金属類営業条例とは何か

▼古物営業法との関係=明治の古物商取締條例(1884年)は「古物商とは古道具(略)や古銅鉄、潰金銀を売買する者」と定義したが、戦後制定の古物営業法(1949年)では「金属くずは古物ではなく原材料として古物営業法から除外された」(56年大阪府会速記録第二号・95p。法令の項参照)。除外理由としては、戦中の金属類回収令、戦後の鉄屑資源調査(48年8月、51年2月)が行われるなか、金属くずは「古物」よりも、「鉄鋼原材料」と見られていたこと。それ以上に「国家統制」への抵抗感が強かったことが考えられる。
ただ50年の朝鮮戦争以後、金属屑が高騰し、金属類の盗難が多発。「金属屑は何らの法的規制を受けることなく自由に商売できるため、種々の犯罪を誘発」しているとの規制論が台頭した(地方自治制度研究会編『全訂注釈地方自治関係実例集』1977年、54p)。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S24/S24HO108.html
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H07/H07F30301000010.html
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/tetuzuki/kobutu/kaisetu.htm

再制定の動きも:

■岐阜県が再制定=岐阜県は同条例を00年廃止したが、13年10月内容を強化して再施行した。新条例は、許可証の掲示、行商の証明書の携帯・不正品の申告・取引相手の本人確認・取引に関する記録・記録の保存や警察による報告徴収・資料提出要求、営業所等への立入検査、指示・営業停止命令など旧条例を踏襲しつつ「営業場所の制限・従業者名簿の保存・防犯対策など」を追加し、許可申請を排除する欠格条項の範囲も遺失物横領を含む財産犯や盗品売買、粗暴犯など廃棄物処理法並に厳格化(4条)。報告徴収の範囲を旧例の「盗品等又は遺失物に関し必要な報告を求める」から「使用済金属類取引業者に対し使用済金属類営業に関し必要な報告又は資料の提出を求めることができる」(22条)に拡大した。
▼新設の営業場所の制限(13条)は、取引業者は営業所又はこれに準ずる以外の場所で取引業者以外の者から使用済金属類を受取ってはならないと規定する。これは廃家電を無料回収するケースや所在地を転々と変える不定業者対策と見られ、この違反は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」とした。同様に新設された「従業者名簿の保存(20条)」は、使用済金属として廃自動車を明示した(2条)ことから外国人従事者が多い自動車解体業の従業員動向把握(国際テロ対策)が目的かと推察できる。
http://www.pref.gifu.lg.jp/police/horei-shiryo/kitei/kisoku/index.data/so-h25-5.pdf

■千葉県も「特定自動車部品ヤード保管条例」を制定(2014年12月)=千葉県議会は14年12月19日、「県ヤード保管適正化条例案」を全会一致で可決した。条例施行日は15年4月1日。条例ではヤードで自動車の解体などを行う場合、氏名や概要などを知事に届け出ること、自動車や部品の取引で相手や年月日の記録を作成することを定め、県職員の立ち入り検査を認め、警察官の援助も求めることができる。知事は記録作成などの規定に従わない業者に是正命令を出すことができ、命令違反の場合は懲役1年以下または罰金50万円以下を科し、無届けや虚偽の罰則も規定した。
http://www.pref.chiba.lg.jp/haishi/iken/2014/yard-kekka.html

歴史的には:

御触書(享保8年・1723年、幕府評定所) 
享保の改革(古金業などに組合結成)=吉宗の改革として、町奉行は、 古着屋ほか七品商売人への盗品物の捜索・防犯体制を定め、 古着屋などと並んで古鉄古金商たちに組合結成と記帳管理などを命じた。
 一 古鉄商人は十人程ずつで組合を作り、日々売り買いの品を帳面に記し、盗難物(紛失物)の問い合わせがあった場合、帳面で調査(吟味)すること。
 一 店外で商売(振売)する場合を公式に認め、鑑札を発行する。無札の売買は禁じ、無札の者を発見したら、同業仲閒で召捕、奉行所に連行すること。古金問屋は無札の者から買い取ってはならない。
 一 新規に商売する者は最寄り組合に加入すること。このように決めたから名主、月行事はこの内容に沿って組合を結成し、問い合せがあれば入念に調査すること。組合の取調(仕方)に問題(吟味未熟)があれば、責任を追及する(御触書2100)。

古物商取締條例(1884年施行、法律・内務省)(明治16年12月公布、17年2月施行)
1条=古物商とは古道具、古本、古書画、古着、古銅鉄、潰金銀を売買し営業する者。
2条=古物商は管轄庁の「免許」が必要。
3条=警察官の調査のため古物商は、物品、売買主を帳簿に記載しなければならない。
4条=身元不詳の者からは買取できない。
7条=古物商は自宅、売主宅もしくは許可の場所以外で、買取(交換を含む)はできない。
10条=「贓物の品触れ」が到達したときは、年月日時、「品触写書」を附記すること。
11条=品触品を1年以内に取得した場合は、届け出ること。届け出ず「弁解」できない場合は、6条(盗品故買)の刑と同じとする。
13条=警察官は「何時たりとも」古物商の店舗に立ち入り、物品、帳簿を検査できる。

大阪府屑商取締規則(85年施行・条例)(明治17年12月公布、18年2月施行)
1条=屑商とは「古綿襤褸(寸断のものをいう)紙等」を売買交換する営業者をいう。
2条=屑商は「所轄警察署の免許」が必要。
3条=「屑商は警察管区ごとに組合を設け頭取1名(略)を選定し認可を受くべし」
4条=「屑商にして古物商を兼ね、古物商にして屑商を兼ねる者は各別に免許を受くべし」
5条=免許者は、看板を店頭に掲出すべし
7条=行商者は鑑札を目籠に掲示すべし。
8条=「目籠の外(そと)風呂敷布嚢(ふくろ)」の使用を禁じる(寛政の触書に同じ)。
13条=屑商は、自宅、売主宅もしくは許可の場所以外で、買取(交換を含む)はできない。
14条=屑商は、品名・秤量代価・年月日・売主譲主の住所、氏名を明細帳に記入すること。
16条=警察官は商品、帳簿を検査する。
19条=2条、4条~15条違反は処罰する。
▼屑商頭取心得(組合自主防犯)
1条=頭取は組合を総括し(略)「警察官の命に従い営業上取締に係わる事務を補佐する」
4条=頭取は組合名簿を調製し警察署に提出。
5条=頭取は組合員の行動に注意し、不正を知ったときは、警察に「申告」すること。

古物営業法(1949年制定:法律・警察庁)
1条(目的)=盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため(略)必要な規制等を行い、窃盗その他の犯罪の防止を図り、被害の迅速な回復を目的とする。
2条(定義)=「古物」とは、一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるその他の物を含む・略)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの、又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。
3条(許可)=開業するには営業所在地ごとの都道府県公安委員会の許可が必要。
11条(許可証等の携帯)=行商、競り売りの時は許可証を携帯しなければならない。
12条(標識掲示)=営業所若しくは露店ごとに古物商の標識を掲示しなければならない。
14条(営業の制限)=古物商は、営業所又は取引の相手方以外の場所で、古物商以外の者から古物を受け取つてはならない。
15条(確認等及び申告)=古物を買い受けるときは、1相手方の住所、氏名、職業及び年齢を確認。2住所、氏名、職業及び年齢が記載された文書(その者の署名のあるもの)の交付を受けるなどで、相手方の真偽を確認しなければならない。
16条(帳簿等への記載等)=古物商は、古物を受け取り、引き渡したときは、その都度帳簿等に記載すること(取引の年月日、古物の品目及び数量、古物の特徴など)。
19条(品触れ)=警察本部長等は、古物商に対し、盗品その他財産罪によって領得された物の品触れを発することができる。
20条(盗品及び遺失物の回復)=古物のうちに盗品又は遺失物があつた場合、古物商が当該盗品又は遺失物を同種の物を取り扱う営業者から「善意」(事情をしらないで)で譲り受けた場合でも、被害者又は遺失主は、無償で回復できる。盗難又は遺失の時から一年を経過した後においては、この限りでない。
21条(差止め)=古物商が買い受け(略)た古物について警察本部長等は、30以内の期間を定め古物の保管を命ずることができる。
22条(立入り及び調査)=警察職員は、古物商の営業所、保管場所に立ち入り、古物及び帳簿等を検査し、関係者に質問できる。
▼古物に該当しないもの=庭石、石灯籠、空き箱、空き缶類、金属原材料、被覆いのない古銅線類である(警視庁・古物営業法の解説)。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S24/S24HO108.html
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H07/H07F30301000010.html
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/tetuzuki/kobutu/kaisetu.htm