茨城県「特定金属類取扱業条例」を考える 

茨城県「特定金属類取扱業条例」を考える  2025年2月12日 冨高まとめ

2024年までの動き

 

木谷謙介日本鉄リサイクル工業会に聞く202471日・テックスをSSJ要約)=「屋外保管に関する規制条例が相次ぎ施行された。そうした中で千葉県警が『千葉県特定金属類取扱業の規制に関する条例』の制定へ向け動き出した。同条例は盗難金属の流通抑止という観点が主であり、許可を出したヤードへの立入検査、帳簿の確認、鉄スクラップ受入れ時の身分証明書のコピー取得の確認だけでなく、違反すれば営業停止や許可の取り消しまでできる。つまり警察の指導に従わなければ業を営めなくなる。警察が自由にヤードに立ち入りできるようになれば不適正ヤードの新規参入を大きく牽制できるほか、現行の不適正ヤードに対しても撲滅へ向けて相当有効だ。警察庁が現在、都道府県を超えて水平展開する体制を整えているようなので、今後、全国各地で同様の条例が施行されるようになればと思っている」

■警察庁、金属盗難防止条例検討を31都府県の警察に指示202479日・産業新聞)=警察庁は、金属スクラップの盗難防止条例制定を検討するよう、条例未整備の31の都府県の警察に指示した。527日に全国の警察の本部長を集めて開いた会議で求めた。

■千葉県「特定金属類取扱業の規制に関する条例」を24年7月9日原案通り可決成立した。


栃木県警、金属買取業者への規制条例の制定検討(読売オンライン2024/07/24 )=栃木県
内で相次ぐ「金属盗」対策として、県警が金属買取り業者への規制を強化する新たな条例制定を目指している。今後、他県の事例も参考にしながら条例案をまとめていく方針。

群馬県警 金属買取業者に記録の保存義務づける条例目指すNHK 20241022日)=群馬県警察本部は買取り業者に取引き記録の保存などを義務づける条例の制定を目指す。金属買い取り業者に対し、取引記録の保存やその開示を求めるほか、盗品と思われるものが持ち込まれた場合、警察への連絡を義務づけます。違反した場合の罰則も設ける。

■日本鉄リサイクル工業会の動き20235月に「適正ヤード推進委員会」を設置し、経産省、警察庁、環境省もオブザーバーとして対策を協議、検討を重ねた。同年527日、警察庁は金属スクラップの盗難防止条例制定を検討するよう条例未整備の31都府県の警察に指示した。日本鉄リサイクル工業会長は「警察が自由にヤードに立ち入りできるようになれば不適正ヤードの新規参入を牽制できる。警察庁が都道府県を超えて水平展開する体制を整えているようなので、全国各地で同様の条例が施行されるようになればと思っている」とためらうことなく賛同した(テックスレポート2472日)。

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千葉県特定金属類取扱業規制条例と「囲い込み」を考える | STEEL STORY JAPAN

千葉県特定金属類取扱業規制条例と「囲い込み」を考える Vol.2 | STEEL STORY JAPAN

千葉県特定金属類取扱業規制条例と「囲い込み」を考える Vol.3 | STEEL STORY JAPAN

金属取扱業を規制する条例(金属くず条例) | RILG 一般財団法人 地方自治研究機構

 

2025年の動き

■千葉県は「特定金属類取扱業の規制条例」を今年1月から施行した。

https://www.police.pref.chiba.jp/content/common/000062329.pdf

■茨城県も「茨城県特定金属類取扱業に関する条例」を今年4月1日から施行する

 

冨高コメント

■茨城県、改正条例のポイント 「許可の更新」を復活 茨城県条例の主な改正点は、「金属くず」を「特定金属類(第2条)」とし、厳格な「許可の基準」を設けたこと。改正条例は売買当事者の身分証確認を義務化し、その写しの3年間保存規定を設けたこと。現行の「金属くず取扱業条例」(下記参照)の罰則は、最大でも「10万円以下の罰金(第24条)」だが、改正条例違反は、岐阜県条例や「再生資源屋外保管条例」の先例にならい最大「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(新25条)」に加重された。なかでも1966年に廃止した「3年ごとの」「許可の更新」を、「5年ごとに」改め、復活させた(新6条)ことだ。「許可の更新」は先行の金属営業条例でも、その規定は散見されるが、一旦削除した規定の復活の先例はない。

改正条例での「許可の更新」復活は、今後の取締り方向を示すものとして注目される。

つまり許可後の営業は無条件で認められるものではなく、状況によっては「許可更新」を認めない場合もありうる(生殺与奪の)法的根拠を改めて、明示・確認した、といえる。

 

その背景=買受行為の各段階(相手確認、取引記録、記帳など)の規制強化、コンプライアンス(法令順守)の徹底は、「鉄スクラップ囲い込み」の大局から見れば、大手高炉が本腰を入れて鉄スクラップ取引を開始する。その基盤整理の「流通清掃」とも見える(注1,2)

 

<注1 「特定金属類取扱業の規制条例」本文は下記の茨城県警のhpで確認してください>

https://www.pref.ibaraki.jp/somu/somu/hosei/cont/reiki_int/reiki_honbun/o400RG00002136.html#joubun-toc-span

なお条例概要は茨城県警hp kinzokumokuji_03.pdf 参照のこと。

<注2 改正前の条例本文は下記の茨城県警のhpで確認してください>

https://www.pref.ibaraki.jp/somu/somu/hosei/cont/reiki_int/reiki_honbun/o400RG00001261.html#e000000189



県条例第70号  茨城県特定金属類取扱業条例

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概略

第1条(目的) この条例は、特定金属類取扱業に係る業務について必要な規制を行い、特定金属 類に係る窃盗その他の犯罪の防止を図ることを目的とする(略)。

第2条(定義) 「特定金属類」とは、一度使用されたもの若しくは使用されることなく使用のために取引されたもの又は製品の製造、加工若しくは修理に伴い副次的に得られたものをいう。ただし、古物営業法に規定する古物に該当するものを除く(略)。

第3条(特定金属類取扱業の許可) 特定金属類取扱業を営もうとする者は、公安委員会の許可を受けなければな らない。

第4条(許可の基準)  14カ項にわたって除外規定を列挙する

第5条(許可の手続) 第3条の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書に公安委員会規則で定める書類を添付して、公安委員会に提出しなければならない。 (1) 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名 (2) 営業所(行商のみをしようとする者にあっては、行商の本拠となる事務所又は 住所をいう。以下同じ。)の名称及び所在地 (3) 行商をしようとする者であるかどうかの別 (4) 法人にあっては、その役員の氏名及び住所

第6条(許可の更新)  第3条の許可は、当該許可の日から起算して5年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う。

第7条(許可の取消し) 第8条(変更の届出) 第9条(廃止等の届出) 略

第10条 (名義貸しの禁止)第3条の許可を受けた者は、自己の名義をもって、他人に特定金属類取扱業 を営ませてはならない。

第11条 (行商の証明書の携帯等) 特定金属類取扱業者(法人を除く。)は、行商をするときは、公安委員会規則で定める証明書を携帯していなければならない。

2 特定金属類取扱業者は、当該従業者に前項の証明書を携帯させなければならない。

3(略)取引の相手方から証明書の提示を求められたときは、提示しなければならない。

第12条 (標識の掲示義務等) 特定金属類取扱業者は、県内に所在する営業所ごとに第3条の許可を受けたことを示す標識を、公衆の見やすい場所に掲示しなければならない(略)。

第13条(営業の制限) 特定金属類取扱業者は、その営業所又は取引の相手方の住居、事務所、事業所、倉庫、作業場所その他これらに準ずる場所以外の場所において、(略)特定金属類取扱業者以外の者から特定金属類を受け取ってはならない。

第14条 (本人確認等) 特定金属類取扱業者は、(略)個人番号カードの提示、(略)公安委員会規則で定める方法により、相手方の確認(「本人確認」)を行わなければならない。

  • 自然人 氏名、住居(外国人は、公安委員会規則で定める事項)及び生年月日。
  • 法人 名称及び本店又は主たる事務所の所在地 (以下・略)

4 (略)対価の総額が公安委員会規則で定める金額未満である特定金属類の買受け等をしようとする場合には、これらの規定による本人確認を行うことを要しない。

第15条(申告) 特定金属類取扱業者は、当該特定金属類について盗品等の疑いがあると認めるときは、直ちにその旨を警察 官に申告しなければならない。

第16条 (本人確認記録の作成等) (略)特定金属類を受け取ったときは、その都度、相手方についての本人確認の記録その他を作成し、作成の日から3年間、保存しなければならない。ただし第14条第4項により本人確認を行うことを要しない場合は、この限りでない。

第17条(取引記録の作成等) 売買等により、特定金属類を受け取り、又は引き渡したときは、その都度、次に掲げる「取引記録」を作成し、その作成の日から3年間、これを保存しなければならない。前条ただし書の規定は、この場合について準用する。

 (1) 売買等の年月日 (2) 売買等の場所 (3) 売買等に係る特定金属類の品目及び数量 (4) 売買等に係る特定金属類の特徴 (5) 売買等の相手方の本人特定事項 (6)本人確認の方法 (7) 前各号に掲げるもののほか、公安委員会規則で定める事項

第18条(品触れ) 警察本部長又は警察署長は、必要があると認めるときは、特定金属類取扱業者に対して、盗品等 の種類、品質、特徴等に係る通知(「品触れ」)を書面 により、又は 電子情報処理組織を使用して発することができる。

2 特定金属類取扱業者は、品触れを受けたときは、当該品触れに係る書面にその到達の日付を記載し、その到達の日から6月間これを保存しなければならない。 3()

4 特定金属類取扱業者は、品触れに相当する特定金属類を所持していたとき、又は前2項の期間内に当該品触れに相当する特定金属類を受け取ったときは、直ちにその旨を警察官に届け出なければならない。

第19条(差止め) (略)盗品等であると疑うに足りる相当な理由があるときは、当該特定金属類取扱業者に対し30日以内の期間を定めて、特定金属類の保管を命ずることができる。

第20条(報告徴収及び立入検査) 公安委員会は、必要があると認めるときは、特定金属類取扱業者に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。

2 警察職員は、必要があると認めるときは、営業時間中において、特定金属類取扱業者の営業所又は特定金属類の保管場所若しくは解体場所 に立ち入り、特定金属類、本人確認記録、取引記録その他の物件を検査し、関係者に質問することができる。

3 前項の場合においては、身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。4 第2項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

第21条 (指示) 公安委員会は、特定金属類取扱業者又はその従業者がこの条例若しくはこの条例に基づく公安委員会規則の規定に違反し、又はその特定金属類 取扱業に関し他の法令の規定に違反した場合において、必要があると認めるとき又は盗品等の速やかな発見が阻害されるおそれがあると認めるときは、当 該特定金属類取扱業者に対し、その業務の適正な実施を確保するため必要な措置を とるべきことを指示することができる。

第22条(営業の停止等)  公安委員会は、特定金属類取扱業者又はその従業者が条例若しくは規則に違反し、若しくは他の法令の規定に違反した場合において、必要があると認めるときは、当該特定金属類取扱業者に対し、特定金属類取扱業の許可を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて、全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

第23条(聴聞の特例) 公安委員会は、特定金属類取扱業の停止を命じようとするときは、意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。 2(略)

3聴聞の期日における審理は、公開により行わなけれ ばならない。

第24条 この条例の施行に関し必要な事項は、公安委員会規則で定める。

罰則***********************

第25条 次の各号に該当する者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する。 (1) 第3条(特定金属類取扱業の許可)の許可を受けないで特定金属類取扱業を営んだ者。(2) 偽りその他不正の手段により第3条の許可を受けた者  (3) 10条(名義貸し)の規定に違反した者 (4) 22条(営業停止)の規定による公安委員会の命令に違反した者

第26条 次の各号に該当する者は、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。 (1) 13条(営業の制限)又は第14条第1項(本人確認)若しくは第2項(代理人確認)の規定に違反した者 (2) 16条(本人確認記録の作成等)又は第17条(取引記録の作成等)の規定に違反し、記録を作成せず、又は記録を保存しなかった者

第27条 次の各号に該当する者は、30万円以下の罰金に処する。

 (1) 第18条第2項の規定(品触れを受けたときは、到達の日付を記載し、到達の日から6月間これを保存)に違反して品触れに係る書面に到達の日付を記載せず、若 しくは虚偽の日付を記載し、又はこれを保存しなかった者 (2) 18条第3項(6月間保存)の規定に違反して品触れを保存しなかった者 (3) 18条第4項(6月間保存)の規定に違反した者。(4) 19条(差止め)の規定による警察本部長等の命令に違反した者

第28条  第5条(許可手続き)(第6条第4項において準用する場合を含む。)の申請書又は添付書 類に虚偽の記載をして提出した者は、20万円以下の罰金に処する。

第29条 次の各号に該当する者は、10万円以下の罰金に処する。

(1) 第8条(変更の届出)の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者 (2) 11条第1項若しくは第2項(行商の証明書の携帯等)又は第12条(標識の掲示義務等)の規定に違反した者 (3) 20条第1項(報告徴収及び立入検査)の規定による報告をせず、若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告をし、虚偽の資料を提出した者 (4) 20条第2項(警察職員の検査等)の規定による立入り又は検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

第30条 (両罰規定) 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第25条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

第31条  第9条第1項(廃止等の届出)規定に違反した者は、5万円以下の過料に処する。

 

付 則

1 (施行期日)この条例は、令和7年4月1日から施行する。

2 (金属くず商に関する経過措置)この条例の施行の際現にこの条例による改正前の茨城県金属くず取扱業に関する条例による許可を受けて金属くず商を営んでいる者は、この条例の施行の日から6月を経過する日までの間、同条の許可を受けたものとみなす。

3 前項の規定により許可を受けたものとみなされる者については、改正後の条例第11条(行商の証明書の携帯等)及び第12条(標識の掲示義務等)の規定は、適用しない。

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