ロシア危機とカーボンニュートラルの現状と将来を考える

                        

論点整理として

*「ロシア危機」は、国家覇権と政治体制(権威主義国家と民主主義国家)の対立であり、「エネルギー需給」と(足元の)経済活動(経済活動の萎縮・インフレ)問題である。

*「カーボンニュートラル」は、人類の生存を賭けた「中長期的な地球環境対策」であり、国家の枠組みを超えたCO2削減、そのため鉄スクラップ利用の拡大は必須である。

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*さてそうであるとして、ロシア危機と今後に予想される「経済活動の萎縮・インフレ」と「カーボンニュートラル」の今後をどう考えるか・・・それが問題だ。

 

1 ロシア危機が引き起こすもの

ロシアはエネルギー資源国であり、ウクライナと共に小麦の最大の輸出国である。

ロシア排除の結果、まず原油、天然ガスなどエネルギーコストは上昇する。小麦など穀物、食料価格も値上がりする。コストアップは、世界的なインフレ(コストプッシュ、輸入インフレ)を引き起こす。生活防衛対策としての金利上昇は(副作用としての企業資金の抑制、産業活動の低下を招き)、不況下のインフレ(スタッグフレーション)を呼び込むだろう。 

またロシア排除は、ロシアと中国の関係を深め、世界は第二次大戦後、欧米を中心に築き上げてきた経済的な枠組みの改変を迫られる事態に遭遇している(注)。

 

2 そのなかでの産業・事業活動

エネルギーコストの上昇は、エネルギー多消費型の産業には逆風である。

このなかで自動車産業の立ち位置が微妙になる。「カーボンニュートラル」が提唱される現在、電気自動車(EV)への傾斜は、さらに加速される可能性が高まった。

鉄鋼は、自動車関連産業である(普通車1台に鋼材に約1㌧)。EVと鋼材(ハイテン)使用の今後の取り組みが、鉄鋼と自動車関連企業の将来を分ける(それが現在の企業戦略)。

 

電炉は、エネルギー多消費型の産業である。そのコスト対策が(電力会社の原発電力対策もあり)「夜間操業」を作り出したが、しかし電力会社力に拠らない電力がある。それが高炉各社の廃熱を利用した膨大な自家発電である。独立系発電事業者(IPP)でもある高炉各社は電力会社の送電境界を越え、資本や系列電炉に電力を供給する可能性がある(注2)。

 

3 鉄スクラップビジネス

「ロシア危機」の結果、当面の世界の経済活動は対立し、内外の生産・流通は萎縮する恐れがでてきた。また将来の地政学的なリスク(台湾有事)も無視できなくなった。長期的な投資、設備工事にはマイナス材料だ。ただ一方で、日常生活としての経済活動は止まることはない。戦後の経済活動再開から75年。インフラは老朽化し、再整備・工事は待ったなしだ。

そのなかでの世界的な「カーボンニュートラル」であり、鉄スクラップ再評価だ。

産業活動の今後はロシア危機から流動的。鉄鋼各社の次の一手も未知数だ。

 

ロシアは原油、小麦の輸出大国だが、鉄鋼・鉄スクラップの世界シェアは高くない。

とはいえ鉄鋼(銑鉄)・鉄スクラップのロシア供給が減少すれば、需給の相手先と数量は変わる。鉄スクラップ価格は、需給バランスで動くから、ロシア危機後の世界の経済活動(萎縮するのか、しないのか。粗鋼生産は増えるのか、増えないのか)に大きく左右される。

さらにこれに「カーボンニュートラル」問題が加わる。

経済動向と別に将来を見据えた鉄スクラップ需要が各国、各社で高まれば、価格には響く。

 

注 人民元、4年ぶり高値圏・ロシア制裁で利用増(3月3日・日経新聞)

外国為替市場で中国・人民元が対ドルで約4年ぶりの高値圏にある。背景には好調な輸出や国内資本市場への資金流入があり、対ロシア制裁が人民元の利用拡大につながるとの見方も出ている。▽SWIFTからのロシア排除が、独自の決済網構築をめざす人民元の利用拡大につながる可能性もある。「ロシアはユーロや元、金の保有を増やしてきた。今後510年で元の保有が増えるのは間違いない」「時間がたつにつれ、米ドルへの信頼が損なわれ、元の国際化を後押しする可能性がある」と関係者は指摘する。

以上