減を目指した試験を23年内目途に予定しており、大型高炉でのSuper COURSE50技術(CO2排出量50%以上削減)確立の早期化に取組んでいくとしている。

参考

日鉄、5年間の経営計画鹿嶋など高炉休止213月5日・日経新聞他)日本製鉄は21年35日、高炉休止などを盛り込んだ25年度までの5年間の経営計画を発表した。
▼同社はすでに公表済の小倉高炉、呉・第1,第2高炉(呉製鉄所は239月をメドに全面閉鎖)、和歌山の第1高炉(219月末)の4基に加え、鹿島第3高炉を24年度末をメドに休止する。この結果、日本製鉄の国内高炉数は15基から10基となる。
*同社の国内粗鋼生産能力規模も20%減少し5000万トンから4000万トンに減少する。

 

日本製鉄は2日、CCS2案件をJOGMECと託契約8月3日・産業新聞)=日本製鉄は2日、CCS(炭素の回収・貯留)事業の国内2案件が正式採択され、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と委託契約を結んだ。伊藤忠などと進める日本海側東北地方CCS事業、INPEXなどと進める首都圏CCS事業の2件。日鉄エンジニアリングが開発、商業運転実績もある省エネ型二酸化炭素(CO2)分離回収技術、ESCAP(エスキャップ)など基盤技術を開発しており、CCSの早期社会実装を進める。
 

7月

日本製鉄、EV電池ケース、鉄で耐熱性2倍7月31日・日経)=日本製鉄は電気自動車(EV)に搭載する鉄製のバッテリーケースを開発した。
アルミ素材が主流だが、独自の鋼材で重量を同等にし耐熱性も単純計算で2倍超に高めた。
自動車業界ではアルミで巨大な車体部品を一体鋳造成型する「ギガキャスト」が進んでおり、トヨタはを26年投入のEVに採用する方針を打ち出している。鋼材の車載部品がアルミに置き換わるため、鋼材の取引が減る恐れがある。少子化による鋼材需要の減少を受けて、製鉄会社は生産能力を縮小している。

日鉄は主要な製鉄設備である高炉を段階的に休止しており、19年度から25年度末にかけて国内の粗鋼生産能力を2割減らす計画だ。*神戸製鋼は次世代のEVモーターに使う特殊な線材を開発した。鋼板を使ったモーターと比べ2割程度軽くできる。 


日本製鉄、「NSカーボレックス・ソリューション」対象技術を110件に拡充7月28日・産業新聞)=日本製鉄は27日、社会のCO2排出量削減に寄与する高機能製品・ソリューション技術を総称するブランド「NSカーボレックス・ソリューション」(2211月創設)の対象技術を110件に拡充し、全てを専用ウェブサイトに公開したと発表した。


ISSB供給網での温暖化ガス排出量、推定値容認7月27日・日経)ISSBは国際会計基準(IFRS)を開発する国際会計基準審議会(IASB)の姉妹組織。6月下旬、重要なサステナ情報全般(S1)と気候変動(S2)で開示を求めた。スコープ3も対象とした。ISSB基準は24年から適用可能で、各国が取り込んで初めて企業に開示義務が生じる。英国やナイジェリア、ガーナ、シンガポールなどが適用する方向で検討。日本もこれをベースに開示基準を策定する。
 企業からはスコープ3の開示は難しいとの声もあがる。このためISSBは基準適用の初年度はスコープ3の開示を免除。2年目以降は「推定値の活用を認める」「大企業には多くの開示を期待するが、中小企業にはそこまで求めない」(ISSB副議長)。

現代製鉄、既存電気炉をHBI活用のため改造7月27日・産業新聞)=現代製鉄は26日、25年までに既存電気炉をホット・ブリケット・アイアン(HBI)大量活用のため改造する。高炉法と組み合わせ、従来比20%低炭素化した鋼板を年間400万トン生産する計画。

素材、CO2排出「見える化」 鋼材などで広がる7月26日・日経)鉄鋼などの産業素材について、メーカーが品目ごとに環境負荷の大きさを「見える化」する動きが広がっている。原料調達から生産、リサイクルに至るライフサイクルで発生する二酸化炭素(CO2)量などを、「エコリーフ」と呼ばれる環境ラベルの認証を得た上で開示する。
 エコリーフは製品ごとの環境情報の信頼性を担保しながら開示する仕組み。日本製鉄は19年にH形鋼で初めて認証を取得。薄鋼板や鋼管など40製品超まで広げた。
  建設関連では大手ゼネコンが、建物自体が環境に与える影響を評価する米国の「LEED(リード)認証」の取得を進めている。エコリーフなどEPD認証を受けた建設用鋼材を一定数使うとLEED認証の取得に有利に働くという。

産業用素材のエコリーフ認証取得の拡大については、需要先の企業の脱炭素の動きも影響を与えている。CO2排出について、自社で使った化石燃料や電力(スコープ12)だけでなく、原料となる素材の生産(スコープ3)などサプライチェーン(供給網)まで広げて把握する動きが広がる。認証を通じて公開されるデータが必要となっている。
鋼材では日鉄のほかJFEスチールなどもエコリーフ認証取得を進める。日鉄ではサントリー食品インターナショナルが22年夏に発売した缶コーヒー飲料の容器にエコリーフ認証のブリキ製品が採用された際、缶の表面に専用マークを施した。

アルセロール、自動車部品大手と資源循環協定7月25日・産業新聞)=アルセロールは21日、自動車部品大手のゲシュタンプと資源循環協定を結んだ。自動車生産過程のスクラップリサイクルを共同で構築する。自動車分野の低炭素鋼利用拡大に取り組む。

港湾の脱炭素で認証7月24日・日経 )国交省は港湾の脱炭素化を巡り、管理者らの取り組みを評価する認証制度を創設する。積み荷の揚げ降ろしや船舶への燃料供給に関する整備状況を評価し、レベル分けし認証する。23年度中に試験運用を始める。国内に全125カ所ある主要港湾のうち、60カ所超が脱炭素化の事業計画策定に取り組む。

 

■JFEスチール、低炭素還元鉄のサプライチェーン確立に向け協業体制(7月18日・テックスレポート)=JFEスチールは18日、伊藤忠商事、アラブ首長国連邦(UAE)鉄鋼最大手のEmirates Steel Arkan(エミレーツ・スチール」)とAbu Dhabi Ports Group(「ADPG」)と共に、低炭素還元鉄のサプライチェーン確立に向けた協業体制の構築に関する4社間の覚書の交換を行った。

■欧州委員会、CBAM規則の移行措置として含有排出量報告義務を求める718日・テックスレポート)=欧州委員会は26年から炭素国境調整メカニズム(CBAMCarbon border adjustment mechanism)規則の本格適用開始を前に23101日から移行措置として輸入品には含有排出量(直接・間接)を四半期ごとに報告義務を求める。

CBAM規則の概要(日本鉄鋼連盟調べ)

1.措置の概要=EU域外から対象品を輸入する際、輸入品の含有排出量に応じたEU-ETSEuropeanUnion Emission Trading Scheme)の炭素価格の支払い(原産国で支払った炭素価格とEU-ETS無償枠分に炭素価格を差引いて調整したもの)を輸入者に義務づける。

2.対象品目。・対象域外(第三国)を原産地とする鉄鋼、アルミ、肥料、セメント、電力、水素。・鉄鋼の対象品目は、凝結させた鉄鉱石、銑鉄、フェロクロム、フェロニッケル、DRI、鋼塊・半製品、条鋼類、鋼板類、鋼管類、二次製品(鋼管継手、鉄鋼製の構造物およびその部分品、鉄鋼製のタンク、ガス用鉄鋼製容器、鉄鋼製のねじ・ボルト・ナット他、など)。
150ユーロ以下の物品」、軍事用途の物品は対象外。・移行期間(23101日~251231日)終了前に、欧州委員会は対象評価拡大を評価。

3.除外対象の国・地域=・アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス、加盟国飛び地(ヒュージンゲン、ヘルゴランド、リヴィーニョ、セウタ、メリリャ)。

EU-ETSが適用される国・地域、EUETSと当該EU域外・地域の排出権取引制度を完全に結びつける協定が締結されている国・地域。

4.EUETS無償枠との関係(EUETS指令改正)=・CBAMの本格導入期間開始となる26年から、EUETSの無償枠が以下のスケジュールで削減されることがEUETSS指令改正に関するトリローグ(欧州委員会、欧州議会、閣僚理事会の三者会合)で合意された。・2025年までに、欧州委員会は、EU域外への輸出を目的としたEU域内生産品の炭素リンケージのリスクを評価し、必要であれば、このリスクに対処するためのWTOに準拠した立法案を提示する。

→これを受け、かねてから輸出に対する措置を求めていた欧州の産業界からは輸出品に対する無償枠の維持を求める声が挙がっている。

 

日本鉄鋼連盟、CBAMに関するパブコメを提出(同上)=日本鉄鋼連盟は13日、CBAM規則の移行期報告義務実施規則案に関するパブコメを欧州委員会に提出した。
記者会見した鉄連の地球環境委員会の手塚宏之副委員長(JFEスチール専門主監)は、次の4点を問題点として挙げた。

<1>WTOルールとの整合性を確保すべき、<2>CBAMの報告手続きの負担は制度目的(リンケージ防止)に照らし、最小限にすべき、<3>実施法ドラフトにおける不明点・詳細を早急に明らかにすべき、<4>「原産国での支払い済み炭素価格」について各国制度を尊重すべき―――などとしている。

 

USスチール、主要3製品に環境製品宣言(7月14日・テックスレポート)=米国のUSスチールは13日、ビッグリバースチール(*)で生産された熱間圧延、冷間圧延、耐腐食性鋼板を含む主要3製品に環境製品宣言(*EPD)を発表した。情報開示は5年間有効で、顧客はライフサイクルに与える影響や排出に関する客観的な情報を得ることができる。

*EPDは米国材料試験協会が認証・監査しており、地球温暖化の可能性、スモッグ発生、水使用量―――など、環境影響に包括的な情報で提供する。

*ビッグリバースチールは米国アーカンソー州オセオラで操業する電炉圧延会社で、年産能力は330万㌧。20211月にUSスチールが買収した。

■東鉄、リサイクル鋼材は大阪・万博パピヨンに採用(7月12日・テックスレポート)=東鉄は12日、大阪・関西万博のパナソニックグループのパビリオンに、同社の鋼材が採用されると発表した。東鉄は13年から、パナソニックグループと家電リサイクル工場と「資源循環スキーム」を構築しており、今回のパビリオン建設鋼材約118トンの約82%、主な柱・梁の約98%に当たる 97.1 トンにリサイクル鋼材を用いる。万博期間終了後には再び鉄スクラップとして東鉄に戻り、パナソニックグループの製品などの原料として使用される。

 

■国際海運の温暖化ガス排出 50年実質ゼロ(7月12日・日経)=国交省は11日、国際的に往来する船舶から出る温暖化ガスを50年までに実質ゼロ目標について世界各国が合意と発表した。国連の専門機関、国際海事機関(IMO)の会合でまとめた。

■トヨタ、水素燃料電池「30年に10万台外販」(7月11日・夕・日経)トヨタは11日、水素燃料電池を30年に年間10万台を供給との見通しを示した。欧米や中国を中心に水素市場の拡大が見込まれる。内訳は小型商用車・乗用車が5割強、大型トラックが3割強。

 

■日鉄、液体水素に強い鋼材(7月11日・日経)日本製鉄は液化水素に触れても損傷しにくい性質を持つ新たな鋼材を開発した。水素が運搬しやすくなるため、水素ステーション向け需要を取り込みたい考え。開発した鋼材は、クロムを添加した「ステンレス鋼」の一種。一般的な鋼材は水素を吸収するともろくなる性質を持つ。脱炭素化には業界全体で50年までに10兆円規模の投資が必要になるとの試算もある。莫大な脱炭素投資に備えるためにも成長市場向けの製品開発を進め、稼ぐ力を一層高めていくことが課題となっている。

 

■独鉄鋼ティッセン、水素製造の子会社上場(7月8日・夕・日経)=ティッセン・クルップは7日、グリーン水素製造を手がける子会社、ニューセラがフランクフルト証券取引所に新規上場と発表した。サウジアラビアの政府系ファンドや仏BNPパリバのファンドなどが引き受け手となった。ニューセラは水素製造プラント約600基をすでに受注している。

■中国、「双炭」が加速(7月6日・産業新聞)=中国がカーボンピークアウトとカーボンニュートラルを目指す2つ「双炭」を示す中、鉄鋼大手は脱炭素化を加速している。6月中旬に上海市で開催された「23年国際冶金工業展覧会」で、鉄鋼大手が水素を還元剤とした直接還元鉄プロジェクトや再生可能エネルギー活用事例を紹介した。

 

 ■トヨタ、EVで生産改革 工程や工場投資を半減(7月5日・日経)トヨタは4日、新たな生産技術「ギガキャスト」を電気自動車(EV)に採用。生産工程や工場投資を2分の1に減らす。ギガキャストはアルミ鋳造設備で一体成型した車体部品を製造し、部品点数と生産工程を大幅に減らせる。

*国内サプライチェーン、迫られる構造転換ギガキャストの採用でトヨタは177個の鋼板のプレス部品をわずか2個の部品に置き換える。素材メーカーにも影響が及ぶ。車の素材の中心が鉄からアルミに変化するからだ。鉄鋼メーカー幹部も「採用動向を注視する」と警戒する。日本は薄くて強度の大きな高張力鋼板(ハイテン)の技術に優れる。アルミ比率が高まれば鉄鋼メーカーへの影響は大きい。EVになると部品点数が3割程度減る。内燃機関や燃料供給装置、変速機など多数の部品が必要なくなる。

神戸製鋼、自動車用特殊鋼線「Kobenable Steel」初採用(7月4日・テックスレポート)=神戸製鋼は4日、同社の低CO2高炉鋼材『Kobenable Steel』が、自動車用特殊鋼線材で初めて採用されたと発表した。

 マスバランス方式により鋼材製造工程でのCO2排出量を100%削減した『Kobenable Steel』には、トン当たりのCO2排出量の削減率が100%の『Kobenable Premier』と同50%の『Kobenable Half』の2種類があり、今回は後者となる。



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■三菱商事、グリーン水素の新会社(6月30日・日経)三菱商事は事業子会社のオランダの再生エネ大手エネコと合弁会社「エネコ・ダイヤモンド・ハイドロジェン」を設立した。三菱商事とエネコが50%ずつ出資。グリーン水素の製造や販売に力を入れる。具体的な生産規模や販売時期は明らかにしていない。EU30年までにグリーン水素の域内の生産能力と、域外からの輸入量をそれぞれ年間1000万トンにする方針を明らかにしている。三菱商事は欧州で、代替燃料やグリーン水素の事業に力を入れる。


■真相深層・鉄鋼の脱炭素、電炉転換には限界(6月28日・日経)
20年度に国内で排出された産業部門のCO2の約4割を鉄鋼業が占める。高炉製法を抜本的に見直す脱炭素戦略は「これまで作り上げてきた高効率システムをいったん壊すことを意味する」(JFE)。日鉄は5月、八幡と広畑で電気炉設置の本格検討に入った。30年までの建設を目指す。JFEは倉敷で2730年に改修時期を迎える高炉を電炉に転換する。だが、電炉だけで鉄鋼を作ろうとすれば鉄スクラップが世界全体で足らなくなる。CO2排出を抑えながら、原料をいかに確保するか。ひとつのアプローチが「還元鉄」利用。JFE2526年をメドに還元鉄の製造に乗り出す。天然ガス資源が豊富なアラブ首長国連邦で製造、輸入する。ここにも課題はある。還元鉄製造には高品位鉄鉱石はしか使えず、その産出量のわずかしかない。低品位鉄鉱石を使える工夫が求められる。

コスト低減必要=日鉄、JFEともに高炉は残す計画だ。そこで始めた技術開発が「水素(還元)製鉄」だ。水素を使うと「吸熱反応」(炭素の場合は発熱反応)が起き、炉内温度が低下する。「加熱エネルギーをどう供給するのかは大きな課題だ」(日本製鉄)。*水素製鉄は水素の確保なくして成り立たない。政府は30年に水素生産コストを130円、50年には20円以下に引き下げたい考えだ。鉄鋼大手は現製法のコストに見合うには8円前後の価格が必要という。

 

■船舶、全て「グリーン鋼材」で JFE(6月21日・日経)JFEスチールは20日、日本郵船系などの海運会社が建造予定の貨物船で、全て二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロとみなす「グリーン鋼材」を使うことが決まったと発表した。グリーン鋼材だけで船舶を建造する取り組みは世界初という。グリーン鋼材はCO2の削減分を特定の鋼材に割り当て、製造過程でその鋼材のCO2排出量を大幅に削減したとみなす仕組み。CO2削減にかかるコストが上乗せされるため価格が高く、採用が広がるか不透明だった。今回の販売価格は通常の鋼材と比べて4割ほど高い。JFEは運賃の引き上げを受け入れる前提で、グリーン鋼材で建造された貨物船で自社の鋼材の運搬をしてもらうようにした。

 

■JFE製鉄所からCO2回収検討(6月20日・日経)JFEスチールは19日、石油資源開発や日揮ホールディングス、川崎汽船と共同で、「CCS」の実現に向けた検討を始めると発表。JFEの国内製鉄所から出るCO2を回収し、マレーシアに運搬・貯留することを想定する。

 

■アルセロール・ミッタル、CCUに成功(6月15日・産業新聞)=ミッタルは14日、炭素の回収・利用技術を持つランザテックとベルギーのゲントで進めているCCUが成功と発表。2億ユーロ(302億円)をかけて炭素を回収、エタノールに変換する商業生産を開始した。

 

エネルギーの基礎用語~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」 (meti.go.jp)

「CCS」とは=「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれます。発電所や化学工場などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入する(埋め殺しする)というもの。

「CCUS」とは=「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、分離・貯留したCO2を利用しようというものです。たとえば米国では、CO2を古い油田に注入することで、油田に残った原油を圧力で押し出しつつ、CO2を地中に貯留するというCCUSがおこなわれており、CO2削減が実現できるほか、石油の増産にもつながるビジネスになっています。

 

■経産省、CCS に7事業選定(6月14日・日経)経産省と独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は13日、CO2を回収して地下に貯留する技術(CCS)について、国内外の計7プロジェクトを重点支援すると発表。電力、石油元売り、商社、製鉄の大手などが含まれる。国内の貯留エリアは苫小牧地域、日本海側の東北地方、東新潟地域、首都圏、九州北部沖や西部沖の5カ所。海外はマレーシアとオセアニア地域を輸送先とする2カ所を選んだ。日本製鉄が国内外で実施する3案件が入った。政府は7事業で年1300万㌧分が貯留できるとみている。

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日本製鉄、海外でCO2地下貯留23年1月25日・日経)=日鉄とエクソンのシンガポール子会社、三菱商事の3社が125日、地下貯留「CCS」の実現に向けた覚書(MOU)を結び、プロジェクトの検討に入る。鉄鋼業界からの排出量は国内全体の1割強を占める。日鉄は脱炭素の取り組みを加速させ、国際競争力維持を狙う。日鉄が国内に持つ製鉄所から排出されるCO2を分離・回収し、エクソンが参画するオーストラリアやマレーシア、インドネシアなど海外のCCS施設で貯留することを想定する。三菱商事は液化したCO2を専用運搬船で運搬するなど供給網構築を担う。エクソンは脱石油に向けて近年、CCSへの投資を拡大している。三菱商事が仲介することで、脱炭素を進めたい日鉄とCCSに注力するエクソンが結びついた。

H2グリーンスチール、ベンツ社とグリーンスチール供給契約612日・テックスレポート)=メルセデス・ベンツ社とH2グリーンスチール社は7日、メルセデス・ベンツ社の欧州生産拠点に年間約5万㌧のグリーンスチールを供給する契約を締結したと発表した。また両社は北米で生産されるグリーンスチールの供給に関する覚書にも調印した。この契約で供給する鋼材5万㌧は、スウェーデン北部のボーデンにあるH2グリーンスチール社の水素を利用した鉄鋼工場で生産される。今回の契約によって欧州の製造工場向けに脱炭素と地域密着の鋼材サプライチェーンを構築し、鉄スクラップのクローズド・ループ・リサイクルの確立と北米での持続可能な鉄鋼サプライチェーンの構築も目指す。

 

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H2グリーンスチール社向け直接還元鉄プラントの新規受注 ならびに同社出資について(22年1012日・神戸製鋼hp)=当社の米国100%子会社であるMidrex(ミドレックス社)と、ライセンス供与先であるルクセンブルグのエンジニアリング会社Paul Wurth S.A.のコンソーシアムは、H2グリーンスチール社向けに、MIDREX H2™直接還元鉄プラントを受注した。今回受注したプラントは世界初の100%水素直接還元鉄プラント商業機(年産能力は210万トンで25年の稼働開始予定)。また当社はH2グリーンスチール社への出資を決定するとともに、グリーンHBI(※2購入に向けた協議を開始した。

 

H2グリーンスチール社とは=鉄鋼業界の脱炭素化を目標に2020年にスウェーデンに設立された。再生可能エネルギーを用いた水電気分解により製造した水素を還元剤としてHot DRIおよびHBIを製造、Hot DRIは電気炉工程を経てグリーン鋼材として供給する。

 

Hot DRIとは=Direct Reduced Iron(還元鉄)の略。鉄鉱石を還元した鉄鋼原料。炉内で還元したDRIを、冷却せずに炉から排出したものを、Hot DRIHDRI)、冷却したものをCold DRICDRI)という。不純物の少ない清浄鉄源であり、高級スクラップや銑鉄の代替品として、電気炉で(近年は高炉や転炉でも)鉄源として使用される。

 

■POSCO、光陽製鉄所にコンスチール式280トン電気炉を導入69日・テックスレポート)=POSCOは高炉-転炉法から一部で電気炉をベースとした転換を進めているが、この一環で同社はイタリア・テノバ社のConsteel®(コンスチール®)電気炉を光陽製鉄所に導入する。テノバ社が7日明らかにした。25年末までに生産を開始する計画。
今回、テノバ社が受注した電気炉は280トンの溶鋼を処理できるフルプラットフォームEAFに、連続鉄スクラップ投入システムConsteel®と電磁撹拌システムConsterrer®を搭載した設計になっているという。

 

POSCO、低炭素鋼材を発売65日・産業新聞)=POSCOは4日、低炭素鋼材のグリーネート製品を発売した。自社プロセスの炭素排出削減量をマスバランス方式で配分。製品はLG電子向けに納入する。昨年1―8月に前年同期比で削減したCO2排出量59万トンを源に、低炭素ブランド鋼材を20―30万トン販売する。

 

ニューコア、炭素貯留でエクソンと合意65日・産業新聞)=ニューコアは1日、直接還元鉄(DRI)工場から発生する炭素の回収・貯留(CCS)でエクソンモービルと合意したと発表した。DRI発生CO2年間80万トンをエクソン施設で貯留する。

 

東京製鉄、パナソニック、イオンリテールの3社、乾電池リサイクルの実証実験を開始62日・テックスレポート)=東京製鉄、パナソニック、イオンリテールの3社は2日、使用済み乾電池の回収とリサイクルを目的とした実証実験を開始した。東京都・大阪府・京都府・奈良県内のイオン22店舗で回収した後、東鉄岡山工場でリサイクルする。 

 

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■鋼材も「CO2排出ゼロ」530日・日経)=鉄鋼メーカーが「グリーン鋼材」を市場に投入している。排出削減効果を特定製品に割り当てる「マスバランス方式」などを生かした製品だ。先駆けとなったのは神戸製鋼のコベナブルスチールだ。日産の量産車に薄鋼板が採用され、三菱地所が手がける東京・豊洲の大型開発への使用も決まった。日本製鉄やJFEも23年度上期中にグリーン鋼材の発売を予定する。両社は電炉の利用を広げ、CO2排出削減効果をマスバランス方式で活用する。東京製鉄も大成建設と組んでCO2排出ゼロの建設用鋼材の生産に乗り出した。調達電力を再生可能エネルギー由来に切り替え、8割の排出を減らす。残りの2割は大成建設が植林などで減らしたCO2排出量と相殺する。

*普及の壁は価格だ=コベナブルスチールは「一般に通常の鋼材の23倍」(同社)。まず原料の還元鉄が割高だ。還元鉄を使った製法の排出削減効果は2割のため、排出ゼロの鋼材を1トン得るには、同製法で5トン分の鉄を作る必要がある。

*東鉄のグリーン鋼材は=当初想定で価格が3割程度上がると見ていた。ただ「コスト構造の精査が必要で、価格はさらに検討が必要」(同社)。グリーン鋼材の潜在需要が確認された今、価格面の最適解を探る段階に入ったといえそうだ。

*コベナブルスチールとは=神鋼は鉄鉱石の一部を還元鉄に替え、CO2排出を2割減らす手法を確立し、削減効果をマスバランス方式(注)で集約させたのがコベナブルスチールだ。実質排出ゼロの鋼材と、半減させた鋼材を展開する。

注:「マスバランス方式」とは=製品の製造工程において、ある特性を持った原料とそうでない原料とが混在するとき、特性を持った原料の投入量に応じて、製品の一部に対してその特性を割り当てる方法。例えば、CO2の排出量を20%削減した鉄を5t生産した場合、マスバランス方式を使うことで、5t分のCO2削減量を1tの鉄に集め、CO2100%20%×5)削減した鉄として考えることができる。ただしこのとき、残り4tの鉄のCO2削減量は0%になる。この方法を使うことで、現状では生産できないような二酸化炭素の排出を伴わない「カーボンフリースチール」の生産が可能となる。参考出所: (ecology-plan.co.jp)

 

豪鉄鋼大手、ニュージーランドに電炉を新設(5月23日・産業新聞)=豪鉄鋼大手のブルースコープは22日、ニュージーランド政府と共同で電炉を新設する。26年稼働を目指す。

 

神戸製鋼・加古川、高炉から電炉体制の切り替えを検討(5月19日・産業新聞)=神戸製鋼は18日、中期経営計画(2123年度)説明会を開き、山口貢社長は「加古川製鉄所の高炉の改修時期を30年半ば頃に迎え、電炉への切り替えは重要な選択肢と考えている」と高炉から電炉への転換含め複線的なアプローチの具体的な検討を進めていると説明した。

 

日本製鉄、高炉プロセスから電炉プロセスへの転換に向けた本格検討を開始510日・同社hp)=日本製鉄は、八幡および広畑を候補地とした高炉プロセスから電炉プロセスへの転換の検討を始めると公表した。Hpによれば同社は21  3 月「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン 2050」で「高炉水素還元」「水素による還元鉄製造」「大型電炉で高級鋼製造」の実現を目指す。

*「高炉水素還元」は、22  5 月から君津で試験高炉(12㎡3)試験に着手。また同じ君津で稼働中の大型高炉実機(4,500㎡3)で実証試験を 26  1 月から開始。

*「水素還元鉄製造」は、技術開発本部波崎研究開発センターに、小型シャフト炉を設置し、水素で低品位鉄鉱石を還元する試験を25 年度から行う。

*「大型電炉での高級鋼製造」は、22  10 月から広畑に新設した電炉操業に動いた。また技術開発本部波崎研究開発センターに、小型電気炉(10 ㌧)を設置し、24 年度から試験を予定している。20230510_400.pdf (nipponsteel.com)

 

中国・宝鋼とサウジアラムコ、サウジに鋼板生産拠点(5月9日・日経宝山鋼鉄は、サウジアラビア国営石油会社のサウジアラムコなどと鋼板生産の合弁会社を設立すると発表。サウジに生産拠点を設け、2026年末にも稼働を始める。宝鋼が50%、アラムコと政府系ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)がそれぞれ25%出資する。鋼板の年間生産能力は150万トンの予定。天然ガスなどを使い、一般的な高炉と比べて二酸化炭素(CO2)排出量を60%以上減らせる設備を導入する。

 

EV電池のCO2排出開示 経産省、来年度から(5月9日・日経)=経産省は蓄電池の製造時などに出るCO2排出量を算定・開示するよう求める(EU24年から排出量公表を義務付ける予定)。経産省が排出量開示を進めるのは、原材料の調達から廃棄・リサイクルまでのCO2総排出量を示す「カーボンフットプリント(CFP)」の考え方が重視されるようになったからだ。経産省は24年度からEVなどの「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」の支給に同要件を加える検討を始めた。「CFPの導入が遅れれば、日本の自動車メーカーが市場でより後れを取ってしまう可能性がある」(早稲田大学の所千晴教授)

 

JFEスチール千葉に電気炉を導入58日・同社hp)=JFEスチールは8日、千葉第4製鋼工場にアーク式電気炉を導入と発表。同工場ではステンレス鋼を製造、高炉の溶銑、自家発生スクラップ主な原料としている。スクラップ溶解能力は年間約30万㌧と従来比約6倍に高まりCO2排出量削減を最大で年間約45万㌧と見込んでいる。

 

JFEスチール、上期から「JGreeX™」を供給58日・同社hp)=JFEスチールは8日、CO2排出量を大幅に削減した「JGreeX™(ジェイグリークス)」の供給を23 年度上期から開始と発表した。 「JGreeX™」は、同社のCO2排出削減技術により創出した削減量を、「マスバランス方式」を適用して特定の鋼材に割り当てることで、鉄鋼製造プロセスにおけるCO2排出量を大幅に削減した鉄鋼製品。

 

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鋳造品、CO2実質ゼロ416・日経)=JFEスチール系の日本鋳造は太陽光発電や非化石電力などを組み合わせ、CO2実質ゼロの鋳物を実現する。製造工程で使用するガスを都市ガスから水素系のガスに変えた。電気炉も、消費電力量が少ない方式に置き換えた。

 

■神戸製鋼と三井物産、鉄鋼原料製造を検討 世界最大規模(4月11・日経) =神戸製鋼三井物産10日、オマーンで「直接還元鉄」製造の検討に入ったと発表した。世界最大規模の年間500万トンを想定し27年生産を目指す。神戸製鋼の米子会社ミドレックスが手掛ける直接還元鉄プラントの建設を検討する。1年ほどで事業化を判断する。製造プラントは天然ガスを使う。将来は再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」を活用し、CO2排出量をさらに抑えた還元鉄をつくることも視野に入れる。

JFEスチールも伊藤忠商事と組んでアラブ首長国連邦での生産を検討しているほか、日本製鉄も製造事業化を目指す方針を示している。日本では安価に天然ガスやグリーン水素を大量調達するのが難しく直接還元鉄プラントを普及させるには時間がかかるとみられる。

 

東京製鉄、ゼロカーボンビル建設へ410・日経)=東京製鉄は7日、大成建設と連携しCO2排出量を正味ゼロにするゼロカーボンビルの建設を推進するため鋼材製造から解体・回収までの資源循環サイクル「ゼロカーボンスチール・イニアティブ」を始動したと発表した。電炉鋼材を「T―ニアゼロスチール」と位置付けている。Microsoft Word - (20230404)大成建設リリース文案rev6.doc (tokyosteel.co.jp)


*本イニシアティブでの大成建設との取り組みは以下の通り

電炉鋼材を用いて以下のプロセスで製造時の CO2 排出量を削減。

①柱・大梁を含む構造骨組に用いる鋼材のほとんどを電炉鋼材で製造

② 高炉鋼材に比べ CO2 排出量は 0.5tCO2/鉄 t に削減。(全体累計で 75%削減)

③ 本イニシアティブにより、第一段階で鋼材生産プロセスに用いる電力を当社が再エネ電力等で代替し、低炭素型電炉鋼(「T-ニアゼロスチール」)を製造

④ CO2 排出量は 0.1tCO2/鉄 t に削減。(全体累計で 95%削減)

⑤ 5%の CO2 排出量削減に向けて、当社と大成建設が連携して鋼材生産プロセスの脱炭素化に向けた設備投資や省エネルギー活動、CO2 削減・除去への貢献活動等を実施する

 

■水素、40年に供給6(4月5日・日経)=政府は4日、次世代脱炭素燃料として水素導入案を公表した。40年に現状の6倍の1200万トン程度に増やす。今後15年間に官民で15兆円の投資計画を検討する。*30年目標・水素価格3分の1いま水素供給価格は1㎥あたり100円で、既存燃料の最大12倍相当する。(この)価格差を縮めるよう政府が補助する。30年に価格を3分の1に引き下げ普及につなげる。日鉄やJFEは試験炉を建設し2425年度に試験を始める段階だ。50年までの導入を目指すが、水素製鉄を含めた鉄鋼業界全体の脱炭素化には10兆円規模の投資が必要になる。

 

CO2排出量あたりの稼ぐ力 鉄鋼3社沈む4月3・日経)=CO2など温暖化ガス排出を抑えながら稼げる企業はどこか。東証上場の鉄鋼・化学業種のうち、時価総額上位50社を算出対象とした。化石燃料を多く使う鉄鋼・化学の2業種はCO2排出量が産業全体の5割以上に上る。鉄鋼大手3社は上位30社に入らない。使用済み鉄スクラップを再生する電炉メーカーは高炉メーカーよりCO2排出量あたりで稼ぐ力が相対的に高い。企業のCO2排出に金銭的負担を求める「カーボンプライシング」の導入も控え、今後、供給網全体を対象とする排出量「スコープ3」への対応が求められ、開示も広がる公算が大きい。

*スコープ3とは=企業の事業活動による温暖化ガス排出量の範囲は大きく3つに分類される。世界的な脱炭素の流れで注目されるのが「スコープ3」だ。サプライチェーン(供給網)全体を対象とし、調達する原材料や製品の使用時、廃棄時などの排出も含まれる。

 

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脱炭素と金融(上)移行金融、電力や鉄鋼、債券発行や融資で「つなぎ役」の投資後押し3月1日・日経国際決済銀行(BIS)は脱炭素化により、経済価値を失う座礁資産が最大18兆ドルとはじく。そうした資産を担保とする銀行にとっては融資返済が滞りかねない事態に直面する。環境負荷の高い産業が事業縮小を迫られることで邦銀には50年までに7兆円程度の与信コストが発生するという。電力や鉄鋼、運輸、化学といった排出量の多い企業は資金調達しづらい課題があった。そこで浸透しつつあるのが移行金融だ。温暖化ガスの排出量をゼロにする技術が実用化されるまでの「つなぎ」の資金供給といえる。