平成・異業種、新規参入の主な業者
平成は30年あった。そのなかで鉄スクラップ業界は、産廃、雑品、非鉄など各種方面の異業種からの参入業者を迎え入れた。今、主要な業者を紹介する。その特徴は若さと活力だ。
■ナンセイ 産廃業から進出、沖縄出身の意気を示す
東京都江戸川区:https://www.nansei.jp/ (鉄リサイクル工業会・非会員)
▼会社沿革(㏋)によれば=1989年(平成元)7月資本金300万円で東葛西に有限会社南西運輸(代表取締役稲福誠・産業廃棄物収集運搬業)として創業し、93年(平成5)4月産廃物収運業に加え内装工事解体業を手がけ、98年1月(有)ナンセイに社名を変更し、同年12月株式社名に改組した。2001年(平成13)一般建設業、04年(平成16)特定建設業の許可を取得。06年(平成18)5月産廃物処理施設設置許可、同年9月中間処分業の許可を取得した。そのうえで07年(平成19)2月古物商の許可を取得し、同年10月(鉄スクラップ)リサイクル業に進出。12年(平成24)8月江戸川区中葛西に本社ビルを建てた。
▼事業内容(㏋)=1.総合内装解体工事業・仮設養生。2.産業廃棄物収集運搬業。3.産業廃棄物処分業。4.金属くず商。5.前各号に附帯関連する一切の業務
▼組織・支店・工場(㏋)=管理本部15名。▽解体事業部107名・(支店)=仙台。千葉。名古屋。大阪。岡山。福岡。沖縄。▽産廃事業部97名・中間処理工場=千葉県香取郡東庄町。大阪市大正区南恩加島。積替保管場=埼玉県三郷。千葉県市川(田尻工場)。▽リサイクル事業部114名(工場)=千葉県市川市(厚木第一、厚木第三)。千葉市(誉田工場)。船橋市(ナンセイメタルベイ)。埼玉県三郷市(三郷工場)。神奈川県大和市(大和工場、大和第二)。横浜市(横浜泉第二)。相模原市(相模原)。藤沢市(藤沢)。川崎市(川崎第一ヤード、第二ヤード)。大阪市大正区(大阪鶴浜)。大阪南港J1ヤード。沖縄(与根)。
▼編者注記=創業は平成元年。沖縄県出身の稲福誠が20歳台前半の若さで産業廃棄物収集運搬業に乗り出し、5年後には内装工事解体業を手がけ、19年後に鉄スクラップリサイクル業に進出した。同社の強みは、一般には忌避され処理困難物と目される「商品」を相手とする産廃運搬業からスタートし、夜間・静穏処理が求められる内装解体業を経て、行政規制が厳しい中間物処理業などの許可を取得し「都市鉱山」、鉄スクラップ業に進出したことだ。
東港金属 非鉄の百年業者も参入。総合リサイクル企業へ飛躍
東京都大田区 https://www.tokometal.co.jp/(鉄リサイクル工業会・会員)
明治年間に故銅店として創業し、戦後は非鉄企業としての地盤を築いてきた会社が、各種リサイクル法の施行を機に鉄スクラップ業に参入し、鉄・非鉄から廃プラまでの総合リサイクル企業に脱皮した。鉄リサイクル工業会員でもある。
以下の記述は同社㏋の沿革を整理したものである。
▼福田勝西商店=1902年(明治35)東京市神田に伸銅品と非鉄金属地金の故銅店・福田勝西商店を創業。29年(昭和4年)福田庸一が第2代社長に就任した(庸一は95年87歳で他界するまで東京非鉄金属商工協組、非鉄金属問屋組合全国連合会(現非鉄金属リサイクル全国連合会)設立に奔走し、また東京金属事業厚生年金基金、東京金属事業健康保険組合の生みの親となった)。
▼47年・東港金属設立=戦後の47年、㈱福田地銅店、東港金属㈱を創立。製品の問屋業は福田地銅店が、地金の問屋業を東港金属が扱うこととした。60年板橋区に精錬及びインゴット製造を行う東京精錬㈱を設立(78年栗山鋳造及びアイアイデーの両社を合併し、東京銅基合金工業㈱に変更)する。
▼2002年・福田隆が社長就任=先代社長が急逝したため28歳の隆が跡を継いだ。隆は他社修行時代に培った営業ノウハウと不要資産の整理など大胆な改革に取り組み02年度売上高9億円を04年には16億円と引き上げた。それが03年第二ヤードの開設、04年10月の精錬事業の撤退(跡地に三方締め大型プレス機を導入し、アルミスクラップ事業の拡大)、11月のナゲット処理事業の撤退(跡地に廃プラスチック類等を目的とした大型圧縮梱包機の導入)だった。
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▼06年 鉄リサイクル業に本格参入する=06年運送部門を分社化し、トライマテリアル㈱を設立した(同社は産廃物収・運業務や本社関連の輸送業務を請負う。10年には本社とともに東京都の産廃エキスパートに認定された)。
この年本社および京浜島でISO14001の認証を取得。ギロチン機を導入した。
07年8月千葉県富津市に鉄・非鉄・プラスチックなど混合スクラップの選別・中間処理を目的とした千葉工場(42,000m2)を開設(産廃物中間処理許可・取得)。アクアラインを通じて40〜50分で京浜島の本社工場(8,600m2)と千葉の新工場を移動できる2拠点体制から取扱量の増大と広域集荷を狙った。その設備受け皿としてドイツ製の1,000馬力シュレッダーを設置。同じ8月非鉄回収のトライメタルズ㈱を設立した。▽09年情報セキュリティマネジメントの国際規格ISO27001の認証を本社・本社工場、千葉工場、東京事務所で取得。15年、鉄スクラップの船積み輸出も開始した。
▼20年9月1日付でホールディングス制に移行=持ち株会社「サイクラーズ」を設立し、その下に東港金属など事業会社5社がぶら下がる組織体制とした。
常沅産業グループ―中華系業者としての存在感を示す (鉄リサイクル工業会・非会員)
埼玉県さいたま市 http://www.jyougen-sangyou.com/company
▼会社沿革(㏋)=08年6月グループ会社・友興金属を設立。09年3月常沅産業設立。10年12月グループ会社・代埼再生産業設立。11年1月常沅産業・川越ヤード、同年12月栃木ヤードを開設。14年グループ会社・方雄商事設立。▼本社・ヤード(㏋)=常沅産業株式会社・さいたま本社ヤード(=埼玉県さいたま市岩槻区)。さいたま金重ヤード(グループ会社・友興金属所在地・さいたま市岩槻区)。栃木ヤード(栃木県下都賀郡)。袖ヶ浦ヤード(千葉県袖ケ浦市)。市原千種ヤード(千葉県市原市・保税輸出専用ヤード)。千葉香取ヤード(千葉県香取郡)。▼グループ会社=方雄商事株式会社ヤード(秋田県能代市)。代埼再生産業株式会社・川越ヤード(埼玉県川越市)。
▼仕事内容(㏋)=1. 廃プラスティックの収集、輸出販売。2. 廃スクラップの輸出販売。3. 非鉄付スクラップの収集、輸出販売。4. 前各号に付帯し、または関係する事業
▼編者注記=中華系業者である。「都市鉱山」である鉄スクラップに着目し、会社を興し、グループ会社と提携し、わずか10年足らずで、関東各地に集荷拠点を築き、輸出ビジネスを広げた。日本鉄リサイクル工業会のアウトメンバー。その意味でも隠れた実力企業である。
錦麒(きんき)産業―雑品業を起点に国内11社、米国にも5社を支配する
大阪府泉大津市 https://kinki-sangyou.jp/(鉄リサイクル工業会・非会員)
関西では錦麒産業、九州では柴田産業、四国では愛媛の高知金属を運営する華人業者。中国瀋陽市出身の20年3月現在39歳の斉浩である。
▽報道によれば=2004年から北九州で雑品スクラップを扱いはじめた。05年錦麒産業(株)設立。12年には関東千葉に福(株)を開設して雑品ビジネスを伸ばした。また中国の雑品規制の強化に対応するため18年(小型家電認定業者で大牟田エコリサイクルセンター内最大の)柴田産業にM&Aを行い社長に就任し、雑品ビジネスから鉄リサイクル(錦麒産業・福)と家電等総合リサイクル(柴田産業)にウイングを広げた。国内拠点は九州、大阪、四国(愛媛の高知金属)。米国では50年の歴史を持つMetechRecycling社の株主になっており、この米国拠点に社員研修行っている。
現在は長崎五島にも産廃処理のキンキ環境をもち、国内11か所、米国にも関係会社を5か所もっている。柴田産業で処理したものはほぼ国内向け。基板、銅ナゲットは国内の非鉄金属製錬所および伸銅メーカーに。アルミも国内アルミ合金メーカーなどに販売。錦麒産業ではマレーシアやフィリピン向けも行っている。大阪では月に25,000トンの鉄を扱っているという。「錦麒グループ全体では200人ほどの従業員がおり、家族がいるので会社を成長させることが経営者の責任。だから変化が早い世のなかでも生き残り続ける企業体にしていかなければならない」という。https://www.iru-miru.com/article_detail.php?id=33650
■錦麒産業株式会社(鉄リサイクル工業会・非会員)
社長 斉 浩。開設 2005年(平成17年)9月1日
大阪和泉営業所=大阪府和泉市大野町1016番 ギロチン・800トン(三浦機工)
泉大津営業所・大都ヤード=大阪府泉大津市小津島2番 1000トン(モリタ環境テック)
■柴田産業の歴史=1954年(昭和29)に久留米市にて柴田商店として創業。鉄、非鉄金属のリサイクル業を行い、2000年以降は基板スクラップ(E-SCRAP)を手掛けた。04年(平成16)、福岡県大牟田市エコタウンにて大牟田エコリサイクルセンターの操業が開始。13年小型家電の再資源化認定事業者となり、14年には福岡県知事よりグリーンアジア国際戦略総合特区の「指定法人」の指定を受ける。この間、大型シュレッダー(スーパーシュレッダー)を導入し、黒モーター処理など業容を拡大(処理能力は1500t/日)。18年(平成30)7月に錦麒産業の斉 浩氏が代表取締役に就任して現在に至る。https://www.iru-miru.com/article_detail.php?id=33650
三衆物産 常陸那珂に港内スクラップヤードを開設 (鉄リサイクル工業会・会員)
千葉県船橋市 http://www.sansyu-busan.co.jp/
雑品から始めて港内ヤードを確保。内陸にも拠点を広げ10年足らずで急成長を遂げた。
▼同社㏋によれば=2008年8月8日船橋市に本社を設立し、09年10月常陸那珂港の南港内に唯一の港内スクラップヤードを開設。同社は現在、ひたちなか港工場、船橋ヤード、台場ヤード、市原工場、鉾田リサイクルパーク、船橋夏見工場の6カ所の拠点を構えている。
▼業界紙記事によれば=会社黎明期は中国向けの雑品輸出が中心だった、現在でも鉄と非鉄スクラップの貿易及び雑品処理が主力事業。鉄スクラップは関東5カ所に拠点を構え月間2~3万㌧。うちおよそ半分はひたちなか港ヤードから常陸那珂港と日立港(日立市)で出荷。日立港は1万級船が着岸可能で近隣諸国の他バングラデシュへなどの遠方も定期的に行っている。また18年には敷地面積2万2600坪の「鉾田リサイクルパーク」を開設。月間4~5000㌧の雑品類を処理している(日刊市況通信。20年3月マンスリー)。
福源商事 雑品→鉄屑→小型家電(基盤)にシフト (鉄リサイクル工業会・非会員)
大阪府岸和田市 https://www.fukugenbusiness.jp/
2005年11月法人化した。雑品、電子基板、鉄・非鉄、プラスチック等の総合リサイクル企業。▼関係者によれば=大原健は20年現在45歳。設立当初は岸和田市阿間ヶ滝が足場。その後、熊取工場や現岸和田本社に拠点を移し、2008年から貝塚港から雑品輸出を開始した。09年には香川県坂出港に進出。11年には大阪泉北港でも本格的に船積みした。さらに雑品規制の強化に伴い一般鉄屑扱いに力を入れた。12年岸和田本社に、13年坂出港に相次いでギロチンを設置した。
岸和田本社では移動式破砕機を稼働させ、シュレッダー、非鉄、プラスチックの扱い量を増加させ、20年6月、奈良県五條市に電子基盤と小型家電を中心とした約1万坪の敷地にシュレッダープラントを設置。中間処理の取得を予定している。
双葉貿易 日本海側に貿易拠点を拓く (鉄リサイクル工業会・非会員)
新潟県三条市 https://www.futaba-corp.net/company/
設立=1974年 10月28日。石上2-16-51。杉浦 英馬社長
以下は同社㏋掲載資料による。
▼鉄スクラップ=1974年10月設立・本社は東京都品川区八潮。
2000年5月 本社を三条市に移転。6月新潟西港リンコー埠頭でスクラップ船積み開始。
01年11月 富山県高岡市伏木港でスクラップの集荷・船積みを開始(09年3月閉鎖)。
03年4月 北海道苫小牧港にてスクラップの集荷・船積みを開始(13年12月閉鎖)。
04年12月 中国向け廃金属輸出ライセンス承認(A392041033)。
05年7月 ISO14001を本社・新潟西港ヤード認証取得。同年12月韓国向け廃バッテリー輸出に関して、経済産業省の承認を受ける。
07年4月 新潟直江津港で船積みを開始。12月苫小牧港内に廃バッテリー集荷ヤード開設。08年4月 神戸市内に輸入スクラップの集荷ヤード開設(12月神戸港 閉鎖)。
09年8月 東京お台場港にてスクラップの集荷・船積みを開始(15年1月閉鎖)。
10年1月 神奈川県川崎港で船積み開始。10月中国向け廃プラ・スラグ・古紙ライセンス。11年3月 ISO9001:2008(品質マネージメント)を本社・新潟西港ヤードにて認証取得。
12年6月 大阪府泉北港にてスクラップの集荷・船積みを開始。
14年8月秋田、八戸サテライトヤードにてスクラップの集荷・船積みを開始。
15年4月 大阪南港にてスクラップの集荷・船積みを開始。
▼太陽光発電事業=14年4月三陽パワー㈱第一発電所売電開始(15年3月グランデソーレー夏目、グランデソーレー牛久売電開始。16年2月牛久低圧1区画売電開始。5月グランデソーレー東松山売電開始。6月グランデソーレー滑川売電開始。10月牛久低圧2区画売電開始。17年10月グランデソーレー島田売電開始。)。
「六ヶ所の合計年間予想発電量は約500万kwhで年間CO2削減量は約1,800トンです」。
▼ヒューマンハピネス事業
15年8月㈱双葉リアルエステート設立 本社は東京都豊島区東池袋。
17年2月㈱アプロ設立 本社は東京都千代田区神保町。同年5月リッチスタンダード
カラコン(カラーコンタクト)リリース。化粧品製造業、化粧品製造販売業許可取得。
18年3月GLAMFOX 化粧品 リリース。5月リッチ・プレミアムシリーズ リリース。
19年3月新之助マスク リリース。
▼編者感想=設立=1974年 10月東京都品川区八潮であり、2000年5月 本社を三条市に移転。直後の同年6月以降、新潟西港、高岡市伏木港と船積みを開始。04年には中国向け廃金属輸出ライセンス承認を取っている。海外輸出と船積み空白地を見据えた上での戦略的な展開である。その後は、神戸、東京お台場港に足場を求めて利あらずと見て撤退。しかし12年大阪府泉北港、14年秋田、八戸サテライトヤード、15年大阪南港と適地を物色して進出した。またその経営の多角化も目を見張るものがある。