私は先に「21年マーケット概況及び22年展望」を12月19日付けで本hpにアップした21年マーケット概況及び22年展望 | STEEL STORY JAPAN参照
■22年のマーケット概説としては「コロナ禍の推移、国内経済の動向、さらに世界的な金利・金余り、財政出動の後始末など、変数が余りにも多すぎる」との前提で昨年12月19日にコメントを書いた。世界のマーケットプレイヤーにとって『カーボンニュートラル』は今後の企業生命を左右する最重要課題となった、との提言だった。
それが『スコープ3』問題だ。自社の事業活動からの直接排出(スコープ1)、他社から供給された熱源に伴う間接排出(スコープ2)に加え、サプライチェーン(供給網)やバリューチェーンからの関連排出。取引先の排出量の削減問題だ。例えば米マイクロソフトは、30年までにスコープ3排出量を半分以下にする目標に向け、取引先にスコープ3排出量を含む温暖化ガス排出量の情報開示を求め、それを基に取引先を選定するという。
『スコープ3』に対応できない企業は、市場からはじき出される」と書き、それが以下の現象となって表面化するだろう、と見て、以下の説明を加えた。
*流通再編の予感=高炉会社が電炉で高炉スペックの鋼材を作るのだ 鉄スクラップは電炉会社だけの原材料ではなくなった。
いまや鉄スクラップ「争奪戦」に近い。その具体的な表れとして高炉と電炉、国内と海外の会社が、業者を選別する。そのような「流通再編」の時代に入った。
*ユーザーの構造が変わった=1990年からの「失われた20年」。国内では電炉シェア低下や新リサイクル法制定の中で(内需後退から)海外輸出が急増した。
しかし今や大手高炉が大型電炉を新設する。国内需要は(輸出に頼らなくても)安定的に拡大する回路が開けた。となれば次の課題は、国内エンドユーザーとの安心・信頼関係をどう高める、自己の利用価値をどう売り込むかかだ。
近い将来の業界、マーケット変化について
*「カーボンニュートラル」は新時代の世界を開く「黒船」である。
1990年以降。大量生産・大量廃棄と電炉シェア後退のなかで、鉄スクラップや家電製品などは、鉄鋼材料であるまえに厄介なゴミだった。だからこそ処理料金を請求する「逆有償」が広がり、隣接の産廃業者や渡来系の輸出業者に出番を与え、さらにリサイクル法に将来を見た各地の業者に新たなビジネスの道を開いた。これが1990年からの「失われた20年」の鉄スクラップ業界における真実である。
しかし、世界の高炉各社が電炉で「高炉スペック」の鋼材を生産する(生産せざるを得ない)「カーボンニュートラル」の到来は、この流通構造を一変させる(はずだ)。
なぜなら鉄スクラップは本来の「鉄鋼原料」としての評価が最大限に高まる(はずだ)から、その品質は勿論、納入業者の信用・信頼が、最終ユーザーに厳しくチェックされる(はずだからだ)。
それはかって、米国屑輸入の長期契約にあたって、当時の八幡・稲山常務が商社の介入を排除し、鉄鋼会社の直接契約とした論法と同じ。
「商社は、商社を起用すれば安く買えるというが、メーカーにとって鉄屑はコメビツのコメである。高いか安いかではない」。稲山は「数量の安定」を最優先したが、「カーボンニュートラル」の現実は鉄鋼原料の「品質と数量」の安定。その最終ユーザーのニーズに応える供給サイドの働きである。
***************として上記の説明で締めくくった。
22年1月3日 追記
*21年のメインテーマはバイデン大統領の登場と「カーボンニュートラル」だった。
*22年は各方面(最終ユーザー、鉄鋼会社、鉄スクラップ納入会社)でその具体的対応元年になるだろう。と同時に、政治(選挙)とポスト・コロナ経済の年になるだろう。
*その共通項は、いずれも先行きが極めて不透明なことだ。
*鉄スクラップは、今や「歴史的なターニングポイントを曲がった」(「都市鉱山」=資源産評価、「カーボンニュートラル」=地球温暖化防止評価が加わった)。
*この「カーボンニュートラル」から「鉄スクラップは世界的な争奪品となった」。
*とはいえ「鉄スクラップは需給・バランス商品」だから、価格は需給に従い、需要は経済に左右される。つまり、今後とも「山あり谷ありの相場商品」である。
*マーケットは新たなステージに入ったのだ。その意味を深く考える必要がある。