2024年の鉄スクラップ需給と価格を考える

はじめに 

新年にあたって、鉄スクラップマーケットを例によって独断と偏見で考えてみました。

足元の「相場」ではありません。大づかみな「マーケット」展望です。

 

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1 2024年の世界物流・資源のキーワードは「囲い込み」である。

ロシアのウクライナ侵攻に端を発した国際緊張から、世界のグローバル化は終わりを告げた。

製品から資源・原材料に至るまで、あらゆる分野で勢力圏内の「囲い込み」が本格化した。

 

2 さらに21世紀の世界経済のキーワードは、地球温暖化防止であり「カーボンニュートラル」である。
産業分野最大の二酸化炭素排出業界である鉄鋼会社にとって「カーボンニュートラル」、CO2削減は、現在から将来に至るまで、企業存続にかかわる待った無しの絶対的な課題となった。

 

3 鉄鋼業界が注目したのが、高炉・コークス製鋼法に比べCO2排出が4分の1以下の電炉製鋼と鉄スクラップ使用だった。大手高炉各社は電炉を建造し、新規に参入。既存の電炉会社と鉄スクラップを争奪する。そのような事態が「世界で一斉に」起こる・・・状況が急浮上した。

 

4 そこで登場するのが高炉や電炉各社による「囲い込み」である。その流れは、大きく分けて二つ。一つは高炉、電炉会社が鉄スクラップ会社を直接支配下に置くケース。二つは鉄鋼会社、建設会社、鉄スクラップ会社が「クローズ(閉鎖)」システムを構築するケースである。

 

日本国内の「クローズ(閉鎖)」システムの具体例は以下の通り。

*東京製鉄、大成建設と「ゼロカーボンスチール・イニアティブ」を始動(234月)

*リバー、藤沢事業所建替で東鉄、エムエム建材と循環スキーム(2310月)

*竹中工務店、巖本金属、東鉄など5社、循環サイクルに向け連携(23年12月)


また業者・組織による「囲い込み」は以下の通り。「関東鉄源協 鉄スクラップ流出 水際対策を・・・の主張への異論」 | STEEL STORY JAPAN

 

5 企業防衛的な「囲い込み(価格)」は独自ルールで動くから、公開市場の「需給動向」で動くマーケット(相場)を必ずしもを反映しない場合もありうる(東鉄・奈良社長談・注)。

*注=「鉄スクラップの安定調達へ向けた方策はありますか」との問に対し「一つの策は非常にシンプルに、まずは原則に立ち戻って輸出に向かう物を持って来てもらうことであり、そのため輸出に対してプラスの値段を提示することだ」(23628日・テックスレポート)。

 

6 国内鉄鋼各社と同様に、海外鉄鋼会社にとっても、日本から鉄スクラップ確保は(カーボンニュートラル対策として)重要な戦術である。その手段は二つ、一つは自由市場からの調達である(しかし日本の有力電炉は防衛買いを宣言している)。今一つが、日本に鉄スクラップ購入・加工会社を作り、もしくは既存会社を系列に収め、自社裁量価格で直接調達する方法である。最近の鉄スクラップ問題 その論点の再整理 | STEEL STORY JAPAN

 つまり鉄鋼会社の「囲い込み」は国内マーケットだけでなく、貿易市場でも同様だろう。

 

7 鉄スクラップは、このようにいまや世界的な戦略物資・資源の一つになった。その結果、鉄スクラップ相場は戦略的に動き出した。カーボンニュートラルが世界的な課題となった2021年以降、「鉄スクラップ相場が高止まりしている」のは、その表れの一端である。

 

8 では、2024年以降の鉄スクラップマーケットはどう動くか。

結論を言えば「カーボンニュートラル」時代のなか、鉄スクラップは鉄鋼会社の戦略原材料となった。政策的思惑と「囲い込み」で動く。需給要因だけでは、もはや語れない、と考える。

 

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なお、私は以下のようにhp上で、
その年どしの鉄スクラップ需給の成り行きを考えてきました。

 

2016年の鉄鋼・鉄スクラップマーケットをどう見るか | STEEL STORY JAPAN

2017鉄スクラップマーケット展望(冨高試論) | STEEL STORY JAPAN

2018年の鉄スクラップマーケット概観 | STEEL STORY JAPAN

2019年の鉄スクラップマーケット概観 | STEEL STORY JAPAN

2020年12月記

「コロナ発、鉄スクラップ相場は急伸・思惑」相場を考える | STEEL STORY JAPAN

2021年12月記

21マーケット概況及び22年展望 | STEEL STORY JAPAN
ポスト・コロナとグローバル化と渡来系業者の台頭を考える | STEEL STORY JAPAN

22年の鉄スクラップマーケットをどう見るか | STEEL STORY JAPAN

2022年12月記

「カーボンニュートラル」と鉄スクラップビジネスを考える | STEEL STORY JAPAN

 

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                以上