はじめに
この資料はカーボンニュートラルの動きを、報道記事を参考に「まとめ」・編集した。
過去の「まとめ」は以下の通り
*23年10月「カーボンニュートラル」と鉄スクラップビジネスを考える |
*23年4月時系列でみるカーボンニュートラルの動き |
*23年3月高炉各社のカーボンニュートラルの取り組み(概説) |
*22年12月「カーボンニュートラル」と鉄スクラップビジネスを考える |
*21年10月26日温暖化防止とゼロカーボン・スチールへの挑戦(「日本鉄スクラップ 鉄鋼と業者140年史」・第二部第七章の「ゼロカーボン社会と鉄スクラップ業の将来」より) |
*21年10月25日カーボンゼロ目標と企業努力達成のために | STEEL STORY JAPAN
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以下は直近6ヶ月の動きをまとめたものである。
2024年
11月
■「グリーン鉄」使った製品、国が優先調達へ(11月27日)=環境省は25年1月をめどにグリーン購入法の対象を定めた基本方針を改定する。地方自治体にも努力義務が課される。各省庁や自治体は購入実績も開示する。国や地方自治体は25年度の契約から、製造時に排出する温暖化ガスを減らしたグリーンスチールを用いた製品を優先して調達する。今回の追加は24年6月までに日本鉄鋼連盟からの要望を受けて検討が進んだ。
■温暖化ガス排出削減「60%」に 35年度目標(11月24日)=政府は温暖化ガスの排出削減目標に関し35年度に13年度比で60%減とする調整に入った。新目標は25年2月までに国連に提出する。現在の目標は30年度に13年度比で46%減。35年度の新目標は、国際公約である50年の実質排出ゼロに向けて現行の削減ペースを持続させることを意味する。
■排出量10万トンから取引義務・電力や鉄鋼、300~400社対象(11月20日)=政府は26年度に本格運用を始める排出量取引にCO2が年間10万トン以上の企業に参加を義務づける。電力や鉄鋼をはじめ300~400社が対象となる見込み。排出量取引は炭素に値段をつける「カーボンプライシング」の手法の一つだ。政府はカーボンプライシングを10年間で20兆円発行するGX経済移行債の償還財源と見込む。排出量取引は当初は企業に無償で排出枠を割り当てる。
■〈トランプ2.0 ビジネス大転換〉素材、脱炭素停滞に懸念(11月20日)=トランプ次期大統領が地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を示唆するなど、新政権移行で脱炭素の停滞が懸念されている。環境関連ビジネスを推進するバイデン政権のインフレ抑制法(IRA)に対応し投資を積極化していた日本企業も事業戦略を再考する必要が出てきそうだ。一方、トランプ氏の化石燃料重視の方針がプラスに作用するケースもありそうだ。バイデン政権は石油・ガス開発を規制し液化天然ガス(LNG)の輸出許可の審査も凍結したが、トランプ次期政権では天然資源開発の強化へ方針が転換される見通しだ。デロイトの浜崎氏は「米国内の増産や輸出認可の凍結解除が実現すれば天然ガスの価格は世界で下がる公算が大きい」と話す。東京ガスなど米国内でシェール事業を展開する企業や権益取得を模索する電力大手の事業機会も広がりそうだ。新規の石油・ガス開発が活発になればプラント大手にも追い風。ただ、関税引き上げがネックになるとの声も上がる。
■関電、豪の水素製造撤退(11月16日)=関電が丸紅などとオーストラリアで計画していた水素製造事業から撤退する。製造コストが想定以上に高く、採算に合わないと判断した。
■COP29、脱炭素機運向上乏しく 首脳級会合閉幕へ(11月14日)=英国のスターマー首相は12日、「35年までに温暖化ガス排出を1990年比で81%削減する」と述べた。従来目標は78%減だった。主要7カ国(G7)では唯一の発表となった。
■タイにCO2排出量取引所(11月13日)=タイ証券取引所(SET)は2025年にも二酸化炭素(CO2)排出の削減量を売買する取引所を立ち上げる。上場企業が利用できるCO2排出量算出ツールの開発にも着手した。タイでCO2の削減が進まないなか、取引価格の透明性を高めるなどして利用を促していく方針だ。
■世界の気温上昇1.5度超え(11月12日・夕)=世界気象機関(WMO)は11日、24年1~9月の世界平均気温を巡り、産業革命前と同程度の1850~1900年の推定平均気温と比べて上昇幅が1.54度を超え、今年の平均気温は観測史上最も高くなる見込みだとの分析を発表した。
■11日 国連気候変動会議COP29開幕(11月10日)=会議の柱は大きく2つある。一つは先進国などから途上国への支援の拡大。もう一つは35年の温暖化ガス削減目標が「野心的」なものになる流れをつくることだ。米大統領選でトランプ前大統領が勝利したことが、資金支援などの合意を困難にする可能性もある。日本を含め多くの国が首脳の出席を見送る。*パリ協定のもと世界は50年に温暖化ガス排出を実質ゼロにしようとしている。
■米大統領にトランプ氏(11月7日)=米大統領選は6日トランプ前大統領(78)の当選が確実になった。米大統領が再選に失敗した後に返り咲くのは132年ぶり、2人目。
*脱炭素投資、後ろ向き=バイデン政権は22年に「インフレ抑制法(IRA)」を成立させた。脱炭素投資を進める狙いで、日本企業も米国への投資を打ち出していた。トランプ氏はIRAを縮小する方針。代わって石油や天然ガスなど化石燃料の開発を進める考えだ。トランプ氏は「パリ協定」から脱退する姿勢を示す。世界全体の脱炭素ペースが遅れかねない。米国内の「自動車産業の復活」を重視し、メキシコで生産して米国に輸入される自動車には「100%の関税を課す」とも述べていた。日本製鉄のUSスチール買収計画にも影響が及ぶ可能性がある。
10月
■一目均衡:グリーン金属じわり台頭(10月22日)=経済産業省はGX(グリーントランスフォーメーション)を推進する目的でグリーン鉄研究会を設置し、16日に初会合を開いた。高炉大手は大型電炉の建設に動く段階で、「水素製鉄」はさらにその先になる。現在のグリーン鋼材はCO2排出量を積み上げ、実質排出ゼロとする「マスバランス方式」が主流。東京製鉄は鉄スクラップを原料に使うグリーン鋼材「ほぼゼロ」の受注を始めた。同社は使用電気が化石燃料由来ではないことを示す「非化石証書」を購入、製造時の実質排出量をさらに減らした。東鉄のグリーン鋼材は非化石証書購入の手数料など1トン6000円を上乗せし販売する。高炉大手が取り組むマスバランス方式鋼材では「プラスいくら」との価格は打ち出していない。各社は「高くても環境価値があるものを選択する施策も」との考えで、政府に対応を求めている。
■タタ、英工場に電炉を発注(10月22日・産業新聞)=タタ製鉄欧州は18日、英ポートタルボット工場に年産300万トンの電炉と先進製鋼設備を導入、2027年末に稼働する。
■CO2地下貯留の新技術、日米で実用化へ(10月13日)=日米の企業や研究機関は火力発電所から出る二CO2の地下貯留に関する新技術を共同開発する。日本のJX石油開発、カーボンフロンティア機構、米国のワイオミング大学が実証実験の連携に関する覚書を交わす。海底などにある玄武岩にできた隙間にCO2を注入し、化学反応で鉱物に変化させて固定する技術の実用化をめざす。日本近辺の玄武岩の周辺にCO2を貯留できる潜在量は少なくとも22年度森林吸収量の30年分に相当する貯留規模が見込まれる。
■神鋼の新鉄源戦略、ミドレックスを核に(10月11日・産業新聞)=神戸製鋼所は低炭素・脱炭素化につながる新鉄源分野の事業拡大を目指す。核となるのが天然ガスや水素で鉄鉱石を直接還元して還元鉄をつくる「ミドレックス」技術。米国100%子会社のミドレックス社とともに、直接還元鉄プラントを世界に売り込む。神鋼がミドレックス社を買収して40年。2050年のカーボンニュートラルの切り札として世界からの注目が一段と高まっている。
■低炭素水素、需要伸び悩み、鉄鋼向けカギ(10月10日)=水を電気分解してつくるグリーン水素など「低炭素水素」需要が伸び悩んでいる。価格は低下基調にあるため今後の普及の追い風になりそうだが、脱炭素の進展には安定的な需要拡大が欠かせない。鉄鋼などの分野での活用がカギを握る。政府の補助金を考慮した実質的な価格はグリーン水素で1kg当たり2~4ドルと、天然ガスから生成する現在主流の水素に近く、ピンク水素はすでに肩を並べる水準だ。
需要が厳しい中で期待を集めるのがグリーン鉄鋼向けだ。EU域内企業は温暖化ガスの排出量に応じ排出枠(EUA)を取得する。現在、鉄鋼会社は経過措置として無償で譲渡されているが、26年から段階的に廃止され、欧州の鉄鋼業界はEUAの取得を迫られる(欧州の鉄鋼業界が直面する「26年問題」。)「EUA取得費用は製造コストに影響する」(欧州アルセロール・ミタル)。この解決策として、グリーン鉄鋼にシフトしEUAの取得を減らす方法が有力だ。グリーン鉄鋼で先行するのはスウェーデンのH2グリーン・スチールだ。大規模な製鉄所建設を進め、すでに自動車会社からの需要をつかんでいることが強み。脱炭素を進める上で欠かせない低炭素水素。グリーン鉄鋼などで停滞を打開できるかが注目される。
■アジア脱炭素に日本方式(10月9日)=東南アジアなどの温暖化ガス排出量の算定・報告の共通ルールに日本方式を導入する。脱炭素の枠組み「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」が首脳声明に盛り込む。日本は原油換算エネルギー使用量が年1500㎘以上などの要件を満たす事業者が対象。排出量算定と、国への報告や公表を義務付けている。
■UAE、低炭素に230億ドル(10月3日)=アラブ首長国連邦(UAE)は水素やアンモニアといった次世代の低炭素エネルギーに5年間で230億ドル(約3.3兆円)を投じる。2030年に世界のクリーン水素生産量の5%のシェアを目指す。
■グリーン水素製造装置、7割が中国に集中(10月3日)=国際エネルギー機関(IEA)は2日、24年世界水素エネルギー市場に関する報告書を公表。再生可能エネルギーを使いグリーン水素を製造できる電解槽は、中国が全体の7割弱を占める見通しだ。
9月
■米・クリフス、高炉を電炉生産に転換(9月18日・産業新聞)=米鋼板大手のクリーブランド・クリフスは16日、ミドルタウン製鉄所の高炉を直接還元鉄(DRI)と電炉の生産体制転換投資で、米エネルギー省から最大5億ドル(704億円)を調達する候補に選定された。
■H2グリーン・スチールが社名を「ステグラ」に変更(9月17日・テックス)=欧州で大規模なグリーン・スチール工場を建設しているH2グリーン・スチール社は12日、社名をステグラ(Stegra)に変更した。ステグラは「グリーン水素」、「グリーン・アイアン」、「グリーン・スチール」の3つのプラットフォームをベースに、排出ガスがほぼゼロのグリーン製鉄を目指し、スウェーデン北部のボーデンに一貫工場=写真=を建設中だ。社名の「Stegra」は「高める」を意味するスウェーデン語。同社へは神戸製鋼所、日立エナジーが出資している。
直接還元鉄プラントはミドレックスのMidrexH2TMプラント、原料の供給にはヴァーレ、リオティント(IOC)、クンバ・アイアン・オア、ミナスーリオのアングロ・アメリカン・グループなどが関与している。
■「グリーン鉄」需要喚起(9月10日)=経産省は「グリーンスチール」の需要を喚起するため「GX(グリーントランスフォーメーション)推進のためのグリーン鉄研究会」を設立する。日本エネルギー経済研究所の工藤拓毅理事が座長を務め、日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼、鉄鋼連盟が参加。買い手として自動車工業会のほか住宅関連、経済団体の参加を想定。
*経産省は割高なグリーン鉄を普及させるには、一部費用を補助する制度が選択肢になるとみる。グリーン購入法の対象としたり、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)で上乗せする案がある。政府は24年5月には改正産業競争力強化法を成立させ、グリーン鉄やEV車の生産量に応じ10年間にわたり税優遇する。
■再資源化事業等高度化法の具体策検討を開始(9月10日・産業新聞)=環境省は、今年5月に公布された再資源化事業等高度化法(資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律)の具体策の検討を開始した。基本方針の策定、処分量の多い産業廃棄物処分業者の再資源化実施状況の報告と公表、同法の認定制度の創設などを目指す。
■EUROFER、「欧州鉄鋼業を守るためクリーン産業協定は不可欠」(9月10日・テックス)=欧州鉄鋼協会(EUROFER)は5日、EU域内の鉄鋼業を始めとする産業を守るために、一刻も早くクリーン産業協定を発表するべきと主張する声明を発表した。 同協会はEUの鉄鋼業界が競争力を保持するためには、不公正で安価な輸入材がEU域内に入着することを阻止する即時的かつ包括的な貿易措置を実施すること、「クリーンではない」設備で生産された鋼材を自国やEU以外の地域で販売している輸出国に対してCBAM政策(*Carbon Border Adjustment Mechanism)を強化することなどが必要不可欠であると強く訴えた。
*関連情報・EU、国境炭素税で合意(22年12月14日、日経新聞)=EUは12月13日、国境炭素調整措置(CBAM、国境炭素税)の導入で合意した。世界初の取り組みで、鉄鋼とセメント、アルミニウム、肥料、電力、水素を対象とし、今後拡大を検討する。
CBAMはEU域内の企業が環境規制の緩い他国に工場などの拠点を移して規制を逃れる「カーボンリーケージ」を防ぐのが目的。課税によって域内外の負担を同水準にそろえ、他国にも環境対策の強化を促す。23年10月1日から炭素排出量の報告義務を課す移行期間が始まっており、支払い義務は26年1月以降の排出量報告分からとなる。
■日立、ワカメ育てCO2吸収「ブルーカーボン」、産官学が主導(9月5日)=海洋生物に二酸化炭素(CO2)を吸収させる「ブルーカーボン」が日本で進んでいる。日立製作所など産官学連合が、下水処理技術を用いた藻場造りの技術開発に乗り出した。港湾空港技術研究所によれば世界での陸域のCO2吸収量は年77億トンに対し、海域での吸収量は同102億トン。浅海域だけでも同40億トンある。日本は国土は小さいが、海岸線の長さと海洋面積はともに世界6位とブルーカーボンを手掛ける余地は大きい。これまで海藻の育成手法の開発など海での技術開発が主だったが、舞台が陸にも広がり始めた。今回の産官学の実証では下水処理場を活用する。ブルーカーボンを巡っては、環境省が国連に報告する温暖化ガスのインベントリ(排出・吸収量)に海藻・海草由来のブルーカーボンを世界に先駆けて反映した。脱炭素対策の有効な手として注目が集まるなか、ブルーカーボンで削減したCO2量をクレジットとして販売する動きも日本で進んでいる。ブルーカーボンクレジットは他のクレジットと比べると規模はまだ小さいが、生物多様性確保などの環境価値が評価され、森林クレジットなどに比べて5倍以上高値で取引されている。ノウハウが確立できれば、連技術や機器の輸出拡大につながる。
■排出量取引、炭素価格に下限 政府方針(9月4日)=政府は3日、26年度に本格導入する排出量取引の制度設計の議論に着手した。この取引は一定の排出規模がある大企業の参加を義務とする。炭素価格に上限を設けて企業への負担に配慮する。下限も設定し、排出削減の実効性を維持する。会合では日本鉄鋼連盟は「極端に高い炭素価格がかかると、輸出の競争力を失う」と訴えた。排出枠の購入が経営を圧迫し、排出削減に向けた投資が阻害されるとの懸念も示した。政府は26年度に排出量取引を本格稼働させる。世界ではEUのほか、韓国、中国なども排出量取引制度を導入している。
8月
■脱炭素技術開発への融資「債務、最大全額保証へ」(8月30日)=GX推進機構理事長は日経新聞との会見で脱炭素開発企業向け銀行融資を巡り、最大で全額債務保証方針を示した。25年中にも初案件の実現を目指す。支援分野としては「水素関連やアンモニア、化学コンビナート施設、再生可能エネルギー事業など」と述べた。革新軽水炉の支援も「あり得る」と語った。水素を使う製鉄方法などを念頭に「技術的な問題については日本はクリアしていける」と指摘した。政府は、50年に温暖化ガスの排出を実質ゼロとする目標を達成するには今後10年で150兆円の投資が必要だとの認識を示す。新技術や事業は過去の実績が乏しく、民間の金融支援を受けにくい。GX機構はその信用補完を目指している。
■原発 誰が動かす(上)「脱炭素へ新設」の現実味(8月25日)=15年のパリ協定採択で、各国は50年のカーボンゼロを表明した。原発は温暖化ガスをほとんど排出しない。日本のエネルギー計画では、30年度の電源構成に占める原発の比率20~22%で、実現には27基程度が必要だが、稼働は12基。新増設や建て替えがないと、30年時点での36基は60年に8基に減る。次世代型原発の建設には環境調査や建設工事に約20年かかる。巨額の資金が必要だが、現時点で大手行幹部は「最終処分場などの問題をクリアしないと融資対象としては難しい」と明かす。国が繰り返す「安全性が向上した」との言葉だけでは具体的な計画は動かない。
■アジア脱炭素へ新組織(8月22日)=日本とオーストラリア、東南アジアは21日、脱炭素の連携枠組み「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」の閣僚会合をインドネシアで開催。アジアの脱炭素に向けた司令塔となる研究組織「アジア・ゼロエミッションセンター」をジャカルタに設置した。日本政府が資金を拠出する国際シンクタンク、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)の中に置いた。会合に合わせて参加国と日本企業などとの間で新たに約70件の協力案件が決まった。AZECを通した協力案件は420件を超えた。
■世界の原発、発電能力最大、AI・脱炭素けん引(8月22日)=世界の原子力発電の発電能力が24年、6年ぶりに過去最大となった。人工知能(AI)の普及や脱炭素に伴う電力需要が急増し、CO2を排出せず、出力の安定した原発の再興機運が高まっている。過去10年に原発は70基程度新設され、中ロが新設をけん引。中国は39基を新設して発電能力を約4倍に高めた。ロシアも新設が続く。運転可能な33基のうち9基は過去10年で運転を始めた。
*23年のCOP28では米欧や日本を中心とした同志国22カ国が温暖化ガスの削減に向け50年に原発の設備容量を20年比で3倍に増やす目標を掲げた。目標達成には600基以上の新設が求められるが、新設計画は約160基にとどまる。原発は1カ所で1000万個の部品が使われる。建設が途絶えると供給網を保てなくなる。中ロは11年以降も国家主導で途切れなく開発を続け、次世代炉でも両国が先行する。民間主導で開発してきた米欧でも原発を国が支えようとする動きが顕著になってきた。日本は11年の東電福島原発事故後に原子力事業から20社以上が撤退。サプライチェーン(供給網)が弱体化し、円滑に整備を進められていない。
■空気からCO2回収、米最大の設備稼働(8月14日・夕)=空気からCO2を回収する米国最大のプラントが稼働した。スタートアップ、米ハイムダルがオクラホマ州で建設した設備で年5000トンを回収する。粉砕した石灰岩を天然ガスを燃焼して空気中のCO2を吸収。再び熱して純度の高いCO2を取り出し、地下に注入する。1トンのCO2を大気から除去するために天然ガスを燃焼でおよそ250キログラムのCO2を排出するという。
■CO2回収コスト半減(8月8日)=日東電工やJFE系などが、工場から出る排ガスから二酸化炭素(CO2)を回収する技術を実用化する。膜を使ってCO2を回収する技術で、日東電工は専用の装置を25年にも量産する。日本のCO2排出量のうち産業部門は約4割を占める。経済産業省はCO2を1トン回収するのに従来手法では4200円かかるが、分離膜は1000円台まで下げられると試算。富士経済によると、分離膜を含むCO2分離装置と関連材料の世界市場規模は50年に3兆5000億円と22年比で6倍に成長する。
7月
■脱炭素電力で産業集積 補助・税優遇(7月23日)=政府はGX推進法を改正して脱炭素電力が豊富な地域への産業集積を進める。工場やデータセンターなどを建設する際、脱炭素の度合いが高い案件を法人税優遇や補助金支給の対象とする仕組みを検討する。企業の拠点整備に関して、脱炭素電力の使用割合などを明記した計画策定を申請を条件とすることで、環境負荷低減を軸とした企業立地政策への転換を狙う。
■電炉転換 鉄鋼に決断迫る(7月23日)=鉄鋼業は国内産業別CO2排出量で最大の35%を占める。高炉は製鉄工程でコークスを使うためCO2排出量が多く、鉄鋼業界は第1ステップとして30年度までに13年度比30%削減を掲げるが、達成には削減効果の高い電炉への転換を早期に決定する必要がある。コークスの代わりに水素を使った製鉄法をNEDOなどと開発中だ。ただ実現には10年単位の時間がかかるため大型電炉の導入が脱炭素への第一歩となる。
*JFEの大型電炉の設備投資額は1千億円以上を予定し、年間生産量約200万トン。CO2削減効果はJFEHD全体排出量の5%相当の年260万トンとなる。「還元鉄」で、自動車向けなどの高級鋼材にも対応していく。日本製鉄は姫路と北九州で大型電炉の導入を検討中。日鉄は全国に15基あった高炉を24年度末には10基とする計画だ。神戸製鋼はもっと深刻だ。同社は高炉を2基しか持たない。10基前後の高炉を保有する日鉄とJFEは高級鋼の生産を段階的に電炉に振り分ける選択肢もとれるが、神鋼は生産能力の半分が電炉に切り替わる。電炉稼働は10年先になるが、勝川社長は「早ければ25年度、遅くとも29年度には投資判断する」。これまで高級鋼材を生産していた高炉1基を閉鎖する前に電炉を整備する考えだ。
*各社が一斉に政府支援を求める理由がある。電炉導入には3つの課題が立ちはだかるからだ。①まずはコスト。大型電炉の設備投資コストは1千億円を超える。運用面でも高炉よりもコストは高まる。低品位の鉄鉱石を使える高炉と比べ高品質な還元鉄など高価な原料が必要なためだ。JFEは「設備投資への補助金と税制優遇に応募する」(北野氏)として政府支援を求めていく考え。②2つ目は技術開発だ。3社は自動車用の「ハイテン(高張力鋼板)」など高炉で生産してきた鋼材を電炉で生産する方針だ。高品質な原料の確保に加え不純物を防ぐ技術が必要で、神鋼の勝川氏は「窒素を含む空気と触れにくくする」と述べる。③電力調達も課題だ。日本の産業用電力料金は米国や韓国と比べて2倍高く1kw時あたり20円を超える。北野氏は「日本の鋼材の半分以上は(車などに)形を変えて海外で消費される。電力コストが高いと競争力が保てない」と警鐘を鳴らす。送電網にも不足がある。北野氏は「仮に2基目の電炉を造るとなると、工業地帯向けの送電容量が足りなくなる」と指摘する。
*政府も鉄鋼業界の脱炭素には危機感を持つ。業界とNEDOとの技術開発には計約4500億円の支援を決めた。23年にはGX推進法を制定し、GX経済移行債で鉄鋼業界の支援を決めている。今後5年で鉄や化学など素材業界に4844億円の設備投資を支援する予定だが、具体的な募集はまだ始まっていない。電炉の比率は欧米が先行している。23年の粗鋼生産能力のうち電炉割合は日本の26%に対してEUは44%、米国は68%を占める。
■清水鋼鉄、太陽光発電設備を導入(7月10日・産業新聞)=清水鋼鉄(本社=千葉県浦安市、清水孝社長)は、カーボンニュートラルを念頭に苫小牧製鋼所に自家消費型太陽光発電設備を導入する。発電電力を加工製品工場、事務所などで使用し昼間電力を全量賄う見込み。本年9月の竣工を目指す。CO2削減の対策を推し進める。
■マイクロソフト、CO2排出枠50万トン購入(7月10日・夕)=米マイクロソフトは空気から直接回収する二酸化炭素(CO2)のクレジット(排出枠)を購入する。CO2の枠を6年間にわたり計50万トン調達する。マイクロソフトは「人工知能(AI)シフト」を進めている。注力する生成AIは運用に膨大な電力を要するため、データセンターなどで多量のCO2を排出する見通しだ。今回の取引は、これを相殺する狙いがある。
■半導体再興へ5兆円計画 ソニーや三菱電機など8社(7月9日)=ソニーや三菱電機など日本企業が29年までに5兆円規模の半導体投資をする。日本の半導体は1988年に世界シェアで5割を握っていた。2000年代前半に相次ぎ撤退し、17年にシェア10%を切った。ソニーGは半導体画像センサーの増産など、21~26年度に約1.6兆円を投じ、東芝とロームは両社で約3800億円を投じる。三菱電機はパワー半導体の生産能力を26年度に22年度比で5倍にする。熊本県内で約1000億円を投じて新工場棟を建設する計画だ。
■首相「CO2貯留、アジアで基準」(7月6日)=岸田首相は5日、経団連が都内で開いた「アジア・ビジネス・サミット」で講演し、アジアでCO2を回収して地下に貯留する「CCS」や、水素分野で協力するための基準整備を進めると表明。また23年に日本や東南アジア9カ国、豪州で「アジア・ゼロエミッション共同体」(AZEC)を発足させたと紹介した。「今後10年を見据えた具体方針を関係国で合意する年にしたい」と述べた。
■GX推進機構が始動 保証枠1兆円(7月2日)=GX(グリーントランスフォーメーション)推進機構が1日、業務を始めた。民間融資に1兆円の債務保証枠を設け脱炭素関連の投資を後押しする。筒井義信理事長(日本生命会長)が同日の開所式で「10年で150兆円を超える官民の投資を推進することが使命だ」と述べた。機構は1000億円の基金を元手に保証業務を手掛ける。業務方法書は保証上限を基金の10倍の1兆円と規定した。
■東京製鉄、グリーン鋼材「ほぼゼロ」を発売(7月2日・テックス)=東京製鉄は1日、鋼材製造1トン当たりのCO2排出量を0.1トンに抑制したグリーン鋼材「ほぼゼロ」の発売を開始し、対象品種は田原、岡山、九州、宇都宮の同社4工場で生産するすべての製品で、販売単価は当面、通常の鋼材価格にトン当たり6,000円を上乗せする。同社の鋼材生産1トン当たりのCO2排出量は0.4トン。うち電力に起因する0.3トンを、「FITトラッキング付き非化石証書」などを購入し、実質的に非化石電力を用いて生産することでゼロに抑え込み、最終的な排出量を0.1トンにまで減らす。スキームの妥当性についてはフランスに本部を置く独立第3社機関「ソコテック・サーティフィケーション・ジャパン」が確認した。
■中国「レアアースは国家所有」(7月1日)=中国政府は29日、レアアース(希土類)を国家所有と明記した管理条例を10月1日に施行する。レアアースを戦略資源と位置づけ、サプライチェーン(供給網)全体の統制を強化。対中包囲網を敷く米国に対抗する。
6月
■温暖化ガス、日本「66%減」糸口見えず(6月30日・日経新聞)=国連は温暖化を止めるには2035年に排出量を19年比で60%削減する必要があると分析。パリ協定(COP21)は5年ごとに排出削減目標を国連に提出するように求めている。25年にブラジルで開く第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)の前に各国は35年の目標を国連に提出する必要がある。日本の現在の30年度の目標は13年度比で46%減。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の分析を日本の基準年である13年度に当てはめると66%減になり、この数値が議論の軸になりそうだ。日本の排出量の85%は発電などに伴うエネルギー由来。大幅な排出減には、電源構成の7割を占める火力発電を減らし再生エネの大量導入や原子力発電所の再稼働を進める必要がある。
■三井物産、UAEで低炭素アンモニア(6月25日・日経新聞)=三井物産はアブダビ国営石油会社などと共同で27年からアンモニアの製造をアラブ首長国連邦(UAE)で始める。当初はCO2が少ない水素を原料としてアンモニアを生産。30年からは排出したCO2を地下に貯留する技術「CCS」を組み合わせ、排出量が実質ゼロのクリーンアンモニアの製造に切り替えることを検討。アンモニアは燃焼時にCO2を排出しない次世代燃料として注目されている。日本政府は30年の国内需要が約300万トン、50年には3000万トンとみている。
■「Deep Insight」分断下でも進む脱炭素(松尾博文)(6月24日・日経新聞)=シナリオプランニングとは起こりうる未来を提示する。2023年に作成した最新版は、エネルギー安保をもとに地球の気温上昇の現状が続けばどうなるかというアプローチを示した。「群島」を意味する最新の「アーキペラゴ」シナリオは国際機関が求心力を失う一方、ネットゼロ社会を目指す目標は揺るがないとも強調する。「エネルギー安保を重視する世界で低炭素技術が強力に発展する」(同)。
その原動力はエネルギー自給の確立に向けたイノベーション競争だ。資金と天然資源に余裕がある米国の陣営は、市場とビジネスを通じて水素やアンモニアの製造、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術を追求できる。国家の強い指導力で製造業を推進する中国は、電池や電気自動車(EV)、太陽光パネルといった脱炭素製品の世界市場で支配を目指すだろう。世界に緊張を強いる米中の覇権争いが、エネルギー転換を後押ししていく皮肉な未来だ。
■「経済教室」・2040年度のエネルギー計画*(下) (6月24日・日経新聞)原発を水素の供給源に(橘川武郎・国際大学学長)=日本の従来の国際公約は「30年度に温暖化ガス排出を13年度比で46%削減する」であった。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書(23年)は、35年に19年比60%削減を求める。これは従来の基準「13年度比」換算で66%削減を意味する。別表のAは、現行の第6次計画が提示した30年度の電源構成見通しを示したものである。しかし、この見通しの実現はきわめて困難だと言わざるをえない。最も現実離れしているのは「原子力30%」という数値である。第7次計画の40年度見通しはそれを超えて「空想的」なものとなる。
40年度の見通しの「空想化」を回避する道は一つだけある。原子力を、狭い意味の電源としてだけでなく、CO2を排出せずに作るカーボンフリー水素の供給源としても位置づけることである。カーボンフリー水素としては通常、太陽光や風力発電で生産された電力(グリーン電力)を使い、水の電気分解で得る「グリーン水素」が想定される。しかしグリーン水素は、太陽光や風力発電の稼働率が低いため、電気分解装置の稼働率も下がってしまい、それがコスト高につながるという「泣きどころ」がある。グリーン水素や、CO2の回収・貯留(CCS)を使って得る「ブルー水素」を作るコストは海外の方が安い。今のままでは大半のカーボンフリー水素を海外から輸入することになる。これではエネルギー自給率は向上しないし、カーボンフリー水素の海上輸送費も高くつく。国内の原発をカーボンフリー水素の供給源にすればこの問題も解決する。カーボンフリー水素の国産化が実現するのである。さらに原発の電力の一部を水素生産用に回せば、その分だけ従来型の電力供給量を減らし、再生エネ電源の「出力制御」を抑制できる。第7次計画の電源構成見通しにおける原子力の比率を高めるためには、原子力をカーボンフリー水素の供給源とも位置づける、新しい視点を導入するしかない。
■G7宣言、石炭火力廃止「30年代前半」(6月16日・日経新聞)=主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、首脳宣言に石炭火力発電所を廃止する期限を盛り込んだ。30年代前半という時期を明示した一方、35年以降も活用できる解釈の余地を残した。日本は50年度に温暖化ガス排出実質ゼロ目標を打ち出した以上、いずれは石炭火力をゼロにする必要がある。取り組む時期が遅くなればなるほど、短期間での実現を迫られ、コスト増につながる可能性がある。
■脱炭素新興に17社出資 CO2開示義務化に先手(6月14日・日経新聞)=三井住友銀行など17社が、CO2排出量の算定システムを運営する新興企業(19年設立)「アスエネ」に総額42億円を出資する。同社は人工知能(AI)を活用し、「スコープ3」の正確な計測や削減支援などに強みを持つ。同社のCO2排出量の算定システムの導入社数は足元で6000社を超え、国内最大手。出資企業のうち三井住友銀など6社はアスエネと業務提携もする。
三井住友銀は業種ごとのCO2排出傾向を分析・CO2削減支援コンサルティングを実施する。村田製作所は取引先の約4700社にアスエネの導入を促す。日本のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)は3月、東証プライムの上場企業を念頭に、サプライチェーン全体のCO2の排出量や削減目標などを開示すべきだとの草案を示した。これを基に金融庁がルール作りを進めており、時価総額3兆円以上のプライム企業は早ければ27年3月期から開示が義務化される見通しだ。
■「水素チェーン」国内競争始動(6月12日・日経新聞)=5月に水素社会推進法が成立し、「水素チェーン」を巡る競争が激しくなってきた。課題となるのがコストの高さだ。水素の供給価格は既存燃料の最大12倍。コストを大幅に下げないと普及は見通せない。脱炭素化に向け再生可能エネルギーで水を電気分解してつくるグリーン水素が注目を集めている。水素エネルギーは30年以降、インフラ構築に関わる異業種の企業を巻き込んでの整備が急がれる。
■タタ・オランダがテノバ社の「ENERGIRON」を採用(6月11日・テックスレポート)=イタリアのエンジニアリング会社であるダニエリは10日、タタ・スチールがオランダで操業するエイマイデン製鉄所向けに、テノバ社と共同開発した直接還元鉄(DRI)プラント「ENERGIRON」が採用されたと発表した。同製鉄所は現在高炉2基で操業しているが、30年までに電炉製鋼へ切り替える方針を明らかにしている。今回ダニエリ・テノバ社が提供するDRIプラントは年産250万トン、熱間 DRIと常温DRIの両方を処理する最新技術を導入したもの。DRI-電炉ルートに切り替えたことで、同社は従来比でCO2排出量を40%削減可能となる。
■東南アジアを揺らす脱炭素(6月8日・日経新聞)=ラオスは「東南アジアのバッテリー」を掲げ、発電量の8割超をタイやベトナムなど周辺国に輸出。総輸出額の約3割を電力が占め、しかも電源の7割超が水力という再生可能エネルギー大国である。ラオスの電力輸出拡大には送電網増強が不可欠だ。脱炭素が迫る構造変化の主導権を中国が握った。ラオス電力公社が全土の送電網を事実上、中国企業に売却したからだ。
■大成建設、ビルの生涯CO2を4割減(6月8日・日経新聞)=大成建設は相愛学園と建設中の複合ビルで、生涯CO2を4割減らす。外壁に製造時のCO2排出量を大幅に減らしたコンクリートを使うほか、ガラス建材一体型の太陽光パネルを採用する。EU議会は3月に建物の生涯CO2削減プランを採択。欧州では新築建物に生涯CO2排出算出を求めている。
*(参考)東京製鉄、大成建設と連携しゼロカーボンビル建設へ(23年4月10日・日経新聞)=東京製鉄は7日、大成建設と連携しCO2排出量を正味ゼロにするゼロカーボンビルの建設を推進するため鋼材製造から解体・回収までの資源循環サイクル「ゼロカーボンスチール・イニアティブ」を始動したと発表した。電炉鋼材を「T―ニアゼロスチール」と位置付けている。
Microsoft Word - (20230404)大成建設リリース文案rev6.doc (tokyosteel.co.jp)
■〈小さくても勝てる〉中小、脱炭素が取引条件に(6月5日・日経新聞)=中堅・中小の部品メーカーがカーボンニュートラルに向けた対策を急いでいる。脱炭素の対応が遅れると大企業との取引を失うリスクがあるためだ。先行しているのが自動車業界で、脱炭素の取り組みが事実上、取引条件になりつつある。自動車部品メーカーが集積する浜松市では完成車メーカーや金融機関、自治体も後押しして対策が進んでいる。カーボンニュートラルを目指す大企業は、取引先のサプライチェーン(供給網)を含めた排出量である「スコープ3」の管理に注力する。金融機関や行政の支援を活用する中小も増えている。
■東京製鉄、国内中継地を40カ所に拡充(6月7日・産業新聞)=東京製鉄は24年度入り後、滋賀県内と群馬県内に中継地(物流会社のスペースを賃借して設置した製品在庫拠点)を新設し、国内中継地を40カ所に拡充した。CNの動きが加速する中、電炉鋼材の引き合いが増えている。これを受けデリバリー対応を強化したもの。
■水素活用へ1500億円基金(6月5日・日経新聞)=トヨタや川崎重工業などの国内企業連合は24年度上期にも水素の活用を推進するためのファンド(基金)を設立する。10億ドル(およそ1500億円)の規模を見込む。日米豪など14カ国が加わる新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」への優先投資枠も設ける。
■インドネシア、CO2貯留拠点に(6月4日・日経新聞)=インドネシアでCO2貯留拠点の建設計画が相次いでいる。英石油大手BPが拠点建設を始めたほか、エクソンモービルも国営石油と組んで開発を検討する。インドネシアは東南アジアで最大規模の石油や天然ガスの産出国。枯渇した油田やガス田で48億5000万トン、貯留に適した「塩水帯水層」を含めると5720億トンが貯留できる。24年末までに世界で稼働する拠点の貯留量は年間で約6900万トン。インドネシアの潜在的な貯留容量はこれを上回る。海外から輸送されたCO2貯留を認める大統領令も施行。その他の国も同様でマレーシアは、CO2の貯留の法的な枠組みを定める準備をしている。
■日EU、水素で国際ルール(6月3日・日経新聞)=日本とEUは次世代燃料として有力視される水素普及に向け、製造装置や輸送技術などの国際規格の策定に着手する。純度や安全性など水素活用のルールづくりを主導し日欧の競争力につなげる。
■「都市鉱山」再利用へ拠点(6月2日・日経新聞)=政府は「都市鉱山」を再利用する体制を整える。官民で再利用拠点を10カ所程度設け、港湾の拠点整備も検討する。政府はGX経済移行債を呼び水に民間投資を促す。24年度から3年間300億円を投じ、金属再利用を含む民間企業の設備投資を支援する。三菱マテやJX金属、阪和興業などが候補にあがる。
5月
■ラピダス融資に政府保証(5月31日・日経新聞)=経産省はラピダス向け融資に政府保証を付ける方針だ。個別企業に政府保証を付ける制度は異例。*ラピダスは27年に回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体量産をめざす。経産省は同社向けに最大9200億円の補助金支出を決めている。ラピダスは量産には5兆円が必要とみる。民間金融機関の融資実績がないラピダスは資金調達が課題だった。そこで考え出したのが政府保証案だ。
■中国国務院、25年末・電炉鋼割合を15%目標へ(5月31日・産業新聞)=中国国務院は29日、24―25年の脱炭素計画を発表し、鉄鋼生産規制と鉄スクラップ利用推進を示した。25年までの2年間で新規鉄鋼生産能力の立ち上げを原則認めない。25年末までに電炉鋼の生産割合を15%、鉄スクラップ消費量3億㌧(23年約2.6億㌧)目標を打ち出した。
■大和工業、脱炭素新加熱炉を導入(5月29日・産業新聞)=大和工業はヤマトスチールで、29年半ばをめどにCO2を排出しない水素・アンモニア燃料に対応した加熱炉に切り替える。今月末にもインドネシア電炉メーカーの株式取得が完了する予定。
■神戸製鋼、低CO2高炉鋼材を「NETIS」に登録(5月29日・産業新聞)=神戸製鋼所は28日、低CO2高炉鋼材「コベナブルスチール」が国交省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録と発表した。国内で初めて商品化したグリーンスチールで、登録は業界初となる。
■東証、炭素市場を強化(5月24日・日経新聞)=東証は23年10月、国の認証クレジットである「J―クレジット」を売買対象として市場を開設した。東証の制度変更で脱炭素に向けた国の枠組み「GXリーグ」に加わる企業の取引を可能にする。売買対象はリーグ参加企業の「超過削減枠」だ。国は30年度の温暖化ガス排出量を13年度比で46%減らす目標を掲げる。企業の削減量が国の目標を超える場合、その分をクレジットとして販売できる。取引対象の拡大には金融庁の認可が要る。早ければ6月にも認可を受け、24年度中の取引開始を目指す。
*GXリーグには5月時点で750社超が参加。日本製鉄など高排出企業も多く名を連ね、参加企業の温暖化ガス排出量は日本全体(22年度時点で11.3億トン)の5割超を占める。
■神戸製鋼、中期経営計画で電炉導入を前提(5月21日・産業新聞)=神戸製鋼は20日、24年度開始の3カ年の中期経営計画を発表。「稼ぐ力の強化」と「成長追求」「カーボンニュートラル(CN)への挑戦」を掲げ、加古川製鉄所の高炉1基を電炉に置き換える方針を示した。
大型革新電炉の導入は未定としながらも、高炉1基、電炉1基体制を想定するとした。26年度にROIC(投下資本利益率)6―8%、売上高1兆円規模の事業体を目標とする。
■英・リバティ、ハンガリー製鉄所に電炉を導入(5月20日、テックスレポート)=英国の鉄鋼メーカーであるリバティ・スチールは20日、ドゥナフェール製鉄所の脱炭素化契約を締結した。同製鉄所は高炉1基を操業しているが電炉に置き換え、ハンガリーの自動車部門向け供給を目指す。新電炉はCO2排出量を従来比で約80%削減。年産能力は150万トンの予定。
■脱炭素技術、中国が台頭CO2回収特許数トップ(5月19日・日経新聞) =温暖化対策の先端技術で中国の競争力が高まっている。2位の米国の3倍ある。日本は3位だった。中国は電気自動車(EV)用の電池や太陽光パネルでも世界市場を抑えつつある。太陽光パネルや風力発電設備の生産でも世界首位だ。脱炭素の先端技術を中国に握られる懸念も出てきた。
■排出量取引、年内にも大枠(5月18日・日経新聞)=政府は26年度に大企業の参加を義務づける温暖化ガス排出量取引を巡り、参加企業の規模や業種ごとの排出削減制度の大枠を年内にも固める。排出量取引は炭素に値段をつける「カーボンプライシング」の一つとなる。企業の排出量に上限を設け、その過不足分を企業間で売ったり買ったりできるようにする。EUは08年に本格始動。対象施設からの排出量を05年比で26%減らした実績がある。中国も21年に発電事業者が参加して制度を開始。日本の導入はEUに20年近く遅れており脱炭素への実効性が問われる。
*低炭素の水素、価格差分を補助(5月18日・日経新聞)=水素社会推進法が17日、成立した。水素を製造・輸入する企業の事業計画を政府が認定し、既存の燃料との価格差分を補助する。政府はクリーンな水素を製造・輸入した企業向けに、割高な水素の製造コストと相対的に安い天然ガスとの価格差を補填する。水素の供給価格は1立方メートルあたり100円ほどだが、供給量を増やして30年に3分の1に引き下げる。
■大阪製鉄、脱炭素経営宣言事業者として大阪府に登録(5月17日・テックスレポート)=大阪製鉄は16日、脱炭素経営宣言事業者として登録されたと発表した。大阪府知事名による登録証を受け取った。同社では鉄スクラップを鉄鋼製品にリサイクルする事業活動を通じて環境負荷低減と持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。
■温暖化ガスの新削減目標 来年2月提出が国際義務(5月16日・日経新聞)=40年度の電源構成目標は現行の30年度目標より脱炭素を進める必要がある。温暖化対策を巡る国連の枠組み「パリ協定」があるためだ。加盟国は35年ごろの温暖化ガス削減目標を25年2月までに提出義務がある。条約締約国会議(COP28)では「19年比60%減が必要」と合意。13年度比で単純換算すると66%減に相当する。現行の30年度目標の46%減よりも一段と削減しなければならない。
■脱炭素戦略、年内に策定、脱炭素電源、国力を左右(5月14日・日経新聞)=政府は40年を見据えて脱炭素社会に向けた「グリーントランスフォーメーション(GX)推進戦略」を見直す。21年時点のエネルギー自給率は先進国で最低水準の13%にとどまる。日本はデータセンターの規模でも海外に大きく水をあけられている。米国は日本の6.4倍、中国は2.3倍の容量を持つ。海外に計算資源を頼り続けることになれば「デジタル赤字」の形で国内からの富の流出が膨らみ続ける。現状を放置すれば、エネルギーとデジタルの領域での新たな「双子の赤字」が定着し、足元の円安基調に歯止めがきかなくなる恐れもある。新たに40年に向けた「国家戦略」へと発展させ、政府支援額が20兆円から膨らむ可能性も出てきた。既存のGX債の償還財源には、企業のCO2排出に課金して削減を促すカーボンプライシングを予定する。今後、支援額が膨らむことになれば財源確保が課題に浮上する。
■排出量取引、電力や鉄鋼に参加義務(5月12日・日経新聞)=政府は温暖化ガスの排出量が多い企業に、排出量取引制度への参加を義務づける。2050年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標の達成に欠かせないと判断したためだ。現在は自主参加にとどまるが、26年度にも電力や鉄鋼、化学工業など多排出企業を対象にする見通しだ。既に導入しているEUのほか、韓国やオーストラリアなどの制度をもとに日本での具体的な制度設計に生かす。
■JFEホールディングス社長――CN開発をどう進めていくか(5月8日・産業新聞)=「大きく3つあり、一つはカーボンリサイクル高炉法。25年に炉内容積150㎥の実証高炉を立ち上げる。30年までに中規模高炉での実証試験を行い、実装時期を判定していく。2つめは高品質鋼を電気炉で造る。27年末に倉敷に大型電炉を実装し、商業規模で生産する。3つめの直接水素還元法は最もハードルが高く、30年代半ばに基礎研究を完成させたい」
4月
■中国鋼鉄(台湾)、高炉にHBIを添加装入試験(4月25日・テックス)=台湾の中国鋼鉄(CSC)は24日、高炉に「ホット・ブリケット・アイアン(HBI)」を添加する試験を開始。HBI・1トンにつき1.53トンのCO2排出量を削減されたとしている。結果を受け、HBIを使用した高炉操業で使用するAIプラットフォームの機能をアップグレードした。
■河鋼集団、水素・シャフト炉と電気炉を組み合わせ開始(4月9日・テックスレポート)=中国の河鋼集団(HBIS)は8日、水素ベースのシャフト炉と炭素排出量がほぼゼロの電気炉を組み合わせた世界初のプロジェクトを正式に開始したと発表した。同社は年産60万トンのDRIプラント2基を稼働。同プラントと電気炉を組み合わせた「ゼロコークス炉ガス改質プロセスに基づく初の直接還元鉄電気炉プロセス」プロジェクトは、2023年の世界鉄鋼協会(WSA)のスティーリー賞「低炭素鋼の生産における卓越性」部門で最優秀賞を獲得。
■ドイツの鉄鋼大手、製鉄内にシュレッダー工場を建設(4月5日・テックスレポート)=ドイツの鉄鋼大手であるザルツギッターは4日、同社の一貫製鉄所の敷地内に大規模なシュレッダー工場を建設すると発表した。同社は現在、「SALCOS®」と名付けた低CO2製鉄転換プロジェクトを実施しており、第一段階では直接還元プラント、電気炉、水素製造電解プラントなどを導入。26年からの稼働を予定。シュレッダー工場も同時期に稼働開始する見込み。
■スウェーデンのSSABは高炉を廃止し電炉2基を建設(4月3日・テックスレポート)=スウェーデンの大手鉄鋼メーカーSSABは北部のルレオに電炉2基、冷間圧延ライン等を備えた新電炉圧延工場を建設すると発表した。年産能力は250万トン。操業開始は2028年末を予定。同社は現在高炉一貫製鉄を行っているが、このミニミルが稼働すれば高炉は操業停止する見込みだ。SSABは21年にLKAB、ヴァッテンフォールと共同で「HYBRIT」パイロットプラントを立ち上げ、水素を還元剤としたスポンジ鉄(直接還元鉄)を製造している。新設予定のミニミルでは、このスポンジ鉄と鉄スクラップを使用してカーボンフリー鋼材を生産する。
■鉄スクラップ、需給逼迫観測 脱炭素へ電炉シフト 囲い込み増、相場上昇促す(4月2日・日経新聞)=鉄鋼業界の脱炭素の動きを受け、製鋼原料の鉄スクラップが国内で不足するとの観測が出始めた。鉄鉱石と石炭を原料とする高炉の製鉄に比べ、鉄スクラップを使う電炉の製鉄は二酸化炭素(CO2)排出量を4分の1に低減でき、日鉄などが導入を進める。鉄スクラップを確保するための囲い込みが増え、相場上昇を促しつつある。
3月
■日本企業の気候関連基準、スコープ3も開示(3月30日・日経新聞)=サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は29日、日本企業の気候関連開示基準の草案を公表。自社拠点での排出分だけでなく供給網上の排出分(スコープ3)も開示を求める。東証プライム企業は早ければ27年3月期から強制適用となる可能性がある。対象企業は広がる見通しで開示体制構築が急務となる。
■企業の温暖化ガス排出量、開示義務化へ(3月27日・日経新聞)=金融庁は26日、有価証券報告書で温暖化ガス排出量の開示などを義務付ける。東証プライム上場企業のうち、時価総額3兆円以上の企業から段階的に適用し、最終的に全プライム企業に広げる方向で検討する。
■CO2除去市場、2年で36倍に(3月16日・日経新聞)=大気中のCO2濃度を減らす新技術の開発が加速してきた。米国などで「CO2除去」を手がける企業設立が相次いでいる。世界のCO2除去の市場規模は23年までの2年間で36倍に急増。さらに拡大する可能性が高まっている。
■ティッセンクルップ、水素還元製鉄の試験設備を建設(3月11日・産業新聞)=独鉄鋼大手のティッセンクルップは7日、水素還元製鉄の試験設備建設の契約を発表。26年初の稼働予定。鉄鋼の応用研究を手掛けるBFIと共同で実証を重ね、水素還元技術確立を目指す。
■温暖化ガス開示義務付け 米SECが採択(3月8日・日経新聞)=米証券取引委員会(SEC)が6日、米上場企業に温暖化ガス排出量の開示を義務付ける。日米欧など世界主要地域が開示制度化で足並みをそろえる。26年度以降に開示が順次始まる。サプライチェーンを通じた排出量(スコープ3)は当初案に盛られたが、今回規則には含めなかった。SECの規則は米企業だけでなく米国に上場するトヨタやソニーなどの日本企業も対象となる。
■グリーン水素、中国が攻勢(3月5日・日経新聞)=中国で急速にグリーン水素関連の産業が活況を呈している。50年にCO2の実質排出ゼロを実現するには、「グリーン」の割合を77.8%まで引き上げる必要がある。中国が公表したグリーン水素の生産目標をみると、内モンゴル自治区が年50万トンで最も多く、内陸部での生産計画が目立つ。土地が広く日照に恵まれ、太陽光や風力発電に適し再生エネ発電所の投資が相次いだ地域だ。水素はパイプラインによる長距離輸送が可能だ。50年時点で世界最大の水素需要国となる中国で、国内消費の大半をパイプライン経由の水素が占めるという。グリーン水素の生成に欠かせない電解装置でも中国企業の台頭が目立つ。中国国内の電解槽の導入容量は20年には1割に満たなかったが、23年末に1.2ギガワットと、世界全体の5割を占めるなど急成長している。
■マレーシアでCO2貯留(3月2日・日経新聞)=ENEOSとJX石油開発、三菱商事は1日、マレーシア国営石油ペトロナス傘下のペトロナスCCSソリューションズと連携し、東京湾周辺の工業地帯で排出されたCO2をマレーシアに輸出し貯留すると発表。日本は50年までに年1.2億~2.4億㌧のCO2を回収・貯留する目標を掲げるが、海外との協力が欠かせない。
2月
■EV変調、世界に広がる(2月29日・日経新聞)=米アップルが電気自動車(EV)の開発計画を中止する。新規参入組では米新興EVメーカーのリビアン・オートモーティブは人員削減に踏み切った。家電大手ダイソンもEV開発から撤退。独メルセデス・ベンツは30年の「完全EV化」を見直し、新車販売の最大50%がEVとPHV(プラグインハイブリッド)見通しを「20年代後半」に遅らせた。EV補助金効果の一巡や、EV販売の減速が背景だ。欧州ではドイツが23年12月中旬からEV補助金の支給を停止。中国でもEV購入補助金などを22年末に終了した。
■クリーン水素、価格10倍(2月23日・日経新聞)=水素は現在、天然ガスや石炭からつくる方法が主流だ。クリーン水素の市場価格は化石燃料でつくる水素より10倍ほど高い。米国やEUはクリーン水素への支援を強めている。日本も国内水素供給量を30年に現状の1.5倍の300万トン、50年に2000万トンに増やす目標を掲げる。今後15年で3兆円を投じ、水素製造時のCO2排出量を従来より7割減らした場合、石油由来との販売価格差を補助する。
■FINANCIAL TIMES・脱炭素を阻む思い込み(2月21日・日経新聞)=地球温暖化と闘うために家計所得の1%を毎月寄付する意思がある人がどれくらいいるのか。世界125カ国で計13万人に実施した研究の分析では、驚きの69%だ(2月上旬・発表)。「驚きの」と言ったのは調査対象者の大半が69%をとは思っていなかったからだ。予想平均は43%だった。調査対象者の89%が地球温暖化と闘うために政府がもっと対策を取ることを望んでいるにもかかわらずだ。「世界の大多数は気候変動と闘いたがっているが、その多数派が自分たちは少数派だと思っている」
■三菱ガス化学、CO2からメタノール製造(2月19日・日経新聞)=三菱ガス化学は26年度にも水島コンビナートで専用プラントを稼働し、CO2からメタノール(CH₃OH)を生成し、「カーボンリサイクル」のモデルをつくる検討を始めた。三菱ガス化学は30年までに世界で合成メタノールを年10万トン生産する目標を掲げる。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)予測によると、50年の世界の生産規模は年5億トンと20年から5倍に拡大する。特に再生可能エネルギー由来で製造する「グリーン水素」と、工場などから回収したCO2の化学反応で生成する「e―メタノール」が過半を占める見通しだ。壁は水素の調達コストだ。
IRENAによると現在のe―メタノールの国際価格は石油由来より約10倍高い。国内の水素価格は1㎥あたり100円程度だが、日本政府は今後15年で3兆円を投じ、30年に30円を目指す。
■排出量開示、プライム企業に義務づけ(2月19日・日経新聞)=金融庁は東証プライム上場企業を対象に温暖化ガス排出量開示を義務づける検討に入る。自社分だけでなく調達・輸送などの取引先を含む開示を求める。国際基準は温暖化ガス排出量について自社分(スコープ1)や他社供給の電力使用などの分(スコープ2)に加え、原料の調達や製造、輸送、販売時などサプライチェーン上で排出される取引先全体の分(スコープ3)の開示を求めている。
■脱炭素へ銀行に開示義務 主要国で26年にも(2月16日・日経新聞)=主要国は気候変動リスクを26年にも銀行に開示を義務づける。脱炭素に伴い価値がなくなる設備は「座礁資産」と呼ばれる。あらかじめ石油・ガスや石炭、自動車、化学など18の業種別の融資規模や不良債権額、貸し倒れに備えた引当金など詳細な情報の開示を求める。
■鉄鋼連盟、22年度CO2排出量、13年度対比22・7%減と報告(2月15日・産業新聞)=鉄鋼連盟は14日、カーボンニュートラル行動計画の進捗状況を審議会に報告し、エネルギー起源のCO2排出量が13年度対比で22・7%減。また22年度の粗鋼生産は23・0%減で低稼働率による効率悪化を省エネなどの努力で食い止めた分が3・7%相当あるとみた。22年度は30年度目標の13年度比30%削減に対して75・8%の進捗だった。
■脱炭素の現在地(上) 産業構造転換促す動力源に(高村ゆかり・東京大学教授)(2月15日)=国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告書によれば、1.5度目標達成には19年比で30年に温暖化ガスの排出量を43%削減、35年に60%削減、50年ごろにはCO2排出を実質ゼロにする必要がある(図参照)。EUは「欧州グリーンディール」として、10年間に官民で140兆円規模の投資実現を目標とした支援策を定めた。米国は22年8月のインフレ抑制法で、今後10年間で約60兆円を歳出する。日本でも、23年2月のグリーントランスフォーメーション(GX)基本方針で国が総合的な戦略を定め「GX経済移行債」を活用した20兆円規模の先行投資支援し今後10年間に150兆円超の官民GX投資を実現する。
■GX債、水素などへ10年20兆円(2月15日・日経新聞)=財務省は14日、脱炭素資金を調達する「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」の10年債入札を初めて実施した。GX経済移行債は50年の温暖化ガス排出実質ゼロの実現に向け、政府が脱炭素支援資金を調達する新しい国債だ。10年間で20兆円規模の発行を予定する。20兆円のうち13兆円は使途が決まっている。脱炭素燃料として期待される水素の普及に向けて15年間で3兆円を投じ、鉄鋼や化学など製造業の脱炭素に10年間で1.3兆円を充てる。
GX債の償還財源は、CO2排出に課金するカーボンプライシングの2つの手法を使う。まず28年度から化石燃料の輸入企業に排出量に応じた賦課金を求める。33年度からは排出量取引制度で電力会社にCO2排出枠を買い取ってもらうようにし、それを償還財源にする。
■鉄鋼連盟、22年度CO2排出量、13年度対比22・7%減と報告(2月15日・産業新聞)=鉄鋼連盟は14日、カーボンニュートラル行動計画の進捗状況を審議会に報告し、エネルギー起源のCO2排出量が13年度対比で22・7%減。また22年度の粗鋼生産は23・0%減で低稼働率による効率悪化を省エネなどの努力で食い止めた分が3・7%相当あるとみた。22年度は30年度目標の13年度比30%削減に対して75・8%の進捗だった。
■日本鉄鋼連盟は2月14日、カーボンニュートラル行動計画2022年度実績を取りまとめた。
*重要 「国及び高炉各社のカーボンニュートラルの取り組み資料参照」
■EU、温暖化ガス9割減 40年新目標案(2月7日・日経新聞)=EUの欧州委員会は6日、温暖化ガス排出量を40年に1990年比で90%削減する新目標を提示した。これまで30年に55%削減、50年の排出実質ゼロを掲げてきた。再生可能エネルギーの導入を加速させる。
■日本製鉄、水素還元試験炉でCO2排出を33%削減(2月7日・産業新聞)=日本製鉄は6日、君津の水素還元試験炉(内容積12㎥)で加熱水素を使ってCo2を削減するSuperCOURSE50の開発試験で、世界最高水準となるCo2排出量33%の削減効果を確認と発表。昨年8月の22%を大きく更新。大型高炉でのCo2排出量50%削減技術確立を目指す。
1月
■クリーン水素、官民で供給網構築へ(1月30日・日経新聞)=クリーン水素供給網整備に官民が乗り出す。政府は今後15年で3兆円を投じ、天然ガスとの販売価格差を補助する事業を始める。政府は製造時の水素1kgあたりのCO2排出量を3.4㎏以下とする方向で調整。支援対象として国内製造する事業者や、海外から輸入して販売する事業者を想定する。
■印タタ、英高炉休止(1月19日・日経・夕)=インドのタタ製鉄が英国最大のウェールズ南部のポート・タルボット製鉄所で、2基保有する高炉を休止する。同社は23年9月、英政府から約5億ポンド(約940億円)の支援を受け、高炉休止を前提とした電炉の新設を打ち出していた。英政府は高炉を休止しても電炉を新設すれば国内で「5000人以上の雇用が守られる」としていた。同社の英国内の従業員数は約8000人で、最大3000人の雇用が減る。労組は、高炉1基の稼働を32年まで続けることを求めたが、会社側は労組の提案を拒んだもようだ。
■岡田金属、ドバイに現地法人を設立(1月19日・産業新聞)=鉄スクラップ企業である岡田金属(本社=名古屋市緑区、岡田健司社長)がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに現地法人「OKADA PROJECT MANAGEMENT(オカダ・プロジェクト)」を設立した。同グループの海外事業は初。
■排出削減、46%目標届かず(1月17日・日経)=経産省は16日、国内372社による温暖化ガスの排出削減目標を公表した。産業部門の排出量の4割を占める鉄鋼では、日本製鉄が29%減となった。電気自動車向けの電磁鋼板や風力発電向けの鋼材など、他の産業の脱炭素化に向けて欠かせない産業でもある。政府は50年のカーボンニュートラル(温暖化ガスの実質排出ゼロ)に向け、30年度には13年度比46%減とする目標を掲げる。データのそろった企業合算の30年度の排出量目標は4.8億トンとなり、13年度比では40%減にとどまる。脱炭素に取り組む企業で構成する「GXリーグ」のホームページ上で、参加企業の30年度時点での削減目標を公開した。
■JFE条鋼、「環境配慮型電気炉鋼材WG」に参加(1月16日・産業新聞)=JFE条鋼は15日、経産省が発足したGXリーグの「グリーン商材の付加価値付けに関する提言書」に基づいて、普電工が募集する「環境配慮型電気炉鋼材ワーキンググループ」に参加する。
■政府の脱炭素20兆円支援(1月12日・日経新聞)=政府は総額20兆円の脱炭素支援制度を作る。温暖化ガスの排出削減で業種別の指針をつくり、企業に指導や勧告を検討する。経産省がつくる製鉄などの業種別の指針で後押しする。「排出する二酸化炭素(CO2)を何%減らす」といったように温暖化ガスの削減割合を定量的に示すことになるとみられる。
■三菱商事、グリーン水素供給網を構築(1月10日・日経)=三菱商事と子会社でオランダの再生可能エネ大手、エネコの合弁会社が生産する。プラントの建設をオランダで26年に始め、29年から水素を作る計画だ。1カ所での生産規模としては現在稼働中の世界最大のプラントの30倍近くに上る。投資額は1000億円超となる見通し。
■企業の設備共同廃棄、脱炭素なら一部容認(1月6日・日経新聞)=公正取引委員会は脱炭素につながる企業の共同事業に関する指針を改定する。企業が設備を共同で廃棄する際、条件付きで企業間での情報交換を認める。明確にするのは設備の廃棄や素材調達を巡る共同事業だ。
2023年12月
■全補助金、脱炭素を要件に 農水省(12月30日・日経新聞)=農水省は27年度をめどにすべての補助金の支給要件に脱炭素対策を加える。世界では温暖化ガス排出量全体の4分の1程度を農業などが占め、同分野の対策を強化する。
■中国の宝武鋼鉄集団、水素ベースシャフト炉に火入れ(12月27日・テックスレポート)=中国の宝武鋼鉄集団は26日、湛江製鉄所で水素ベースシャフト炉(DRIプラント)に23日、火入れしたと発表した。当初の予定より約2ヵ月早い稼働開始となった。年産能力100万㌧、還元剤に天然ガス、コークス炉ガス、最大100%の水素を使用する。使用水素は天然ガス、風力、太陽光による発電によるものでCO2排出量を年間50万トン以上削減される見込み。
■CO2地下貯留権を創設(12月20日・日経)=政府は6月、CCS支援事業参画する7件を採択。10年間で4兆円ほどの官民投資を見込む。貯留に適した地域の調査や試掘を始める。CO2の地下貯留(CCS)を認める「貯留権」や、貯留の適地かどうかを確認するための掘削を認める「試掘権」を設ける。関連法案を2024年の通常国会に提出する調整に入る。
■英、27年までに国境炭素税を導入(12月19日・日経)=英政府は18日、環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税を課す「炭素国境調整措置(国境炭素税)」を27年までに導入と発表した。26年に本格導入する欧州連合(EU)に続く。対象の輸入品は、鉄鋼、アルミ、肥料、水素、セラミックス、ガラス、セメント。詳細な品目は24年に検討する。
■竹中工務店、巖本金属、東鉄など5社、循環サイクルに向け連携(12月14日・日経)=竹中工務店、巖本金属、岸和田製鋼、共英製鋼、東京製鉄の5社は14日、竹中工務店が掲げる「サーキュラーデザインビルド」コンセプトに基づき、建築における電炉鋼材(鉄)を活用した鉄スクラップ循環サイクルの全体最適に向けて連携すると発表した。
「サーキュラーデザインビルド」は建築物設計と施工段階でリサイクル建材の選択や解体を考慮した取り組み。5社は今後、竹中工務店が解体する建築物から排出される鉄スクラップを巖本金属が回収、加工し東京製鉄、岸和田製鋼、共英製鋼が製品化する。
■EV・半導体、10年間税優遇・脱炭素関連5分野(12月13日・日経)=政府・与党は12日、企業を対象とする24年度税制改正の大枠を固めた。EVなどの生産量に比例した法人税の減税期間は計画認定から10年間。特許など知的財産に関わる法人税は7年間優遇する。支援対象はEV・蓄電池、半導体、再生航空燃料(SAF)、再生可能エネルギーなどで生産した鉄の「グリーンスチール」と植物や廃棄物から製造した化学製品「グリーンケミカル」の5分野だ。各年度の税優遇の上限額を半導体は法人税の20%、半導体以外は40%までとする。EVは1台あたり40万円、SAFは1リットルあたり30円、グリーンスチールは1トンあたり2万円など支援する。26年度末までに事業計画の認定を得るよう求める。
■日本製鉄、JFEスチールなど17社、グリーン鋼材指標化を提言(12月6日・産業新聞)=GXリーグの参加企業のうち日本製鉄、JFEスチールなど17社で構成するグリーン商材WGは4日、グリーン鋼材の高付加価値化の指針案、先行事例を示す提言書を公表した。
11月
■企業の脱炭素実績を開示(11月27日・日経)=4月に施行した改正省エネルギー法は、年間の電力使用量が多い1万2000社程度に対し、再生エネの電力などの割合を24年度から経済産業省に報告するよう義務付けた。電力などエネルギー使用量が原油換算で1500キロリットル以上の企業が対象になる。21年度のCO2排出量は産業部門が全体の35%を占めた。
*省エネ情報、47社が開示宣言(11月29日・日経)=経産省は28日、省エネ法・定期報告情報の開示制度の試行に関して、47社が開示宣言と発表した。鉄鋼業では日本製鉄、JFEスチール、トピー工業、愛知製鋼、山陽特殊製鋼、大同特殊鋼、大平洋金属が入った。金属関連では日鉄鉱業、LIXIL、キッツ、日本精工、クボタなどが宣言した。
■EMスチール、水素還元製鉄へ(11月27日・テックス)=アラブ首長国連邦(UAE)の製鉄最大手であるEMスチールは22日、同国の再生可能エネルギー企業マスダールと共同で、水素還元製鉄を開発すると発表した。EMスチール製鉄所に電解槽を設置、還元剤として天然ガスの代わりに電解水素を利用する。マスダールは30年までに年間100トンのグリーン水素生産を目指している。
■大同特殊鋼、JFEスチールから電気炉を受注(11月16日・産業新聞)=大同特殊鋼は15日、JFEスチールが東日本製鉄所(千葉)第4製鋼工場への電気炉を受注と発表。炉体旋回式電気炉「STARQ」で、13年での自社工場への導入後、他社への外販は3社目となる。
■JFE倉敷、大型電気炉27年末の立ち上げを想定(11月9日・産業新聞)=JFEスチールの北野嘉久社長は8日、倉敷地区で検討している大型電気炉導入について「政府支援を前提に27年末立ち上げを想定」とした。大型電炉(年産約200万トン)での高級鋼製造は世界初。27年に高炉1基から切り替える。原料に使用する直接還元鉄のUAEでの工場建設を計画するとともにインフラ整備を要するため、政府支援の必要をあらためて強調した。
■日本製鉄、CNの実機化を加速(11月6日・産業新聞)=日本製鉄は、50年を目標としていた水素還元鉄製造と高炉水素還元(スーパーCOURSE50)の実機化を40年ごろに前倒しを図る。政府のGI(グリーンイノベーション)基金の拡大を受け実機化を加速する。
10月
■JFEとENEOS、CO2フリー水素利活用を検討(10月31日・産業新聞)=JFEスチールとENEOSは30日、水島コンビナートでCO2フリー水素の利活用に関する共同検討を開始した。30年までにCO2フリー水素供給網の構築を目指す。
■JFEスチール、建設業界にワンストップ提案(10月31日・産業新聞)=JFEスチールは30日、建設分野で新たな提案活動(「JFESCRUM(スクラム)」)を23年度下期から展開する。建設業界にJFEスチールの技術力を結集、ワンストップで迅速対応し、支援する。
■日本製鉄の低CO2鋼材、GEが採用(10月31日・産業新聞)=日本製鉄は30日、低CO2鋼材がGEのエネルギー事業部門に採用されたと発表。変圧器向けの方向性電磁鋼板で、マスバランス方式を活用しCo2排出量の100%に相当する削減量を割り当てた。
■鉄鋼連盟、「マスバランス・ガイドライン」を改訂(10月27日・産業新聞)=鉄鋼連盟は26日、「マスバランス方式を適用したグリーンスチールに関するガイドライン」を改訂・公表した。「マスバランス方式」は鉄鋼製造企業が、自ら計画し、追加コストを負担し、コミットしたCO2削減証書を発行、任意の製品に配分し証書と共に供給するもの。顧客は、自社のスコープ3排出量を低減することが可能だ。神戸製鋼所の「Kobenable Steel」、日本製鉄の「NSCarbolex」、JFEスチールの「JGreeX™」などが販売されている。
■JFEのグリーン鋼材、初の海外受注(10月27日・産業新聞)=JFEスチールは26日、「マスバランス方式」で製造されたグリーン鋼材「JGreeX™」が欧州で製造される変圧器採用が決定したと発表。「JGreeX™」初の海外受注であり、電磁鋼板での採用も初となる。
■POSCO、豪州でグリーン水素生産調査を開始(10月26日・産業新聞)=POSCOは24日、西豪州でホット・ブリケット・アイアン(HBI)生産に向けたグリーン水素生産の共同調査を開始と発表。豪パースでフランスエンジ社と共同調査に合意。還元材の10%に水素を使うため、年間2~4万㌧のグリーン水素を確保したい考え。28年から商業生産を目指す。
■東京製鉄、尼崎港に「東京製鉄関西サテライトヤード」を24年5~6月開設(10月25日、テックスレポート)=東京製鉄は24日、エンビプロ・ホールディングスの連結子会社・NEWSCONが運営する尼崎港(兵庫県)集荷ヤードを「東京製鉄関西サテライトヤード」に名称変更し、来年5~6月に運用を開始すると発表。22年6月に開設した名古屋サテライトヤードに続く、同社2拠点目のサテライトヤードとなる。NEWSCONの「尼崎ヤード」は4,300㎡と3,600㎡の2つ、合計7,900㎡。東鉄はこのうち4,300㎡ヤードを「関西サテライトヤード」として開設。扱い量は月間1万トン以上を見込む。
ヤードには東鉄が検収員を派遣し、荷役業務全般をNEWSCONが担う。集荷対象はヘビー・スクラップが主体となる見通しで、納入方法や検収条件は東鉄岡山工場に準じる。
■リバー、藤沢事業所建替で東鉄、エムエム建材と循環スキーム(10月23日・テックスレポート)=TREホールディングスグループのリバー、東京製鉄、エムエム建材の3社は23日、リバー藤沢事業所の建替工事に伴う解体工事で発生する鉄スクラップを東鉄に納入し、その製品を新築建材として使用する循環スキームに取り組むと発表。「鉄のクローズド・ループ」を確立する。工事期間は23年8月から25年9月末まで。構造はS造で、延床面積は工場棟が1318.40m2、事務所棟が348.90m2となる。
■米、EUに関税上げ要請 排出量多い国からの鉄鋼輸入(10月20日)=米政府がEUにCO2排出量が多い国からの鉄鋼・アルミの輸入に共同で高関税を課す仕組みを提案している。脱炭素化を進めるという旗印のもと、世界市場を席巻する安価な中国製品依存の脱却をはかる。実現すれば米欧以外にも参加国を募る。米政府は新しい枠組みへ日本などにも参加を求めるとみられる。中国との経済関係が深い国々には難しい選択となる。
■東鉄、陸上運賃体系を見直す、高速道路料金も負担(10月17日・産業新聞)=東鉄は物流の24年問題に対応するため、11月1日から陸上運賃体系を見直す。トラック運送業者に支払う全工場および全中継地を起点とする製品輸送に係る全ての陸上運賃(持ち込み契約)を「標準的な運賃」を参考に引き上げるとともに、往復の高速道路料金を負担する。
■ニューコア、リサイクル会社を買収(10月17日・テックスレポート)=米国電炉最大手のニューコアは16日、グループ傘下のリサイクル会社(リバー・メタルズ・リサイクリング=RMR)がシンシナシティのガーデン・ストリート・アイアン&メタルを買収と発表。RMRのリサイクル施設は19ヵ所となった。ニューコアは鉄スクラップ会社であるデイビッド・J・ジョセフ・カンパニー(DJJ)を保有。RMR社はDJJ社の完全子会社である。
■神戸製鋼、大型高炉でCO2・25%削減に成功(10月17日・産業新聞)=神戸製鋼は23年4月から6月にかけて加古川の大型高炉(4,844 m3)で約2ヵ月にわたり行われた。高炉にMIDREX®プロセス(天然ガスを使った還元鉄製鉄法)のHBIを装入し、CO2排出量を従来比の25%削減)できることを確認した。低CO2高炉鋼材“Kobenable® Steel”の更なる社会・顧客への普及を図り、増産供給体制の構築を進めていく考えだ。
■米、水素生産1兆円助成(10月15日)=米政権は13日、全米7カ所を水素の生産拠点として選定したと発表。70億ドルを助成し、経済の脱炭素化を促して「水素大国」を目指す。三菱重工業のプロジェクトも選定され、日本への輸出を視野に入れる。
■カーボン・クレジット市場、東証が開設(10月12日・日経朝刊)=東京証券取引所は11日、CO2排出量取引(カーボン・クレジット)市場を開設した。東証が扱うのは削減方法によって「省エネ」「再エネ(電力)」「再エネ(熱)」「森林」など6つに分かれ、1トン単位で取引する。取引所で直接売買できるのは専門資格を持つ証券会社だけ。排出量取引は脱炭素に向けて政府が推進するグリーントランスフォーメーション(GX)政策の一環だ。
EUは2005年に排出量取引市場を開設。取引量は域内のCO2排出量の4割強をカバーしている。排出量を削減しなければ罰金を科される制度が設けられたこともあって取引価格は上昇し、23年に初めて1トンあたり100ユーロ(約1万5000円)を突破した。
■EU、輸入品に炭素関税・インド鉄鋼メーカー打撃(10月11日・日経朝刊)=EUは、環境対策が十分でない国からの輸入品に事実上の関税をかける「国境炭素調整措置(CBAM)」を26年から導入。炭素排出量報告が義務化された。施策第1弾では、輸入業者は製品生産時に排出した温暖化ガスの報告が求められ、怠ると罰金が科される。欧州地域への販売が大半を占めるインドの鉄鋼メーカーは苦境に立たされている。ただアジア諸国はCBAMに反発。中国はWTOに懸念を表明し、保護主義的措置と主張。インドもWTOで異議を唱える予定だ。
■国境炭素税、アジア鉄鋼改革迫る(私たちの気候変動解決策・創業者 キム・ジュジン氏)(10月7日・日経朝刊)=EUは19年、環境対応が不十分な国からの輸入品に事実上の関税をかける「国境炭素調整措置(国境炭素税)」計画を発表。10月からEUに輸出する企業は製品CO2排出量報告が義務づけられた。鉄鋼の81%がいまだに石炭を使う高炉で生産されるアジアにとっては大きな問題だ。韓国エネルギー経済研究院は欧州の輸入企業が現行水準の韓国産鉄鋼を購入するには、年間約1億9600万ドルの「国境炭素税証明書」を購入する必要があるという。これは現行輸出額の8%にあたる。
日本の冷延鋼板の価格は少なくとも13%押しあげられるとみられる。アジア以外の鉄鋼メーカーは低炭素で先行している。アルセロール・ミタルのハンブルク工場は、30年までに年間100万トンの「ゼロカーボン・スチール」を生産する予定。ドイツのザルツギッターも33年までに年間190万トンの生産をめざす。これらの目標は政府の補助金によって後押しされる。オーストラリアや米英は、鉄鋼業界も対象になる独自の国境炭素調整制度を検討している。日本製鉄や韓国ポスコは欧州同業より低い排出削減目標を設定し、その低い目標を達成する行動さえも不十分だと批判される。アジアの鉄鋼メーカーの将来は政策立案者の決断にかかっている。
*安価な水素調達が課題(10月7日・日経朝刊)=日本の鉄鋼業も安価な水素の大量調達が課題だ。鉄鋼業のCO2排出量は産業部門の約40%を占める。2050年に約2000万トンもの水素が鉄鋼業だけで必要と試算される。現状では水素供給は全産業で約400万トンにとどまる。しかもグリーン水素の国内コストは高い。日本製鉄は傘下のスウェーデン企業での熱処理工程で現地生産した水素を活用する。独シンクタンクは水素コストが安い国で鉄鋼素材をつくり取引する「グリーン鉄貿易」による世界規模での脱炭素を提唱する。
■GX資金20兆円、配分や戦略議論(10月3日・日経)=政府は23年度から発行する「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」で調達する資金を巡り、分野ごとの配分を議論する専門家会議を近く立ち上げる。GX債は向こう10年間で20兆円規模の発行を予定する。政府資金を呼び水に官民で150兆円超の投資につなげる
■住商、JFE製グリーン鋼材で建築(10月2日・日経)=住友商事は東京都内でCO2排出量を実質ゼロの「グリーン鋼材」を使ったオフィスビルを25年3月に竣工させる。日本のCO2排出量の約3割を不動産業界が占める。グリーン鋼材は製鉄会社の脱炭素の研究費用が上乗せされるため、通常の鋼材よりも最大で3倍程度高い。JFEは30年までにグリーン鋼材を現在の20倍以上の年500万トンまで増産する計画だ。
*建築CO2量を素早く把握 大成建設がシステム開発(10月2日・日経)=大成建設は、建材の生産時や施工時に出るCO2排出量を効率的に算出するシステムを開発した。
9月
■JFEの海外投資家比率、30%に拡大・増資・CB組み合わせ 脱炭素に活用(9月29日・日経)=JFEHDが海外投資家向けに実施した公募増資と新株予約権付社債(転換社債=CB)による約2040億円の資金調達手続きが28日、完了した。外国人持ち株比率は23年3月末の約24%から9月末に30%程度に拡大する見通し。今回増資で得た資金の大半は電気自動車(EV)の普及で需要が旺盛な高性能鋼材「電磁鋼板」の生産増強の投資に使う。脱炭素投資で30年度までに1兆円規模を見込むなど継続的に巨額投資が続く。
■第1回日韓グリーンスチール共同セミナー開催(9月28日。テックスレポート)=鉄鋼連盟は27日、今月21日に韓国・ソウルで「第1回日韓グリーンスチール共同セミナー」を韓国鉄鋼協会と共同開催したと発表した。泉山雅明・鉄鋼連盟地球環境委員会委員長(日本製鉄)、ビョン・ヨンマン 韓国鉄鋼協会副会長、来賓として経産省金属課松野大輔課長、韓国産業通商資源部オ・チュンジョン産業政策室鉄鋼セラミック課長をはじめ、日韓両国の政府関係者、鉄鋼企業を中心に約100名が参加した。
セミナーでは ◆世界の脱炭素政策動向 (EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)、米EU鉄鋼・アルミニウム グローバルアレンジメント等) ◆グリーンスチールに関する国際基準・動向 ◆両国における鉄鋼業カーボンニュートラルに向けた政策・技術開発 ◆トランジション期におけるトランジションファイナンス・グリーンスチールブランドへの取り組み―――など、鉄鋼業のカーボンニュートラルに関する幅広いテーマを対象に意見交換が行われた。
■インドの鉄鋼大手JSWが鉄スクラップ会社を完全子会社化(9月25日。テックスレポート)=JSWスチールは、同社とNational Steel(NSHL)の合弁会社であるNSL Green Steel Recycling(NSL)を完全子会社化した。JSWは自社工場隣接地にシュレッダー施設の建設を検討。インドでは脱炭素化と資源リサイクルへの取り組みを強化しており、大手製鉄会社既存回収事業会社の買収や出資に乗り出している。
■川崎汽船、CO2 削減量証明書を発行(9月25日。テックスレポート)=川崎汽船は、同社運航のスープラマックス型バルクキャリア「ALBION BAY」で舶用バイオ燃料を用い、CO2 削減認証と証明書の発行を実施した。同社は昨年7月から8月にかけJFE スチールと住友商事の協力のもとJFE スチール西日本から熱延コイルを積載、パキスタンに向けて運航していた。
■英リバティ・スチール、ハンガリーに電炉導入(9月22日。テックスレポート)=英リバティ・スチールと中国冶金科工集団(MCC)の傘下のエンジニアリング会社CISDI(中冶賽迪集団)は、ハンガリーのドゥナフェール製鉄所の脱炭素化パートナーシップを締結。同社とCISDIは石炭ベースの製鉄から150トンの新電炉を設置し直接CO2排出量を約80%削減する。
*リバティ・スチールは今年7月、経営破綻したハンガリーの鉄鋼メーカーISDドゥナフェール(Dunaferr)を買収。同社はオーストラリアやチェコの各製鉄所に電炉の導入を発表。今回ハンガリーでも導入、グリーン化に注力する姿勢を示している。
■水素製鉄の開発支援、倍増4500億円(9月16日・日経朝刊)=経産省は製鉄工程でCO2排出量を5割以上減らせる「水素還元製鉄」への開発支援額を4500億円に倍増すると発表。実用化時期も当初計画の2040年代半ばから5年程度前倒しする。国内産業で最も多くCO2を出す鉄鋼業界の脱炭素化を後押しする。脱炭素技術の開発促進のために設けた総額2.7兆円の「グリーンイノベーション(GI)基金」から支出する。
■日本鋳造、低CO2鋳造製品の販売開始(9月13日・産業新聞)=日本鋳造は、23年度下期をめどに低CO2鋳造製品の販売を開始する。日本海事協会から第三者認証を6月末に取得した。マスバランス方式で本社・鋳鋼工場が生産し販売する。
■住友商事グローバルメタルズ、ゼロボード連携提案代理店契約を締結(9月12日・日経朝刊)=住友商事グローバルメタルズ)は11日、温室効果ガス排出量算定などを手掛けるゼロボード(本社=東京都港区)とソリューションパートナーシップ契約を締結したと発表した。ゼロボードのパートナー企業としてカーボンニュートラルの取り組みを支援する。
*住友商事グローバルメタルズ(2018年1月30日)=住友商事は30日、住友商事グローバルメタルズ、住商メタレックスへの金属事業部門の一部事業の移管を決めたと発表した。住友商事グローバルメタルズは鋼板、自動車金属製品、鋼管の3営業本部体制。4月1日、住商100%出資による金属事業部門の中核事業として、資本金100億円、売上高7000億円規模、住友商事の出向者が約半数の単体人員約550人の体制で本格始動する。
■中国鋼鉄工業協会、35年に電炉鋼比率30%以上目指す(9月10日・産業新聞)=中国でも電炉の導入を政府が促している。中国の電炉の粗鋼生産能力は22年末に年約1.9億トン。中国鋼鉄工業協会は35年に倍の4億トン、電炉鋼比率30%以上(22年9・7%)を目標に掲げ、国有鉄鋼大手も電炉導入を計画する。
■世界初の水素取引市場、ドイツに来年開設(9月10日・日経朝刊)=ドイツでは売買仲介市場を24年に開設する。鉄鋼大手のアルセロール、金融大手など欧州の50社以上で作る企業「Hintoco」が運営する。最安値の売り手から10年間の買い取り契約を結ぶ。次に最高値を示した買い手に1年などの短期契約で販売する。当面参加者を募るため、売買差額はドイツ政府が支払う。日本は生産コストの一部を政府が支援する仕組みを検討している。
■トヨタ、グリーン水素製造(9月9日・日経朝刊)=トヨタは米国に水素製造施設「Tri-Gen(トライジェン)」を建設。1日当たり約1.2㌧の「グリーン水素」を製造する。FCVの走行のほか燃料電池*トライジェンは燃料電池発電事業を手掛ける米フュエルセル・エナジーが運営する。トヨタは同社から水素や電力を20年間購入する契約を結んだ。
■鉄鋼、脱炭素投資 国内勢全体で10兆円(9月6日・日経朝刊)=国立環境研究所の調査によると、21年度の国内産業部門のCO2排出量のうち、鉄鋼が46%を占めた。脱炭素投資でJFEは30年度までに1兆円、日本製鉄は50年度までに4兆~5兆円が必要と試算。JFE(HD)は5日、総額約2100億円の資金調達を発表。日本製鉄は21年9月、3000億円規模の転換社債=CBを発行した。業界全体で10兆円が必要とされる。中国政府は500億元(約1兆円)の基金を設け、宝武鋼鉄集団主導で研究開発を始めた。日本では政府が脱炭素事業を支援する「グリーンイノベーション(GI)基金」から約1900億円が充てられた。ただ欧州や中国の動きと比べ、見劣りする政府支援に懸念の声が上がる。
■大阪製鉄、省CO2型電気炉を設置(9月6日・テックスレポート)=大阪製鉄は堺工場に省エネ・省CO2型電気炉「エコアークライト」(スチールプランテック社製)の設置を決めた。設置は25年度を予定。環境共創イニシアチブの「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」補助金の交付が決定しており、補助金受給後の投資総額は約87億円。
■日本製鉄、海の森プロジェクト(9月5日・産業新聞)=日本製鉄は4日、海の森プロジェクトの23年度最初として北海道茅部郡森町でビバリーユニットの施工を行った。施肥量は30トン程度。藻場再生による海洋環境改善と地球温暖化防止に挑戦する。
*鉄鋼スラグを活用した藻場再生「海の森プロジェクト」(同社hp)2022/11/17 (digitalpr.jp)
日本製鉄は、鉄鋼スラグ製品「ビバリー®ユニット」(鉄鋼スラグと廃木材チップを発酵させた腐植土を原料とした鉄分施肥材)を開発し、2004年から全国38カ所の沿岸へ提供を行ってきた。このたび6つの漁業協同組合と協業して「ビバリー®ユニット」の設置試験を開始します。近年、海草(アマモ)や海藻が大きく吸収しているブルーカーボンが注目されています。
■神戸鋼、EV向け新鋼板(9月1日・日経朝刊)=神戸製鋼は電動車の部品に使う新たな鋼板を開発した。開発したのは磁気が流れやすい「電磁純鉄鋼板」。一般的な鋼板から炭素などの成分を減らすことで磁束密度を高めた。モーターの動力を伝える車載部品など向けの供給を想定する。電動車向け部品での正式採用を目指す。国内の鋼材需要は少子高齢化に伴い、中長期的に減少する見通し。電動車向けの鋼材需要を収益源とする考えだ。
8月
■日鉄、欧州でクリーン水素鋼材を生産(8月21日・日経新聞)=日本製鉄グループは9月、欧州で環境負荷の低い方法で製造した水素を使う鋼材生産に乗り出す。日鉄傘下で特殊鋼大手のオバコ(スウェーデン)が自社工場で水素製造を始め、同社のCO2排出量を1割削減する。2030年をメドに他の製鉄所にも広げ、幅広い工程での脱炭素化を急ぐ。
*オバコは日鉄子会社の山陽特殊製鋼100%出資の電炉会社。オバコはスウェーデンとフィンランドに製鉄所を持つ。全体の供給量の4割ほどを占める主力のスウェーデンの製鉄所で環境負荷の低い電力で水を電気分解して水素を製造する。今回の水素製造設備の導入により、オバコ全体のCO2排出量のうち1割の削減につながる。
*製鉄の「上工程」がエネルギー消費の大部分を占めるが、圧延など「下工程」でも全体の2割相当のエネルギーを消費する。同様の設備を日本に導入するのは難しい。日本は火力発電の比率が高く水素製造コストが高い。また製造時のCO2排出量を削減しても見かけの性能は変わらず、脱炭素化に伴うコストを適切に鋼材価格に転嫁できなければ、鉄鋼メーカー側が投資に及び腰になる可能性もある。
■東京製鉄、直納店に「不適正ヤードにかかる注意喚起」(8月18日・産業新聞)=東京製鉄は16日、「直納店」に対し「不適正ヤードにかかる注意喚起」と題する文書を送付した。東鉄は法令順守の観点から、法令に反した不適正な保管・操業を行うスクラップヤード「不適正ヤード」が代納店として機能しないよう直納店に要請したもの。
■「日経新聞・社説」―CO2貯留の基盤整備を急げ(8月17日・日経新聞)=政府は今年3月にCCS活用の道筋を定めたロードマップを策定した。2050年に1.2億~2.4億トンの貯留を目標とし、重点支援する先行7事業を選定した。CCSは製鉄や化学などCO2の排出量が多く、再生可能エネルギーへの転換が難しい産業に不可欠だ。経産省によればCCSを使ってCO2を処理するコストは、水素やアンモニア燃料の利用と比べて遜色なく、場合によっては安くなる。カーボンゼロ実現へ、CCSを活用する総力戦で臨みたい。
■リオティントがEVダンプ 鉄鋼業を意識し排出減(8月9日・日経新聞)=英豪資源大手リオティントが2030年までに約1兆円を投じてCO2排出を半減する計画で、鉄鉱石鉱山にEVトラックや再生可能エネルギーを導入する。豪鉄鉱石大手フォーテスキュー・メタルズ・グループは、6月にピルバラ地区でEVトラックの走行試験を始めた。豪資源大手BHPグループも24年半ばにEVトラックの走行試験を実施し、27年ごろまでに本格導入を目指す。30年代半ばまでには全てのトラックのEV化をにらむ。オーストラリア政府は30年までに05年比で43%の排出量削減と、50年までの実質ゼロ達成を目指している。政府方針に加え鉄鋼業界への対応もある。鉄鋼業は世界のCO2排出量の7%を占めている。
■水素還元試験炉で、CO2 排出22%削減を確認(8月4日・テックスレポート)=日本製鉄は4日、君津の水素還元試験炉(内容積12m3)で、加熱水素を使用してCO2を削減するSuper COURSE50試験で、高炉本体CO2 排出量22%削減を確認した。同社は、21年3月公表の「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」で、「高炉水素還元」、「大型電炉での高級鋼製造」、「水素による還元鉄製造」を加えた、3つのカーボンニュートラルの実現を目指している。 Super COURSE50技術の開発試験は、 22年1月NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金に採択され、日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所、一般財団法人金属系材料研究開発センターの4社で、コンソーシアムを結成し、進めている。日本製鉄ではさらに30%以上の削減を目指した試験を23年内目途に予定しており、大型高炉でのSuper COURSE50技術(CO2排出量50%以上削減)確立の早期化に取組んでいくとしている。
参考
■日鉄、5年間の経営計画、鹿嶋など高炉休止(21年3月5日・日経新聞他)=日本製鉄は21年3月5日、高炉休止などを盛り込んだ25年度までの5年間の経営計画を発表した。
▼同社はすでに公表済の小倉高炉、呉・第1,第2高炉(呉製鉄所は23年9月をメドに全面閉鎖)、和歌山の第1高炉(21年9月末)の4基に加え、鹿島第3高炉を24年度末をメドに休止する。この結果、日本製鉄の国内高炉数は15基から10基となる。
*同社の国内粗鋼生産能力規模も20%減少し5000万トンから4000万トンに減少する。
■日本製鉄は2日、CCS2案件をJOGMECと託契約(8月3日・産業新聞)=日本製鉄は2日、CCS(炭素の回収・貯留)事業の国内2案件が正式採択され、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と委託契約を結んだ。伊藤忠などと進める日本海側東北地方CCS事業、INPEXなどと進める首都圏CCS事業の2件。日鉄エンジニアリングが開発、商業運転実績もある省エネ型二酸化炭素(CO2)分離回収技術、ESCAP(エスキャップ)など基盤技術を開発しており、CCSの早期社会実装を進める。
7月
■日本製鉄、EV電池ケース、鉄で耐熱性2倍(7月31日・日経)=日本製鉄は電気自動車(EV)に搭載する鉄製のバッテリーケースを開発した。
アルミ素材が主流だが、独自の鋼材で重量を同等にし耐熱性も単純計算で2倍超に高めた。
自動車業界ではアルミで巨大な車体部品を一体鋳造成型する「ギガキャスト」が進んでおり、トヨタはを26年投入のEVに採用する方針を打ち出している。鋼材の車載部品がアルミに置き換わるため、鋼材の取引が減る恐れがある。少子化による鋼材需要の減少を受けて、製鉄会社は生産能力を縮小している。
日鉄は主要な製鉄設備である高炉を段階的に休止しており、19年度から25年度末にかけて国内の粗鋼生産能力を2割減らす計画だ。*神戸製鋼は次世代のEVモーターに使う特殊な線材を開発した。鋼板を使ったモーターと比べ2割程度軽くできる。
■日本製鉄、「NSカーボレックス・ソリューション」対象技術を110件に拡充(7月28日・産業新聞)=日本製鉄は27日、社会のCO2排出量削減に寄与する高機能製品・ソリューション技術を総称するブランド「NSカーボレックス・ソリューション」(22年11月創設)の対象技術を110件に拡充し、全てを専用ウェブサイトに公開したと発表した。
■ISSB供給網での温暖化ガス排出量、推定値容認(7月27日・日経)=ISSBは国際会計基準(IFRS)を開発する国際会計基準審議会(IASB)の姉妹組織。6月下旬、重要なサステナ情報全般(S1)と気候変動(S2)で開示を求めた。スコープ3も対象とした。ISSB基準は24年から適用可能で、各国が取り込んで初めて企業に開示義務が生じる。英国やナイジェリア、ガーナ、シンガポールなどが適用する方向で検討。日本もこれをベースに開示基準を策定する。
企業からはスコープ3の開示は難しいとの声もあがる。このためISSBは基準適用の初年度はスコープ3の開示を免除。2年目以降は「推定値の活用を認める」「大企業には多くの開示を期待するが、中小企業にはそこまで求めない」(ISSB副議長)。
■現代製鉄、既存電気炉をHBI活用のため改造(7月27日・産業新聞)=現代製鉄は26日、25年までに既存電気炉をホット・ブリケット・アイアン(HBI)大量活用のため改造する。高炉法と組み合わせ、従来比20%低炭素化した鋼板を年間400万トン生産する計画。
■素材、CO2排出「見える化」 鋼材などで広がる(7月26日・日経)=鉄鋼などの産業素材について、メーカーが品目ごとに環境負荷の大きさを「見える化」する動きが広がっている。原料調達から生産、リサイクルに至るライフサイクルで発生する二酸化炭素(CO2)量などを、「エコリーフ」と呼ばれる環境ラベルの認証を得た上で開示する。
エコリーフは製品ごとの環境情報の信頼性を担保しながら開示する仕組み。日本製鉄は19年にH形鋼で初めて認証を取得。薄鋼板や鋼管など40製品超まで広げた。
建設関連では大手ゼネコンが、建物自体が環境に与える影響を評価する米国の「LEED(リード)認証」の取得を進めている。エコリーフなどEPD認証を受けた建設用鋼材を一定数使うとLEED認証の取得に有利に働くという。
産業用素材のエコリーフ認証取得の拡大については、需要先の企業の脱炭素の動きも影響を与えている。CO2排出について、自社で使った化石燃料や電力(スコープ1、2)だけでなく、原料となる素材の生産(スコープ3)などサプライチェーン(供給網)まで広げて把握する動きが広がる。認証を通じて公開されるデータが必要となっている。
鋼材では日鉄のほかJFEスチールなどもエコリーフ認証取得を進める。日鉄ではサントリー食品インターナショナルが22年夏に発売した缶コーヒー飲料の容器にエコリーフ認証のブリキ製品が採用された際、缶の表面に専用マークを施した。
■アルセロール、自動車部品大手と資源循環協定(7月25日・産業新聞)=アルセロールは21日、自動車部品大手のゲシュタンプと資源循環協定を結んだ。自動車生産過程のスクラップリサイクルを共同で構築する。自動車分野の低炭素鋼利用拡大に取り組む。
■港湾の脱炭素で認証(7月24日・日経 )=国交省は港湾の脱炭素化を巡り、管理者らの取り組みを評価する認証制度を創設する。積み荷の揚げ降ろしや船舶への燃料供給に関する整備状況を評価し、レベル分けし認証する。23年度中に試験運用を始める。国内に全125カ所ある主要港湾のうち、60カ所超が脱炭素化の事業計画策定に取り組む。
■JFEスチール、低炭素還元鉄のサプライチェーン確立に向け協業体制(7月18日・テックスレポート)=JFEスチールは18日、伊藤忠商事、アラブ首長国連邦(UAE)鉄鋼最大手のEmirates Steel Arkan(エミレーツ・スチール」)とAbu Dhabi Ports Group(「ADPG」)と共に、低炭素還元鉄のサプライチェーン確立に向けた協業体制の構築に関する4社間の覚書の交換を行った。
■欧州委員会、CBAM規則の移行措置として含有排出量報告義務を求める(7月18日・テックスレポート)=欧州委員会は26年から炭素国境調整メカニズム(CBAM:Carbon border adjustment mechanism)規則の本格適用開始を前に23年10月1日から移行措置として輸入品には含有排出量(直接・間接)を四半期ごとに報告義務を求める。
CBAM規則の概要(日本鉄鋼連盟調べ)
1.措置の概要=EU域外から対象品を輸入する際、輸入品の含有排出量に応じたEU-ETS(EuropeanUnion Emission Trading Scheme)の炭素価格の支払い(原産国で支払った炭素価格とEU-ETS無償枠分に炭素価格を差引いて調整したもの)を輸入者に義務づける。
2.対象品目。・対象域外(第三国)を原産地とする鉄鋼、アルミ、肥料、セメント、電力、水素。・鉄鋼の対象品目は、凝結させた鉄鉱石、銑鉄、フェロクロム、フェロニッケル、DRI、鋼塊・半製品、条鋼類、鋼板類、鋼管類、二次製品(鋼管継手、鉄鋼製の構造物およびその部分品、鉄鋼製のタンク、ガス用鉄鋼製容器、鉄鋼製のねじ・ボルト・ナット他、など)。
・150ユーロ以下の物品」、軍事用途の物品は対象外。・移行期間(23年10月1日~25年12月31日)終了前に、欧州委員会は対象評価拡大を評価。
3.除外対象の国・地域=・アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス、加盟国飛び地(ヒュージンゲン、ヘルゴランド、リヴィーニョ、セウタ、メリリャ)。
・EU-ETSが適用される国・地域、EU―ETSと当該EU域外・地域の排出権取引制度を完全に結びつける協定が締結されている国・地域。
4.EU―ETS無償枠との関係(EU―ETS指令改正)=・CBAMの本格導入期間開始となる26年から、EU―ETSの無償枠が以下のスケジュールで削減されることがEU―ETSS指令改正に関するトリローグ(欧州委員会、欧州議会、閣僚理事会の三者会合)で合意された。・2025年までに、欧州委員会は、EU域外への輸出を目的としたEU域内生産品の炭素リンケージのリスクを評価し、必要であれば、このリスクに対処するためのWTOに準拠した立法案を提示する。
→これを受け、かねてから輸出に対する措置を求めていた欧州の産業界からは輸出品に対する無償枠の維持を求める声が挙がっている。
*日本鉄鋼連盟、CBAMに関するパブコメを提出(同上)=日本鉄鋼連盟は13日、CBAM規則の移行期報告義務実施規則案に関するパブコメを欧州委員会に提出した。
記者会見した鉄連の地球環境委員会の手塚宏之副委員長(JFEスチール専門主監)は、次の4点を問題点として挙げた。
<1>WTOルールとの整合性を確保すべき、<2>CBAMの報告手続きの負担は制度目的(リンケージ防止)に照らし、最小限にすべき、<3>実施法ドラフトにおける不明点・詳細を早急に明らかにすべき、<4>「原産国での支払い済み炭素価格」について各国制度を尊重すべき―――などとしている。
■USスチール、主要3製品に環境製品宣言(7月14日・テックスレポート)=米国のUSスチールは13日、ビッグリバースチール(*)で生産された熱間圧延、冷間圧延、耐腐食性鋼板を含む主要3製品に環境製品宣言(*EPD)を発表した。情報開示は5年間有効で、顧客はライフサイクルに与える影響や排出に関する客観的な情報を得ることができる。
*EPDは米国材料試験協会が認証・監査しており、地球温暖化の可能性、スモッグ発生、水使用量―――など、環境影響に包括的な情報で提供する。
*ビッグリバースチールは米国アーカンソー州オセオラで操業する電炉圧延会社で、年産能力は330万㌧。2021年1月にUSスチールが買収した。
■東鉄、リサイクル鋼材は大阪・万博パピヨンに採用(7月12日・テックスレポート)=東鉄は12日、大阪・関西万博のパナソニックグループのパビリオンに、同社の鋼材が採用されると発表した。東鉄は13年から、パナソニックグループと家電リサイクル工場と「資源循環スキーム」を構築しており、今回のパビリオン建設鋼材約118トンの約82%、主な柱・梁の約98%に当たる 97.1 トンにリサイクル鋼材を用いる。万博期間終了後には再び鉄スクラップとして東鉄に戻り、パナソニックグループの製品などの原料として使用される。
■国際海運の温暖化ガス排出 50年実質ゼロ(7月12日・日経)=国交省は11日、国際的に往来する船舶から出る温暖化ガスを50年までに実質ゼロ目標について世界各国が合意と発表した。国連の専門機関、国際海事機関(IMO)の会合でまとめた。
■トヨタ、水素燃料電池「30年に10万台外販」(7月11日・夕・日経)=トヨタは11日、水素燃料電池を30年に年間10万台を供給との見通しを示した。欧米や中国を中心に水素市場の拡大が見込まれる。内訳は小型商用車・乗用車が5割強、大型トラックが3割強。
■日鉄、液体水素に強い鋼材(7月11日・日経)=日本製鉄は液化水素に触れても損傷しにくい性質を持つ新たな鋼材を開発した。水素が運搬しやすくなるため、水素ステーション向け需要を取り込みたい考え。開発した鋼材は、クロムを添加した「ステンレス鋼」の一種。一般的な鋼材は水素を吸収するともろくなる性質を持つ。脱炭素化には業界全体で50年までに10兆円規模の投資が必要になるとの試算もある。莫大な脱炭素投資に備えるためにも成長市場向けの製品開発を進め、稼ぐ力を一層高めていくことが課題となっている。
■独鉄鋼ティッセン、水素製造の子会社上場(7月8日・夕・日経)=ティッセン・クルップは7日、グリーン水素製造を手がける子会社、ニューセラがフランクフルト証券取引所に新規上場と発表した。サウジアラビアの政府系ファンドや仏BNPパリバのファンドなどが引き受け手となった。ニューセラは水素製造プラント約600基をすでに受注している。
■中国、「双炭」が加速(7月6日・産業新聞)=中国がカーボンピークアウトとカーボンニュートラルを目指す2つ「双炭」を示す中、鉄鋼大手は脱炭素化を加速している。6月中旬に上海市で開催された「23年国際冶金工業展覧会」で、鉄鋼大手が水素を還元剤とした直接還元鉄プロジェクトや再生可能エネルギー活用事例を紹介した。
■トヨタ、EVで生産改革 工程や工場投資を半減(7月5日・日経)=トヨタは4日、新たな生産技術「ギガキャスト」を電気自動車(EV)に採用。生産工程や工場投資を2分の1に減らす。ギガキャストはアルミ鋳造設備で一体成型した車体部品を製造し、部品点数と生産工程を大幅に減らせる。
*国内サプライチェーン、迫られる構造転換=ギガキャストの採用でトヨタは177個の鋼板のプレス部品をわずか2個の部品に置き換える。素材メーカーにも影響が及ぶ。車の素材の中心が鉄からアルミに変化するからだ。鉄鋼メーカー幹部も「採用動向を注視する」と警戒する。日本は薄くて強度の大きな高張力鋼板(ハイテン)の技術に優れる。アルミ比率が高まれば鉄鋼メーカーへの影響は大きい。EVになると部品点数が3割程度減る。内燃機関や燃料供給装置、変速機など多数の部品が必要なくなる。
■神戸製鋼、自動車用特殊鋼線「Kobenable Steel」初採用(7月4日・テックスレポート)=神戸製鋼は4日、同社の低CO2高炉鋼材『Kobenable Steel』が、自動車用特殊鋼線材で初めて採用されたと発表した。
マスバランス方式により鋼材製造工程でのCO2排出量を100%削減した『Kobenable Steel』には、トン当たりのCO2排出量の削減率が100%の『Kobenable Premier』と同50%の『Kobenable Half』の2種類があり、今回は後者となる。
6月
■三菱商事、グリーン水素の新会社(6月30日・日経)=三菱商事は事業子会社のオランダの再生エネ大手エネコと合弁会社「エネコ・ダイヤモンド・ハイドロジェン」を設立した。三菱商事とエネコが50%ずつ出資。グリーン水素の製造や販売に力を入れる。具体的な生産規模や販売時期は明らかにしていない。EUは30年までにグリーン水素の域内の生産能力と、域外からの輸入量をそれぞれ年間1000万トンにする方針を明らかにしている。三菱商事は欧州で、代替燃料やグリーン水素の事業に力を入れる。
■真相深層・鉄鋼の脱炭素、電炉転換には限界(6月28日・日経)=20年度に国内で排出された産業部門のCO2の約4割を鉄鋼業が占める。高炉製法を抜本的に見直す脱炭素戦略は「これまで作り上げてきた高効率システムをいったん壊すことを意味する」(JFE)。日鉄は5月、八幡と広畑で電気炉設置の本格検討に入った。30年までの建設を目指す。JFEは倉敷で27~30年に改修時期を迎える高炉を電炉に転換する。だが、電炉だけで鉄鋼を作ろうとすれば鉄スクラップが世界全体で足らなくなる。CO2排出を抑えながら、原料をいかに確保するか。ひとつのアプローチが「還元鉄」利用。JFEは25~26年をメドに還元鉄の製造に乗り出す。天然ガス資源が豊富なアラブ首長国連邦で製造、輸入する。ここにも課題はある。還元鉄製造には高品位鉄鉱石はしか使えず、その産出量のわずかしかない。低品位鉄鉱石を使える工夫が求められる。
コスト低減必要=日鉄、JFEともに高炉は残す計画だ。そこで始めた技術開発が「水素(還元)製鉄」だ。水素を使うと「吸熱反応」(炭素の場合は発熱反応)が起き、炉内温度が低下する。「加熱エネルギーをどう供給するのかは大きな課題だ」(日本製鉄)。*水素製鉄は水素の確保なくして成り立たない。政府は30年に水素生産コストを1㎥30円、50年には20円以下に引き下げたい考えだ。鉄鋼大手は現製法のコストに見合うには8円前後の価格が必要という。
■船舶、全て「グリーン鋼材」で JFE(6月21日・日経)=JFEスチールは20日、日本郵船系などの海運会社が建造予定の貨物船で、全て二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロとみなす「グリーン鋼材」を使うことが決まったと発表した。グリーン鋼材だけで船舶を建造する取り組みは世界初という。グリーン鋼材はCO2の削減分を特定の鋼材に割り当て、製造過程でその鋼材のCO2排出量を大幅に削減したとみなす仕組み。CO2削減にかかるコストが上乗せされるため価格が高く、採用が広がるか不透明だった。今回の販売価格は通常の鋼材と比べて4割ほど高い。JFEは運賃の引き上げを受け入れる前提で、グリーン鋼材で建造された貨物船で自社の鋼材の運搬をしてもらうようにした。
■JFE製鉄所からCO2回収検討(6月20日・日経)=JFEスチールは19日、石油資源開発や日揮ホールディングス、川崎汽船と共同で、「CCS」の実現に向けた検討を始めると発表。JFEの国内製鉄所から出るCO2を回収し、マレーシアに運搬・貯留することを想定する。
■アルセロール・ミッタル、CCUに成功(6月15日・産業新聞)=ミッタルは14日、炭素の回収・利用技術を持つランザテックとベルギーのゲントで進めているCCUが成功と発表。2億ユーロ(302億円)をかけて炭素を回収、エタノールに変換する商業生産を開始した。
エネルギーの基礎用語~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」 (meti.go.jp)
「CCS」とは=「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれます。発電所や化学工場などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入する(埋め殺しする)というもの。
「CCUS」とは=「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、分離・貯留したCO2を利用しようというものです。たとえば米国では、CO2を古い油田に注入することで、油田に残った原油を圧力で押し出しつつ、CO2を地中に貯留するというCCUSがおこなわれており、CO2削減が実現できるほか、石油の増産にもつながるビジネスになっています。
■経産省、CCS に7事業選定(6月14日・日経)=経産省と独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は13日、CO2を回収して地下に貯留する技術(CCS)について、国内外の計7プロジェクトを重点支援すると発表。電力、石油元売り、商社、製鉄の大手などが含まれる。国内の貯留エリアは苫小牧地域、日本海側の東北地方、東新潟地域、首都圏、九州北部沖や西部沖の5カ所。海外はマレーシアとオセアニア地域を輸送先とする2カ所を選んだ。日本製鉄が国内外で実施する3案件が入った。政府は7事業で年1300万㌧分が貯留できるとみている。
「関連情報」
*日本製鉄、海外でCO2地下貯留(23年1月25日・日経)=日鉄とエクソンのシンガポール子会社、三菱商事の3社が1月25日、地下貯留「CCS」の実現に向けた覚書(MOU)を結び、プロジェクトの検討に入る。鉄鋼業界からの排出量は国内全体の1割強を占める。日鉄は脱炭素の取り組みを加速させ、国際競争力維持を狙う。日鉄が国内に持つ製鉄所から排出されるCO2を分離・回収し、エクソンが参画するオーストラリアやマレーシア、インドネシアなど海外のCCS施設で貯留することを想定する。三菱商事は液化したCO2を専用運搬船で運搬するなど供給網構築を担う。エクソンは脱石油に向けて近年、CCSへの投資を拡大している。三菱商事が仲介することで、脱炭素を進めたい日鉄とCCSに注力するエクソンが結びついた。
■H2グリーンスチール、ベンツ社とグリーンスチール供給契約(6月12日・テックスレポート)=メルセデス・ベンツ社とH2グリーンスチール社は7日、メルセデス・ベンツ社の欧州生産拠点に年間約5万㌧のグリーンスチールを供給する契約を締結したと発表した。また両社は北米で生産されるグリーンスチールの供給に関する覚書にも調印した。この契約で供給する鋼材5万㌧は、スウェーデン北部のボーデンにあるH2グリーンスチール社の水素を利用した鉄鋼工場で生産される。今回の契約によって欧州の製造工場向けに脱炭素と地域密着の鋼材サプライチェーンを構築し、鉄スクラップのクローズド・ループ・リサイクルの確立と北米での持続可能な鉄鋼サプライチェーンの構築も目指す。
「関連情報」
*H2グリーンスチール社向け直接還元鉄プラントの新規受注 ならびに同社出資について(22年10月12日・神戸製鋼hp)=当社の米国100%子会社であるMidrex(ミドレックス社)と、ライセンス供与先であるルクセンブルグのエンジニアリング会社Paul Wurth S.A.のコンソーシアムは、H2グリーンスチール社向けに、MIDREX H2™直接還元鉄プラントを受注した。今回受注したプラントは世界初の100%水素直接還元鉄プラント商業機(年産能力は210万トンで25年の稼働開始予定)。また当社はH2グリーンスチール社への出資を決定するとともに、グリーンHBI(※2)購入に向けた協議を開始した。
*H2グリーンスチール社とは=鉄鋼業界の脱炭素化を目標に2020年にスウェーデンに設立された。再生可能エネルギーを用いた水電気分解により製造した水素を還元剤としてHot DRIおよびHBIを製造、Hot DRIは電気炉工程を経てグリーン鋼材として供給する。
*Hot DRIとは=Direct Reduced Iron(還元鉄)の略。鉄鉱石を還元した鉄鋼原料。炉内で還元したDRIを、冷却せずに炉から排出したものを、Hot DRI(HDRI)、冷却したものをCold DRI(CDRI)という。不純物の少ない清浄鉄源であり、高級スクラップや銑鉄の代替品として、電気炉で(近年は高炉や転炉でも)鉄源として使用される。
■POSCO、光陽製鉄所にコンスチール式280トン電気炉を導入(6月9日・テックスレポート)=POSCOは高炉-転炉法から一部で電気炉をベースとした転換を進めているが、この一環で同社はイタリア・テノバ社のConsteel®(コンスチール®)電気炉を光陽製鉄所に導入する。テノバ社が7日明らかにした。25年末までに生産を開始する計画。
今回、テノバ社が受注した電気炉は280トンの溶鋼を処理できるフルプラットフォームEAFに、連続鉄スクラップ投入システムConsteel®と電磁撹拌システムConsterrer®を搭載した設計になっているという。
■POSCO、低炭素鋼材を発売(6月5日・産業新聞)=POSCOは4日、低炭素鋼材のグリーネート製品を発売した。自社プロセスの炭素排出削減量をマスバランス方式で配分。製品はLG電子向けに納入する。昨年1―8月に前年同期比で削減したCO2排出量59万トンを源に、低炭素ブランド鋼材を20万―30万トン販売する。
■ニューコア、炭素貯留でエクソンと合意(6月5日・産業新聞)=ニューコアは1日、直接還元鉄(DRI)工場から発生する炭素の回収・貯留(CCS)でエクソンモービルと合意したと発表した。DRI発生CO2年間80万トンをエクソン施設で貯留する。
■東京製鉄、パナソニック、イオンリテールの3社、乾電池リサイクルの実証実験を開始(6月2日・テックスレポート)=東京製鉄、パナソニック、イオンリテールの3社は2日、使用済み乾電池の回収とリサイクルを目的とした実証実験を開始した。東京都・大阪府・京都府・奈良県内のイオン22店舗で回収した後、東鉄岡山工場でリサイクルする。
5月
■鋼材も「CO2排出ゼロ」(5月30日・日経)=鉄鋼メーカーが「グリーン鋼材」を市場に投入している。排出削減効果を特定製品に割り当てる「マスバランス方式」などを生かした製品だ。先駆けとなったのは神戸製鋼のコベナブルスチールだ。日産の量産車に薄鋼板が採用され、三菱地所が手がける東京・豊洲の大型開発への使用も決まった。日本製鉄やJFEも23年度上期中にグリーン鋼材の発売を予定する。両社は電炉の利用を広げ、CO2排出削減効果をマスバランス方式で活用する。東京製鉄も大成建設と組んでCO2排出ゼロの建設用鋼材の生産に乗り出した。調達電力を再生可能エネルギー由来に切り替え、8割の排出を減らす。残りの2割は大成建設が植林などで減らしたCO2排出量と相殺する。
*普及の壁は価格だ=コベナブルスチールは「一般に通常の鋼材の2~3倍」(同社)。まず原料の還元鉄が割高だ。還元鉄を使った製法の排出削減効果は2割のため、排出ゼロの鋼材を1トン得るには、同製法で5トン分の鉄を作る必要がある。
*東鉄のグリーン鋼材は=当初想定で価格が3割程度上がると見ていた。ただ「コスト構造の精査が必要で、価格はさらに検討が必要」(同社)。グリーン鋼材の潜在需要が確認された今、価格面の最適解を探る段階に入ったといえそうだ。
*コベナブルスチールとは=神鋼は鉄鉱石の一部を還元鉄に替え、CO2排出を2割減らす手法を確立し、削減効果をマスバランス方式(注)で集約させたのがコベナブルスチールだ。実質排出ゼロの鋼材と、半減させた鋼材を展開する。
注:「マスバランス方式」とは=製品の製造工程において、ある特性を持った原料とそうでない原料とが混在するとき、特性を持った原料の投入量に応じて、製品の一部に対してその特性を割り当てる方法。例えば、CO2の排出量を20%削減した鉄を5t生産した場合、マスバランス方式を使うことで、5t分のCO2削減量を1tの鉄に集め、CO2を100%(20%×5)削減した鉄として考えることができる。ただしこのとき、残り4tの鉄のCO2削減量は0%になる。この方法を使うことで、現状では生産できないような二酸化炭素の排出を伴わない「カーボンフリースチール」の生産が可能となる。参考出所: (ecology-plan.co.jp)
■豪鉄鋼大手、ニュージーランドに電炉を新設(5月23日・産業新聞)=豪鉄鋼大手のブルースコープは22日、ニュージーランド政府と共同で電炉を新設する。26年稼働を目指す。
■神戸製鋼・加古川、高炉から電炉体制の切り替えを検討(5月19日・産業新聞)=神戸製鋼は18日、中期経営計画(21―23年度)説明会を開き、山口貢社長は「加古川製鉄所の高炉の改修時期を30年半ば頃に迎え、電炉への切り替えは重要な選択肢と考えている」と高炉から電炉への転換含め複線的なアプローチの具体的な検討を進めていると説明した。
■日本製鉄、高炉プロセスから電炉プロセスへの転換に向けた本格検討を開始(5月10日・同社hp)=日本製鉄は、八幡および広畑を候補地とした高炉プロセスから電炉プロセスへの転換の検討を始めると公表した。Hpによれば同社は21 年 3 月「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン 2050」で「高炉水素還元」「水素による還元鉄製造」「大型電炉で高級鋼製造」の実現を目指す。
*「高炉水素還元」は、22 年 5 月から君津で試験高炉(12㎡3)試験に着手。また同じ君津で稼働中の大型高炉実機(4,500㎡3)で実証試験を 26 年 1 月から開始。
*「水素還元鉄製造」は、技術開発本部波崎研究開発センターに、小型シャフト炉を設置し、水素で低品位鉄鉱石を還元する試験を25 年度から行う。
*「大型電炉での高級鋼製造」は、22 年 10 月から広畑に新設した電炉操業に動いた。また技術開発本部波崎研究開発センターに、小型電気炉(10 ㌧)を設置し、24 年度から試験を予定している。20230510_400.pdf (nipponsteel.com)
■中国・宝鋼とサウジアラムコ、サウジに鋼板生産拠点(5月9日・日経)=宝山鋼鉄は、サウジアラビア国営石油会社のサウジアラムコなどと鋼板生産の合弁会社を設立すると発表。サウジに生産拠点を設け、2026年末にも稼働を始める。宝鋼が50%、アラムコと政府系ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)がそれぞれ25%出資する。鋼板の年間生産能力は150万トンの予定。天然ガスなどを使い、一般的な高炉と比べて二酸化炭素(CO2)排出量を60%以上減らせる設備を導入する。
■EV電池のCO2排出開示 経産省、来年度から(5月9日・日経)=経産省は蓄電池の製造時などに出るCO2排出量を算定・開示するよう求める(EUは24年から排出量公表を義務付ける予定)。経産省が排出量開示を進めるのは、原材料の調達から廃棄・リサイクルまでのCO2総排出量を示す「カーボンフットプリント(CFP)」の考え方が重視されるようになったからだ。経産省は24年度からEVなどの「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」の支給に同要件を加える検討を始めた。「CFPの導入が遅れれば、日本の自動車メーカーが市場でより後れを取ってしまう可能性がある」(早稲田大学の所千晴教授)
■JFEスチール千葉に電気炉を導入(5月8日・同社hp)=JFEスチールは8日、千葉第4製鋼工場にアーク式電気炉を導入と発表。同工場ではステンレス鋼を製造、高炉の溶銑、自家発生スクラップ主な原料としている。スクラップ溶解能力は年間約30万㌧と従来比約6倍に高まりCO2排出量削減を最大で年間約45万㌧と見込んでいる。
■JFEスチール、上期から「JGreeX™」を供給(5月8日・同社hp)=JFEスチールは8日、CO2排出量を大幅に削減した「JGreeX™(ジェイグリークス)」の供給を23 年度上期から開始と発表した。 「JGreeX™」は、同社のCO2排出削減技術により創出した削減量を、「マスバランス方式」を適用して特定の鋼材に割り当てることで、鉄鋼製造プロセスにおけるCO2排出量を大幅に削減した鉄鋼製品。
4月
■鋳造品、CO2実質ゼロ(4月16日・日経)=JFEスチール系の日本鋳造は太陽光発電や非化石電力などを組み合わせ、CO2実質ゼロの鋳物を実現する。製造工程で使用するガスを都市ガスから水素系のガスに変えた。電気炉も、消費電力量が少ない方式に置き換えた。
■神戸製鋼と三井物産、鉄鋼原料製造を検討 世界最大規模(4月11日・日経) =神戸製鋼と三井物産は10日、オマーンで「直接還元鉄」製造の検討に入ったと発表した。世界最大規模の年間500万トンを想定し27年生産を目指す。神戸製鋼の米子会社ミドレックスが手掛ける直接還元鉄プラントの建設を検討する。1年ほどで事業化を判断する。製造プラントは天然ガスを使う。将来は再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」を活用し、CO2排出量をさらに抑えた還元鉄をつくることも視野に入れる。
JFEスチールも伊藤忠商事と組んでアラブ首長国連邦での生産を検討しているほか、日本製鉄も製造事業化を目指す方針を示している。日本では安価に天然ガスやグリーン水素を大量調達するのが難しく直接還元鉄プラントを普及させるには時間がかかるとみられる。
■東京製鉄、ゼロカーボンビル建設へ(4月10日・日経)=東京製鉄は7日、大成建設と連携しCO2排出量を正味ゼロにするゼロカーボンビルの建設を推進するため鋼材製造から解体・回収までの資源循環サイクル「ゼロカーボンスチール・イニアティブ」を始動したと発表した。電炉鋼材を「T―ニアゼロスチール」と位置付けている。Microsoft Word - (20230404)大成建設リリース文案rev6.doc (tokyosteel.co.jp)
*本イニシアティブでの大成建設との取り組みは以下の通り
電炉鋼材を用いて以下のプロセスで製造時の CO2 排出量を削減。
①柱・大梁を含む構造骨組に用いる鋼材のほとんどを電炉鋼材で製造
② 高炉鋼材に比べ CO2 排出量は 0.5tCO2/鉄 t に削減。(全体累計で 75%削減)
③ 本イニシアティブにより、第一段階で鋼材生産プロセスに用いる電力を当社が再エネ電力等で代替し、低炭素型電炉鋼(「T-ニアゼロスチール」)を製造
④ CO2 排出量は 0.1tCO2/鉄 t に削減。(全体累計で 95%削減)
⑤ 5%の CO2 排出量削減に向けて、当社と大成建設が連携して鋼材生産プロセスの脱炭素化に向けた設備投資や省エネルギー活動、CO2 削減・除去への貢献活動等を実施する
■水素、40年に供給6倍(4月5日・日経)=政府は4日、次世代脱炭素燃料として水素導入案を公表した。40年に現状の6倍の1200万トン程度に増やす。今後15年間に官民で15兆円の投資計画を検討する。*30年目標・水素価格3分の1=いま水素供給価格は1㎥あたり100円で、既存燃料の最大12倍相当する。(この)価格差を縮めるよう政府が補助する。30年に価格を3分の1に引き下げ普及につなげる。日鉄やJFEは試験炉を建設し24~25年度に試験を始める段階だ。50年までの導入を目指すが、水素製鉄を含めた鉄鋼業界全体の脱炭素化には10兆円規模の投資が必要になる。
■CO2排出量あたりの稼ぐ力 鉄鋼3社沈む(4月3日・日経)=CO2など温暖化ガス排出を抑えながら稼げる企業はどこか。東証上場の鉄鋼・化学業種のうち、時価総額上位50社を算出対象とした。化石燃料を多く使う鉄鋼・化学の2業種はCO2排出量が産業全体の5割以上に上る。鉄鋼大手3社は上位30社に入らない。使用済み鉄スクラップを再生する電炉メーカーは高炉メーカーよりCO2排出量あたりで稼ぐ力が相対的に高い。企業のCO2排出に金銭的負担を求める「カーボンプライシング」の導入も控え、今後、供給網全体を対象とする排出量「スコープ3」への対応が求められ、開示も広がる公算が大きい。
*スコープ3とは=企業の事業活動による温暖化ガス排出量の範囲は大きく3つに分類される。世界的な脱炭素の流れで注目されるのが「スコープ3」だ。サプライチェーン(供給網)全体を対象とし、調達する原材料や製品の使用時、廃棄時などの排出も含まれる。
3月
■脱炭素と金融(上)移行金融、電力や鉄鋼、債券発行や融資で「つなぎ役」の投資後押し(3月1日・日経)=国際決済銀行(BIS)は脱炭素化により、経済価値を失う座礁資産が最大18兆ドルとはじく。そうした資産を担保とする銀行にとっては融資返済が滞りかねない事態に直面する。環境負荷の高い産業が事業縮小を迫られることで邦銀には50年までに7兆円程度の与信コストが発生するという。電力や鉄鋼、運輸、化学といった排出量の多い企業は資金調達しづらい課題があった。そこで浸透しつつあるのが移行金融だ。温暖化ガスの排出量をゼロにする技術が実用化されるまでの「つなぎ」の資金供給といえる。