動き出した日本製鉄のグローバル戦略

 

*本稿は日経新聞記事を要約した。日付はすべて日経新聞の掲載日である。

2023年

 

■日鉄、USスチール2兆円買収へ(23年12月19日)=日鉄は18日、USスチール株を1株55ドル(7810円)で全株取得し完全子会社すると発表。15日終値は39ドルで、約4割のプレミアムを付ける。買収総額は141億ドル(約2兆円)。買収資金は金融機関からの借入金で対応。買収後もUSスチールの社名は維持する。かねて日鉄は世界で粗鋼生産能力1億トン目標を掲げてきた。今回の買収で生産能力は現在の6600万㌧から8600万㌧になる。USスチールは高炉を8基、電炉3基持つ。日鉄は粗鋼生産で世界4位から3位になり、1億トンの目標達成に近づく。USスチールは鉄鉱石の鉱山も持っている。原料炭と鉄鉱石の調達を安定化させることができる見通し。

 

(関連)

■日鉄、米政治リスク「想定内」 USスチール買収(24年2月8日)=日本製鉄は7日、USスチール買収手続きを予定通り進める方針を示した。約140億ドルの買収資金は金融機関から全額借り入れで賄う。日鉄の有利子負債はUSスチール分も含めて23年末時点の約3兆円から5.6兆円に増える。財務の健全性を示すDEレシオは足元の約0.5倍から約0.9倍に悪化する見込み。

破談なら違約金リスク28日)USスチール買収のハードルを越えられなかったらどうなるか。日鉄はUSスチールに56500万ドル(約836億円)の「リバース・ブレークアップ・フィー(RBF)」と呼ばれる違約金を払う必要がある。RBFの根拠はこうだ。被買収会社は買い手に資産査定などの段階で機密情報を開示したうえ、再び身売り先を探すなど時間も費やさなければいけない。その損害を補償する意味合いがある。

 

■USスチール、買収承認(4月13日・夕)=USスチールの買収案が12日、USスチールの臨時株主総会で承認された。日鉄は規制当局の審査を経て24年9月までの買収完了を目指している。労働組合が買収に反対している。手続き完了はずれ込む可能性がある。

 

■日鉄のUSスチール買収は「歴史的失敗」(4月24日・夕)=米鉄鋼大手、クリーブランド・クリフスのローレンコ・ゴンカルベス最高経営責任者(CEO)は23日、「日本企業による、アメリカを象徴する鉄鋼メーカーの買収は歴史的な大失敗だ」と述べた。クリフスは以前、1兆円規模の買収額でUSスチールの買収に名乗りを上げていた。

 

■USスチール買収、米以外は全て承認(5月31日・夕)=日鉄は30日、USスチール買収について、欧州など、米国以外の全ての規制当局からの承認を取得したと発表した。

 

■日鉄副会長、USスチール買収「年内に完了」(82日)=森高弘副会長兼副社長は1日、USスチールの2412月までの買収完了に強い意志を示した。米当局の審査についても「守秘の観点から内容は申し上げられないが、どんどん進んでいる」と話した。

 

■日鉄、1800億円投資発表 USスチール製鉄所2カ所(829日・夕)=日鉄はUSスチールの製鉄所への追加の投資計画を発表した。ペンシルベニア州のモンバレー製鉄所では熱延設備の新設または補修に10億ドルを投資し、同製鉄所を数十年以上稼働する。

インディアナ州のゲイリー製鉄所では約3億ドルを投資して第14高炉を改修し、同高炉の稼働を今後20年ほど延長する。

 

************トランプ ショック***************

 

■日鉄のUSスチール買収、トランプ氏「認めず」(24830日・夕)=トランプ前大統領は29日、11月の大統領選で再選すれば、日本製鉄によるUSスチール買収阻止を明言した。

 

■日鉄、買収後の統治案 USスチール取締役の過半、米国籍に(9月5日)=日本製鉄は4日、USスチールを買収後のガバナンス(企業統治)方針を発表した。USスチールの取締役の過半数は米国籍とする、取締役は少なくとも3人の米国籍の社外取締役を含む、経営の中枢メンバーは米国籍とすることを新たに公表した。通商対策として、米国籍の委員で構成する「通商委員会」を設置する。USスチールの米国での生産を優先し、日本拠点からの競合品の輸出を優先することはないと改めて示した。またUSスチールの既存の生産設備へ14億ドルの投資を実行する、USスチールによる対外通商措置の請求に関与しないことなどを改めて明記した。

 

■買収不成立なら製鉄所閉鎖示唆 USスチールCEO9月5日)=USスチールは4日、日本製鉄による買収が成立しなかった場合、製鉄所を閉鎖し、本社をピッツバーグから移転する可能性があると表明した。買収に反対する労働組合との交渉は難航している。業績や雇用に直結する条件を示し、日鉄による買収を成立させる意思を示す狙いがあるとみられる。

 

■バイデン氏、USスチール買収阻止へ(9月5日・夕)=日本製鉄によるUSスチールの買収計画にバイデン米大統領が中止命令を出す方向で最終調整に入った。

 

■米クリフス、USスチールの資産取得に意欲(97日・夕)=USスチール買収を米政府が阻止する方向になったことを受け、米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスは「USスチールが閉鎖する(製鉄所などの)資産を即座に買収し、投資する用意がある」との声明を発表した。USスチールは日鉄による買収が不成立なら一部製鉄所を閉鎖すると示唆している。

 

■日鉄が米政府と協議 当局内も意見割れる(913日)=米政府も一枚岩ではない。CFIUSは省庁横断組織で、国家安全保障の観点から米国の企業や事業、技術に対する外国投資を審査する。議長はイエレン米財務長官で、国土安全保障省や商務省、国防総省、国務省、司法省、エネルギー省、科学技術政策局、米通商代表部(USTR)のトップが委員を務める。委員会での承認は、全会一致が原則。懸念が払拭できなかったり、委員の意見が一致したりしなければ、大統領の判断を仰ぐ。英フィナンシャル・タイムズ(FT)は10日、国務省や国防総省は買収阻止に難色を示していると報じた。日米関係への配慮に加え、防衛力を支える産業基盤の強化に向けて同盟国との協力が必要とみるためだ。

また日鉄はCFIUSに対し、買収申請を一旦取り下げ、大統領選後に再申請することを提案したともされる。再申請するにはCFIUSの承認が必要だ。CFIUSの勧告を受けて大統領が買収禁止の行政命令を出せば難しくなる。日鉄は早期に判断をする必要がある。

 

■日鉄、米鉄鋼労組と溝深く・買収巡る交渉、異例の公表(914日)=USWは鉄鋼業に加え、製紙や林業など広範な産業の85万人の組合員で構成される。うちUSスチールの従業員はわずか1万人。USWには競合の鉄鋼企業も加盟する。クリーブランド・クリフスはその代表で、過去にUSスチール買収で日鉄と競い、USWはクリフスのUSスチール買収を支援した経緯がある。USWが強硬に拒否する背後にはクリフスの存在があるとの指摘もある。

USWの一連の応対について日鉄関係者は「牛歩戦術ではないか」と話す。交渉に時間をかけて日鉄の買収計画を大統領選の渦に巻き込む狙いだったとの見立てだ。

 

■日鉄、ポスコ全株売却(925日)=日鉄は24日、ポスコホールディングス(HD)の全株式を売却すると発表。24日終値で計算すると約1200億円に相当する。日鉄はポスコHDの発行済み株式を3.42%2894712株)保有している。売却時期は市場の動向を見て判断する。

 

■日鉄、USスチール買収計画を再申請、高炉や雇用維持を約束(925日)=日鉄は23日までに米鉄鋼大手USスチール買収計画の審査について対米外国投資委員会(CFIUS)へ再申請した。従来の審査期間は23日までだったが、再申請により審査期間は90日間延びる。

 

■USスチール買収「日鉄は適格者」(926日・夕)=USスチールは25日、全米鉄鋼労働組合(USW)との間の仲裁で会社側の主張が認められたと発表した。買収に反対していたUSW側の主張は認められず日鉄に有利な結論となった。USスチールとUSWが仲裁結果を発表した。

 

■日鉄、USスチール買収成功の場合、ミッタルとの米合弁から撤退(1011日・テックスレポート)=日本製鉄は11日、USスチールの買収取引が実現した場合、完全子会社の NSKote,Inc.NS Kote)の全株式をアルセロール・ミッタル(AM)に譲渡すると発表した。NS Koteは、日鉄の持分法適用会社でAMとの合弁である AM/NSカルバートの日鉄全持分を有する持株会社。今回の株式譲渡は、USスチールの買収実行後も日本製鉄がカルバートの持分保有を継続することから生じ得る、米国競争法上の懸念に対応することを目的としたもの。

 

■日鉄、米合弁株を1ドルで譲渡(1012日)=日鉄は11日、米鋼板製造のAM/NSカルバートの保有持ち分を合弁相手である欧州鉄鋼大手アルセロール・ミタルに1ドルで譲渡と発表。USスチールの買収に向けて米国の競争法上の懸念を払拭するため譲渡を決めた。持ち分譲渡に伴い、2300億円の損失が発生する見込み。11日にミタルと譲渡契約を結んだ。USスチール買収後譲渡。USスチールの買収計画が頓挫する場合は譲渡契約は実行されない。


■米鉄鋼クリフスCEO「訴訟リスク辞さず」(1012日・夕)=USスチール買収に反対するクリーブランド・クリフスのローレンコ・ゴンカルベス最高経営責任者が11日、日経新聞などの取材に応じた。全米鉄鋼労働組合(USW)と足並みをそろえて反対していること(反競争的な行為に当たらないか)の法的リスクを問われ、「訴えるのは自由だ」と述べ、訴訟も辞さない姿勢を示した。

 

*************トランプ次期大統領****************

■トランプ氏、日鉄のUSスチール買収「阻止」(124日)=トランプ次期米大統領は2日、日鉄によるUSスチール買収計画に「私は完全に反対だ」とSNSで表明した。トランプ氏が大統領権限を使って阻止を模索する可能性が出てきた。CFIUSの制度でも、大統領が安全保障の観点から下した決断内容は、裁判所もその是非を判断できないと規定している。

 

USスチール買収再延期(1227日)=日本製鉄は26日、USスチール買収完了の予定時期を253月までに変更すると発表した。従来は2412月までに完了するとしていた。

 

■USスチール「米は敗北」(1230日)=USスチールは28日までに、日鉄の買収が不成立となれば、米国の鉄鋼業は拡大する中国の脅威に対抗できず「米国は敗北する」との声明を出した。「買収が不成立となれば、喜ぶのは(USWの)デービッド・マッコール会長とクリーブランド・クリフス、そして北京だけだ。米国は敗北する」と買収の意義を訴えた。

 

2025年

 

■日鉄「生産能力10年維持」 USスチール買収後(2513日)=USスチール買収を巡り、買収後もUSスチールの生産能力を10年間削減しないなどを柱とした追加提案を米政府に送った。生産能力が減る可能性がある場合、米政府は拒否権を発動できる。日鉄は既に買収後に27億ドル以上の設備投資を行うことを発表しているが、追加投資が必要になる可能性もある。

 

■バイデン氏、日鉄に買収中止命令(14日)=バイデン米大統領は3日、USスチールの買収計画に対する中止命令を出した。トランプ次期米大統領も「(買収に)完全に反対」と表明している。中止命令は3日付で、日鉄に原則として30日以内の買収計画の終了を命じた。

 

■日鉄、米大統領ら提訴(17日)=日鉄と日鉄米子会社、USスチールの3社が「対米外国投資委員会(CFIUS)」とバイデン氏、CFIUS議長のイエレン財務長官、ガーランド司法長官の4者を相手取り、米連邦控訴裁判所に買収を巡り不当な政府介入があったとして6日付で提訴した。

 

USスチール買収 中止命令の波紋()日鉄、かき消された正論(17日)=日鉄が読み誤ったのは正論をかき消すほどのUSWの政治力だ。USWのデービッド・マッコール会長はネガティブキャンペーンを張り続けた。日鉄を米鉄鋼産業を揺さぶる「安保の懸念」とする物語は、大統領選で強まった米国世論の内向き志向と共振し、独り歩きした。トランプ氏が12月、買収阻止をSNSで改めて表明すると、USWのマッコール氏が「歓迎する」と応じた。ラストベルトが激戦州である限り、共和党も民主党も労組に配慮せざるを得ない。

 

■日鉄「買収諦める理由ない」(17日・夕)=橋本英二会長兼最高経営責任者(CEO)は7日、USスチールの買収中止命令について「最初から結論ありきの政治介入があった」。買収計画を「諦める理由も必要もない」と強調。長期戦も覚悟の上で全面的に争う姿勢を示した。

 

*米鉄鋼労組「買収阻止は国益」(17日・夕)=全米鉄鋼労働組合(USW)会長と米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスの最高経営責任者(CEO)が6日声明を発表。「バイデン政権は米国に重要な利益をもたらし、国内鉄鋼産業の維持に貢献した」と称賛した。(日鉄などの)「根拠のない主張には断固として反論していく」とし対抗策を辞さない方針を示した。

*トランプ氏「USスチールなぜ今売る?」(17日・夕)=トランプは6日、SNSで「関税(引き上げ)によってより高収益で価値のある企業になるというのに、なぜUSスチールを今売ろうとするのか?」と述べた。USスチールの身売りに否定的な考えを示した。

 

■日鉄のUSスチール買収計画、破棄期限を6月まで延長(113日)=USスチールは11日、バイデン米大統領が中止命令を出した買収計画を破棄する期限が、当初の22日から618日まで延長されたと発表した。対米外国投資委員会(CFIUS)が期限の延長を認めた。

 

■米クリフスとニューコア、USスチール買収へ連携(115日)=リーブランド・クリフスは13日、電炉メーカーのニューコアと提携し、USスチールを買収する可能性がある。買い取り額は1株当たり30ドル台後半で、日鉄の買収計画(同55ドル)を下回る。クリフスがUSスチールを全額現金で買収し、買収後にUSスチール傘下の電炉会社をニューコアに売却を検討。クリフスがUSスチールを買収すれば、自動車用鋼板生産で100%近いシェアとなり、反トラスト法(独占禁止法)に抵触する可能性がある。抵触を回避するため、買収後に電炉子会社をニューコアに売却するとみられる。

 

■日鉄とUSスチール、買収巡る裁判開始(2月5日)=USスチール買収計画にバイデン前大統領が中止命令を出したことを巡り、両社がバイデン氏などを訴えた裁判が3日始まった。

 

■日米首脳会談・ トランプ氏「買収でなく投資」(2月9日)=トランプ米大統領は7日、USスチールの買収計画について「買収ではなく投資で合意した」と述べた。石破茂首相も「買収ではなく投資だ。」と述べた。具体策には言及しなかった。「買収」ではなく「投資」とするためには、計画を変更する場合、日鉄は現行のUSスチールとの契約を解除する必要がある。

 

*日鉄、トランプ氏に新提案 投資額積み増しか(2月9日)=日本製鉄が、米USスチールの買収計画を巡り、トランプ米大統領に新たな提案をしたことがわかった。投資額の積み増しが含まれていたもようだ。日鉄は新提案について「コメントできない」とした。

*玉虫色の「投資で合意」トランプ氏、日鉄と会談へ(2月9日)=米USスチール買収交渉が再び動き出す可能性がでてきた。「投資」が何を示すかは明らかになっていない。全米鉄鋼労働組合(USW)会長は7日、「日鉄がUSスチールに関心を持ち続けることへの懸念は変わらない」と声明を出した。

 

■トランプ氏「日鉄、少数株主なら問題ない」(2月15日・夕)=USスチールへの投資について、トランプ米大統領は14日、日鉄による出資が「少数株主であれば問題ない」と話した。

 

■日鉄「米との協議、合併契約が出発点」(2月26日)=USスチール買収計画について、日鉄の今井正社長は25日、「基本的なスターティングポイントは今の合併契約になると思う」と述べた。USスチールを完全子会社化する現在の合併契約を維持する方針を示した。

 

■米鉄鋼労組、USスチールを告発(2月26日・夕)=全米鉄鋼労働組合(USW)は25日、USスチールを全米労働関係委員会(NLRB)に告発した。USスチールが日本製鉄による買収計画に反対の意見を言えないように、数カ月にわたり組合員に威嚇行為をしたと主張している。

 

■日鉄、米高官と面会へ・日鉄、完全子会社化崩さず(42日)=USスチール買収計画を巡り、日本製鉄の森高弘副会長兼副社長は1日にもラトニック米商務長官と面会する。バイデン前政権は買収の中止命令を出したが、日鉄は完全子会社化の方針を崩していない。買収と合わせUSスチールへの追加投資など米国側を納得させる新提案を示せるかがカギを握る。

 

■日鉄の買収、再審査命令(48日)=トランプ米大統領は7日、対米外国投資委員会(CFIUS)に再度審査を指示した。日鉄は完全子会社化の方針を崩していない。日鉄とUSスチールがバイデン氏らを訴えた裁判の口頭弁論は、512日の週に延期された。

 

USスチール買収再始動 米当局が再審査 日鉄幹部「要求実る」(49日)=森高弘副会長は1日にラトニック米商務長官と面会。完全子会社化を前提に追加投資など新提案を示したとみられる。こうしたことが再審査につながった可能性がある。大統領が一度、中止命令を出した案件をCFIUSが再審査するのは初めて。日鉄にとっては光明が差してきた格好だ。まずは45日間かけてCFIUSが審査を進める。その後、CFIUS報告をもとに、大統領が15日以内に意思決定して公表する。バイデン政権とは異なる結論となる可能性がある一方で、依然としてトランプ氏の意向に左右される状況は変わらない。

 

■米政府、日鉄訴訟の60日間停止要請 49日・夕)=USスチール買収を巡って米政府を訴えていた行政訴訟で、米政府は65日まで裁判を停止するよう米連邦裁判所に申し立てた。

 

■USスチール巡りトランプ氏「日本に渡ってほしくない」(410日・夕)=トランプ米大統領は9日、USスチールの買収について「日本に渡ってほしくない」と発言した。

 

■トランプ氏「日鉄は投資家として戻ってきた」(411日・夕)=トランプ米大統領は10日、USスチールは「我が国の歴史のなかでベーブ・ルースのようなビッグネームだ」「海外企業がUSスチールのブランドを買うのはつらいことだ」。USスチール買収計画に「私は取引を拒否したが(日鉄は)投資家として戻ってきた。私はより良いと思う」と述べた。

 

■日鉄、USスチールの「完全子会社化を交渉」(510日)=日鉄の今井正社長は9日、USスチールについて「完全子会社化が交渉のスタートポイント」と述べた。トランプ米大統領は4月、対米外国投資委員会(CFIUS)に日鉄のUSスチール買収について再審査を指示した。

 

■日鉄が140億ドル投資検討。買収承認なら(520日)=ロイター通信は19日、USスチール買収計画を巡り日鉄が140億ドル(約2兆円)規模の投資を検討と報じた。政府承認を条件に新製鉄所への最大40億ドルの投資と100億ドル規模投資を準備している。これまでも完全子会社化を前提に、既存設備に対して約27億ドルの投資を公表してきた。米国向けの巨額投資は、自国に外資の投資を呼び込みたいトランプ政権の意向に沿ったものといえる。

 

■米安保「鉄の復活」重視 USスチール買収承認(524日・夕)=トランプ大統領は23日、日本製鉄によるUSスチールの買収を承認した。自身のSNSに「これは計画的な提携(パートナーシップ)であり、7万人の雇用創出と米国経済に140億ドル(約2兆円)の貢献をもたらす」と投稿。USスチール買収の枠組みは明らかになっていない。

日鉄はUSスチールの完全子会社化を目指している。中国は既に米海軍より多くの艦船を保有している。他の民間部門より賃金が5割高いとされる造船部門を復活させれば、経済と安全保障の一石二鳥になる。その大前提が国内での鉄鋼生産能力の強化だ。米軍への鋼板供給は主に米クリーブランド・クリフスが担っている。USスチールが弱体化した状態で有事になれば、国内の鉄鋼需要をまかないきれなくなる危機感もある。(日鉄の投資によりUSスチールが強化されれば)短期間に海外製品の価格競争力と品質に追いつき、同盟国からの巨額支援を「トランプ関税の成果」として訴えることができる。

*日鉄、経営権掌握カギ(525日)=日鉄幹部はトランプ氏のSNS投稿を前向きな声明だと受け止めているが、「正式承認までは安心できない」と語る。日鉄側は、USスチールの完全子会社化方針を崩さずにいる。日鉄と日本政府は、米政府の最終発表を待ち、トランプ氏が再び買収に否定的な姿勢に傾く恐れがないか確認する。トランプ氏の意向が変わらないうちに買収を実行できるかどうかもカギとなる。買収枠組みで日鉄が条件とするUSスチールへの100%出資が認められるかが肝となる。買収金額とは別に設備投資を兆円規模で追加すると決めた日鉄としては、譲れない条件だ。仮に詰めの作業で、米政権側が過半数の51%や少額出資などを主張するならば、着地点は再び見通せなくなる。

 

*日鉄、高級鋼市場に的 4兆円投資回収に自信(525日)=「米国は世界最大の高級鋼市場」であり、性能の高い自動車などの最終製品が求められ、日鉄の技術力を生かして利幅を確保しやすい。日鉄資料によると、米国の年間の鉄鋼消費量は9500万トンだが自給率は69%6600万トンにとどまる。日鉄が高効率な最新設備を設ければ、市場開拓の伸びしろは大きい。市場開拓には投資金額の使い道がカギとなる。一つは自動車用鋼板だ。ボディーなどに使う「ハイテン(高張力鋼板)」や電動車のモーター用の電磁鋼板を生産する可能性がある。もう一つは電炉設備だ。米国は電炉の原料となる鉄スクラップの蓄積量が多く日本よりも電炉が普及している。電炉先進国の米国で知見を蓄え日本や海外でも相乗効果を得られる可能性がある。

 

■トランプ氏「USスチール、米が管理」(526日・夕)=トランプ米大統領は25日、「(USスチールは)米国がコントロールする。そうでなければ取引を成立させない」と述べた。

 

■日鉄、USスチール買収で米に「黄金株」検討(528日)=日鉄がUSスチールの買収を巡り「黄金株」の米政府への譲渡を検討している。黄金株(拒否権付き種類株式)は1株でも取締役の選任・解任や株主総会決議を拒否できるなど通常の議決権よりも強い権限を持つ。米政府は日鉄の買収後もUSスチールへの影響力を保持できる。米国では原則、上場企業は黄金株の発行を認められていない。日鉄は買収が認められればUSスチールの全株式を買い取り上場廃止にする方針。上場廃止後に黄金株を発行し米政府へ譲渡することに制約はないとみられる。

 

■米鉄鋼、関税頼みのツケ(530日)=トランプ氏が日鉄の投資を受け入れざるを得なかった背景には米鉄鋼業の弱体化がある。USスチールは60年代まで世界最大の鉄鋼メーカーだったが、23年の粗鋼生産量は約1500万トンと日鉄の3分の1に縮小。経営危機の度に米国政府が関税など輸入規制で雇用や生産を守ることに終始し、技術革新の停滞が起きた。米国の粗鋼生産量の約7割が電炉だ。自動車用鋼板は不純物が少ない高炉での生産が適しており、日鉄などはトヨタなど顧客の品質要求に合わせて技術を磨いてきた。鉄鋼業は操業技術で大きな違いが出る。日鉄は独自の操業技術を生かし、USスチールの既存設備も高級鋼の生産に生かせるとみる。

 

■日鉄、財務負担に懸念(65日)=USスチールの買収を目指す日鉄の財務負担の懸念が高まっている。141億ドル(約2兆円)に上る買収費用に加え、2兆円規模とされる追加投資を実施すれば負債資本倍率(DEレシオ)は1倍を超える計算だ。買収が成立したとしても巨額投資に見合う利益を得られるかが焦点になる。格付け大手のS&P526日に「140億ドル規模の追加投資をUSスチールに行えば、日鉄の財務負荷が大きく増す」との見解を公表した。

 

USスチール黄金株、米政府が取得(613日・夕)=トランプ米大統領は12日、USスチール買収計画について「我々は黄金株を持つ。大統領がコントロールする」と述べた。トランプ氏は12日、黄金株取得を述べた直後に「米国人が51%の所有権を持つ」とも話した。

 

日鉄が完全子会社化へ USスチール買収615日)=日鉄は米鉄鋼大手USスチールの買収手続きを18日(米国時間)に完了する見通し。「国家安全保障協定」を米政府と14日に結んだことを受けて、141億ドル(約2兆円)を投じてUSスチール株すべてを取得する。米政府は国家安全保障協定と黄金株の2つを担保することで、米政府は一定の影響力を保持する。

 

*日鉄の世界展開、舞台整う(615日)=日鉄のUSスチールの買収は、完全子会社化のスキームで決着した。日鉄のグローバル戦略は日本を軸に、成長するインド、高級鋼が有望な米国の3つの市場で鉄のトライアングルを形成する。まずインドで手を打った。アルセロール・ミタルと19年に現地メーカーのエッサール・スチールを買収し合弁会社を立ち上げ、インド西部で高炉の新設工事を進め、南部でも新たな土地を取得し一貫製鉄所の建設を目指す。米国は、「世界最大の高級鋼市場」。関税も追い風だ。トランプ政権は4日に鉄鋼・アル輸入品にかける追加関税を25%から50%に引き上げた。日鉄はUSスチールを完全子会社化すれば、米国が輸入に頼ってきた高級鋼の需要を一気に取り込もうと狙う。日鉄は社名や本社を変えず、取締役の半分以上は米国籍とすると既に表明しているが、買収批判の声も消えていない。

 

*黄金株=種類株式の一つで、1株で取締役の選任・解任や株主総会決議などの重要事項に拒否権を行使できる特殊な株式。株主総会での承認を得て、定款を変更することで導入できる。企業の経営に強い影響力を保つことができ、政府などが保有することが多い。

 

■米鉄鋼労組会長「トランプ氏の翻意に失望」(616日・夕)=全米鉄鋼労働組合(USW)のデービッド・マッコール会長は15日、「大統領の方針転換に失望している」との声明を出した。

 

■日鉄、USスチール買収完了(619日)=日鉄によるUSスチールの買収が618日、正式に完了した。約141億ドル(約2兆円)にのぼる買収費用の払込みを終え、USスチールは日鉄の完全子会社となった。日鉄が一貫して求めた100%子会社化で買収劇は決着した。

 

***********日本製鉄、米国に黄金株を譲り渡す********

 

■安保協定と独立どう両立(黄金株)(620日)=米政府にはUSスチールの黄金株を発行した。米政府は実質的に取締役3人の選任に関与できる。黄金株を根拠とする社外取締役1人の人事権のほか、安保協定で対米外国投資委員会(CFIUS)の承認を得た2人の社外取締役を必要としたためだ。ただUSスチールの取締役は最大9人で、米政府が影響力を持つ3人では過半に及ばない。丸紅経済研究所の今村卓社長は「過半数を渡すと日鉄の自由度がなくなる。交渉のポイントだったのではないか」と指摘する。黄金株の保有には期限が設けられておらず、米政府は譲渡ができない。一方、通常の株式と異なり議決権がなく、配当受領の権利も持たない。

 

*日鉄、5000億円借り入れ(620日)=買収資金の2兆円は金融機関から調達したブリッジローン(つなぎ融資)で払い込んだ。有利子負債は足元の日本製鉄分とUSスチール(253月末で6000億円)を合わせると全体で約5兆円に膨らむ。日鉄は19日にかけ、特殊な方式による5000億円の借り入れ策を示したほか、増資も視野に入れていると述べた。

 

■日鉄・「世界生産1億トン」(78日)=橋本会長は日、粗鋼生産量を今後10年で1億トン規模に引き上げる計画を明らかにした。米USスチールやインドなどの拠点で増産する。USスチールでは電磁鋼板の設備投資を進めるほか、新たな製鉄所も建設。今後10年で2000万トン以上増やす。インドでは今後10年で現状よりも1500万トン上積みする。日鉄が進出するタイでも粗鋼生産量を200万トン増やし、中国に先んじてシェアを奪う。一連の増産により、日本製鉄とUSスチールの単純合算で24年に5782万トンの粗鋼生産量を10年後に1億トン規模まで引き上げる。

 

■日本製鉄、トリプルB S&P、買収巡り格下げ(718日)=S&Pグローバル・レーティングは17日、日本製鉄の発行体格付けを「トリプルBプラス」から「トリプルB」に引き下げた。USスチールの買収による資金負担を踏まえ、見通しは「ネガティブ」とした。

 

■日鉄、今期400億円最終赤字  米社買収で株売却損(82日)=263月期連結最終損益が400億円の赤字(前期は3502億円の黒字)と発表した。日鉄はUSスチール買収に伴い、米国の競争法上の懸念を払拭するため、米鋼板製造のAM/NSカルバートの保有持ち分をアルセロール・ミタルに1ドルで譲渡。譲渡に伴う2315億円の損失を費用した。このカルバート譲渡による一過性の損失などを除けば263月期の最終損益は2200億円の黒字と説明する。日鉄はUSスチールの立て直しに向け、技術者などを派遣して生産効率の改善を進めるほか、28年までに総額110億ドル(約16000億円)を投資して生産拠点の整備などにも着手する。
24年鋼材の対米輸出は121万トン(世界全体への輸出量は3171万トン)で、米国向け鋼材輸出量は多くはない。対米自動車台数(24130万台超)が落ち込めば、国内鋼材需要も押し下げられる。これが27.5%から15%に決まった。鉄鋼メーカーへの影響も最悪の想定からは緩和するとみられる。

 

■日鉄、米で大型電炉(829日)=USスチールが29年以降の稼働を目指し40億ドル(約6000億円)を投資し電炉を建設する。USスチール会長も兼務する日鉄の森高弘副会長兼副社長が、日本経済新聞の取材に答えた。新製鉄所は高炉ではなく、大型電炉を2基備える。年間の生産能力は300万トン規模を計画する。26年上期にも建設地を決める。稼働は29年以降となる。

電炉で高品質鋼材は造りにくいとされるが、日鉄は22年に世界で初めて電炉で最高級の電磁鋼板の生産に成功している。インディアナ州の高炉も31億ドルを投じて改修し品質を高める。USスチールを含めたグループ全体の粗鋼生産量を、今後10年で現在から6割増となる1億トンに引き上げる計画だ。

 

■日鉄の対米投資、波乱含み(830日)=トランプ米政権は安価な輸入材から米国の鉄鋼業を守るために鉄鋼に50%の追加関税を発動。米国鉄鋼協会によると256月の鋼材出荷量は785万トンと前年同月比で9.8%増えた。増加は4カ月連続だ。USスチールは24年末に電炉子会社で年産300万トンの電炉と薄板工場を稼働した。ニューコアも26年下期にウェストバージニア州で年産300万トンの電炉と薄板工場を稼働する。過去4年間で発表されて建設中の製鉄所の生産能力は2100万トン。これは24年の米国鋼材出荷量の4分の1に相当する。一方で鋼材を多く使う自動車需要などが下がれば設備過剰となる可能性もある。日鉄がUSスチール買収にあたって米国と締結した協定は10年間、生産能力を削減することを禁じた。巨額投資に見合う成果を維持できるのかが早速問われている。

 

*********トランプ黄金株の現実***********

 

■日鉄の出ばなくじく黄金株 米政府、USスチール工場停止阻止(921日)=米政府が「黄金株」に基づき経営に介入しUSスチールの工場停止計画を阻止した。USスチールは9月イリノイ州のグラニットシティー製鉄所での工場停止計画を労働者に通知した。しかしラトニック商務長官がUSスチールに対し、計画を認めないと伝えた。黄金株は経営の重要事項に拒否権を発動できる。重要事項には米政府の同意なしに「米国の既存製造拠点の閉鎖・休止」や「生産・雇用の米国外移転」などを実行できないことがある。これに基づいて経営に介入した。

USスチールは全米に高炉8基(うち2基は休止中)、電炉5基を持つ。増産投資の一方で、非効率な老朽拠点の効率化も全体の生産性を高めるうえで欠かせない。トランプ政権が掲げる米製造業の復活を手助けするため、24年で1418万トンだったUSスチールの粗鋼生産量を今後10年で2000万トン以上増やす。製鉄所の新設などにより、雇用の拡大にも動く方針だ。

*日鉄は日本では15基あった高炉を10基に集約した。全体の生産量を高めることを優先して、従業員の再配置も進めてきた。米国ではUSWが地域単位で強い政治力を持つ。仮にグループ全体の総合力を高められる合理化であっても、製鉄所のある地域の雇用や投資に寄与しないと判断されれば組合の反対につながり、合理化を阻止する政治的な圧力が強まる可能性がある。

 

■日鉄、設備改修に440億円(926日)=日鉄はUSスチールが既存生産設備改修に約3億ドル(約440億円)を投資すると発表した。日鉄が28年までに総額で約110億ドルを、追加投資する一環だ。巨額の設備投資が実行段階に移る。インディアナ州のゲーリー製鉄所改修に約2億ドルを投じる。粗鋼生産能力は年間750万トンとUSスチールで最大となる。モンバレー製鉄所でも約1億ドルを投じ、鉄鋼スラグのリサイクル設備を新設する。26年にも建設を始める。

 

■〈ビジネスTODAY〉日鉄、米で1.6兆円投資始動USスチールの設備新設や改修 競合の韓国勢に先手(116日)=USスチールは28年までに110億ドルを投資する。*アーカンソー州に持つ製鉄所ではデータセンターの変圧器など向けの「方向性電磁鋼板」の生産設備を新設し、28年以降に量産する。日鉄が電磁鋼板の技術を海外に移転するのは初めてだ。クリフスが独占する市場に風穴をあけてシェアを奪うことも狙う。*インディアナ州にあるUSスチール最大の高炉も改修する。*ペンシルベニア州の製鉄所では、生産過程で副産物として生成される鉄鋼スラグの処理設備を新設する。*中国の過剰生産や輸出を受け、日本国内市況は厳しい。日鉄は同日、関西地区の生産設備を子会社の山陽特殊製鋼に集約する方針を発表した。活路は米国やインドなどの海外となる。

 

■日鉄、米に先端技術移転(115日)=日鉄は米国でデータセンターなどに使われる高級鋼を量産する。USスチールが生産設備を新設する。投資額は数十億ドル規模を想定する。老朽設備の改修なども計画し、トランプ米政権に約束した巨額投資が動き出す。

 

■トランプ氏、USスチール新取締役に商務省顧問を任命(1125日)=トランプ米大統領は24日、USスチールの取締役に商務省首席顧問のデービッド・シャピロ氏を任命した。米政府はUSスチールの黄金株(拒否権付き種類株式)を保有しており、独立した取締役1人を任命できる。

 

USスチール、高炉再稼働 米政府が「黄金株」で停止阻止(126日)=USスチールは4日、イリノイ州の製鉄所にある一時休止高炉2基のうち1基(B高炉、年産約140ST)を再稼働すると発表した。同製鉄所を巡ってはUSスチールが9月上旬に稼働停止計画を労働者に通知し、黄金株を保有する米政府は9月に同製鉄所の稼働停止計画を阻止していた。

日鉄は5日、「USスチールが慎重に検討を重ね、決定したものだ」とのコメントを発表した。米政府が稼働停止計画を認めないことと、高炉の再稼働決定とは関わりがないとしている。

 

*********動き出した日鉄のグローバル戦略**********

 

■日鉄が「2030中長期経営計画」を発表(1212日・テックスレポート)=日本製鉄は12日、「2030中長期経営計画」(2026年度~2030年度)を発表した。「総合力世界ナンバーワンの鉄鋼メーカー」を目指してグローバル粗鋼1億トン体制の構築を進めており、26年度からの5年間では合計6兆円(うち海外:約4兆円、国内:約2兆円)の戦略投資を行う。国内の鉄鋼需要は減少傾向が続く見通しだ。同社は国内事業について、輸出向けHC(鹿島・大分)、建材薄板(鹿島・君津・広畑・阪神)、電磁鋼板(広畑・阪神・八幡)、自動車用鋼板(君津・名古屋・八幡)と、各製造拠点の役割を明確化し、集中生産による生産効率化を図る。

 海外ではグローバル成長戦略を実行し、重点3地域として米国・欧州、インド、タイを挙げており、USスチールでは大規模な成長投資による供給能力拡大を見込むほか、インドでもAM/NSインディアでハジラ製鉄所の能力拡充(年産600万トン、26年度)、ラジャペタヤでの一貫製鉄所新設(年産700万トン、31年度)を予定している。

 

■日鉄、USスチールに数百項目の改善点(251219日)=USスチールの買収完了から半年が経過した。この間日鉄はUSスチールの数百項目にわたる改善点をリストアップした。

内需低迷などで日本国内での成長は難しく、日鉄が12日に公表した中長期経営計画では海外投資が国内を上回り、大部分はUSスチールに振り向ける。日鉄は今後「方向性電磁鋼板」の生産設備をUSスチールに導入する。同鋼板を巡る技術は元は1953年に米クリーブランド・クリフスの前身企業が日鉄に供与したものだ。ただUSスチールの経営について米政府の介入を危ぶむ見方もある。

■日鉄、USスチール最大高炉を改修(1224日)=日鉄は23日、USスチールが同社最大の高炉を改修すると発表した。インディアナ州のゲーリー製鉄所にある「第14高炉」で、粗鋼生産能力は750万トンで、自動車向け鋼板などが主力となる

 

■<年末特集 クリップ2025>:日鉄、USスチールを買収・「10年後、勝者になるため投資」(251229日)=日鉄の橋本英二会長兼は買収完了後の記者会見で「日鉄が世界一に復権するために必要かつ有効な戦略である」とした。黄金株は日鉄から提案したもので「経営の自由度と採算性は確保されている」と強調した。日鉄はUSスチールの進出先である欧州の拠点も手に入れた。インドや日本とのネットワーク構築で鉄鋼世界一への返り咲きを目指す。米国で電炉方式の製鉄所を40億ドルを投じて建設する方針だ。データセンターなど向けの高級鋼「方向性電磁鋼板」の生産設備も数十億ドル規模を投じて新設の計画だ。

この間、米政府は日鉄の合意順守を「厳重に監視する」として黄金株の権限を行使した。11月にはUSスチール取締役への商務省首席顧問の任命を発表した。

 

2026年

 

■日鉄、海外と脱炭素に投資(26225日)=224日発表した新株予約権付社債(転換社債=CB6000億円の発行などで、USスチール買収を巡る巨額資金の手当てにめどをつけた。日鉄はUSスチールを通じて28年までに米政府に約束した110億ドル(17000億円程度)を投資する。米アーカンソー州に持つ製鉄所ではデータセンターの変圧器向けなどの「方向性電磁鋼板」の生産設備を新設する。米インディアナ州に持つ同社最大の高炉の改修なども計画する。110億ドル投資とは別に米国で電炉方式の製鉄所も新たに設ける方針だ。インドでも西部に持つ製鉄所で生産能力を年900万トンから1500万トンに増強するための高炉新設を進めるほか、さらなる新製鉄所の立ち上げも計画している。国内でも脱炭素に向けて、高炉から電炉への転換を進め、総投資額は8687億円(うち2514億円は政府の補助金)に上る。

*買収に伴い2512月末時点の有利子負債残高は約5.2兆円と前年同期の2倍超に増えた。資金需要が増すが、格付けは決して高いとは言えない。257月、米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは発行体格付けを「トリプルBプラス」から「トリプルB」に引き下げた。一段の引き下げを検討する方針も示している。

 

■日鉄に9000億円融資(318日)=日鉄のUSスチールの買収を巡り、大手行などが近く約9000億円を融資することが17日、わかった。政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)が5500億円程度、3メガバンクを中心とする民間が3500億円ほどを融資する。約141億ドル(約2兆円)の巨額買収に踏み切った日鉄の財務を官民で支える。

 

■日本製鉄、USスチールに3000億円(51日)=日本製鉄は30日、USスチールに約19億ドル(約3000億円)の投資を決めた。電炉で使う鉄鋼原料を製造する設備が対象だ。USスチール傘下のビッグ・リバー・スチールで設備投資する。コークスの代わりに天然ガスで鉄鉱石から酸素を取り除く直接還元鉄(DRI)の製造プラントを新設する。

 

■日鉄、最大4000億円投資(69日・夕)=日鉄は2025年に買収したUSスチールの米東部ペンシルベニア州にあるモンバレー製鉄所に、今後3年間で最大25億ドルを投資する。投資の目玉は同製鉄所のエドガー・トムソン工場だ。「熱延」工程の設備を刷新する。

 

■<ビジネスINSIDE〉鉄の買収1()日鉄流カイゼン着実に・USスチール「半数が不良品」の製鉄所 製販一体現場に浸透へ(6月18日)=「Ikkan」「SEIHAN」。日本語の「一貫」と「製販」を意味する標語だ。USスチールに製販一体で生産計画を策定する仕組みはない。粗鋼生産に対して最終製品になる比率は日鉄は89割だがUSスチールは56割だ。粗鋼のほぼ半分が不良品になっていた。買収後、日鉄が派遣した技術者らは100人超。詳細なカイゼン項目を挙げた。結果はあっという間に表れた。273月期実力ベースの事業利益は1000億円(前期は56億円の赤字)を見込む。うち400億円分が日鉄主導のコスト改善による効果だ。「成長を海外に求めるしかない。ほかに選択肢はない」。

森氏は縮む日本への危機感を隠さない。中国産の安い鋼材が国外に流れ出し、日鉄が稼げる市場は世界にも少ない。50%の高関税を背景に米国では鋼材価格の上昇基調が止まらない。米国市場への足場は日鉄が再成長を期す上で欠かせないピース。日鉄は米政権に対して28年までにUSスチールに総額約110億ドルを投じると約束した。今後5年間はUSスチールを中心に初めて海外投資が国内を上回る。日鉄はUSスチール買収を足がかりに、粗鋼生産量を1億トンに引き上げ世界一への復権を目指す。橋本英二会長兼CEOは言う。「鉄はたくさんつくらなければ技術の維持・発展ができない」。再び世界を制するための闘いはまだ序章だ。

 

■日鉄、1トンあたり利益、世界首位(26716日)=日本製鉄(USスチールを除く)の2613月期のトン当り利益は前年同期比44%増の約17000円でトップ。要因の一つは構造改革の成果だ。25年までに15基あった高炉を10基に減らし固定費を削減した。この間に自動車向けの高張力鋼板など高付加価値品の比率を高めた。

もう一つは価格交渉力だ。大口顧客向けのひも付き取引では、値段を決めてから出荷する「先決め方式」へ移行した。価格高騰分を機動的に転嫁できるため、適正な利益を確保しやすい。鉄鉱石や石炭の権益を取得し、安定的に調達できる体制を整えていることも大きい。日本製鉄の課題は買収したUSスチールだ。2613月のUSスチールのトンあたり利益はおよそ2100円の赤字だった。操業度を高めるといった収益改善策に取り組んでおり、273月期は事業利益で1000億円の黒字(前期は56億円の赤字)を目指す。


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<日鉄のUSスチール買収計画の背景>

 

■日鉄・橋本会長、「日本鉄鋼業を取り巻く環境と課題」講演(24618日・日経)

*〔日本の「純内需」はピークから半減〕=日本の国内鋼材需要のピークは1990年、鋼材需要(11100万トン)の内訳は海外向けが1700万トン、国内需要が9400万トンだった。国内需要の内訳は、間接輸出1800万トン、国内「純内需」が7600万トンだった。 2023年の鋼材需要は8200万トン。90年には7600万トンあった純内需は4200万トン(45%)減の3300万トンと半減した。このことは2000年以降、鉄鋼業界は手を打たず、対策が遅れ低迷状態に陥った。

 

NIPPON STEELへの挑戦()  日鉄、3極で地産地消(810日・日経)=*日鉄の粗鋼生産能力は現在6600万トンだが、1億トンに増やす方針だ。この上積み分は森氏は「3極に集中する」と述べ、米国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)を挙げる。

 

NIPPON STEELへの挑戦()  脱炭素へ電炉転換検討 水素製鉄、実用化は遠く(811日・日経)=国内のCO2総排出量の13%。鉄鋼業は製造業で最も多いCO2排出量を占める。日鉄は「CO2ゼロ」までの設備投資に4兆~5兆円、研究開発費に5000億円が必要とはじく。

30年の導入を見込むのが大型電炉だ。検討対象は八幡など2カ所。大型電炉が導入されれば既存高炉は閉じる公算が大きい。脱炭素技術の本命が水素還元製鉄だ。高炉での実証試験を始めるのは26年。CO2半減技術の確立は40年になるとみている。

*技術以上のハードルが脱炭素電源の整備だ。日鉄幹部からは「今の橋本氏の関心は米USスチールよりも原子力発電所の動向に移っているようだ」との声も漏れる。

日本政府がエネルギーの脱炭素化に踏み込めない場合、日鉄の脱炭素技術の実用化は海外が先ということになりかねない。脱炭素の実現には、政府も巻き込んだ議論が必要になる。