はじめに=今回、提示した「カーボンニュートラルと政府、鉄鋼、事業者の直近の動き(総覧)」は冨高が顧問として係わる某社の社員向け教材として作成したものである。
ただ現在のカーボンニュートラルと政府、業界の最近の動きを、一般事業者にも周知する必要があると考え、その全文を公開する。 2026年4月版・SSJ冨高作成
全体像説明のために=個々の動きの背景に大きなストーリーが潜んでいる。以下の記述と添付資料のすべてが「2050年カーボンニュートラル」に係わっている。
「国内鉄鋼会社から排出されるCO₂はわが国全体のCO₂排出量の約13.2%」「鉄鋼部門のCO₂排出量のうち90%以上は高炉から排出され、電炉生産量1㌧当たりのCO₂排出量は高炉の約5分の1に過ぎない」(東京製鉄「2025統合報告書」)。IT時代といえども「鉄は国家」である。
しかし国家を支える既存高炉の大方が、膨大なCO2排出から将来的な融資継続が危ぶまれる「座礁資産」(国際決済銀行)と目されるに至った(2023年3月1日,日経新聞)。
そのなかで国は、鉄鋼会社は、鉄リサイクル事業者はいかに動くべきか。
その答えとして国は2024年5月「資源循環等高度化法」(資料1)を制定し、「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化」に向けて動き出した。その流れの一環として25年6月、金属リサイクル事業者を規制する「金属盗防止法」を制定し、25年12月にはカーボンニュートラルの時代に即した廃棄物処理制度の見直し検討会(資料2)を立ち上げた。
さらに国は、「経済安保」の観点から官房長官を議長とする循環経済(サーキュラーエコノミー)関係閣僚会議を開き、26年1月総選挙で大勝した高市政権は、国内循環経済実現を国家戦略(資料3)とし、戦略17分野の一つとして「グリーン鉄」のロードマップを示した(資料4)。
1 国の経済安保・成長戦略と鉄リサイクル事業規制の動き
1 政府、「循環経済行動計画」 4月を目途に取りまとめる(2026年3月6日)=政府は3月6日、循環経済の実現を国家戦略として推し進める第3回循環経済に関する関係閣僚会議を開き「循環型社会形成推進基本計画」の行動計画を4月を目途に取りまとめる。循環経済(サーキュラーエコノミー)をめぐる世界・日本の状況をとりまとめ、再生資源供給サプライチェーンの強靱化(重要鉱物、金属資源等)、再資源化拠点等の構築(設備投資支援、制度的措置の検討)、動静脈連携(製造業と資源循環産業)による産業競争力強化、循環資源の不適正な国外流出抑制(不適正スクラップヤード規制等)などを主な内容とする(資料3参照)。
2 日本成長戦略会議、グリーン鉄ロードマップ素案を提示(2026年3月10日)=政府は3月10日、第3回日本成長戦略会議を開き、戦略17分野で主要な製品、技術などの絞り込みに入った。先行的に検討する27案件のロードマップに向けた案を示し、資源・エネルギー安全保障・GXの分野ではグリーン鉄を取り上げた。高品位スクラップの増産に向け、リサイクル設備投資への支援などを課題解決策として検討する(資料4参照)。shiryou2.pdf
それによれば、カーボンニュートラル達成の目標とされる2050年には脱炭素鋼材(グリーン鉄)の市場規模は世界全体で5億トンにまで拡大する可能性があり、自動車、建築、向けなどに2030年代前半に、年約300万t以上の規模のグリーン鉄市場を国内外で獲得する。その対策として大型革新電炉等への設備投資補助金、水素還元製鉄技術開発への支援、高品位スクラップ鉄増産に向けたリサイクル施設への設備投資の支援が必要となる、とする。
3 国の「経済安保」構想が本格的に動き出す(26年4月・日経)=日経新聞4月21日1面記事見出しは「重要鉱物などに1兆円 政府計画 経済安保で再生利用促」である。
本文(要約)では、「政府は重要鉱物やプラスチックなどのリサイクルを強化するため、2030年までに施設整備や技術開発向けに官民で1兆円を投資する方針だ。日本の経済安全保障につなげる。近くまとめる政府の循環経済行動計画に盛り込む。1兆円はリサイクル業者への補助金や官民ファンドの脱炭素化支援機構の出融資などで拠出し、民間からの投資も促す。財源にはGX経済移行債も想定する」とある。鉄リサイクル事業が「国家戦略」の一つに組み込まれたのだ。
2 鉄鋼会社の鉄スクラップへの動き
1 高炉各社の動き=国内の高炉各社は、政府支援のもと、長期的には(コークスを使わない)水素製鋼法を、2030年度までには直接還元鉄法(水素・メタン還元)などを開発し、カーボン・ニュートラルを目指す計画である。日本製鉄は国内高炉を15基から10基に減却し、八幡や広畑に大型電炉を導入する。JFEスチールは水島第2高炉を2027年に廃却。新規高炉は建設せず、大型電炉を設置する。神戸製鋼所も「加古川高炉の電炉の切替えは選択肢」とする方針を相次いで公表した。さらに高炉各社は、系列鉄鋼商社の完全子会社化(、大手商社や直納業者との関係強化、自社だけでなく系列、関連企業の製造工程スクラップの「リターン回収」増強化、など流通全般の再整備を進めた。
2 東京製鉄の動き=東京製鉄は鉄スクラップ「囲い込み」に動いた。ゼネコンや鉄スクラップ業者と連携、製造から回収までのクローズ循環輪を作り、鉄スクラップの海外流失阻止のため「輸出(価格)に対してプラスの値段を提示する」方針を打ち出した。また2022年以降、主要港湾(名古屋港、尼崎港、船橋港)に集荷・船積みサテライトを整備した。
*長期環境ビジョン、アクションプラン(短期目標)「2025統合報告書」を公開=東京製鉄は26年3月9日、「2025統合報告書」をhp上で公開した。全62ページで構成され、「当社生産を2030年に600万トン、2050年に1,000万トンまで拡大し、高炉鋼材から電炉鋼材への置き換えを推進し『カーボンマイナス』に貢献します」と宣言した(資料5参照)。
3 鉄リサイクル事業者と規制の動き(時系列整理)
1 「関東鉄源協・スクラップ流出 水際対策を」(2023年2月)=関東鉄源協によれば、関東地区の鉄スクラップの月間発生量約70万トンのうち約25万トンを外資系鉄リサイクル企業が購入しており、このままでは(鉄リサイクル)工業会関東支部企業の3分の1が無くなる恐れがある。その対策として、業界は「根本的部分(法整備)に切り込む必要がある」との痛切な発言が伝えられた(2023年2月月20日,産業新聞)。
*日本鉄リサイクル工業会「適正ヤード推進委員会」発足(2023年5月)=日本鉄リサイクル工業会は、同年5月、特別委員会として「適正ヤード推進委員会」を設置した。8月以降は経産省、警察庁、環境省もオブザーバーとして参加し協議、検討を重ねた。
2 警察庁の条例制定指示と地方自治体の動き(2024年)=警察庁は2024年5月、金属スクラップの盗難防止条例制定を検討するよう条例未整備の31都府県警察に指示。再び金属類営業条例復活の動きが本格化した。同年7月、千葉県は2005年に廃止した「金属くず取扱業条例」を20年ぶりに「特定金属類取扱業規制条例」に改め再制定した
3 金属屑営業条例制定と鉄リサイクル工業会(2024年7月)=千葉県の20年ぶりの金属くず取扱業条例(特定金属類取扱業規制条例)の復活に対し日本鉄リサイクル工業会長は、千葉県の新条例は盗難金属の流通抑止が主な観点であり、ヤードの立入検査、帳簿の確認、鉄スクラップ受入れ時の身元確認だけでなく、違反すれば営業停止や許可の取り消しとなり、警察の指導に従わなければ業を営めなくなる。これにより、不適正ヤードの新規 参入を牽制できるほか、不適正ヤードの撲滅にも有効だ、として「今後、全国各地で同様の条例が施行されるようになればと思っている」と賛意を表した(2024年7月1日・テックスレポート)。
4 鉄リサイクル事業に規制強化の動き
1 金属屑営業条例(1950~2026年)
金属類営業条例は朝鮮戦争さなかの1950~52年に西日本5県に、鉄屑カルテル崩壊の危機に直面した56~58年に24道府県、合計29道府県が(金属盗犯の防止を名目に)制定した。ただ鉄スクラップ炉前価格が1万円を割り込んだ1999年以降、14県が条例を廃止。その結果、一旦は廃止した岐阜県の再制定(2013年)を含め、24年5月現在、条例施行は16道府県に留まった。このなか24年5月、警察庁は金属スクラップの盗難防止条例制定を検討するよう条例未整備の31都府県の警察に指示をだした。
*その復活(2025年)
*千葉県は24年7月、千葉県は2005年に廃止した「金属くず取扱業条例」を20年ぶりに「特定金属類取扱業規制条例」に改め再制定し、2025年1月から施行した。規制対象は「電線、グレーチング、マンホール、敷板、足場板、銅製の屋根材等の金属製物品(第2条)」とした。*ついで茨城県警も1957年制定の「金属くず取扱業条例」を「特定金属類取扱業条例」(改正条例)に名称を改め、2025年4月1日から施行した。
2 「金属盗対策法」が登場(2025~26年)
「金属盗対策法」(盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律)が25年6月13日に成立した(公布6月20日)。金属くず買取業者には営業届出を義務制とし、違反すれば6月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金または両方を科し、売主の本人確認や取引記録の3年間保存、警察の立入調査や営業停止の行政処分も可能とする。業者が無届営業した場合や本人確認の確実な実施指示に従わない場合は6月以内の営業停止とする。犯行用具規制及び盗難の防止に関する情報の周知は、25年9月1日から、買受業に係る措置は、公布の日から起算して1年を超えない範囲で施行される。
3 古物営業法施行規則を改正する(2025年)
現行の古物営業法の「古物」とは規則第2条列挙の13品種であり、金属屑類の記載はない(従って金属屑は「古物」には該当しない)。規則は古物商に厳格な「本人確認義務」(第15条)を課す一方、「確認等の義務を免除する古物等」として1万円未満の古物取引は確認義務は不要(第16条)している。ところが警察庁は「古物に該当する電線、グレーチング、エアコン等の室外機は取引金額の多寡にかかわらず本人確認義務等の対象」とし、買取業者に対して25年10月以降、規則に乗り出した。
4 廃棄物処理も見直し(2025年)
環境省の廃棄物処理制度小委員会は「制度検討の中間とりまとめ」(25年6月)の検討事項としてとして「金属スクラップや雑品スクラップ等」のヤード「保管・処理」は「制度の対象とすべき」である。「許可制、登録制又は届出制が考えられるが」「どのような手法が適当かそれぞれ検討すべきである」とした。
5 しかし鉄リサイクル工業会は改正廃棄物処理法の内容には「強く反対」(2026年2月20日)
鉄リサイクル工業会は2月20日、廃棄物の処理及び清掃に関する法律改正へ向けた環境省の「説明資料」(上記1の5を参照)に対し、「強く反対する」との意見表明を行った。有害使用済み機器の保管等に関する法律の新たな規制対象品目に、雑品スクラップと廃鉛蓄電池だけでなく、一般的な金属スクラップが”包含”される内容となっているためだ。
工業会はこうした動きが水面下で進められていることに強い懸念を示し13日付けで環境省に対して「環境省説明資料に対する当工業会の意見」を提出。「『有害』の定義付けが、金属・プラスチック物品の取扱事業者の名誉と信用を著しく毀損する」と批判し健全な市場を破壊するだけでな<、常識にさえ反している」。木谷会長は大幅な修正あるいはゼロベースでの検討し直しを求めたい」とコメントしている(2月23日・テックスレポート)。
6 鉄リサイクル工業会は全面的な許可制「賛同」に転換(2026年3月25日)
日本鉄リサイクル工業会の木谷会長は25日、環境省からは3月上旬に『有害という呼称は用いない』との発言を得た」。木谷会長は「有害」の呼称を外した後の新たな名称に関して「極力ニュートラルなものにして欲しいと要望し、前向きに検討するとの話があった」と説明した。
一方、金属リサイクル業界全体を規制する許可制の導入に関しては方針を転換し、賛同する」考えを示した。環境省からは『金属のみを扱うヤードを規制から除外すると、不適正ヤードであっても行政が立ち入りできなくなる。許可制は不適正なヤードを取り締まることで業界を強化の方策の一つと考えている』との説明があった」と述べ、また「許可制の導入では適正な業者には負荷が限りなくゼロに近い形になるよう配慮するとの話もあったので、金属スクラップヤードの全面的な許可制に賛同する」と説明した(3月26日・テックスレポート)。
7 再生材供給のサプライチェーン強靭化の推進
2024年度から「資源循環ネットワーク形成・拠点構築に向けた調査事業」において、主要な循環資源(12カテゴリー)を対象に課題解決策のケーススタディを実施。有識者検討会(非公開)では、下記の事項が指摘されている。
「不適正スクラップヤードの規制を通じ、これにつながる商流を断ち、公正な競争環境を整備するとともに新たなサプライチェーンを構築することが必要。特に金属スクラップ類など有償で取引されていることから、不適正スクラップヤード問題の影響を強く受ける循環資源について、商流の実態把握や適正処理可能な施設で集約的な処理を進める必要」がある。
*環境省環境再生・資源循環局作成資料(2025年12月19日)000363881.pdf 14p
**********以上は概論である。以下はその資料である******。
資料 1 資源循環等高度化法(25年11月施行)
(資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律)
廃棄物処理法の特別法である。カーボンニュートラル対策として「3R+Renewable(再生不可能な資源から再生可能な資源に替える)」の取組を推進し、循環経済への移行を目指す法律。国は「再生資源化の促進(底上げ)」と「再資源化事業者の高度化の促進(引上げ)」を掲げる。高度技術事業者は特例措置を受け、大規模廃棄物処理事業者は再資源化状況の報告義務を負う。2024年5月成立し、25年11月全面施行された https://www.env.go.jp/recycle/waste/page_01721.html
環境省 法律概説 2025年12月 環境省 環境再生・資源循環局 資源循環課作成https://www.env.go.jp/content/000360673.pdf
【判断基準】廃棄物処分業者の判断基準となるべき事項と期待する取組① 14p
■国が資源循環産業のあるべき姿の道筋を判断の基準として示す(産業全体を底上げ)
■処分量の多い産廃物処分業者(特定産業廃棄物処分業者*)には勧告等の措置を講ずる。
*特定産業廃棄物処分業者=産廃物処分業者であって、①当該年度の前年度において処分(再生を含み、埋立処分及び海洋投入処分を除く)を行った産業廃棄物(特管産廃を除く。)の数量が10,000トン以上であること。②当該年度の前年度において処分を行った廃プラスチック類の数量が1,500トン以上であること。
【報告・公表制度】再資源化の実施の状況の報告等について① 17p
■特定産業廃棄物処分業者は、毎年6月30日までに、産業廃棄物の種類及び処分の方法の区分ごとに、その前年度における、処分を行った数量及びその再資源化を実施した数量を環境大臣に報告しなければならない。■環境大臣は、報告された事項について公表する。
再資源化事業等高度化法のポイント③ 3つの類型の認定制度 20p
■再資源化事業等の高度化を促進するため、国が高度化に係る認定(3つの類型)を行い廃棄物処分業の許可等の各種許可の手続の特例を設ける。
類型①高度再資源化事業 認定事業の特例 22p=「廃棄物の収集・運搬又は中間処分の業」(再委託含む)や「廃棄物処理施設の設置」について、廃棄物処理法の許可が不要。
※再委託関係(23p)=認定事業者から収集・運搬、処分の委託を受ける者も、廃棄物処理法では原則禁止とされる廃棄物処理の再委託が可能となる。
類型②高度分離・回収事業の特例(26p)=「廃棄
物の中間処分の業」や「廃棄物処理施設の設置」について、本来、必要となる廃棄物処理法の許可が不要
対象事業=まずは太陽電池、リチウムイオン蓄電池、ニッケル水素蓄電池。
類型③再資源化工程の高度化設備(29p)事業に求める要件=申請者が、既存制度で推奨・求めている取組を実施していること(優良産廃処分業者の取得、多量排出事業処理計画)。「
- 高度化法で定めた判断の基準に係る取組を実施していること。•定量的指標(GHG)評価。
再資源化事業等高度化法の認定に係る税制措置等(33p)
(固定資産税)「高度再資源化事業計画」又は認定「高度分離・回収事業計画」に基づき設置する廃棄物処理施設における取得設備の固定資産税の課税標準価格を1/2とする。(法人税)認定を受けた者が(略)事業を実施した場合、取得価額の35%の特別償却を認める。
以上
資料2 廃棄物処理制度検討の概要資料(25年12月19日検討)
不適正ヤード問題とのサプライチェーン強靱化推進 000363881.pdf)
不適正スクラップヤード対策③:スクラップヤード業への規制(10p)
見直しの方向性 (意見具申案 4p・16~21行と同趣旨、同文 000363879.pdf)
- 生活環境保全上の配慮がなされていること等が確認できない事業者の新規参入を禁止するほか、不適正な処理が確認された場合には取消等により厳格に対処することが効果的である。条例の多くが許可制を導入していることを参考に、雑品スクラップや使用済鉛蓄電池等の処分を業として行う場合にも許可制などの事前審査制度の導入が必要である。
- 有害使用済機器保管等届出制度と比べて罰則を強化すること等により、不適正な処理等を実効的に抑止するための措置を講ずるべきである。
- 制度の対象物品の受入れや処分に係る日付や数量等について、帳簿への記載を義務付けること等により、トレーサビリ ティの仕組みを構築すべきである。
不適正スクラップヤード対策⑤:不適正輸出を防ぐ仕組み(12p)
*見直しの方向性=使用済鉛蓄電池等について、廃棄物処理法上の廃棄物の取扱いに準じて、国内処理原則を適用し、国内での適正な処理を確保するとともに、輸出に当たっては環境大臣の確認※を受けなければならないこととすべきである。
※廃棄物処理法に基づく輸出手続 廃棄物処理法に規定する廃棄物を輸出しようとする場合には、環境大臣による確認、外為法に基づく経済産業大臣の承認が必要となる。環境大臣による確認は、 輸出の相手国において再生利用されることが確実であること、国内の処理基準を下回らない方法で処理されることが確実であること、申請者が法的な処理責任を 持った者であること等についてチェックする。
再生材供給のサプライチェーン強靭化の推進(14p)
◼令和6年度から「資源循環ネットワーク形成・拠点構築に向けた調査事業」において、主要な循環資源(12カテゴリー)を対象に、我が国における再生材供給のサプライチェーンの強靭化に向けた課題やニーズの洗い出し・課題解決策を検討するためのケーススタディを実施している。本調査事業に係る有識者検討会(非公開)では、下記の事項が指摘されている。
- 不適正スクラップヤードの規制を通じて、これにつながる商流を断ち、公正な競争環境を整備するとともに、適正かつ競争力のあるリサイクルを実現する新たなサプライチェーンを構築することが必要。
- 再生材の原料となる循環資源の大規模な収集を可能とする物流網の強化(ネットワーク形成)と適正かつ競争力のあるリサイクルを実現する再生材製造拠点の構築が必要。
- 特に、金属スクラップ類など、有償で取引されていることから、不適正スクラップヤード問題の影響を強く受ける循環資源について、商流の実態把握や適正処理可能な施設で集約的な処理を進めるための検討が必要(*注)。
*<12カテゴリー> 廃プラスチック、鉄スクラップ・シップリサイクル、アルミスクラップ、e-scrap、有機系廃棄物(廃食用油)、使用済み自動車、 使用済みリチウムイオン電池、使用済み太陽光パネル、使用済み風力発電設備。北九州市・室蘭市の2市。
以上
資料3 循環経済に関する関係閣僚会議(第3回 2026年3月6日開催)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/economiccirculation/index.html
1.循環経済の実現を国家戦略として着実に推し進めるべく、「循環型社会 形成推進基本計画」を政府全体として戦略的・統合的に行うため、関係閣僚会議を開催する。
2.議長 内閣官房長官 副議長 経産大臣 環境大臣 構成員=総務大臣 外務大臣 財務大臣 農水大臣 国土交通大臣・内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)同(地方創生)ほか。
(第3回 関係閣僚会議)26年3月6日(金)開催 資料1 循環経済への移行を巡る政策課題への対応 ~循環資源の獲得競争の時代を生き抜く~ 2026年3月 環境省・経済産業省 shiryo1.pdf
循環経済(サーキュラーエコノミー)をめぐる世界・日本の状況(1p)
◼我が国では石油・金属等の資源を輸入に依存する一方で、国内のリサイクル原料の多くが焼却、輸出されている現状がある。
◼一次資源の安定供給確保に加え、二次資源である再生材の質・量の確保と利用拡大を推進し、国際的な資源獲得競争で優位に立つことが重要。我が国の経済安全保障にも直結。
*日本=動静脈連携が十分に進んでおらず、基幹産業に再生材を 質・量・コストの面で安定的に調達できるサプライチェーンが 確立されていない現状を踏まえつつ、日本の優れた技術やノ ウハウを活用した対応が求められている。
資源循環を通じた我が国の自律性・不可欠性の向上の必要性(2p)
◼我が国の製造業は、原材料調達において海外依存度が高い又は今後高くなる脅威にさらされている(地政学的リスク)。一次資源(天然資源)だけではなく二次資源(再生資源)が重要であり、循環資源の回収拡大や不適正な国外流出抑制等により、再生材を質・量・コストの面で安定的に供給するサプライチェーンの強靱化が必要(自律性)
◼我が国の各種リサイクル法等の知見や回収・解体のノウハウは、ASEAN等での資源回収の促進に寄与できる。日本をハブとする国際的な資源循環ネットワークの構築を目指す。
「循環経済行動計画」に向けた施策の方向性(3p)
◼世界は循環資源の獲得競争の時代に突入した。 重要鉱物等のリサイクル、再生材の活用等を通じた循環経済への移行は、環境保全にとどまらない。循環経済への移行を国家戦略として進めるため、以下を柱とする行動計画を(26年)4月を目途に取りまとめる。
循環経済行動計画の策定に向けた施策の方向性
〇再生資源供給サプライチェーンの強靱化(重要鉱物、金属資源等)=重要鉱物等の国内循環に関する戦略的方向性の明確化。・再資源化拠点等の構築(設備投資支援、制度的措置の検討)。
・動静脈連携(製造業と資源循環産業)の促進による産業競争力強化。
・循環資源の不適正な国外流出抑制(不適正スクラップヤード規制等)。
・一般消費者等の再生材の受容性向上と需要拡大に向けた環境整備。
〇日本をハブとする国際資源循環ネットワークの構築=・重要鉱物等リサイクルに関する同志国連携(ASEAN、G7、日米、クアッド等)
〇社会問題への対応(太陽光パネルリサイクル・リチウムイオン電池再資源化)
〇地域循環資源の徹底活用による地域活性化(リユース等地域ビジネス)
〇資源循環分野の国際ルール形成(グローバル循環プロトコル(GCP))
(会議提示の)参考資料
世界の動向・状況①:中国による重要鉱物の輸出管理措置等(7p)
◼中国は、23年8月のガリウムとゲルマニウムへの措置を皮切りに、重要鉱物に対する輸出管理を強化。2025年4月には、重レアアース7種に対する輸出管理措置を実施。
◼25年10月には、極微量であっても中国産レアアースを含む製品の再輸出規制やレアアース及び電池の生産設備・材料・技術の輸出規制等の輸出管理措置を発表。(米中協議で1年停止)
◼26年1月6日、日本向けデュアルユース品目の輸出管理の強化に関する公告を発表。
◼並行して、24年10月には官民が出資して中国資源循環集団を設立。資源リサイクルネットワークの構築に注力。一次資源のみならず二次資源(再生材)確保に向けた取組を進めている。
世界の動向・状況③:EUにおける循環経済に関するルール形成(9p)
◼EUは19年に発表した「欧州グリーン・ディール」に基づき20年の循環経済行動計画を皮切りに国内外の循環経済に関する政策を次々に導入。
◼今後、EUからの電子スクラップ(E-scrap)等の域外への輸出が厳格化されるほか、廃自動車規則案に基づく再生材利用義務化を受けて、設計/製造の共通化等が進む自動車製造において、EU向け以外の自動車も含めてサプライチェーン全体での対応が不可避。
◼グローバルな競争力確保に向け、国内での再生材の流通量増大(市場の拡大)が喫緊の課題。
再生資源の域外流出規制・改正廃棄物輸送規則(WSR)
◼廃棄物のEU域外への輸送を大幅に制限=✓非OECD国向けe-waste等の廃棄物輸出について、原則輸出禁止(明示的な同意と環境上適正な処理ができることを証明できた場合のみ許可)。
✓OECD向け輸出はモニタリング強化(輸出先で環境影響が認められる場合は輸出停止が可能) ✓EU域外への廃棄物輸出は、輸出先国の処理施設が3年ごとに独立機関による監査を受ける。 ✓EU域内の輸送も、書面事前通知と同意手続(PIC)条件で同意・認可された場合にのみ許可。
日本の実態①:鉄などのベースメタルを巡る課題(11p)
◼脱炭素化対応に伴い大型電炉の新設導入が予定される中、高品位鉄スクラップの需要増加が見込まれている。その一方で、鉄スクラップ約770万t/年が国外に輸出されている。
◼高品位な鉄スクラップの国内循環量を増やすため、海外輸出分を国内で活用し高品質鉄スクラップを製造する技術開発、設備導入、物流などのサプライチェーン整備が必要。
日本の実態②:自動車を巡る課題(12p)
◼自動車には高品質な鉄・非鉄金属・プラスチック等の資源が多く使用されている。
◼国内発生廃車は約250万台/年あり、国内で廃車となるはずの中古自動車も輸出されてしまっており、バッテリーを含めた資源流出につながっているといった指摘がある。
◼新車販売減少等の影響も受け廃車引取台数が減少し、廃車を国内入手が課題となっている。
日本の実態③:リチウムイオン電池を巡る課題(13p)略
日本の実態④:プラスチックを巡る課題(14p)略
日本の実態⑤不適正スクラップヤード問題(15p)
◼一部地域で、スクラップ、家電等の不適正な保管や処理に起因する問題が報告され、一部の自治体では規制条例で対応しているが、法制度による全国的な対応を求める声がある。
◼また、不適正スクラップヤードを経由して一部資源の海外流出の可能性も指摘される。
以上
資料4 日本成長戦略会議(第3回 2026年3月10日開催)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/kaigi/dai3/gijishidai.html?utm_source=chatgpt.com
提示資料の2として「先行して検討を進めている主要な製品・技術等の 官民投資ロードマップ素案」が公開された。内容は「AI・半導体」から「コンテンツ」までの17分野。
「資源・エネルギー安全保障・GX分野」では、示された*次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池等)p.92 *水素等p.97 21. *グリーン鉄p.102~106としてロードマップが示された。その内容概略は以下の通り shiryou2.pdf
1 現状認識と目指す姿(103p)
(1)現状
①現状 ・高品質な素材は、主に高炉で生産されており、我が国の高炉比率は約7割を占め、鉄鋼業は産業部門の中で最もCO2排出量の多い産業(約4割)であるため、CO2排 出量削減に向け、大型革新電炉への転換や水素還元製鉄の技術開発等の取組を進めている。
②取り巻く環境と構造変化 ・欧州では、製造時のCO2排出量が多い製品の市場参入を規制する動きが見られる。日本でもScope3も含め排出量等情報開示を義務付け議論が進められている。
③経済的・戦略的な重要性 ・グリーン鉄の市場は2050年に約5億トンまで拡大するポテンシャルがあり、官民で連携し高品位かつ低炭素な鋼材の供給能力を高めておく必要がある。
・グリーン鉄生産において、高品位スクラップを安定確保が必要。各国が確保に動くことが予想される中、国内サプライチェーンを構築し、国産資源確保につなげる。
(2)目標
①国内外で獲得を目指す市場 ・2030年代前半に、自動車、建築、公共工事、 造船、産業機械等向けの年約300万t以上の 規模の高品質なグリーン鉄市場を国内外で 獲得する。
②達成すべき戦略的な目標 ・高品質かつGX価値をもった鋼材を、スクラップや還元鉄を主原材料とし製造することにより、不可欠性を獲得する。・大型革新電炉や鋳物等製造業向けの安定供給に向け、高品位スクラップの国内生産量を年○万t増加させ自律性を確保する。
2.勝ち筋の特定と官民投資の具体像、定量的インパクト【道筋】(104p)
(1)基本戦略
① 勝ち筋=グリーン鉄の生産基盤構築及び高品位スクラップ確保に向けた技術開発・設備投資を進めることでGX価値の見える化及び国際標準への反映、調達、大口需要家(自動車・建材等)に対する需要喚起策や制度の導入等を進め、国内においてグリーン鉄市場を創出する。
② 我が国として構築すべき機能=・グリーン鉄生産基盤 ・高品位スクラップ生産基盤の増強
・安価・安定な脱炭素電力・水素の供給基盤・供給拡大に繋がるグリーン鉄市場の創出など。
(2)官民投資の具体像
①投資内容=・大型革新電炉の建設、水素還元製鉄の技術開発等供給サイドのプロセス 転換。
・鉄鋼メーカーやスクラップ事業者によるスクラップ高度選別設備や大型シュレッダー施設。
②投資額・時期(官民投資ロードマップの取りまとめまでに提示)
3.官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】(105p)
(1)投資促進に向けた課題
*初期コスト=大型革新電炉等 への初期投資負担が大きい。
*原材料=世界的に高品位スクラップへの需要が高まる中で、安定的な高品位スクラップの調達が必要。還元鉄は少なくとも当初は高価格が見込まれる。
*インフラ=安価・安定な脱炭 素電力・水素の確保、CCSの 実施環境について不透明。
*需要=従来よりも高価格となるグリーン鉄への需要が短期 的に創出されるか現時点において不透明。また、グリーン 鉄のGX価値の見える化及び国 際標準への反映は道半ば。
(2)講じるべき政策パッケージ
①国内投資支援
・大型革新電炉等への設備投資補助金 ・水素還元製鉄技術開発への支援
・AI等を用いたスクラップ選別効率化等技術開発への支援
・スクラップ高度選別設備や大型シュレッダー等リサイクル施設への設備投資支援
②需要創出・市場確保・社会実装支援
・グリーン鉄の国内初期需要創出に向けた取組
・グリーン購入法を踏まえた、国・自治体による優先的調達・購入の推進
・公共工事における試行工事の実施・国及び地方公共団体における本格活用
・大口需要家(自動車・建材等)に対する需要喚起策や制度の導入・検討
③立地競争力強化
・自動車・家電等の高度リサイクル促進
・国内高品位スクラップの確保 ・脱炭素電力・水素・CCSインフラの整備
④国際連携 ・グリーン鉄のGX価値の国際標準への反映
方向性 (106p)
現状認識、日本の強み=我が国の鉄鋼業は高強度、高加工性など、高級鋼材を中心に競争力を有し、製造業の国際競争力強化に貢献。欧州を中心に素材製造プロセスの脱炭素化を求める動きがあり鋼材に対する需要家の嗜好が変化する動きがみられる。グリーン鉄市場規模も2050年に世界全体で5億トンにまで拡大するポテンシャルがあり、海外企業もグリーン鉄の生産に向け技術開発や投資を進める動きがある中、グリーン鉄の国内生産・技術基盤の構築が急務。
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我が国の勝ち筋 主な課題 (ボトルネック) ・大型革新電炉等への初期投資負担 ・ 安定的な高品位スクラップ鉄の確保 ・ グリーン鉄への短期的な需要が不透明 ・グリーン鉄のGX価値の見える化及び国際標準への反映が道半ば
講じるべき施策=・大型革新電炉の設備投資や水素還元製鉄の 技術開発支援 ・高品位スクラップ鉄増産に向けたリサイクル施設への設備投資支援 ・グリーン鉄の国内初期需要創出( 公共工事におけるグリーン鉄の調達等 ) ・グリーン鉄のGX価値の国際標準への反映
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資料5 東京製鉄、「2025統合報告書」―概説 26年3月(ssj・冨高作成)
東京製鉄は3月9日、サステナビリティ課題への取り組みをまとめた「2025統合報告書」をhp上で公開した。全62ページ(13.5MB)で構成され、企業概要のほか、長期環境ビジョン、環境データ一覧、アクションプラン(短期目標)、生物多様性への取り組み、環境マネジメントや実施成果、業績ハイライトなどを幅広く掲載している。Tokyo_Steel_Integrated_Report_2025_single.pdf
以下はその要約・引用である。
私たちの決意(5p)=「2016年の『パリ協定』の発効以降、カーボンニュートラルを宣言する国が増加し、わが国も2020年10月に『2050年カーボンニュートラル』を目指すことを宣言しました」。「東京製鉄は鉄リサイクルのリサイクルを通じ、高品質な製品をより少ない環境負荷と低コストで『循環型社会』と『脱炭素社会』の実現に貢献」します。
脱炭素社会の実現に向けて(6p)=「国内鉄鋼メーカーから排出されるCO₂は、わが国全体のCO₂排出量(年間約9.8億トン)の約13.2%(年間約1.31億トン)に達してします」
「鉄鋼部門のCO₂排出量のうち、90%以上は高炉メーカーから排出されています。生産量1トン当たりのCO₂排出量で比較すると、電炉メーカーの生産時におけるCO₂排出量は高炉メーカーの約5分の1に過ぎない(*)、ということがわかっています」
*高炉3社=粗鋼生産量・6223.9万トン 1トン当たりCO₂排出量・2.11トン
*電炉上位10社=粗鋼生産量・976.0万トン 1トン当たりCO₂排出量・0.35トン
中長期排出削減目標(12p)=「当社は2013年度を基準年として2024年度で既に35%以上の削減を達成しており、2030年度は総排出量ベースで2013年度と同等、原単位ベースで60%の削減を目標とし、2050年度にはカーボンニュートラル」の達成を目指します」
「当社は鉄リサイクルの『アップサイクル』を通じて、当社の生産を2030年に600万トン、2050年に1,000万トンまで拡大し、高炉鋼材から電炉鋼材への置き換えを推進することにより、『カーボンマイナス』実現に貢献してまいります」
地球温暖1.5℃~2.0℃未満(パリ協定)シナリオ及び当社への影響(17~18p)
1 カーボンプライシングの導入
*社会シナリオ=国内にてカーボンプライシング制度が導入(先進国は、2030年にCO₂排出量1トン当たり157㌦、35年に180㌦、50年に250㌦と推定)
当社の対応=すべての鉄鋼メーカーに排出量に応じた公平な炭素税が課された場合、電炉鋼材は価格優位性のある製品として需要拡大が予想される(略)。当社は炭素税導入のリスクを踏まえ、今後さらなる省エネルギー投資と再生可能エネルギーへのシフトを進める。
2 燃料価格の動向(略)
3 エネルギーミクス(略)
4 脱炭素・循環型鋼材の需要
*社会シナリオ=鉄スクラップのリサイクル・リユース量が増加。
*当社の対応=電炉プロセスは高炉・転炉プロセスに比較して、製造段階におけるCO₂排出量が少ないことから、将来的には電炉鋼材の生産量は拡大していくと予想される。
さらに鉄スクラップの発生量の増加によるリサイクル・リユースの拡大も予想されることから、電炉プロセスによって脱炭素・循環型鋼材を生産する当社には大きな追い風となる。
アクションプラン(短期目標)(20p)
顧客との協働による鉄スクラップ回収率の向上=鉄スクラップの高度利用と継続的な技術開発を通じて顧客企業(リコー、パナソニック)等との水平リサイクルを拡大します。また当社の脱炭素・循環型鋼材を納入するクローズドループの循環型取引を拡大します。
鉄スクラップ事業者とのパートナーシップの強化=脱炭素・循環型社会の実現というビジョンを共有する国内鉄スクラップ事業者とのグリーンパートナーシップの強化により、鉄スクラップ回収量の増大を図っていきます。
東京製鉄Scope 1,2,3のCO₂排出量(36p)
廃車全部利用・Aプレスの利用による環境負荷低減(38p)
当社は2013年度よりコンソーシアム契約Y締結事業者よりAプレスの受入を開始しています。電炉トップメーカーとして全部利用・Aプレスの使用実績は国内最大となっています。
Scope 3 算定方法、一覧(40p)
*スコープ3(Scope3)は、自社(Scope1, 2)以外の事業活動に関連する、15のカテゴリで構成されたサプライチェーン(原材料調達〜廃棄)上の間接的な温室効果ガス排出量。
取引先企業との協働(41~45p)
*トヨタ自動車が複数車種に当社鋼材を使用(40p)
*ベンチャー企業FOMMとの協働~アップサイクルカー・プロジェクト(40p)
*キャノンのプリンティング製品に当社鋼材を供給開始
使用済み複合機から分別した鉄スクラップの資源循環を促進(42p)
*パナソニックグループとの協働 クローズドループ資源循環スキームの拡大(43p)
*千代田鋼鉄工業株式会社との協働
*岡山工場にて新しい「デマンド・レスポンス(上げDR)」がスタート~中国電力との協働を通じて再エネの拡大に電炉が貢献~(44p)
*大成建設株式会社との協働 脱炭素化に向けた当社と大成建設の連携によるゼロカーボンスチール・イニシアティブ(45p)
東京製鉄の低CO₂鋼材「ほぼゼロ」(46p)
電気炉×再生可能エネルギーで製造時のCO₂排出量をほぼゼロまで削減
*製造時のCO₂排出量 約0.4トン。
内訳=化石燃料起因・約0.1トン(スコープ1)+電力起因・約0.3トン(スコープ2)
⇒これらを太陽光など再エネ由来の電力や「追加性のある非化石証書」、「デマンド・レスポンス(上げDR)」を起用して電力起因のCO₂排出量を削減して「ほぼゼロ」を達成。
品質・納期は「通常製品と同じ」 ただし価格は鋼材1トン当たり+5,900円を設定する。
以上
蛇足として 新聞報道と冨高の独断による全体コメント
はじめに=カーボンニュートラルと鉄スクラップ規制強化と排出量取引制度はすべて一本の赤い糸で結ばれている。鉄鋼大手各社の鉄スクラップ「囲い込み」の動きは、「鉄は国家」の呼号のもと、市中鉄源の強制回収に奔走した日米開戦時の「金属回収令」を連想させる。それに代わるのが、石油・石炭を「一次資源」、鉄スクラップなど市中回収鉄源を「二次資源」と呼ぶ、国の成長戦略会議と「経済安全保障」だ。鉄スクラップは国家戦略物資の一つとなった。
新聞報道=関連・鉄やプラスチック再利用、設備投資を国が支援(3月27日・日経記事)=環境省などは鉄やアルミ、プラスチックなどのリサイクル企業に設備投資の支援策を設ける方針だ。金融機関による低利子融資や、資金支援などが選択肢となる。国内資源を有効活用し、経済安全保障につなげる。環境省が25年に設置した有識者検討会が近く提言を公表する。
検討会は鉄やアルミ、プラスチック、自動車など10種類の資源カテゴリーと国内2地域について調査。検討会は学識者や金融機関幹部が委員として議論し、リサイクル関係の業界団体や経団連、全国銀行協会などもオブザーバーで参加した。鉄鋼業では今後高炉から電炉への生産プロセス切り替えが進む中、原料となる鉄スクラップを確保する必要がある。環境省は経済安全保障の確保に向けた資源リサイクルの関連費として379億円を計上した。回収量拡大につながる保管拠点や再生材の品質管理設備の補助などに取り組む。有識者検討会の提言を踏まえ、関連する実証事業にも着手する。
大手高炉と東鉄では方向が違う=政府のバックアップと援助資金が期待できる高炉各社は、2030年代前半に「グリーン鉄」300万トンの生産と高品質なグリーン鉄市場を国内外で獲得する(日本成長戦略会議・第3回 2026年3月10日)、という。CO2を排出量が高炉の4分の1以下のアドバンテージを持つ東京製鉄は、「2030年に600万トン、2050年に1,000万トンまで拡大し、高炉鋼材から電炉鋼材への置き換えを推進する」(「2025統合報告書」)と公表した。
鉄スクラップ現場では=この両者の違いは、高炉各社が2030年を目標に大型電炉と「直接還元鉄」と「国内高品位スクラップ」(グリーン鉄・104p)でグリーン鉄生産を構想しているのに対し、東鉄は、一般鉄スクラップでカーボン「ほぼゼロ」鉄の生産を目指す、違いにある。
つまり高炉各社は、電炉法で自動車向けなど高級鋼を作る。その投入材料の品質は、いわば高炉規格に準じた高スペック、「高品位スクラップ」を求める(それが300万トン)。
一方、東鉄は鉄鋼製品のサプライチェーン全体(スコープ3)をカーボン低減鋼材の生産とその生産を支える鉄スクラップの「囲い込み」を追求する(それが湾岸サテライトの増設であり、輸出価格と連動するかに見える価格改訂であり、30年には600万トン、である)。
鉄スクラップ需給動向は、この結果、国内では高炉と東鉄の2方向に分かれ、世界では輸入確保と輸出規制の対立となる。その具体的な表れが「経済安保」を盾とする「戦略会議」のロードマップであり、「カーボンニュートラル」を盾とする「国境炭素調整税」の動きである。
しかし、そのなか鉄スクラップは、狭い国家の枠を超えた「世界マーケット」のなかの戦略的「二次資源」として、まさに歴史的に再評価されるに至った。
以上