■鉄スクラップの商品特性
1 産業活動の「事後生成物」=スクラップは工場などの工程「発生」品であり、「解体・老廃」品として発生する。産業・市民活動が終り、その「事後の生成物」として登場する(発生量は予め決定できない)。
2 需要に応じて供給が調整される=廃棄物のため固有の価値を持たず、鉄鋼・電炉メーカーなど利用者のニーズを待って商品価値が生れ、供給される。「まず需要があって供給が決まる」。その結果、長期的に見れば、どのような局面でも(価格変化を通じて)需要を追う形で供給が形成され、「需要量≒→供給量」として再バランスする。需要が落ちれば、供給数量もそのレベルまで落ち、次の均衡点を探る。
3 産業活動の先行素材である=鉄鋼素材を基本骨格とする近代産業社会では鉄鋼生産があらゆる産業活動に先立って動く(鉄スクラップは鉄鋼と同様に産業の「先行」相場指標の重要な一角を占める)。
4 流通タイムラグ商品である=産業活動の事後生成物であるから、集荷・加工・ストック期間を含め最終消費までは一定の時間差が生じる。発生から最終ユーザー持込みまでのタイムラグが比較的小さい「工場発生品」でも前期の発生量で当期の需要を賄うズレがうまれる(工場機械類では原価償却年数、自動車解体スクラップであれば、13年前後の耐用年数、建屋類であれば30~50年の時間差が生まれる)。
5 先進国の「都市鉱山」、低炭素の切り札=米国の鉄鋼蓄積は40数億㌧、日本の蓄積量は13億㌧で、地上の鉱山である鉄スクラップ(埋蔵量)は先進国中心に増大。鉄スクラップは持続的循環可能な「地上の鉱山」へ変貌した。▼また鉄スクラップは再熔解だけで鋼材となる。鉄鉱石から鉄鋼を作るには1㌧当たり約2㌧のCO2を排出するが電炉は高炉の4分の1から6分の1。転炉への鉄スクラップ投入時のCO2排出は原理的にゼロに近いからCO2規制を受ける先進国は鉄スクラップ使用を強める傾向にある。
■鉄スクラップの価格特性
1 鉄スクラップ価格は「検収」で決まる=荷姿・成分等が多様な鉄スクラップは、最終的には買い手側の「検収」(検査収納)によって価格が決まる。検収とは、本質的には「リスク負担判定」であり、その判定をどう自己に有利に運ぶか、との駆け引きの余地が生まれる(計量・ダスト、あんこ問題)
2 供給数量が価格交渉力を左右する=市中からの回収・集荷品であり、予め供給量は決定できない。このため「需要に応える供給量の確保が、価格交渉力を生む。即ち「数量がまとまれば、高値で売れる」可能性が高い(一方、製造会社などの供給が先行する一般商品は、数量がまとまれば安い)。
3 需給ギャップが価格動向を決める=「需要」先行商品だから予め「供給」量は設定できない。事後生成物で、さらに産業の「先行素材」のため需給環境が急激に変化した場合、常に時間的需給ギャップが生じる。需給ギャップの大小が(需給量の大小に係わらず)鉄スクラップ「価格動向の強弱」を決める。
4 「成分評価」、典型的な「一物一価」商品である=時計や自動車などの生産商品は「機能」評価商品だが、老廃・発生品である鉄スクラップは、純分・歩留まりだけで容易に価格が決まる。1㌧当たりFe純分が分れば、価格判定は瞬時に可能である(世界的な「一物一価」商品。だから遠距離貿易も可能)。
5 心理的・相場同調性が極めて高い=世界的な一物一価で、広範・多様なプレイヤーを擁する発生・回収品であるため、心理的な同調性は極めて高い。さらに「成分評価商品」であり「需給が価格を決める」ため、将来の需給動向(予測)は直ちに流通スピード(売り急ぎ、売り渋り)に反映し、価格に素早く跳ね返る。参加者全体の気配・雰囲気(漠然たる相場感)が方向感に大きく影響する。
■レアメタル(レアアース)の商品特性
1 本質は機能添加剤=レアメタルは非鉄の一種だが、銅や鉛、アルミなど原材料の大半を占めるメジャーメタルとは異なり量的供給の少ない金属を指す。ニッケルやクロム、マンガンなど配合率が10%超の場合、ステンレス鋼、特殊鋼として既に専業マーケットが動いている。しかしタングステン、アンチモンなどのレアメタルのほとんどは、配合率数%の微量の「添加・機能剤」で、流通・回収ルートは未整備である。
2 プレイヤーは限定的=供給は世界的に偏在し需要供給ともに不安定なため、国家管理(中国ではタングステン、アンチモン、レアアースなど)、国家監視(日本ではJOGMECが9鉱種を戦略備蓄在庫に指定)の対象とされ、需要はハイテク企業に絞られ汎用性に乏しい。鉄や銅、アルミなどのメジャーメタルであれば、供給者は多くの需要者を選択して自由に販売できるが、レアメタル・レアアースの需要は専門数社にしぼられ、メタルスペック(成分規格)も厳密に指定されるから販路・価格の自由度は極めて限定される。
3 レアメタル・パラドックス=レアメタルは埋蔵量が少ないから、レアメタルではない。需要量が小さく、価格も不安定なため収益の確実性が保証できないから開発が進まず、「レア(少ない)」な状態に留まっている。「機能添加剤」であるから高価なレアメタル・レアアースの使用を避ける代替素材の開発、原単位の低減化、成分交替は不可避。価格高騰がレアメタル・レアアースの市場退場を促す最大要因となる。
■鉄スクラップの商品特性
1 産業活動の「事後生成物」=スクラップは工場などの工程「発生」品であり、「解体・老廃」品として発生する。産業・市民活動が終り、その「事後の生成物」として登場する(発生量は予め決定できない)。
2 需要に応じて供給が調整される=廃棄物のため固有の価値を持たず、鉄鋼・電炉メーカーなど利用者のニーズを待って商品価値が生れ、供給される。「まず需要があって供給が決まる」。その結果、長期的に見れば、どのような局面でも(価格変化を通じて)需要を追う形で供給が形成され、「需要量≒→供給量」として再バランスする。需要が落ちれば、供給数量もそのレベルまで落ち、次の均衡点を探る。
3 産業活動の先行素材である=鉄鋼素材を基本骨格とする近代産業社会では鉄鋼生産があらゆる産業活動に先立って動く(鉄スクラップは鉄鋼と同様に産業の「先行」相場指標の重要な一角を占める)。
4 流通タイムラグ商品である=産業活動の事後生成物であるから、集荷・加工・ストック期間を含め最終消費までは一定の時間差が生じる。発生から最終ユーザー持込みまでのタイムラグが比較的小さい「工場発生品」でも前期の発生量で当期の需要を賄うズレがうまれる(工場機械類では原価償却年数、自動車解体スクラップであれば、13年前後の耐用年数、建屋類であれば30~50年の時間差が生まれる)。
5 先進国の「都市鉱山」、低炭素の切り札=米国の鉄鋼蓄積は40数億㌧、日本の蓄積量は13億㌧で、地上の鉱山である鉄スクラップ(埋蔵量)は先進国中心に増大。鉄スクラップは持続的循環可能な「地上の鉱山」へ変貌した。▼また鉄スクラップは再熔解だけで鋼材となる。鉄鉱石から鉄鋼を作るには1㌧当たり約2㌧のCO2を排出するが電炉は高炉の4分の1から6分の1。転炉への鉄スクラップ投入時のCO2排出は原理的にゼロに近いからCO2規制を受ける先進国は鉄スクラップ使用を強める傾向にある。
■鉄スクラップの価格特性
1 鉄スクラップ価格は「検収」で決まる=荷姿・成分等が多様な鉄スクラップは、最終的には買い手側の「検収」(検査収納)によって価格が決まる。検収とは、本質的には「リスク負担判定」であり、その判定をどう自己に有利に運ぶか、との駆け引きの余地が生まれる(計量・ダスト、あんこ問題)
2 供給数量が価格交渉力を左右する=市中からの回収・集荷品であり、予め供給量は決定できない。このため「需要に応える供給量の確保が、価格交渉力を生む。即ち「数量がまとまれば、高値で売れる」可能性が高い(一方、製造会社などの供給が先行する一般商品は、数量がまとまれば安い)。
3 需給ギャップが価格動向を決める=「需要」先行商品だから予め「供給」量は設定できない。事後生成物で、さらに産業の「先行素材」のため需給環境が急激に変化した場合、常に時間的需給ギャップが生じる。需給ギャップの大小が(需給量の大小に係わらず)鉄スクラップ「価格動向の強弱」を決める。
4 「成分評価」、典型的な「一物一価」商品である=時計や自動車などの生産商品は「機能」評価商品だが、老廃・発生品である鉄スクラップは、純分・歩留まりだけで容易に価格が決まる。1㌧当たりFe純分が分れば、価格判定は瞬時に可能である(世界的な「一物一価」商品。だから遠距離貿易も可能)。
5 心理的・相場同調性が極めて高い=世界的な一物一価で、広範・多様なプレイヤーを擁する発生・回収品であるため、心理的な同調性は極めて高い。さらに「成分評価商品」であり「需給が価格を決める」ため、将来の需給動向(予測)は直ちに流通スピード(売り急ぎ、売り渋り)に反映し、価格に素早く跳ね返る。参加者全体の気配・雰囲気(漠然たる相場感)が方向感に大きく影響する。
■レアメタル(レアアース)の商品特性
1 本質は機能添加剤=レアメタルは非鉄の一種だが、銅や鉛、アルミなど原材料の大半を占めるメジャーメタルとは異なり量的供給の少ない金属を指す。ニッケルやクロム、マンガンなど配合率が10%超の場合、ステンレス鋼、特殊鋼として既に専業マーケットが動いている。しかしタングステン、アンチモンなどのレアメタルのほとんどは、配合率数%の微量の「添加・機能剤」で、流通・回収ルートは未整備である。
2 プレイヤーは限定的=供給は世界的に偏在し需要供給ともに不安定なため、国家管理(中国ではタングステン、アンチモン、レアアースなど)、国家監視(日本ではJOGMECが9鉱種を戦略備蓄在庫に指定)の対象とされ、需要はハイテク企業に絞られ汎用性に乏しい。鉄や銅、アルミなどのメジャーメタルであれば、供給者は多くの需要者を選択して自由に販売できるが、レアメタル・レアアースの需要は専門数社にしぼられ、メタルスペック(成分規格)も厳密に指定されるから販路・価格の自由度は極めて限定される。
3 レアメタル・パラドックス=レアメタルは埋蔵量が少ないから、レアメタルではない。需要量が小さく、価格も不安定なため収益の確実性が保証できないから開発が進まず、「レア(少ない)」な状態に留まっている。「機能添加剤」であるから高価なレアメタル・レアアースの使用を避ける代替素材の開発、原単位の低減化、成分交替は不可避。価格高騰がレアメタル・レアアースの市場退場を促す最大要因となる。