なぜ相場が安いのか(16年5月 講演会より)

16年5月、ある組合団体で講演した。その講演トップテーマとして以下の4章題を掲げた。

1 なぜ相場が安いのか(昨年5月・・・冨高は市場展開をどう言ったか )

http://www.steelstory.jp/ja/market.html?kind=1&no=71

・価格構成3要素=価格は①投入コストと②為替と③需給で決まるのが原則である。

・世界要因・「供給過剰と消費過小」(外圧)=「供給過剰→製品デフレ」と「消費過小→資源デフレ」による需給ギャップが拡大し、向こう3~5年はその改善はほとんど期待しがたいとされる(鉄鉱石、原油価格の長期低迷観測)。国際的な対策も検討されているが、最大の生産国、中国は拒否。世界経済も恐慌同然の混迷の中にある(世界不況)。

・日本要因・「需要に見合った生産」(内圧)=12年10月の新日鉄住金登場が転機。日本では高炉および電炉は2系列に集約され、「国内的には」需要に見合った生産体制が確立した(構造的変化)。国内市場を足場とする電炉は「スプレッド管理」により「減収増益=減産下の利益確保」が可能となった。鉄スクラップは、この外圧と内圧の重石の下にある。

2 なぜ品物が少ないのか

・絶対量が減った=粗鋼生産は72年以来40年以上1億㌧前後で変わらないが、輸出比率は過去20年(93~94年平均25.5%→13年~14年平均41.1%)で15ポイント以上も増加。製品輸出や製造歩留まり向上も加わるから、発生スクラップの減少は構造的に進んだ。

・相対量が減った=流通・発生ルートが、川上・川中・川下の各段階で変化した。

川上=製造会社の歩留まり向上と囲い込み(東鉄・パナソニックス)。

川中=非鉄、産廃業者の参入(異業種の垣根越え)。

川下=行政(小形家電リサイクル法)、路上回収の増加。

それらの3段階の変化が、無防備な業者の集荷網に穴を開けた。

3 なぜ業者の提携が増えたのか

・問屋機能が変わった=日本は「供給量の絶対的不足」が続いた。歴史的に「鉄くず統制」や「鉄くずカルテル」を結成し、強制的な需給調整を目指した。そのなかで流通業者は、なによりも「数量確保能力」が問われた。しかし新日鉄住金の登場による鉄鋼集約(事実上の非公然カルテル)の結果、全く別の状況が生まれた。つまり鉄鋼各社は「需要に見合った生産」が可能となったことから、数量・価格の事実上の決定権を握り、分散する多くの流通業者は、その指示のもと納期・品質を守る、との一方的な力関係に変化した。   

・新たな模索として=現在、進行形の業者の「合従連衡」は、その力関係の変化と流通機能の変化の中から生まれたと理解できる。一つは、ナショナル(地域)連合として、あらゆるリサイクル要望に対応する体制構築(スズトクモデル)。今ひとつは、国内需要の長期的縮小と高炉2系列化の現実を見据え、納期・品質のブランド力と同時に、海外輸出力を確保するとの選択である(FKSモデル)。さらに自動車リサイクルなど特定分野を軸に技術提携を探るなど、「量より質」、「量も質も」の動きが多様化した。

4 なぜ経団連が業者を呼び込んだのか(新たなビジネスモデルを目指して)

岡目(傍目)八目、大所高所という言葉がある。つまり渦中にある者は、自分自身の立ち位置がよく分からないということだ。現在のリサイクル業がまさにそれである。

・「リサイクル」がキーワード=第3代会長を務めた鈴木孝雄が10年7月、経団連(日本経済団体連合会)に参加を乞われ、経団連・環境安全委員会に席を置いた。

・なぜヤマダ電機なのか=リサイクル工業会会長を送り出した有力業者が11年11月、行き詰まった。スポンサーに名乗りをあげたのが家電量販大手のヤマダ電機だった。