温暖化防止とゼロカーボン・スチールへの挑戦(7月31 日・改訂版)


本稿は今夏発刊予定の「日本鉄スクラップ 鉄鋼と業者140年史」(「第一部 伊藤信司と稲山嘉寛の時代(1877~1985年)」、「第二部 渡来系業者とゼロカーボンの時代(1985~2021年)」の二部構成のうち、第二部第七章の「ゼロカーボン社会と鉄スクラップ業の将来」を先行、公開したものである(前回公開文を加筆した)。

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第七章 ゼロカーボン社会と鉄スクラップ業の将来

 

世界の枠組みが、今、大きく変わった(パラダイム・シフトが起こった!!!)。

ゼロ・カーボン達成が政治的、経済的、社会的な課題となった(時間との競争!!!)。

鉄鋼業は(自動車産業と並んで)、その最前線に立たされた(鉄鋼連盟・214月宣言)

当面の段階的な発生抑制策として鉄スクラップ使用が、世界的に浮上したのだ!!!。

 

1 鉄スクラップが「ゼロ・カーボン」の切り札へ

 

地球温暖化防止への国際社会の取り組みは、いまや「ゼロ・カーボン」、「カーボン・ニュートラル」のキーワードと共に、21世紀の政治・経済の主要テーマとなった。

日本でも214月、菅首相が30年度CO2(二酸化炭素)排出量削減目標を従来の13年度比26%減を46%減に拡大する新目標を内外に公約した。また国や企業が取り組むべき気候変動対策を定めた改正地球温暖化対策推進法が5月26日成立。50年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにする政府目標を明記した。法律であるから、政権が変わっても国はその明文に拘束される。日本の鉄鋼業界は、今や待ったなしの「ゼロ・カーボン」対策を迫られた。

 

現代の高炉製鉄法は化石燃料を還元剤として使う(コークス製鉄法)から、その過程で大量の二酸化炭素を排出する。世界の鉄鋼業界が「ゼロ・カーボン」対策として取り組もうとしているのが、(長期的には)還元剤として、コークス(石炭)の代わりに水素を使う「高炉・水素製鉄法」の研究、投資(注1)であり、当面の対策として注目しているのが、先進国で大量に発生する鉄スクラップを使って製鋼する電炉操業法の活用だ(注2、注3)。

 

中国は世界の粗鋼生産の半分以上を占める。その中国の電炉生産比率は、1910.4%で(中国を除く)世界平均の48.3%にはるかに及ばない。その中国も25年には電炉操業率を20%超とする大幅引き上げと鉄スクラップの積極的な活用(注4)に舵を切った。

それが顕著に表れたのが21年春以降の鉄スクラップ輸入政策の変更(注5)だ。その結果、日本から中国向けの鉄スクラップ輸出は、一気に増加に転じた(注6)。

 

*注1・鉄鋼連盟は、我が国のカーボンニュートラルに貢献すべく「ゼロカーボン・スチールへの挑戦」に関するHPを公開した(2141日)。https://www.zero-carbon-steel.com

日鉄、5年間の経営計画(213月6日・日経新聞)日本製鉄は35日、25年度までの5年間の経営計画を発表。50年にはCO2排出「実質ゼロ」を目指す方針も盛り込んだ。水素製鉄法やCO2の回収技術。4兆~5兆円の投資が必要で政府の支援は欠かせない。

▽第四の革命・カーボンゼロ(21年5月3日・日経新聞)究極の資源競争が始まった。脱炭素の王道は太陽光や風力などによる電化だが、大型飛行機は電気で飛ばすのが難しい。高炉も電気では動かない。水素を製鉄に使う場合、11㌦が実用化の目安とされるが、いまの生産コストは29ドルと高い。調査会社ブルームバーグNEFは水素が11㌦に下がった場合、CO2・1㌧あたり50㌦前後の炭素税をかけると長期的に水素製鉄が高炉より優位になると試算。炭素税が高炉の鉄鋼価格を12割押し上げるとみられる。

 

*注2・日鉄、30年までに大型電炉を建設する21331日・日経新聞)日本製鉄は30年までに大型電炉を国内につくる方針。粗鋼年産能力は400万トン規模と同社が持つ高炉に匹敵。日鉄は22年以降、広畑や米国アラバマ州の工場で新電炉を稼働させる予定。

▽JFE、CO2排出2割減へ 全製鉄所に新設備(20年116日)=JFEスチールは21年度までに国内全製鉄所で環境負荷の少ない新型設備を導入する。中核設備の一つである「転炉」を一新。エネルギー効率の高い最新型に転換し、鉄スクラップを多く利用できるようにする。30年度までに環境分野に1000億円超を投資し、13年度に5810万トンだった鉄鋼事業のCO2排出量を30年度までに2割以上減らす。

 

*注3・東京製鉄「長期環境ビジョン」(tokyosteel.co.jp)21624日・HP)=・「脱炭素社会の実現に向けて=30年度はCO2総排出量ベースで13年度と同等、原単位ベースで60%の削減を目標とし50年度はカーボンニュートラルの達成を目指します。鉄スクラップの『アップサイクル』を通じて、自社の生産を30年に600万㌧、50年に1000万㌧まで拡大し、高炉鋼材から電炉鋼材への置き換えを推進することにより「カーボンマイナス」実現に貢献してまいります。・省エネルギーの実施=CO2排出量原単位の毎年1%以上の削減を目指します。CO2排出量原単位を13年度比で30年に60%削減、50年に100%削減を目標に活動します。・顧客との協働による鉄スクラップ回収率の向上=当社製品の回収率を向上し、当社の脱炭素・循環型鋼材を納入するクローズドループの循環型取引を拡大します。鉄スクラップ事業者とのパートナーシップの強化=国内鉄スクラップ事業者とのグリーンパートナーシップの強化により鉄スクラップ回収量の増大を図っていきます」。

 

*注4・中国、電炉鋼比率を20%へ(19917日・産業新聞)=中国工業情報化省が「電炉製鋼発展の指導意見」を発布。第145カ年計画最終年の25年電炉鋼比率を20%に引き上げる発展目標を示した。中国廃鋼鉄応用協会は、発生量は20年2億㌧、25年には3億㌧増えると予想。中国鋼鉄工業協会は高炉への直接投入の研究を開始した。

▽中国、60年までにCO2排出実質ゼロを国際公約=中国の習近平国家主席は国連総会で60年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を表明した(209月)。

▽河鋼集団、電炉比率25%計画(21427日・産業新聞)=中国の河鋼集団は電炉鋼生産比率を30年に25%に引き上げる計画。中国政府はCO2排出削減に向け電炉鋼比20%を目標とし、企業に電炉導入や高炉から電炉への切り替えを促している。宝武鋼鉄集団が河南省で電炉建設を計画するなど、脱炭素の潮流が鉄鋼業の構造変化を加速させている。

 

*注5・中国、鉄スクラップの新国家規格を承認(201221日・産業新聞)=中国の国家市場監督管理総局は14日、鉄スクラップの新国家規格「再生鋼鉄原料」(GB/T397332020)について2111日の適用開始を承認した。

▽中国、鉄スクラップ輸入関税ゼロへ(2156日・テックスレポート)=中国は今年輸入を再開した「再生鋼鉄原料」の輸入暫定税率を51日からゼロとした。

 

*注6・中国向け鉄スクラップ輸出は急増(21年6月)=日本の21年1~5月鉄スクラップ輸出は約345万㌧。うち中国向けは約22万㌧(前年同期約7千㌧。約31倍)。韓国、ベトナム、台湾、バングラディシュに次ぐ5番手に急浮上した。

中国税関調べによれば、直近10年間の中国輸入のピークは11年676万7千㌧だが、雑品規制が強化された19年には18万4千㌧。20年には2万7千㌧まで落ち込んでいた。

 

2 グリーントランスフォーメーション(GX)と鉄鋼・鉄スクラップの未来(追加)

 

グリーントランスフォーメーション(GX)とは、化石燃料から温室効果ガスを発生させない再生可能エネルギーに転換する(グリーン)ことで地球環境を転換(トランスフォーメーション)するとの世界的な取り組み。日本政府も2012月「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」をまとめ、14分野(注1)ごとに戦略と対策を明示した。

グローバル企業の多くは、カーボンニュートラルを時代の要請と受け止め、30年をめどにサプライチェーン全体でのゼロ・カーボンの実現を目指しており、日本企業にもGXを要求している。GXに向き合わない国や企業は、国際社会から地球温暖化対策に後ろ向きだと判断され、国際信用力、国際競争力を失うことになるとされる(注2)。

 

鉄リサイクル工業会国際ネットワーク委員会は217月「第9回国際鉄リサイク ルフォーラム」をWEB形式の会議で行った。プログラムのトップは、ゼロ・カーボン問題(東鉄鋼板部長)。またそれに関連した中国の鉄スクラップの現況と今後(中国廃鋼鉄応用協会)などをメインに取り上げた。講演後の質疑応答のなかでGX関連の質問がでた。東鉄が6月に打ち出した長期環境ビジョンには「グリーンパートナーシップの強化により鉄スクラップ回収量の増大を図っていきます」とある(前項・注3)。では「現状、どのようなパートナーが参加しているのか」との確認だった。回答は「予想もしなかった多方面から問い合わせが殺到している」。「(低炭素由来の)電炉鋼板への関心の高まりを実感している」とのことであった。

 

恐らく、その通りであろうと編者は思う。GXが求められる世界の製造メーカーにすれば、出荷製品のカーボン値とは「原材料(鋼板)+(製造+輸送)工程」全体のカーボン値だからまず原材料である鉄鋼のカーボン値をどれだけ抑えられるか、それが問題となるからだ。

GX普及がすれば、世界の製造メーカーは否が応でもカーボン対策に向き合わざるを得ない。

その現実が、すでに動き出している(注3)。質疑応答は、はしなくもそれを証言した。

 

*注1(14成長戦略分野)・▽洋上風力産業:▽燃料アンモニア産業:▽水素産業:発電タービン・水素還元製鉄・運搬船。▽原子力産業:。▽自動車・蓄電池産業:EV(電気自動車)・FCV(燃料電池自動車)・次世代電池。▽半導体・情報通信産業:▽船舶産業:燃料電池船・EV船・ガス燃料船など。▽物流・人流・土木インフラ産業:▽食料・農林水産業:▽航空機産業:水素航空機。▽カーボンリサイクル産業:・バイオ燃料・プラスチック原料。▽住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業。▽資源循環関連産業:バイオ素材・再生材・廃棄物発電。▽ライフスタイル関連産業:地域の脱炭素化ビジネス。

*注2・GXの衝撃 脱炭素選別急ぐ21年7月20日・日経新聞)温暖化ガス排出を実質的になくすカーボンゼロの取り組みで世界の企業が選別され始めた。グリーントランスフォーメーション(GX)が企業価値を決する。動きが鈍い企業は退場を迫られる。「(カーボンゼロの)変化に迅速に適応できない企業は、信頼を失う」。世界最大の運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOは1月、投資先企業への手紙で警告し、カーボンゼロに向けた戦略を開示するよう求めた。GXが問いかけるのは経営の優劣そのものだ。

*注3・五輪電炉鋼材、採用率62%・低炭素に貢献(7月30日・産業新聞)=科学技術振興機構(JST)の低炭素社会戦略センター(LCS)の調査報告書『鉄リサイクルを利用した将来低炭素社会のための課題検討に向けて―2020年東京五輪施設のリサイクル鋼材利用とCO2排出実績』によれば、東京都施設(スタジアムを除く)の鉄鋼量は5.5万㌧、CO2排出量は5.9万㌧で、リサイクル鋼材の使用割合は62%と高く、単位鉄鋼量1㌧当たりのCO2排出量は108㌧となり、ロンドン大会の177㌧に比べて低かったとした。

 

3 その歴史的、今日的背景

 

人類は化石燃料(石炭、石油)の高度な利用と大量消費で現在を築いた。古代のヒトは地下から鉄を掘り起こして文明を開き、近代人はこれを動力源として広範な移動手段(馬車から自動車、帆船から飛行機)を発明し、現在に至る産業社会と地球規模の経済活動を獲得した。

その鉄鋼生産とすべての移動手段が、歴史的な転機に立っている。石炭や石油など化石燃料はCO2を排出する。それが地球温暖化を促進させ、地球環境に壊滅的な影響をもたらす。

92年のブラジル・リオデジャネイロの「地球サミット」以来、地球温暖化防止は国際的な枠組みとなった。97年京都会議で数値的な防止策(京都議定書=0812年には地球温暖化ガスを90年比5.2%削減する)が合意されたが、米国は議定書から離脱し中国、インド、韓国は発展途上国であるとして枠外となったため実効性が疑問視された。

 

15年パリ会議は、米国や京都議定書では枠外となった各国も参加し「産業革命前と比較して2℃より充分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求する。今世紀後半に温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする(ゼロ・カーボン)」との世界目標を掲げ、さらに各国に5年ごとに削減目標計画を提出するよう義務付けた(パリ協定)。ただ世界の足並みが直ちに揃ったわけではない。地球温暖化に懐疑的なトランプ米大統領は176月パリ協定の離脱を表明し、1911月正式に離脱した。しかしバイデン新大統領は就任直後の初仕事としてパリ協定に復帰。直ちに温暖化防止の工程表を世界に示した。慎重姿勢だった日本もこの動きに乗った(注1)。

 

CO2排出が最も多いのが石炭、重油発電所、ついで製造産業、陸海空など運輸、商業施設、家庭の順である。日本の産業分野では、鉄鋼業界が最大の排出者で全体の40%超を占める。運輸では自動車だ。その対策が鉄鋼業界(注2)や自動車業界の、次の時代の生き残りを賭けた経営戦略となった(注3)。これは鉄鋼や自動車産業だけの内部的な問題ではない。地球温暖化防止、脱炭素(ゼロカーボン)への取り組みは、いまや待ったなしの人類全体の生存をかけた社会的課題(注4)となっている。日本政府(菅首相)も気候変動に関する首脳会議(サミット)で13年度比26%減の従来目標を7割以上引き上げ46%とする新目標を示し「さらに50%の高みに向けて挑戦を続ける」と発言した。

この地球温暖化防止策と国家経済戦略がガッチリと重なったのが「脱炭素」(ゼロ・カーボン)電気自動車の育成、普及であり、鉄鋼ではゼロカーボン・スチールへの挑戦である。

 

*注1・バイデン米大統領提唱・気候変動首脳会議(21423日・日経新聞)=気候変動首脳会議が422日開幕され、米国は30年を目標にCO2排出量を05年比5052%減、英国は35年に90年比78%減。日本は30年度に13年度比で46%減、中国は30年までに削減に転じさせる方針。米国は「国境調整措置」(後出・注3)も検討する。

 

*注2・日本鉄鋼連盟、50年にCO2実質ゼロ方針(21年2月15日・日経新聞)=日本鉄鋼連盟は15日、製鉄工程で排出する温暖化ガスについて50年に実質ゼロを目指すと発表した。18年に公表した長期目標で業界として2100年の実質ゼロを掲げていたが、政府が50年に照準を定める中で大幅に前倒しする。鉄連が切り札に位置づけるのが「水素製鉄法」。CO2の排出を現行より3割減らせる製鉄法を確立する考えだ。国立環境研究所によると、国内の19年度CO2排出量103千万㌧のうち、製造業は3億6400万㌧を占めた。鉄鋼業は最も多い1億5500万㌧を排出した。

 

*注3・自動車に排出枠取引制度(20124日・日経新聞)=経産省は20年代後半に自動車に温暖化ガスの排出枠取引制度を導入する検討に入った。30年代半ばに新車は電動車(EV)のみとする目標を設けるためだ。米カリフォルニア州ではEV比率が目標に届かないメーカーが達成済みの企業から排出枠を買う制度を設けている。

 

*注4・国境炭素税、WTOで協議へ(21年322日・日経新聞)=CO2排出規制が緩い国や地域から製品を輸入する際、製造時に排出したCO2に応じて関税を課す「国境調整措置」をめぐる多国間協議が始まる。特定の国による「ただ乗り」を避ける仕組みだ。たとえばEUが規制を強める一方で、ほかの国が十分な対応をとらず割安に作れば不公平になる。規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかけ、価格差を相殺しようというわけだ。

国境炭素税、米でも議論(21年7月21日・日経新聞)「国境炭素税」の議論がEUに続き、米議会でも始まった。民主党は241月から「国境炭素調整」を導入する法案を公表した。まず鉄鋼やアルミニウム、セメント、天然ガス、石油、石炭を対象にする。米メディアによると年最大160億ドルの税収増を見込む。現行の関税徴収額の2割に相当する。EUの欧州委員会は14日、国境炭素税を23年にも暫定的に導入する計画を発表した。

▽BBC・21422日=ロンドン中心部で4月15日から「絶滅への反逆」が始まった。10代のスウェーデン人活動家(グレタ・トゥーンベリ)の少女がステージに登壇すると、群集からは「あなたが大好き」とのコールが上がった。トゥーンベリさんは、「人類は分かれ道に立っています」と訴え、活動家は「地球のために戦い続けます」と述べた。

 

4 ゼロカーボン社会と鉄鋼業、鉄スクラップの将来

 

上記の「歴史的、今日的背景」の説明の通り、国境炭素税など将来予想される「ゼロ・カーボン」時代の厳しい国際競争を生き残りためにも、CO2排出量の多い鉄鋼業や自動車産業にとって、技術的革新(水素製鉄、CASE・自動車の開発)は至上目標となった。

これが鉄スクラップ業界、業者にどのようなインパクトをもたらすのか、鉄スクラップの商品特性(特質)と現在の鉄スクラップ業者の立ち位置(流通の実際)から、考えたい。

 

 鉄スクラップの特質は、持続可能な資源であり、かつ低炭素資源でもあることだ。

 

①産業活動の先行素材の一つ=鉄鋼需要はあらゆる産業活動に先立って動く。その始発原材料である鉄スクラップは鉄鋼と同様に産業活動に先行して動く(生産先行・指標商品)。

 

②都市鉱山の一つ=産業活動の事後生成物だから、鉄スクラップは、製造・消費が活発な先進国の「特産品」となり、先進国発の地上資源、輸出資源である(持続可能な資源)。

 

③低炭素品である=化石燃料を還元剤・加熱材として使用する高炉・コークス法は、鉄鉱石や石炭の採掘、その海陸の運搬、その製銑、製鋼の4段階でCO2を排出する。一方、地上・回収物を使う電炉・鉄スクラップ法は、製鋼の1段階だけで工程が完了する。

その結果、高炉・コークス法では、製鋼1㌧当たり約2㌧のCO2を出すが、電炉・鉄スクラップ法は、0.5㌧と高炉の4分の1で済む(温暖化防止資源)。

 

これが世界の鉄鋼業が、中長期的な水素製鉄法に至る「つなぎ」として電炉製鋼に注目し、鉄スクラップ確保に走る理由だ。その結果、鉄スクラップ流通は大きく変わる可能性がある。

 

①国際商品として=鉄スクラップは、持続可能な・温暖化防止資源として、国の内外で旺盛な需要を獲得する。輸出商品だから、貿易・荷役・湾岸設備の充実が条件となる。またそこに商機を見つけた商社や業者が、国内集荷網を整備し貿易扱いを拡大する動きもでてくる。

 

②国内鉄スクラップ流通「国際化」の予感=「ゼロ・カーボン」は、日本だけの問題ではない。世界共通の課題だ。現に2000年以降、中国などからの渡来系業者が「雑品」貿易を足場に湾岸船積みに進出。その実績を背景に近年、内陸各地にヤードを開設。彼らの母国・中国が鉄スクラップ輸入解禁に転じた21年現在、渡来系業者はさらなる商機を見つけた。「国際化」は海の上の貿易商売だけではない。日本国内の足元ですでに起こっている。

 

③高炉系業者の再評価の予感=高炉各社は「ゼロ・カーボン」策として電炉の新増設、鉄スクラップ使用の拡大を打ち出した。日本製鉄は400万㌧規模の電炉を広畑に作る。JFEも鉄スクラップ購入を増やす計画と伝えられる。その数量は、たとえば日鉄の計画数量(400万㌧)だけで現行の年間鉄スクラップの輸出量の4割を超える。そのインパクトは大きい。

高炉が電炉工程で高級鋼材を作る、のだ。その結果、鉄スクラップ業者と成分評価の新たな「選別」が予想される。キーワードは、品位・品質、安全・安心だ。高炉各社は、転炉製鋼法の普及とともに市中の鉄スクラップ購入から去った(70年代)が「ゼロ・カーボン」時代を前に再び市中に戻ってきた。流通商社、高炉系業者の新たな出番が予想される。

 

④ゼロ・カーボンの未来と鉄スクラップビジネス=リオ・サミットで持続可能な資源として鉄スクラップが再評価され、各種リサイクル法が制定され、国際貿易が拡大した。

鉄スクラップ・リサイクルは鉄素材・原料の回収・流通であると同時に、地球資源と環境に深く係わる商行為、さらに企業の経営姿勢を判定する試金石となった。

世界的なグリーントランスフォーメーション(GX)が進むなか、鉄鋼・鉄スクラップビジネスが、やがて見る未来だろうと編者は確信する。

                                                                       以上