選択的夫婦別姓の論点整理 その全体像と私的コメント

 

■私的なコメントとして

ある友人との談話のなかで、選択的夫婦別姓の当否が論争になった。ただ、その意見を交換している中で、お互いに不十分な情報をもとに互いの主張を重ねていることに当惑した。

 そこで私は(不毛としか思えない)論議を打ち切り、選択的夫婦別姓に係わる事案の全体を精査し、そのうえで考えようと提案した。以下は、その報告である。

 

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1 私は事態、事案が錯綜し、論点が拡散し、議論が沸騰するとき、一歩退いて、全体像を鳥瞰的に網羅、見聞することを常としている(元編集長としての職務でしたから)。

2 ことは家族法の改正に係る。そのため法改正の審議(資料1・国会審議)と元最高裁判事の意見を聴取した(資料2)。そのうえで働く女性の声(資料3・選択的夫婦別姓 働く女性アンケート)や政党間の意見対立(資料4・東京新聞「自民党は30年近く審議拒否」選択的夫婦別姓。資料5・日経新聞 自民党・高市早苗氏ら選択的夫婦別姓に反対)を見た。

3 では法の専門家はどう考えるのか。日弁連は明確に選択的夫婦別姓制度の導入を求めている(資料6。及び6-2)。公明党も党広報で推進を表明している(資料7)。

4 反対意見は「国会請願」や地方議会の「陳情」(資料8-1,8-2)に動き、日本政策研究センターは最新リーフレットで導入反対を訴えている(資料9)。その主張は、いずれも選択的夫婦別姓が家族間の分断を招くとの危機感で共通している。また産経新聞は「旧姓の通称使用拡大で不便解消」とのキャンペーンを張っている(資料10)。

5 一方、内閣府男女共同参画局は「旧姓の通称使用の拡大」で別姓論議を打開しようとした(資料11)。しかし夫婦同姓は強制的な法律規定であり、「通称」拡大を図っても限界があると明らかにしている(資料11-2、資料12・旧姓の通称使用拡大には課題も)。

6 以上の知見を踏まえ、私は少数者の意見であっても、その主張がヒトの尊厳に係わる事項なら、その意見を汲み上げる民主主義の理念に則って選択的夫婦別姓に賛成する。

 

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■その全体概略によれば(各種・公開資料)

1 選択的夫婦別姓 国会審議

法務省https://www.moj.go.jp/MINJI/minji36.html

2 選択的夫婦別姓制度に関する最高裁判決の問題点

https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2024/0627_06.html

3 読売新聞オンライン 選択的夫婦別姓 働く女性アンケート

https://www.yomiuri.co.jp/otekomachi/20241025-OYT8T50042/

4 東京新聞 「自民党は30年近く審議拒否を続けている」選択的夫婦別姓

https://www.tokyo-np.co.jp/article/372275

5 日経新聞 自民党・高市早苗氏ら、選択的夫婦別姓に反対姿勢

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA20BL20Q4A221C2000000/

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6 日本弁護士連合会・選択的夫婦別姓制度の導入を求める決議

https://www.nichibenren.or.jp/document/assembly_resolution/year/2024/2024_1.html

6-2 日弁連・女性差別撤廃委員会による勧告を受けて

https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2024/241107.html

7 選択的夫婦別姓 公明党解説

https://www.komei.or.jp/komechan/diversity/diversity202306

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8 選択的夫婦別姓 反対意見

8-1 第173回 国会(2009年) 請願の要旨

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/seigan/173/yousi/yo1730602.htm

8-2 東京都墨田区 選択的夫婦別姓制度の法制化反対 陳情

https://www.city.sumida.lg.jp/kugikai/sinsa_report/seigan_chinjo/heiseinijyuninen.files/chinjyou22-8.pdf 

9 日本政策研究センター 「選択的夫婦別姓制度」導入に反対するリーフレット

http://www.seisaku-center.net/node/1322

huhu_bessei_hantai_20241115.pdf

10 産経新聞 選択的夫婦別姓「旧姓の通称使用拡大で不便解消」

https://www.sankei.com/article/20241216-GNG4LKMXKVADFFBQBPDB3TFJ4U/

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11 内閣府 男女共同参画局 旧姓の通称使用の拡大の現状と課題

https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku_kanshi/siryo/pdf/ka3-3.pdf

11-2 旧姓の通称使用の限界に関する指摘 (令和2年度意見募集等に基づく把握)

https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku_kanshi/siryo/pdf/ka3-3-4.pdf

12 東京新聞(21320日) 旧姓の通称使用拡大には課題も

https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=92705&pid=1760209

 

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1 選択的夫婦別姓 国会審議

 

法務省https://www.moj.go.jp/MINJI/minji36.html

 

検討経過等

1 法務省においては、平成3年(1991年)から法制審議会民法部会(身分法小委員会)において、婚姻制度等の見直し審議[PDF]を行い、平成8年(1996年)2月に、法制審議会が「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申しました。同要綱においては、選択的夫婦別氏制度の導入が提言されています。この答申を受け、法務省においては、平成8年(1996年)及び平成22年(2010年)にそれぞれ改正法案を準備しましたが、国民各層に様々な意見があること等から、いずれも国会に提出するには至りませんでした。

 

世論調査の結果 

令和3年(2021年)に実施した「家族の法制に関する世論調査」の結果では、「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した方がよい」と答えた方の割合が27.0%、「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」と答えた方の割合が42.2%、「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」と答えた方の割合が28.9%となっています。

 

平成8226日 法制審議会総会決定https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi_960226-1.html

第三 夫婦の氏

 

 

1

 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。

 

2

 夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。

第四 子の氏

 

 

1

 嫡出である子の氏

 

 

 嫡出である子は、父母の氏又は父母が第三、2により子が称する氏として定めた父若しくは母の氏を称するものとする。

 

2

 養子の氏

 

3

 子の氏の変更

 

 

 

 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができるものとする。ただし、子の父母が氏を異にする夫婦であって子が未成年であるときは、父母の婚姻中は、特別の事情があるときでなければ、これをすることができないものとする。

 

 

 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、1にかかわらず、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏又はその父若しくは母の氏を称することができるものとする。

 

 

 子の出生後に婚姻をした父母が氏を異にする夫婦である場合において、子が第三、2によって子が称する氏として定められた父又は母の氏と異なる氏を称するときは、子は、父母の婚姻中に限り、1にかかわらず、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができるものとする。ただし、父母の婚姻後に子がその氏を改めたときは、この限りでないものとする。(略)

 

2 選択的夫婦別姓制度に関する最高裁判決の問題点

https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2024/0627_06.html

 

Action(活動) 週刊 経団連タイムスNo.3642 2024627

通称使用をしていた元最高裁判事・櫻井氏の経験から/ダイバーシティ推進委員会

 

*経団連は529日、東京・大手町の経団連会館でダイバーシティ推進委員会(魚谷雅彦委員長、柄澤康喜委員長〈当時〉、次原悦子委員長)を開催した。元最高裁判所判事の櫻井龍子氏から、選択的夫婦別姓制度に関し意見交換した。概要は次のとおり。

 

■ 旧姓の通称使用で生じた困難~二つの姓を持った経験から

私は藤井龍子として育ち、1970年に旧労働省に入省した。しかし、2008年に最高裁判事への就任に当たり、裁判所から戸籍上の姓名を使用するように求められ、キャリア上初めて櫻井姓を名乗ることになった。すると、ある評論家に、「どこの馬の骨かも分からない女性を最高裁判事にした」と批判された。「櫻井龍子」と検索しても、過去の経歴や実績等が切り離されていたために受けた評価で、非常にショックだった。

 

■ 選択的夫婦別姓制度に関する最高裁大法廷判決の概要

最高裁判事として携わった2015年の第1次選択的夫婦別姓訴訟の判決は、旧姓の通称使用により一定程度緩和され得ること等の理由から「合憲」と判断すると同時に、夫婦の姓に関する制度は「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄」とした。しかし、私をはじめ5人の判事は、憲法242項(個人の尊厳と両性の本質的平等)に反すること等から違憲であるとの反対意見を付した。また21年の第2次夫婦別姓訴訟でも、第1次判決同様、この問題は国会で論ぜられるべき事柄とされた。そして24年、第3次訴訟が提起された。最高裁判決が出るまでに数年かかると見込まれるが、違憲判決が出る可能性は十分にあると考えている。特に、国会の立法義務の懈怠、裁量権の濫用といった論点が注目されるであろう。

 

 

3 読売新聞オンライン 選択的夫婦別姓 働く女性アンケート

241025日)https://www.yomiuri.co.jp/otekomachi/20241025-OYT8T50042/

9月中旬、人材サービス「キャリアデザインセンター」が運営する「女の転職type」会員の働く女性426人を対象に、「選択的夫婦別姓」に関するアンケート調査を実施した。

*選択的夫婦別姓制度を尋ねた質問では「制度に賛成だが、自分は夫婦同姓がいい」「制度に賛成で、夫婦別姓がいい」と答えた「賛成派」が計65.0%を占め、「制度に反対で、夫婦同姓がいい」という反対派の5.4%を大きく上回る結果となりました。

 

世代別では、賛成派が20代で65.6%、30代で65.8%、40代で65.2%と大きな差はなかったが、「制度に賛成だが、自分は夫婦同姓がいい」と答えた割合は、20代で52.2%、30代で42.0%、40代で29.5%となり、多い若い世代に夫婦同姓を望む傾向が見られた。

賛成理由には、個人の自由を尊重したい」が74.7%で最も多く、「名義変更に手間がかかる」(65.0%)、「婚姻関係が続くとも限らないから」(39.4%)、「改姓すると仕事に影響する」(32.1%)が続いた。反対理由は、「子どもへの影響」(69.6%)、「家族の一体感がなくなる」(56.5%)、「行政手続きの複雑化、コストの増大」(47.8%)などが挙げられた。

 

*「結婚・離婚を知られたくない」=姓が変わることで仕事上困ることがあるかとの質問には、「とても困る」「少し困る」との「困る派」が計54.3%を占め、「困らない」の26.3%を上回りました。具体的には、「呼び方を変えてもらう必要があった」(41.3%)、「名刺やメールアドレス変更が大変だった」(33.5%)、「取引先に連絡するのが面倒だった」(24.6%)、「結婚、離婚を知られたくなかった」(21.0%)などが挙げられました。

国連の女性差別撤廃委員会は「夫婦同姓を義務づける民法の規定は差別的な法規制だ」として、日本政府に選択的夫婦別姓制度の導入を勧告しています。(読売新聞 鈴木幸大)

 

 

4 東京新聞(24129日) https://www.tokyo-np.co.jp/article/372275

「自民党は30年近く審議拒否を続けている」選択的夫婦別姓

 先の衆院選では自民と日本維新の会、参政党を除く主要政党が同制度の導入を公約に掲げた。これまで、主に野党から夫婦同姓を義務付ける民法の改正案が度々提出されたが、国会での審議、採決には至っていない。辻元氏は3日の参院代表質問で「27年前から参院では15回、衆院では9回、改正案を提出した。しかし自民党は30年近く審議拒否を続けている」と批判。党議拘束を外して、国会で審議するよう求めた。

 

 

5 日経新聞(241220日)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA20BL20Q4A221C2000000/

自民党・高市早苗氏ら、選択的夫婦別姓に反対姿勢

自民党の有志グループ「保守団結の会」は20日、党本部で会合を開き高市早苗前経済安全保障相らおよそ15人が参加した。選択的夫婦別姓の導入に反対する意見が相次いだ。高市氏を中心に結束することが重要との認識を共有した。党内の一部にはLGBTなど性的少数者への理解増進法の成立や選択的夫婦別姓の推進論により自民党を支える保守層が離れたとの見方がある。高市氏らは旧姓の通称使用拡大で不都合を解消できるとの立場をとる。出席者からは「保守政党としての自民党らしさを打ち出すべきだ」との意見が出た。

 

 

6 日本弁護士連合会・選択的夫婦別姓制度の導入を求める決議  24年6月14日

https://www.nichibenren.or.jp/document/assembly_resolution/year/2024/2024_1.html

 

日本が批准する女性差別撤廃条約や市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)でも、各配偶者には婚姻前の姓の使用を保持する権利があるとされている。国連女性差別撤廃委員会は、日本政府に対し、2003年7月、2009年8月及び2016年3月の三度にわたり、女性が婚姻前の姓を保持することを可能にする法整備を勧告している。国際人権(自由権)規約委員会は、2022年11月の総括所見で、民法第750条が実際にはしばしば女性に夫の姓を採用することを強いている、との懸念を表明した。世界各国の婚姻制度を見ても、夫婦同姓を法律で義務付けている国は、日本のほかには見当たらない。

 

1996年には、法制審議会が選択的夫婦別姓制度を導入する「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申したが、実現されないまま既に四半世紀以上が経過している。

最高裁判所は、20151216日の判決や2021年6月23日の決定で民法第750条を合憲としたが、これらの判断は、同制度の導入を否定したものではなく、夫婦の姓に関する制度の在り方は「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」として、国会での議論を促したものである。

 

世論や情勢に目を向ければ、官民の各種調査において選択的夫婦別姓制度の導入に賛同する意見が高い割合を占め、また経済団体等からも、現行制度は個人の活躍を阻害し、様々な不利益をもたらすとして、同様の要望が出されている。旧姓を通称使用しても、金融機関等との取引や海外渡航の際の本人確認、公的機関・企業とのやり取り等に困難を抱え、通称使用による精神的苦痛も受けている現実があることは決して看過できない。

 

*当連合会は、19931029日付け「 選択的夫婦別氏制導入及び離婚給付制度見直しに関する決議 」以来、選択的夫婦別姓制度の導入を繰り返し求めてきたが、今、改めて国に対し、夫婦同姓を義務付ける民法第750条を改正し、同制度を導入するよう求める。

 

提案理由

第1 はじめに(略)

第2 民法第750条は憲法に反する(略)

第3 民法第750条は女性差別撤廃条約及び自由権規約にも反する

 

第4 今こそ選択的夫婦別姓制度を導入すべきである

1 法制審議会の答申から28年が経過したこと(略)

2 最高裁判所は国会における議論を促していること(略)

 

3 いわゆる「通称使用」には限界があること

婚姻により戸籍上は配偶者の姓に変更していても、姓を変更することで生じる日常生活や社会生活上の不都合・不利益を解消するために、旧姓を通称として公的な文書(住民票、印鑑登録証明書、マイナンバーカード、運転免許証、パスポート等)に併記するなどの対応が徐々に広がっている。2015年最高裁判決も、「氏の選択に関し、夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている現状からすれば、妻となる女性が上記の不利益を受ける場合が多い状況が生じているものと推認できる」とした上で、かかる不利益は「氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得るものである」と述べている。

 

しかし2015年最高裁判決で示された個別意見が的確に指摘するように、「通称は便宜的なもので、使用の許否、許される範囲等が定まっているわけではなく、現在のところ公的な文書には使用できない場合があるという欠陥がある上、通称名と戸籍名との同一性という新たな問題を惹起することになる」という問題もある。すなわち、通称使用は、通称名と戸籍名との同一性の証明を要する上に、その二つの名前の使い分けは、本人にとっても他者から見ても煩雑であり、むしろ混乱を招くことにつながっている。

 

それだけでなく、その同一性の証明には、住民票や戸籍謄本、複数の証明書等の提出を求められるなど、本来であれば不要な個人情報の開示を余儀なくされ、それ自体が精神的苦痛を伴うものである。また、通称使用の姓は自身の生来の姓であり「本来の姓」であるのに、戸籍姓に準じるものとして扱われるにすぎず、本来の姓を堂々と名乗って活動ができないという精神的苦痛も、通称使用をしている限り継続する。

 

4 日本のほかに夫婦同姓を義務付けている国は見当たらないこと

諸外国では、男女平等や個人の尊重の観点から、夫婦が別姓か同姓かを選べる国や、別姓が原則の国などがある。また、ドイツ、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン等、かつて夫婦同姓が義務付けられていた国も、姓を選択できる制度へ転換している。

日本政府も、201510月6日付け答弁書において「現在把握している限りにおいては、「法律で夫婦の姓を同姓とするように義務付けている国」は、我が国のほかには承知していない」と答え、夫婦同姓を義務付けている国は、今や、日本のほかには見当たらない。

 

5 世論や社会状況等も選択的夫婦別姓制度の導入を求めていること

官民の各種世論調査においても、選択的夫婦別姓制度の導入に賛同する意見が、反対意見の割合を上回っている。例えば、2023年の国立社会保障・人口問題研究所「社会保障・人口問題基本調査第7回全国家庭動向調査」では、60歳未満の回答者における「夫、妻とも同姓である必要はなく、別姓であってもよい」への賛成割合が、単身女性(未婚)で85.3%、離別女性で78.5%、有配偶女性で71.4%、単身男性(未婚)でも61.0%となっている。

また、日本労働組合総連合会(連合)が2022年7月に実施した「夫婦別姓と職場の制度に関する調査2022」では、64%が同制度を容認すると回答し、東京大学と朝日新聞社が2023年2月から4月までの間に実施した「東京大学谷口研究室・朝日新聞社共同調査(有権者調査)」でも、60%が同制度に賛成すると回答している。

 

地方議会においても、国に対して選択的夫婦別姓制度の導入や議論の促進を求める意見書が次々と採択されており、その数は2024年3月21日時点において確認されているものだけでも389件に上る(「一般社団法人あすには」の調査による。)。

 

また、近時は、複数の経済団体等からも、現行制度は個人の活躍を阻害し、様々な不利益をもたらすとして、選択的夫婦別姓制度の導入の要望が出されている。

日本経済団体連合会(経団連)会長は、2024年2月13日の記者会見において、同制度の導入に賛成であると明言し、女性活躍や多様な働き方を推進する方策の最優先事項として、同制度の導入の検討を政府に求めた。

経済同友会は、同年3月8日付けで「選択的夫婦別姓制度の早期実現に向けた要望」を公表し、「個人の尊重と両性の実質的平等、多様な家族形態を認める社会を実現するためには、選択的夫婦別姓制度を早期に導入することが必要」であるとして、同制度の導入に向けたロードマップの策定・公表等を政府に求めた。

また、これら2団体を含む複数の経済団体等が、同日、関係省庁や首相官邸等に対し、同制度の早期実現を求める要望書や経営者らによる1000筆超の署名を提出している。

 

第5 導入されるべき選択的夫婦別姓制度の具体的内容

1 夫婦の姓の在り方

夫婦の姓については、同姓・別姓のいずれかを原則とするのではなく、同姓・別姓いずれの選択も自由かつ同等であることを明示すべきである。

 

2 別姓夫婦の子の姓の定め方

1996年の法律案要綱では、子の姓を統一することとし、婚姻の際に夫又は妻の姓を子の姓として定めなければならないとしているが、子をもうけることを前提にあらかじめ子の姓を定めるような制度を採用すべきではない。また、子の姓も必ずしも統一する必要はない。

夫婦の協議によって父又は母の姓をその都度選択すれば足り、それが子一人ひとりの福祉に資することになり、それぞれの家族の多様性を認めることにもつながる。

 

なお、選択的夫婦別姓制度を導入した場合、両親の一方と子の姓が異なることになり、子が混乱して不利益を被るとの意見もある。しかし、両親が改姓を避けるべく事実婚を選んだため親の一方と子の姓が異なる親子、あるいは、両親が離婚したため親の一方と子の姓が異なる親子であっても、良好な関係を築いている人たちは数多くいるのである。

良好な親子関係が形成され子の利益が図られるか否かは、親子の十分なコミュニケーションに負うところが大きいのであり、決して姓の同一だけに左右されるものではない。

 

第6 結論

以上のとおり、民法第750条は、婚姻に際し夫婦の一方に改姓を義務付け、結果として多くの女性が改姓を事実上強制され、様々な場面で改姓による不利益を被っている現実がある。国は、憲法並びに女性差別撤廃条約及び自由権規約に反する状態が継続していることを真摯に受け止め、民法第750条を改正し、誰もが改姓するかどうかを自ら決定して婚姻できるよう、選択的夫婦別姓制度を導入すべきである。

以上のとおり決議する。2024年(令和6年)6月14日 日本弁護士連合会

 

 

6-2 日弁連・女性差別撤廃委員会による勧告を受けて(2024年11月7日)

https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2024/241107.html

 

国際連合の女性差別撤廃委員会は、20241029日、国連女性差別撤廃条約の実施状況に関する第9回日本政府報告書に対し、総括所見を発表した。

 

国連女性差別撤廃委員会は、日本政府に対し、2003年以降3回にわたり、選択的夫婦別姓を実現するよう勧告し、特に前回2016年の総括所見では、選択的夫婦別姓をフォローアップ項目の一つとして2年以内に報告するよう求めていた。

 

しかしながら、日本政府は、この間、選択的夫婦別姓を実現するための法改正等を行わず、202410月⒘日に行われた今回の日本審査でも、夫婦別姓を認めるかどうかは日本社会の家族のあり方に関わる重要な問題であって国民の理解が必要であり、婚姻によって姓を変えた人が不利益を被らないよう旧姓の使用拡大に努めてきたなどと述べていた。

 

これに対し、今回の総括所見は、夫婦同姓を義務付ける民法750条の改正に全く進展が見られない(11(a))と厳しく指摘した上で、女性が婚姻後も旧姓を保持できるよう夫婦の姓の選択に関する法律を改正することを勧告する(12項(a))と4回目の勧告を行った。また、前回同様、勧告を実施するために採った措置に関する情報を2年以内に書面で報告するよう日本政府に求めた(58項)。

 

日本政府が、委員会の度重なる勧告にもかかわらず、長年にわたって選択的夫婦別姓の実現に向けた措置を採っていないことは条約の締約国として到底許されるものではない。

当連合会は、2024年6月14日付けで「誰もが改姓するかどうかを自ら決定して婚姻できるよう、選択的夫婦別姓制度の導入を求める決議」を採択したところであるが、改めて、日本政府に対し、委員会による4回目の勧告を真摯に受け止め、選択的夫婦別姓制度を速やかに導入することを求める。

 

7 選択的夫婦別姓 公明党解説

https://www.komei.or.jp/komechan/diversity/diversity202306

 

日本は世界で唯一夫婦同姓制度が残っている国=日本で生活していると、夫婦同姓が世界で一般的なことであると思う人もいるでしょう。しかし、実際は日本が世界で最後の夫婦同姓制度の国といわれています。国連から、夫婦に同姓を強制する制度の改善をするよう、複数回勧告がおこなわれました。法務省も、日本以外の国で夫婦同姓制度の国は把握できていない、と公表しています。

 

日本では法律上夫婦別姓が認められていない=日本は法律上、夫婦は同姓であることが原則とされ、別々の姓にすることが認められていません。日本が夫婦同姓になったのは、19世紀からです。夫婦同姓となったのは、1898年(明治31年)に民法(旧法)で夫婦は同姓であることが定められてからです。1947年(昭和22年)には、改正民法(現法)によって夫または妻の氏を名乗ることと、夫婦同姓が規定されました。

 

夫婦別姓の実現に向けた昨今の動き=昨今では、選択制夫婦別姓制度を導入するべきでは、という声が出ています。しかし、以下の3つの観点から、民法の改定ということころこまで踏み出せないというのが最高裁判所の考えです。1個人が「家族」という集団を実感するため。2「家族」という集団を外に示して識別するため。3嫡出子であることを示すため。

 

夫婦同姓なら夫妻どちらの姓でも可能=夫婦同姓では、夫または妻の姓に統一して、夫婦が同じ姓を名乗ります。夫婦で相談して決めることができますが、妻が夫の姓に変える夫婦が一般的です。平成28年度(2016年)に厚生労働省が発表した統計によると、妻が夫の姓に変更した夫婦が全体の96%という結果が出ています。制度上は夫の姓または妻の姓を自由に選べるものの、妻の姓を選んだ夫婦は4%にとどまっているようです。

 

夫婦別姓のメリット=夫婦別姓で得られるメリットを紹介しましょう。

*仕事に支障がなくなる=結婚前と同じ名字で仕事を続けられるので、仕事に支障がなくなるというメリットがあります。仕事では通称として旧姓を使用する人もいますが、総務や人事で扱う書類の記載は戸籍上の姓でなければなりません。ひとりに2つの姓が存在することで混乱が生じる可能性があります。

*プライバシーが保護される=姓が変わると結婚や離婚のことを周囲に知られ、プライバシーを侵害されたと感じる人がいます。夫婦別姓であれば、結婚や離婚を知られにくいため、プライバシーの保護ができるといえるでしょう。

*公的な手続きが不要になる=夫婦同姓だと姓を変える側は、免許証や保険証などの公的なものはもちろん、銀行口座やクレジットカードなどあらゆるものの変更手続きが必要です。手続きのために有給休暇を取得する人もいます。

*結婚や離婚の際に知られにくい=男性も女性も名字を変更しないまま結婚や離婚ができるため、名字の変更からプライベートを推測されることがなくなるでしょう。結婚によって姓を変えた側は、名字が変わることで、結婚や離婚を周囲に知られてしまいます。

 

夫婦別姓のデメリット=ここでは、選択的夫婦別姓のデメリットではなく、夫婦同姓が原則という現在の制度の中で、「事実婚」となった場合のデメリットを紹介します。

(編者・注=「事実婚」のデメリットを、なぜ紹介する必要があるのか。読者は「選択的夫婦別姓のデメリット」として読む恐れがある。公明党の「広報」の資質が問われる)

現状の制度では事実婚扱いになる=現在は婚姻届を提出する法律婚では夫婦別姓にできないため、別姓にするには戸籍が別の事実婚になります。

*子どもの苗字をつける際に問題になる=事実婚では、子どもは母親の姓を名乗ります。父親と親子関係が認められるためには、認知が必要です。子どもが父親の姓を名乗るためには、養子縁組の手続きをしなければなりません。

*子どもの姓については、事実婚だけのデメリットではなく、選択的夫婦別姓が導入された場合にも問題となります。海外では夫婦それぞれの姓をつなげたものを子どもの姓にしている国もあります。ちなみに、日本では、1996年の法制審議会の答申で、結婚の際に、あらかじめ子どもが名乗るべき氏を決めておくという考え方が採用されており、子どもが複数いるときは、子どもは全員同じ氏を名乗ることとされています。

*また、夫婦別姓の導入前に結婚した同氏夫婦は、一定期間内に戸籍法の定める手続にしたがって、届け出る等の要件を満たすことによって、別氏夫婦にできるとされています。

 

夫婦別姓が実現しない理由とは?

*保守派に残っている「イエ制度」の考え=戦後の民法改正で家制度は廃止されましたが、まだ日本では保守派に「イエ制度」の考えが残っています。GHQから家制度の廃止を要求された際に、政治家などが反対したのです。反対派の説得に「家制度がなくなっても、家族は同じ氏を名乗り、家族での生活が守られる」と説明しました。家制度がなくなっても、夫婦同姓によって「イエ制度」が存続しています。言い換えれば、夫婦別姓を認めることで「イエ制度」が完全に廃止されるため、保守派が反対していると考えられるでしょう。

*家族の一体感が薄れるという考え=夫婦別姓に反対する人の多くは、「家族の一体感が薄れる」と考えるようです。一体感とは心情的なもので、形に現れるものではありません。姓が同じだと、必ずしも家族が一体になるとは限らないでしょう。姓が違うからといって、家族が一体になれないわけでもありません。現在は結婚によって一方の姓が変わりますが、姓が変わったことが原因で親や兄弟と疎遠になる人はいないでしょう。

 

夫婦別姓が実現するためには

*民法750条は、婚姻によって夫婦が同姓となると規定しています。また、戸籍法741号は、婚姻届を提出する際に、夫婦の姓を届け出ることを規定する法律です。つまり、現在の法律では、結婚する夫婦の婚姻届が受理されるためには、夫か妻のどちらかが相手の姓に変える必要があります。選択的夫婦別姓の実現には、民法の改正が必要です。

*戸籍法の改正=戸籍のルールを定めた戸籍法でも、夫婦は同じ姓であることが前提とされていて、選択的夫婦別姓の実現には改正が必要です。

 

 

8 選択的夫婦別姓 反対意見

 

8-1 第173回 国会(2009年) 請願の要旨

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/seigan/173/yousi/yo1730602.htm

新件番号

602

件名

選択的夫婦別姓の法制化反対に関する請願

 

家族が同じ姓を名乗る日本の一体感ある家庭を守り、子供たちの健全な育成を願う。
 ついては、民法改正による選択的夫婦別姓制度の導入に反対されたい。 

 

理由 

(一)夫婦同姓制度は、夫婦でありながら妻が夫の氏を名乗れない別姓制度よりも、より絆(きずな)の深い一体感ある夫婦関係、家族関係を築くことのできる制度である。

日本では、夫婦同姓は、普通のこととして、何も疑問を覚えるようなことはなく、何の不都合も感じない家族制度である。婚姻に際し氏を変える者で職業上不都合が生じる人にとって、通称名で旧姓使用することが一般化しており、婚姻に際し氏を変更しても、関係者知人に告知することにより何の問題も生じない。また、氏を変えることにより自己喪失感を覚えるというような意見もあるが、それよりも結婚に際し同じ姓となり、新たな家庭を築くという喜びを持つ夫婦の方が圧倒的多数である。現在の日本において、選択的夫婦別姓制度を導入しなければならない合理的理由は何もない。

 

(二)選択的だから別姓にしたい少数者の意思を尊重するために選択的夫婦別姓制度を導入してもいいのではないかという意見があるが、この制度を導入することは、一般大衆が持つ氏や婚姻に関する習慣、社会制度自体を危うくする。別姓を望む者は、家族や親族という共同体を尊重することよりも個人の嗜好(しこう)や都合を優先する思想を持っているので、この制度を導入することにより、このような個人主義的な思想を持つ者を社会や政府が公認したようなことになる。

現在、家族や地域社会などの共同体の機能が損なわれ、けじめのないいい加減な結婚・離婚が増え、離婚率が上昇し、それを原因として、悲しい思いをする子供たちが増えている。選択的夫婦別姓制度の導入により、共同体意識よりも個人的な都合を尊重する流れを社会に生み出し、一般大衆にとって、結果としてこのような社会の風潮を助長する働きをする。

 

(三)家庭の機能として、次代を担う子供たちを育てるというものがあるが、選択的夫婦別姓制度導入論者は、夫婦の都合は述べるが、子供の都合については何も考慮に入れていない。一体感を持つ強い絆のある家庭に、健全な心を持つ子供が育つものであり、家族がバラバラの姓であることは、家族の一体感を失う。子供の心の健全な成長のことを考えたとき、夫婦・家族が一体感を持つ同一の姓であることがいいということは言うまでもない。

 

 

8-2 東京都墨田区 選択的夫婦別姓制度の法制化反対 陳情 日本の子供の未来を守る会

https://www.city.sumida.lg.jp/kugikai/sinsa_report/seigan_chinjo/heiseinijyuninen.files/chinjyou22-8.pdf 2010年518

 

要旨

家族は国の基本ですが、夫婦別姓制度の導入は、選択的とは言え、明治以来の夫 婦一体となった家族制度、良き伝統を壊してしまうため、選択的夫婦別姓制度の法 制化に反対する。

 

(理由)

1  日本の夫婦同姓制度は、夫婦でありながら妻が夫の氏を名乗れない中国や韓国の封建的な別姓制度よりも、より絆の深い一体感のある夫婦関係、家族関係を築くことのできる進化した制度です。 そして、日本では、この夫婦同姓は、日常極めて普通のこととして、一般人にとって何も疑問を覚えるようなことはなく、何の不都合も感じない家族制度です。 婚姻に際し、氏を変えることで職業上不都合が生じる人は、通称名で旧姓を使用することが一般化しており、また氏を変更する場合も、関係者、知人に告知することにより何の問題も生じません。また、氏を変えることにより自己喪失感 を覚えるというような意見もありますが、それよりも結婚に際し、同じ姓となり、これから新たな家庭を築くという喜びを持つ夫婦のほうが、圧倒的多数であり 極めて一般的な普通の感覚です。現在の日本の社会において、選択的夫婦別姓制度を導入しなければならない合 理的理由は何もありません。

 

2  選択的だから、別姓にしたい人はしたらよい、そのような少数者の意思を尊重 するために選択的夫婦別姓制度を導入してもいいのではないかという意見があり ますが、この制度を導入すること自体が、一般大衆が持つ氏や婚姻に関する習慣、社会制度を危うくすることになりかねません。 すなわち、別姓を望む者は、家族や親族という共同体を尊重することよりも個人の嗜好や都合を優先する思想を持っているのであり、この制度を導入すること により、このような個人主義的な偏った思想を持つ者を社会や政府が公認し推進したようなことになってしまいます。

現在、家族や地域社会などの共同体の機能が損なわれ、けじめのないいい加減 な結婚や離婚が増えたために、離婚率が上昇し、それが原因となって、悲しい思いをする子どもたちが増えています。 選択的夫婦別姓制度の導入により、共同体意識よりも個人的な都合を尊重する 流れを社会に生み出し、ごく普通の一般大衆にとって、結果としてこのような社 会の悲しい風潮を助長する働きをすることに危惧を持ちます。

 

3  家庭の機能として、次代を担う子どもたちを立派に育て上げるということがあります。しかし、選択的夫婦別姓制度導入論者は、夫婦の都合は声高に述べますが、子どもの都合については、何も考慮に入れておりません。 夫婦別姓とは、親子別姓を意味するものです。 一体感を持つ強い絆のある家庭に、健全な心を持つ子どもが育ちます。

家族がバラバラの姓であることは、家族の一体感を失う作用をします。

すなわち、子どもの心の健全な成長を考えたとき、夫婦・家族が一体感を持つ 同一の姓がよいことは言うまでもありません。 夫婦同姓の結婚制度は、より進化した結婚制度です。何のために日本の婚姻制 度を変え、家族制度を崩壊させようとする動きを推進するのか、普通に生活して いる一般人の感覚では、理解に苦しみます。  以 上

(編者注・81の「国会請願」と理由付けはほぼ「同文」である)

 

9 日本政策研究センター  http://www.seisaku-center.net/node/1322

「選択的夫婦別姓制度」導入に反対するリーフレットを作りました(20241112日)

国民が今求めているのは「選択的夫婦別姓制度」ではありません。最も多くの国民が求めているのは同姓制度を前提とした「旧姓の通称使用」の法制化です。

 「選択的夫婦別姓制度」導入に反対し、「旧姓の通称使用」の法制化を求めるため、当センターではリーフレットを作成しました(別紙コピー参照)。

 このリーフレットは当サイトで公開しています。以下の画像をクリックすると、リーフレットのPDF版がダウンロードできます。huhu_bessei_hantai_20241115.pdf

*月刊情報誌 『明日への選択』

*注目の新刊書  ジェンダーLGBTの「不都合な真実」

        夫婦別姓「選択的だから問題ない」は本当か

 

 

10 選択的夫婦別姓「旧姓の通称使用拡大で不便解消」(産経新聞241216日)https://www.sankei.com/article/20241216-GNG4LKMXKVADFFBQBPDB3TFJ4U/

 

産経新聞は平成11124日付(東京本社版社会面)で「夫婦別姓『女性だからこそ反対なんです』 家族一体感守るのが務め」と題した記事を掲載し、反響を呼んだ。別姓導入に反対する女性たちが提起した「旧姓の通称使用を拡大すれば不便や不利益は解消できる」という論点は、25年たっても変わっていない。

 

「親子別姓、家族別姓制度だ」

ジャーナリストとして活動する岡本明子さんは別姓制度について、「初めは、そういう考え方もあるのか、という程度でした。だが、夫婦別姓だと、選択制とはいえ戸籍上も別姓を認めれば、同姓家族、別姓家族が入り乱れ、家族の絆が失われる。日本の血縁共同体の崩壊につながると分かったのです」と語った。岡本さんたちは平成93月、「ちょっとまって! 夫婦別姓」(日本教育新聞社)を出版。同年5月には参院議員会館で緊急集会を開催。高市早苗衆院議員ら30人近い国会議員や有識者ら約400人が集まり、102万人余りの署名を自民党の山崎拓政調会長(当時)に届けた。

 

「結婚制度の崩壊につながる」

《職場での旧姓使用》旧姓の使用を認める官公庁や企業が増えている。人事規則で解決できる問題を、法務省が民法改正による別姓制度導入にこだわっていることについて、ジャーナリストの千葉展正氏は「それは労働省の管轄になり、法務省の出る幕はなくなるからである」(家族問題懇話会「ウソで固めた夫婦別姓」)と指摘している。

《アイデンティティー》別姓推進派は「氏名はその人のアイデンティティーを表すもので、夫や妻の姓への変更を強制すべきでない」と主張するが、エッセイストの木村治美さんは「たんに『結婚して姓が変わりました』でゆらぐアイデンティティーなんていらない。もっと人間の、内面を問う姿勢がほしい」と言う。別姓によって、法律婚と同棲の違いが事実上なくなることが結婚制度の崩壊につながると危惧する声が強い。

 

11 内閣府 男女共同参画局

https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku_kanshi/siryo/pdf/ka3-3.pdf

 

議題2:旧姓の通称使用の拡大の現状と課題

 〇「第5次男女共同参画基本計画」(令和2年 12 25 日閣議決定)

イ 家族に関する法制の整備等

① 現在、身分証明書として使われるパスポート、マイナンバーカード、 免許証、住民票、印鑑登録証明書なども旧姓併記が認められており、 旧姓の通称使用の運用は拡充されつつあるが、国・地方一体となった 行政のデジタル化・各府省間のシステムの統一的な運用などにより、 婚姻により改姓した人が不便さや不利益を感じることのないよう、 引き続き旧姓の通称使用の拡大やその周知に取り組む。

 

1 旧姓の通称使用に関するこれまでの主な動き

*平成 13(2001)年3月 国の行政機関における職員の旧姓使用 ・職員から申出があった場合に、以下の文書等に旧姓の記載を行う。

*平成 18(2006) 10 月 国務大臣の任命等における旧姓を含む通称併記 。

*平成 29(2017)年9月 国の行政機関における職員の旧姓使用(拡大)・職員から申出があった場合、法令上または実務上特段の支障が生じるものを除き、旧姓の使用を認める。

*平成 302018)年9月 国務大臣の旧姓使用(拡大)・対外的な法律上の行為への旧姓使用を認める。(政府代表等への任命行為には引き続き戸籍名を使用)。

*平成 31(2019)年1月 看護師免許証の旧姓併記。*令和元(2019) 11 月 住民票・マイナンバーカードの旧姓併記。*令和元(2019)12月 運転免許証の旧姓併記。

*令和2(2020)年3月 介護福祉士登録証の旧姓併記 。

*令和2(2020)年4月 保育士証の旧姓併記。

*令和3(2021)年4月 旅券の旧姓併記の要件緩和従前の要件:外国において旧姓による論文の発表、職場、業務による渡航等における旧姓使用の実績を証明する等 ・「Former Surname(旧姓)」等の追記。

*令和3(2021)年6月 「各種国家資格、免許等における旧姓使用の現状等について」を公表(内閣府男女共同参画局) ※263 の資格で旧姓使用が可能(令和4年4月から使用可能となるものを含む。)。

*令和3(2021)年9月 「各種国家資格、免許等における旧姓使用の現状等について」を9月30日現在で更新

 

 

11-2 旧姓の通称使用の限界に関する指摘 (令和2年度に実施した意見募集等に基づく把握)

https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku_kanshi/siryo/pdf/ka3-3-4.pdf

 

1 旧姓の通称使用ができない又はできない場合がある手続等

(1) 税金関連の手続(税務書類(申告書等)、納税通知書等)

(2) 銀行口座(一部で非対応)、クレジットカード(個社により異なる)

2 本人、企業等の経済的なコスト、負担等

(1) 本人の旧姓併記、改姓の手続等にかかる金銭的負担、時間的負担

(2) 企業、団体等における人事、給与管理上の負担(通称及び戸籍名の2つの名 前の管理のためのシステム改修等のコスト、人事、給与手続の煩雑化)等

(3) 個人識別の誤りのリスクやコストの増大

3 本人の心理的な負担等 ・改姓や旧姓併記により婚姻、離婚等のプライバシーが公になる ・通称名と戸籍名の2つの姓の使い分けや併用に伴う負担や混乱 等

4 改姓によるアイデンティティの喪失

5 婚姻の妨げになっている ・実家の名字の存続の問題、事実婚の選択 等

6 渡航や外国生活における支障

  • 旧姓の使用場面が限定 (2) パスポートの戸籍名と通称との違いに関し説明が必要

7 女性活躍の妨げになっている

(1) 改姓による業績、研究実績(論文、特許等)、経歴の分断等

(2) 事業承継における困難 等婚姻夫婦のうち約 96%は女性が改姓(令和元年 95.5%)

 

 

13 東京新聞(21320日) 旧姓の通称使用拡大には課題も

https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=92705&pid=1760209

自民党は、選択的夫婦別姓制度について議論するワーキングチーム(WT)をスタートさせる。制度の導入を求める意見が強まる一方で、反対派は、現在でも認められている旧姓の通称使用の拡大で対応するよう求める。だが、通称使用には法的根拠がなく、拡大しても家族の姓の問題の抜本的な解決にはつながらない。(柚木まり、川田篤志)

 

政府は2016年から旧姓の通称使用の拡大を進めてきた。結婚後も仕事を続ける女性が増え、戸籍上の姓を変えることによる不便さを解消するためだ。これまで、公的証明となるマイナンバーカードや住民票、運転免許証に旧姓併記を実施。総務省によると、システム改修に175億円を投じた。21年度からは、パスポートで併記した姓が旧姓であることを明記する。旧姓併記に必要だった論文など海外での実績証明は、戸籍謄本や旧姓併記の住民票で済むようにする。(だが)旧姓はあくまで通称の扱いで、法律上の定めはないため、政府は旧姓併記を拡大するだけでは、解決できない。

 

旧姓の通称使用拡大では解決できない主な課題

 

*氏(姓)の継承=一人っ子同士の結婚などで、どちらかの姓を継ぐことができない。

*パスポート=複数の姓を表記し渡航先でトラブルになることも。

旧姓でのビザや渡航券の取得は原則不可。

*金融機関=システム改修の費用負担や不正防止のため、旧姓併記の導入に消極的。

*納税手続き=戸籍名のみに対応。