特集5 鉄リサイクル業の現在及び将来を考える(18年5月)
鉄「リサイクル」業者としての立ち位置
■歴史的承認=鉄スクラップ業は江戸時代以来、その制度、法令が歴史的に最も整備された資源回収(リサイクル)関連業である。ことに日本の場合、法制(各種リサイクル法)、制度(日本鉄源協会)、業者団体(日本鉄リサイクル工業会)など世界的に見ても稀なほど整備され、複数の業界紙と自律的なマーケットを備え、社会的信認も高い。
■リサイクル業者としての立ち位置=92年のリオサミット(地球環境保護)以降、鉄スクラップは「持続可能な再生資源」としても「地球温暖化防止」手段としても、国際的に再評価された。日本でもこれを起点に各種リサイクル法が制定され、鉄スクラップ業者は、リサイクル先進者であり地域密着・専門・装置導入業者として、その役割が期待された。各種リサイクル法は、生産者である家電や自動車メーカーに販売後の廃棄製品に関してもリサイクル責任(拡大生産者責任)を課し、同時に適法な第三者への委託処理を認めたから、高度な処理設備や豊富なノウハウを持つ鉄スクラップ業者などに、リサイクル・処理受託業者としてリサイクル実務分野に進出するチャンスをもたらした。
■「許可」の内容が変わった=リサイクル諸法の登場は、持続可能な再生資源の生産と地球環境保全の並立を目指すから、ビジネスパートナーに名乗りをあげた鉄スクラップ業者を取り巻く環境は、新法を境に大きく変わった。
それとともに「許可」の意味合いも変化した。従来の古物営業法や金属屑営業条例、廃棄物処理法の「許可」は、防犯や不法行為防止の「取締り」的な警察規制の色合いが強かった。しかし地球環境の保全、資源再生を目的とする家電や自動車など各種リサイクル法の「許可」は、資源再生や環境保全を適正に遂行する能力を審査する「資格認定」と「産業育成」的な色合いが濃い(だから主管は経済産業省)。
■リサイクル責任の本質=実態を率直に言えば、リサイクル諸法による「資源回収」も、世間の潜在認識では「廃棄物処理」の一種として「迷惑行為(設備)」のひとつなのだ。
生産者が、鉄スクラップ業者などに「リサイクル委託」を行うのは、一種の「迷惑行為の外出し」だが、リサイクル現場で重大な不始末・事故が起これば、委託者である家電メーカーに深刻な事態をもたらす。生産者(委託者)は、万が一の不祥事に関して、最終責任を負い、責任を回避すること(「リスクの外出し」)はできない。委託者としての管理・監督責任が問われ、社会的責任追及のリスクが生じる。「リサイクル実務の外出し」はできても「拡大生産者責任」の転嫁(リスクの外出し)はできないのが、「リサイクル委託責任」の本質である。
*重大な不始末・事故を起こした受託者であるリサイクル業者は、リサイクル法上の公的責任と委託者(生産者)からの民事上の契約責任(損害賠償)を別途追及されることになる。
リサイクル企業の存続は「社会的信認」が最低条件
各種リサイクル法の資格要件は厳格(許可制)で、家電メーカーなどと受託契約を結んだ鉄スクラップ業者などは、国の環境規制と委託メーカーとの民事上の契約(信義誠実義務)効果として公私の二重義務を負う。その最低保証条件として環境ISOの認証取得やCSR(企業の社会的責任)の遵守、社員教育などによる従業員の管理・監督の徹底が重視される。それらを一括りに言えば「リサイクル企業の社会的信認」が企業価値を左右するということだ。「法令遵守」(最低限の倫理)だけでは、足らない。
「より高度な受託者責任」が求められる。リサイクル・ビジネスは「社会的信認」の上でのみ成り立ち、リサイクルのビジネスパートナーは、それらの職責を果たしうる者だけとなる。そのような時代がやってきた。