日本製鉄のUSスチール戦略とその現状

2023年

■日鉄、USスチール2兆円買収へ(2023年12月19日)=日鉄は18日、USスチール株を1株55ドル(7810円)で全株取得し完全子会社すると発表。15日終値は39ドルで、約4割のプレミアムを付ける。買収総額は141億ドル(約2兆円)。買収資金は金融機関からの借入金で対応。買収後もUSスチールの社名は維持する。かねて日鉄は世界で粗鋼生産能力1億トン目標を掲げてきた。今回の買収で生産能力は現在の6600万㌧から8600万㌧になる。USスチールは高炉を8基、電炉3基持つ。日鉄は粗鋼生産で世界4位から3位になり、1億トンの目標達成に近づく。USスチールは鉄鉱石の鉱山も持っている。原料炭と鉄鉱石の調達を安定化させることができる見通し。

2024年

■USスチール、買収承認(4月13日・夕)=USスチールの買収案が12日、USスチールの臨時株主総会で承認された。日鉄は規制当局の審査を経て24年9月までの買収完了を目指している。労働組合が買収に反対している。手続き完了はずれ込む可能性がある。

■USスチール買収、米以外は全て承認(5月31日・夕)=日鉄は30日、USスチール買収について、欧州など、米国以外の全ての規制当局からの承認を取得したと発表した。

■日鉄副会長、USスチール買収「年内に完了」(8月2日)=森高弘副会長兼副社長は1日、USスチールの2412月までの買収完了に強い意志を示した。米当局の審査についても「守秘の観点から内容は申し上げられないが、どんどん進んでいる」と話した。

■日鉄、1800億円投資発表 USスチール製鉄所2カ所(8月29日・夕)=日鉄はUSスチールの製鉄所への追加の投資計画を発表した。ペンシルベニア州のモンバレー製鉄所では熱延設備の新設または補修に10億ドルを投資し、同製鉄所を数十年以上稼働する。インディアナ州のゲイリー製鉄所では約3億ドルを投資して第14高炉を改修し、同高炉の稼働を今後20年ほど延長する。

■日鉄のUSスチール買収、トランプ氏「認めず」(8月30日・夕)=トランプ前大統領は29日、11月の大統領選で再選すれば、日本製鉄によるUSスチール買収阻止を明言した。

■日鉄、買収後の統治案 USスチール取締役の過半、米国籍に(9月5日)=日本製鉄は4日、USスチールを買収後のガバナンス(企業統治)方針を発表した。USスチールの取締役の過半数は米国籍とする、取締役は少なくとも3人の米国籍の社外取締役を含む、経営の中枢メンバーは米国籍とすることを新たに公表した。通商対策として、米国籍の委員で構成する「通商委員会」を設置する。USスチールの米国での生産を優先し、日本拠点からの競合品の輸出を優先することはないと改めて示した。またUSスチールの既存の生産設備へ14億ドルの投資を実行する、USスチールによる対外通商措置の請求に関与しないことなどを改めて明記した。

■USスチール買収「日鉄は適格者」(9月26日・夕)USスチールは25日、全米鉄鋼労働組合(USW)との間の仲裁で会社側の主張が認められたと発表した。買収に反対していたUSW側の主張は認められず日鉄に有利な結論となった。USスチールとUSWが仲裁結果を発表した。

日鉄、米合弁株を1ドルで譲渡1012日)=日鉄は11日、米鋼板製造のAM/NSカルバートの保有持ち分を合弁相手である欧州鉄鋼大手アルセロール・ミタルに1ドルで譲渡と発表。USスチールの買収に向けて米国の競争法上の懸念を払拭するため譲渡を決めた。持ち分譲渡に伴い、2300億円の損失が発生する見込み。


2025年

■日鉄「生産能力10年維持」 USスチール買収後(1月3日)USスチール買収を巡り、買収後もUSスチールの生産能力を10年間削減しないなどを柱とした追加提案を米政府に送った。生産能力が減る可能性がある場合、米政府は拒否権を発動できる。日鉄は既に買収後に27億ドル以上の設備投資を行うことを発表しているが、追加投資が必要になる可能性もある。

■バイデン氏、日鉄に買収中止命令(1月4日)=バイデン米大統領は3日、USスチールの買収計画に対する中止命令を出した。日鉄が国内鉄鋼大手の買収により「米国の国家安全保障を損なう恐れのある行動を取る可能性がある」と判断した。日鉄は30日以内に「完全かつ永久に」計画を手じまいすることを命じられた。トランプ次期米大統領も「(買収に)完全に反対」と表明している。中止命令は3日付で、日鉄に原則として30日以内の買収計画の終了を命じた。買収計画を審査してきた対米外国投資委員会(CFIUS)が期限を延長しない限り、22日までにCFIUSに買収計画の放棄証明書を提出しなければならない。

■日鉄、米大統領ら提訴(1月7日)=日鉄と日鉄米子会社、USスチールの3社が、「対米外国投資委員会(CFIUS)」とバイデン氏、CFIUS議長のイエレン財務長官、ガーランド司法長官の4者を相手取り、米連邦控訴裁判所に、買収を巡り不当な政府介入があったとして6日付で提訴した。さらにクリーブランド・クリフス、同社のゴンカルベスCEOUSWのマッコール会長を相手取りペンシルベニア州西部地区連邦地方裁判所にも提訴した。

************** トランプ大統領 就任 **************

■日米首脳会談・日鉄ディール第2幕 トランプ氏「買収でなく投資」(2月9日)=トランプ米大統領は7日、USスチールの買収計画について「買収ではなく投資で合意した」と述べた。来週に日本製鉄首脳と会う機会を持つと説明した。石破茂首相も「買収ではなく投資だ。」と述べた。具体策には言及しなかった。

■日鉄の買収、再審査命令(4月8日)=トランプ米大統領は7日、USスチールの買収について、対米外国投資委員会(CFIUS)に再度審査を指示した。覚書によると、CFIUSが特定したリスクを軽減するための日鉄側の提案が十分かどうかを45日以内に大統領に報告する。

■米政府、日鉄訴訟の60日間停止要請 (4月9日・夕)=USスチール買収を巡って米政府を訴えていた行政訴訟で、米政府は6月5日まで裁判を停止するよう米連邦裁判所に申し立てた。トランプ大統領がCFIUSに再審査を命じたことを理由としている。

■日鉄が140億ドル投資検討。買収承認なら(5月20日)=ロイター通信は19日、USスチール買収計画を巡り日鉄が140億ドル(約2兆円)規模の投資を検討と報じた。政府承認を条件に新製鉄所への最大40億ドルの投資と100億ドル規模投資を準備している。これまでも完全子会社化を前提に、既存設備に対して約27億ドルの投資を公表してきた。日鉄はUSスチールの買収取引には141億ドルを投じると公表している。米国向けの巨額投資は、トランプ政権の意向に沿ったものといえる。

■日鉄のUSスチール買収、トランプ米大統領が承認(5月24日・夕)=トランプ大統領は23日、日本製鉄によるUSスチールの買収を承認した。自身のSNSに「これは計画的な提携(パートナーシップ)であり、7万人の雇用創出と米国経済に140億ドル(約2兆円)の貢献をもたらす」と投稿。USスチール買収の枠組みは明らかになっていない。日鉄はUSスチールの完全子会社化を目指している。

■日鉄、経営権掌握カギ(5月25日)=日鉄幹部はトランプ氏のSNS投稿を前向きな声明だと受け止めているが、「正式承認までは安心できない」と語る。日鉄側は、USスチールの完全子会社化方針を崩さずにいる。トランプ氏の意向が変わらないうちに買収を実行できるかどうかもカギとなる。買収枠組みで日鉄が条件とするUSスチールへの100%出資が認められるかが肝となる。買収金額とは別に設備投資を兆円規模で追加すると決めた日鉄としては、譲れない条件だ。仮に詰めの作業で、米政権側が過半数の51%や少額出資などを主張するならば、着地点は再び見通せなくなる。

*日鉄、高級鋼市場に的 4兆円投資回収に自信(5月25日)=巨額投資の勝算は米国市場の有望さにある。「米国は世界最大の高級鋼市場」(日鉄)であり、性能の高い自動車などの最終製品が求められ、日鉄の技術力を生かして利幅を確保しやすい。米国の年間の鉄鋼消費量は9500万トンだが自給率は69%6600万トンにとどまる。日鉄が高効率な最新設備を設ければ、市場開拓の伸びしろは大きい。市場開拓には投資金額の使い道がカギとなる。一つは自動車用鋼板だ。ボディーなどに使う「ハイテン(高張力鋼板)」や電動車のモーター用の電磁鋼板を生産する可能性がある。もう一つは電炉設備だ。米国は電炉の原料となる鉄スクラップの蓄積量が多く日本よりも電炉が普及している。電炉先進国の米国で知見を蓄え、日本や海外でも相乗効果を得られる可能性がある。

 

■日鉄が完全子会社化へ USスチール買収(6月14日・夕)=日鉄は14日、USスチールの買収計画を巡り、安全保障上の懸念を払拭するための「国家安全保障協定」を米政府との間で結んだ。日鉄はUSスチールの「黄金株(拒否権付き種類株式)」を米政府への付与も決めた。黄金株は1株でも経営の重要事項について拒否権を有する種類株式となる。国家安全保障協定と黄金株の2つを担保することで、米政府は一定の影響力を保持する。米政府に発行する黄金株に議決権はなく、日鉄が100%子会社とする方針は変わらない。日鉄は2028年までに総額で約110億ドル(約15800億円)をUSスチールに投資。老朽生産設備の改修や製鉄所の新設などに充てる。

 

******** 日本製鉄 「再び世界一を目指す」**********

■USスチールに新製鉄所(6月20日)19日、橋本英二会長は「中国対抗の観点で、米政府と目的が合致した」と述べた。ペンシルベニア州のモンバレー製鉄所で生産設備を新設し、研究開発拠点も立ち上げる。既存製鉄所に属さない場所で、製鉄所の新設も計画する。建設完了は28年以降だが25年から初期投資を始める。日鉄によると米国の鋼材需要は年間8900万トンで最終製品や部品輸入分も含めれば実質的に15000万トンに上るという。これら総需要に対する自給率は55%にとどまり、ニーズ獲得の余地は大きい。

 

*日鉄、5000億円借り入れ(6月20日)=買収資金の2兆円は金融機関から調達したブリッジローン(つなぎ融資)で払い込んだ。有利子負債は足元の日本製鉄分とUSスチール(253月末で6000億円)を合わせると全体で約5兆円に膨らむ。投資家の視点は財務戦略に移る。買収資金の借り換え・返済や、製鉄所新設などのための資金確保が欠かせない。負債圧縮やUSスチールの利益成長など対応すべき課題は多い。日鉄は19日にかけ、特殊な方式による5000億円の借り入れ策を示したほか、増資も視野に入れていると述べた。

■日鉄・橋本会長「世界生産1億トン」(7月8日)=橋本会長は日経新聞の取材に対し、粗鋼生産量を今後10年で1億トン規模に引き上げる計画を明らかにした。米USスチールやインドなどの拠点で増産する。USスチールでは電磁鋼板の設備投資を進めるほか、新たな製鉄所も建設。今後10年で2000万トン以上増やす。インドでは今後10年で現状よりも1500万トン上積みする。日鉄が進出するタイでも粗鋼生産量を200万トン増やし、中国に先んじてシェアを奪う。一連の増産により、日本製鉄とUSスチールの単純合算で24年に5782万トンの粗鋼生産量を10年後に1億トン規模まで引き上げる。*橋本会長インタビュー(78日)=海外M&Aを考えているでしょうか。 「頭の中にはあるが、コメントは控える。中国やベトナム、インドネシアなどはあまり興味はない。当社のM&Aの対象は、需要が確実に伸び、かつ当社の技術力が生かせる高級鋼の需要があるところ。この2つの条件が必須だ」

■日本製鉄、トリプルBに S&P、買収巡り格下げ(7月18日)S&Pグローバル・レーティングは17日、日本製鉄の発行体格付けを「トリプルBプラス」から「トリプルB」に引き下げた。USスチールの買収による資金負担を踏まえ、今後12年、財務内容が大幅に悪化した状態が続くとみている。見通しは「ネガティブ」とした。

■日鉄、今期400億円最終赤字 米社買収で株売却損(8月2日)263月期連結最終損益が400億円の赤字(前期は3502億円の黒字)と発表した。日鉄はUSスチール買収に伴い、米国の競争法上の懸念を払拭するため、米鋼板製造のAM/NSカルバートの保有持ち分をアルセロール・ミタルに1ドルで譲渡。譲渡に伴う2315億円の損失を費用した。このカルバート譲渡による一過性の損失などを除けば263月期の最終損益は2200億円の黒字と説明する。日鉄はUSスチールの立て直しに向け、技術者などを派遣して生産効率の改善を進めるほか、28年までに総額110億ドル(約16000億円)を投資して生産拠点の整備などにも着手する。

■USスチール製鉄所爆発 2人死亡(8月12日)=米東部ペンシルベニア州にあるUSスチールの製鉄所で11日(日本時間12日)、爆発があり、2人が死亡、10人が負傷した。爆発は同州ピッツバーグ近郊にあるモンバレー製鉄所クレアトン工場のコークス炉で発生した。

■米工場事故、日鉄はや試練(8月16日)=日鉄が買収したばかりのUSスチールの主力製鉄所で11日、爆発による死亡事故が起きた。不測のトラブルは、コスト増のリスクに直結する。米紙は14日、火災が起きたコークス炉を通常運用に戻すには数百万ドルの費用がかかる可能性を指摘。設備停止中の機会損失に加えて復旧費用、死傷者補償、周辺環境被害に対して訴訟が起きた場合の費用など、想定外のコストが発生しやすい。さらにコークス炉を製鉄所内のエネルギー源として利用できず、変動費の発生も指摘される。

**********トランプ黄金株の現実***********

日鉄の出ばなくじく黄金株 米政府、USスチール工場停止阻止921日)=米政府が「黄金株」に基づき経営に介入しUSスチールの工場停止計画を阻止した。早くも出ばなをくじかれた。USスチールは9月上旬にイリノイ州のグラニットシティー製鉄所での工場停止計画を労働者に通知した。米ホワイトハウス関係者によると、ラトニック商務長官がUSスチールに対し、計画を認めないと伝えたという。

黄金株は経営の重要事項に拒否権を発動できる。重要事項には、米政府の同意なしに「米国の既存製造拠点の閉鎖・休止」や「生産・雇用の米国外移転」などを実行できないことがある。これに基づいて米政府が経営に介入した。

グラニットシティー製鉄所には2基の高炉がある。既に買収前の23年から休止していた。全米鉄鋼労働組合(USW)によると、USスチールは5日に事実上製鉄所を閉鎖する意向を表明したという。高炉休止を理由に、加工設備などを含む工場停止案を通知したとみられる。同製鉄所には800人の組合員が所属している。雇用拡大を重視する米政府が、敏感に反応した。

USスチールは全米に高炉8基(うち2基は休止中)、電炉5基を持つ。増産投資の一方で、非効率な老朽拠点の効率化も全体の生産性を高めるうえで欠かせない。トランプ政権が掲げる米製造業の復活を手助けするため、24年で1418万トンだったUSスチールの粗鋼生産量を今後10年で2000万トン以上増やす。製鉄所の新設などにより、雇用の拡大にも動く方針だ。

日鉄はUSスチールを通じ、28年までに総額で約110億ドル(約16000億円)を追加投資することを公表している。先端技術を投入してアーカンソー州の生産拠点を強化し、高品質の自動車向け電磁鋼板の製造を始める。インディアナ州にあるUSスチール最大の高炉も31億ドルを投じて改修。29年以降の稼働を目指して、米国で電炉方式の製鉄所を建設するため40億ドルの投資についても検討中だ。ただ、今回の米政府の強い圧力は生産再編などの局面が訪れた時に、経営判断が難しくなることを露呈した。

日鉄は日本では15基あった高炉を10基に集約した。より競争力の高い設備を残して再編を進めてきた。全体の生産量を高めることを優先して、従業員の再配置も進めてきた。米国ではUSWが地域単位で強い政治力を持つ。仮にグループ全体の総合力を高められる合理化であっても、製鉄所のある地域の雇用や投資に寄与しないと判断されれば組合の反対につながり、合理化を阻止する政治的な圧力が強まる可能性がある。

実際、USWは今回の生産停止計画に強く反発している。19日の声明で、「約束を破った。許すことはできない」とコメントした。今回の事例は日本企業の教訓にもなる。日本政府は関税交渉で総額5500億ドルの対米投資覚書をまとめた。投資案件を「米大統領が選定する」と明記しており、トランプ氏の意向に振り回されるリスクがつきまとう。

日鉄は買収交渉の過程で投資計画や安全保障上の懸念項目について、トランプ政権と周到に擦り合わせを進めてきた。それでも既に高炉が休止している生産拠点の再編という小さな案件でも物言いがついた。米政府と意思疎通することの難しさが浮き彫りとなった。

今井鉄連会長、鉄連会見での主な一問一答(25年9月25日・テックス)=日本鉄鋼連盟の今井正会長は25日、東京・茅場町の鉄鋼会館で会見した。

*米国政府が自動車関税を27.5%から15%に引き下げた。鉄鋼業への影響は?

回答=鉄鋼は引き続き50%関税がかかっており直接的な影響が大きい。自動車を代表とする間接的な鉄鋼需要産業への影響と、直接的な影響を合わせたインパクトを定量的に評価するのは難しいが、日本製鉄個社としては年間最大約500億円規模の影響がある。派生製品に対して課税があるのか等不透明な部分があるので、引き続き成り行きを注視していく。

*アンチダンピング課税について、日本政府が78月にニッケル系ステンレス冷延と溶融亜鉛メッキ鋼板の調査を開始した。調査の必要性をどのように考えているか。

回答=わが国の鋼材市況を守るという意味で、非常に大きな一歩だと思って期待している。ステンレスと亜鉛めっきの2品目に限らず問題が生じれば都度調査をお願いしようと考えている。日本はこれまで通商措置をあまりやってこなかった影響で、通商対策に関わる行政側の人員が非常に少ない。米国などと比べると、桁が一桁少ない、これが他国に比べて調査に長い時間がかかってしまう一つの要因。行政サイドの整備も課題になると考えている。

GX対策=日本政府によるGX対策に対する投資の補助金や生産コストに対する税制上の支援等の制度が固まったことで、日本製鉄やJFEスチールが高炉から電炉への大型投資を決めた。これからその投資の回収が必要になるが、一番の課題は、グリーンスチールの鋼材のプレミアムが取れるのかという点に尽きる。自動車向けに関しては補助金制度ができ、公共工事でもグリーン鋼材の使用が推奨される動きもあって徐々に環境が整いつつある。

ただ、2030年に向けて大型電炉によるグリーンスチールの生産が始まると、年間400500万トン規模のグリーンスチールが生産されることになる。この規模の需要が必要なプレミアムを伴う形で出てくるかについてはまだ分からず、これから国や産業界と二人三脚で取り組んでいく必要があると考えている。

 

日鉄・今井社長 USSとのパートナーシップが着々進む(25年9月25日・テックス)=日本製鉄の今井正社長は日本鉄鋼連盟会長としての会見終了後、個社としてUSスチールについて進捗状況について言及した。

*日本製鉄は同日、ゲーリーとモンバレーの2拠点に合計3億ドルの投資計画を発表。これについて今井社長は「主力のゲーリー製鉄所では2億ドル規模の投資を行い、熱延ラインの高機能化を進め、自動車用の高張力鋼板圧延機の増強などを行う。モンバレー製鉄所では高炉スラグ(副産物)を高付加価値化できるよう、1億ドル規模を投資する」と述べた。

また、グラナイトシティ製鉄所へのスラブ供給中止計画が「黄金株」で阻止された件について「今回の動きは、様々な分野で国内の生産拠点や雇用を守るという政策を強く進めており、その一環ではないかと考えている。いずれにしても、具体的な投資案件の実行を通じてUSスチールの競争力を着実に向上させ、その結果として雇用も守られるのであり、今後もUSスチール社とのパートナーシップを前に進めていく」とコメントした。