ゼロカーボンと鉄スクラップ その連想ゲームと用語・略語解説

 

連想ゲーム

1 15年地球温暖化防止パリ会議(パリ協定「産業革命前と比較して2℃より充分低く抑え、1.5℃に抑える。今世紀後半に温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする」)→→20年12月中国習主席(中国は60年までに実質ゼロを目標とし、30年までに05年より65%以上減らす)→→214月バイデン大統領(米国は30年を目標にCO2排出量を05年比5052%減、英国は35年に90年比78%減。日本は30年度に13年度比で46%減)→→日本5月:50年ゼロの方針を明記した改正温暖化対策法成立(ゼロ・カーボン、カーボンニュートラルに向けて)。

 

2 国際的なグリーントランスフォーメーション(GX)→→国家税制によるカーボンプライシング(CP=炭素税、排出枠取引、国境炭素税)→→個別企業のインターナルカーボンプライシング(ICP)→→素材供給企業グリーンパートナーシップ(東鉄など)の拡大→→高炉VS電炉VS輸出の激化→→発生工場・業者・品種選別の強化(世界的な囲い込みの一環として)。

 

3 中国、30年までに05年よりco2排出65%減(国家目標)→→電炉鋼比率を25年までに20%へ→→21年1月鉄スクラップ輸入関税ゼロ→→鉄スクラップ検収無人化、ハイテク化(21年7月・リサイクル工業会国際フォーラム・中国廃鋼鉄責任者)→→国内回収網の現代化(中国業者、国内リサイクルの本格化)。

 

■用語説明

 

*カーボンニュートラル=森林保護や自然環境整備、さらに一連のCO2排出削減によって産業活動によるCO2排出量とCO2吸収量を実質「プラスマイナス・ゼロ」にしようとの余界的な取り組み。そこから「ゼロ・カーボン」の標語もでてくる。

 

*グリーンパートナーシップ=東京製鉄「長期環境ビジョン」のなかで・「鉄スクラップ事業者とのパートナーシップの強化=国内鉄スクラップ事業者とのグリーンパートナーシップの強化により鉄スクラップ回収量の増大を図っていきます」との文脈の中で出てくる。

 

■略語説明

 

GX=化石燃料から温室効果ガスを発生させない再生可能エネルギーに転換する(グリーン)ことで地球環境を転換(トランスフォーメーション)するとの世界的な取り組み。

SDGs=「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」20159月の国連サミットで採択され加盟193か国が16年から30年の15年間で達成するための目標。

ESG=環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)。この三観点から企業を分析して投資する「ESG投資」が注目されている。

CP=「カーボンプライシング」。炭素に価格を付ける仕組みで、「炭素税」と「排出量取引制度」がある。▽炭素税=炭素排出1トンあたりX円、といったかたちで政府が炭素価格を直接的にコントロールする手法。▽排出量取引制度=企業は、政府から与えられた「排出枠」を踏ま、排出枠が余った場合や不足した場合には、市場でその分を売買する仕組み。▽国境炭素税=CPの公平性を維持するため各国の炭素税の差額を関税として徴収する仕組み。

ICP=「インターナルカーボンプライシング」。企業が独自に炭素に価格付けする取り組み。米マイクロソフトは取引先などで発生するCO2も考慮対象に含めた(下記・経済教室)。

LCA=「ライフサイクルアセスメント」。製品やサービスなどにかかわる、原料の調達から製造、流通、使用、廃棄、リサイクルに至る「製品のライフサイクル」全体を対象として、各段階の資源やエネルギーの投入量と様々な排出物の量を定量的に把握し、原材料の採取などを含む製品の寿命全体で二酸化炭素(CO2)排出量を評価する手法。

RE100=企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ。世界や日本の企業が参加している(エコネコル。21419日hp)。

 

参考までに

 

東京製鉄グリーンパートナーシップが意味するものhttp://www.tokyosteel.co.jp/eco/vision

 

鉄リサイクル工業会国際ネットワーク委員会は217月「第9回国際鉄リサイク ルフォーラム」をWEB形式の会議で行った。プログラムのトップは、ゼロ・カーボン問題(東鉄鋼板部長)。またそれに関連した中国の鉄スクラップの現況と今後(中国廃鋼鉄応用協会)などをメインに取り上げた。講演後の質疑応答のなかでGX関連の質問がでた。東鉄が6月に打ち出した長期環境ビジョン(*)グリーンパートナーシップの強化により鉄スクラップ回収量の増大を図っていきます」とある。では「現状、どのようなパートナーが参加しているのか」との確認だった。回答は「予想もしなかった多方面から問い合わせが殺到している」。「(低炭素由来の)電炉鋼板への関心の高まりを実感している」とのことであった。

 

■五輪電炉鋼材、採用率62%・低炭素に貢献(7月30日・産業新聞)

 

科学技術振興機構(JST)の低炭素社会戦略センター(LCS)の調査報告書『鉄リサイクルを利用した将来低炭素社会のための課題検討に向けて―2020年東京五輪施設のリサイクル鋼材利用とCO2排出実績―』によれば、東京都施設(スタジアムを除く)の鉄鋼量は5.5万㌧、CO2排出量は5.9万㌧で、リサイクル鋼材の使用割合は62%と高く、単位鉄鋼量1㌧当たりのCO2排出量は108㌧となり、ロンドン大会の177㌧に比べて低かったとした。

 

■「経済教室」・温暖化対策、日本の針路(下) (8月3日・日経新聞・抜粋要約)

 

 世界はカーボンニュートラルに向け動きだした。120を超える国とEU50年までに二酸化炭素(CO2)または温暖化ガスの排出実質ゼロをめざす。世界最大の排出国中国も、30年までにCO2排出量の頭打ち、遅くとも60年までに温暖化ガス排出実質ゼロをめざす。日本も30年目標として、温暖化ガス排出量を13年度から46%削減するという方向性を示した。15年に決定した「13年度比26%削減」を大きく引き上げるものだ。

 

15年に30年目標を決定した頃と比べて気候変動問題の意味合いは大きく変わった。カーボンニュートラルに向けた事業戦略など気候変動問題への対応が、取引先や金融市場からの企業評価を左右する。日本を代表する企業は意欲的な30年目標を掲げ、国よりも早く気候変動対策を進めている。

対策の焦点の一つは、自社の事業活動からの直接の排出量に加え、サプライチェーン(供給網)やバリューチェーンからの「スコープ3排出量」、すなわち取引先の排出量の削減だ。米マイクロソフトは、30年までにスコープ3排出量を半分以下にする目標に向け、取引先にスコープ3排出量を含む温暖化ガス排出量の情報開示を求め、それを基に取引先を選定する。

 

米アップルは全事業・製品のサプライチェーンとライフサイクルからの排出量を30年までに実質ゼロにする目標を掲げ、部品や設備のメーカー、取引先に30年再エネ100%での製品製造を要請する。213月時点で村田製作所など日本企業を含む110超のサプライヤー(部品会社など)が誓約する。日立製作所は、30年度自社のカーボンニュートラル、50年度までのバリューチェーン全体のCO2排出量80%削減をめざす。